第31話 ガチャ
「お、おい……どうすんだよ」
「ど、どうって……」
聞こえないように小声で話す俺とフロン。
件の召喚獣はというと、ミクリンと呼ばれたからか、不機嫌そうに尻尾を振っていた。
「そもそも、どうしてカーバンクルだと思ったんだ?」
そうだ、まだコイツがカーバンクルと決まったわけじゃないじゃないか。
”自分のことをカーバンクルだと思ってる異常ミクリン” である可能性もある。
「額の宝石の色。ミクリンは青、その上位種のエルリンは緑、そして伝説の宝玉獣カーバンクルは赤」
「……赤いなぁ」
ほなカーバンクルやないかい。
……いつもだったら「レアモンスターだ!! 〇せ!!」──って感じなんだが、
今回はダメだ。戦いは避けないと……
だって、この街には俺が居る。
もしこのSSランクの魔物が平気で街一つ吹き飛ばす力を持っていて、それを行使された日には、
ユウタだけでなく高橋優太も死亡。ジ・エンドなわけだ。
ここは、機嫌を損ねないようにしなければ……
でもそういうの俺ニガテなんだよな……引きこもっててコミュ力とか皆無だし。
というわけで。
「フロン、後は頼んだ」
「何で私が!? 召喚したのはユウタなんだから貴方が責任をとって」
「うちペット禁止なんだよね」
「……突っ込みどころが多すぎる」
俺とフロンがひそひそと言い合っていると……
「おい、ご主人!」
ご、ご主人?
……え、俺?
「……わたくしめでしょうか?」
「そりゃそうだろ! オレを召喚したのはご主人だろ?」
「さようでございますが……」
なんとか全責任をフロンに押し付けられないだろうか。
俺ペットの面倒とか見れる気がしないし……
「ご主人! オレはカーバンクルのルークだ。よろしくな!」
「お、おう、よろ──」
「早速だが、ご主人! メシだメシ!! 召喚されたばっかで腹減ったぞ!!!」
「いきなりすぎるだろ!?」
不機嫌そうだったのは腹が減ってたのか……
そんなこと言われても食べ物なんて今持ってないぞ。
「お、おぉ……召喚された魔物が喋っている……なんということだ……」
マウルが声を絞り出す。
確かにあまりにもナチュラルに喋るから普通にしてたが、なんでコイツは喋ってるんだ。
まあそれは一旦置き。
「……何か食べるものあったりするか? 金払うんで……」
「お、おお! あるとも! とんでもないものを見せてもらったんだ、何もいらないよ!」
そういうと、マウルは急いで奥に引っ込んだ。
ガチャンガチャンと騒がしい音がしたと思うと、大急ぎでマウルが大盛の料理を持ってきた。
「すまないね、こんなものしかなくて」
マウルが出したのは、ガルムシチューというこの世界では定番の料理だ。
俺もユウタに買ってきてもらって食べたことあるが、一言で言うと獣くさいビーフシチュー。
はたしてSSランクの魔物の口に合うかというと……
「う、美味っ! ジジイは料理を司る神なのか!?」
無事、口に合いました。
ルークは皿に頭を突っ込んで、がつがつとガルムシチューを食べている。
かなりの量があったのに、もう食べてしまった。
あの小さい体のどこに収まったんだ……
「ふう~、美味かった!……おっ、おおっ……」
ルークはブルッと震えると、体に力を入れ──
「ふぅ……」
「ウンコすな──ー!?!?」
コロ〇ロみたいなツッコミをしてしまった……
それにしてもどんな消化速度だよ。
「お、おおぉ……」
マウルが随分と驚いた様子だが、どうしたんだ?
「ユ、ユウタ……見て……」
「いや魔物のウンコとか見たくねえよ!!」
「いいから!」
なんだよ、モニター越しでもウンコとか見たく──って、あれ?
「い、石……?」
清々しい表情のルークの後ろに転がっていたのは、茶色い排泄物ではなく、先ほど見た特級の魔石だった。
「こ、これはまさか!?」
マウルが夢中で駆け寄ると、ルークの排泄物を手に取る。
そして震える手で観察を続けると、ボソッと呟いた。
「ア、アルテミスの魔石……」
「ええ!?」
「し、信じられん……排泄物から魔石……しかも特級の魔石が」
特級の魔石がケツから!?
な、なんて下品な異世界なんだ……
いや、まてよ……?
「特級の魔石っていくらぐらいなんだ?」
「い、いくらって……特級の魔石はここ三百年、新規産出されていない代物さ。値段なんてとても付けられないねえ」
「いや今新規産出されたよ!? しかもケツから!?」
……これ、もしかしてとんでもない金策になるんじゃ?
「お、おい……」
「なんだ?」
「今、ケツから魔石が出てきたと思うんだが、それって毎回出るのか?」
「ん? ああ、そりゃメシ食ったらウンコくらいするだろ。嫌だったか? ご主人が言うなら今度から隠れてするが」
「い、いやいや! 是非今後とも俺の前で排便してくれ!!」
「お、おう……。なんだ、ご主人も魔石が欲しいのか?」
「そ、そりゃあ……」
「そうか、じゃあオレに良いモンを食べさせることだ! オレの宝玉創生は食べたもので良い魔石が出る確率が変わるからな!」
「まさかのガチャ!?!?」
確かにガチャって排出率とかいうけど、本当に排出率とは恐れ入りました……




