第29話 飛行系の魔物と言えばやっぱり……
「神の加護!──だいぶ、落ち着いてきましたか?」
「はぁ、はぁ……誰かがすぐに魔法を解除してくれれば」
「あー修行だから。さっきの修行だから。ほらきっとレベルも1上がってるって」
「レベルってなに。……でも、確かにまた一つ強くなったかも。まさか、ここまで見越して……」
そんなわけないのに、アホなのか? この子は。
「そういえばヴァンスたちは──おっ、噂をすれば、だな」
ヴァルドの視線の先に、エクリプスのメンバーが一仕事終えた表情で戻ってきていた。
「想定より時間がかかったが、こちらは討伐完了した。ユウタたちは──35体倒したという話は本当のようだな」
ヴァンスはユウタの横で息絶えるガルーダを一瞥すると、静かに頷く。
「もう一体のガルーダは──なんだ? あの黒いモヤは」
「暗影魔法の闇纏で暗闇状態にしてる」
「暗影魔法って、また悪趣味だな。それで、あいつはどうするつもりなんだ?」
「またさっきのすげえヤツ使うのか?」
「いや、あれは消費MPが大きくて何回も使うとな」
しかも集団戦に向いてないことも分かったし。
「じゃあ、今度こそ総力戦か?」
「そうだな、これだけ人数がいれば、アレで瞬殺できるか」
「瞬殺とはまた大きく出たな。どうするつもりだ?」
エクリプスも興味深げだ。
そんな大それたものではないけど……
ゲームやったことある人なら大体知ってるアレだ。
「光輝魔法を使う」
「光輝魔法……?」
光輝魔法の使い手であるリアナが呟いた。
「浄化や回復のイメージが強いけど……」
エリーゼの言葉にリアナが頷く。
「はい、光輝魔法は神聖なる力を操る魔法体系であり、この状況で役に立つようなものではないと思いますが……」
「俺も神の加護で皆を癒すくらいしか思いつかないな」
「それも光輝魔法らしいな。俺は使えないけど」
この世界で最も一般的な光輝魔法は神の加護らしいが、俺の魔法盤にはまだそんな魔法は出てこない。
回復系は使えたら便利なんだけどな。
なんて思いつつ、俺はアレをセットする。
「じゃ、ガルーダの暗闇状態が解けたら作戦開始だ」
「いや、作戦ってなんだよ」
「そりゃお前、アレだよ。飛んでる敵といえば、だ」
「……? なんだ?」
「まあ見てりゃ分かる」
ガルーダを画面中央に捉える。
ちょうど闇纏の霧が解けかかっていた。
「ズオォォォン!」
ついに視界が晴れて、俺たち、そして仲間の亡骸を目にしたガルーダは怒り心頭で叫び声をあげる。
そして、俺らに向かってお得意の突進を仕掛けてきた。
──いいか、古来より飛んでる相手にはこれが有効なんだよ。
古〇記にもそう書かれている。
あとはゲームの攻略本とか。
「いいか、目を瞑っててくれよ!」
「「「???」」」
「輝閃光!!!」
そう、飛んでるヤツは光で堕とすんだよ!
「ズアォォォン!?」
輝閃光が放った強烈な光がガルーダの目に飛び込む。
そして、ガルーダの平衡感覚を狂わせる。
「ギャアアアア、目が、目がああぁぁぁ!!」
「ぐうっ!?」
「キャアアッ!?」
……やっぱり周囲にもダメージが。
俺はモニターが一面真っ白になるだけなんだけど。
「もっと早く言えやああぁぁ!!!」
「まあまあ、ほら見てみろ」
「眩しくて見えねえよ!!!」
「ユウタ、私はちゃんと目を閉じていた」
なんで得意げなんだ、フロン。
「お、おう、そうか。それよりほら、ガルーダが輝閃光による眩暈と墜落の衝撃で動けないうちに叩くぞ」
これなら片手で魔法を使わなくていいから、両手で【奇重石のハンマー】を持てていいんだよな。
ササっと近寄って、両手でハンマーを振り回す。
ガツッ、ガン、ガンッ。
俺がボカボカやってる横で、フロンが呼吸を整えるのが見えた。
「ふぅっ……〈薄桜衝〉っ!」
フロンが剣を大きく振りかぶると、桜色の光が剣身を包み込んでいく。
その輝きは徐々に強さを増していき、やがて極薄の刃となって現れた。
地面に伏したガルーダに向かって、フロンは剣を振り下ろす。
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>ドロップアイテム 【王鳥の心核】を入手
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……えっ、火力やば。
まだHPゲージ三分の一くらいあったぞ。
「──な、なんだ……今の一瞬でガルーダが死んでる……」
やっと視界を取り戻したニックスが、理解できない様子で立ち尽くす。
「な、何が起きたんだ……?」
「ユウタがガルーダを落としてくれたから、〈薄桜衝〉でトドメを刺した。予備動作が大きいから普段は使わない剣技だけど、役立った」
「す、すごい連携力だな。あの一瞬でユウタの言葉を信じて目を閉じることが出来たのか……」
「私とユウタはパーティだから当たり前」
「いやナチュラルに嘘ついてる!? お断りしたよね!?」
「……なんにせよ、ガルーダ3体討伐か。これだけ倒せば、ガンドルも満足だろう。そもそもの依頼が、『大量発生したガルーダの調査と可能な限りの討伐』だからな」
ヴァンスが満足げに頷いた。
「え、もう終わるのか?」
以前ク・タ・フィリア峡谷に来たときは、もう少し奥に進めば他にもガルーダがいた。
弓を撃って輝閃光で落として殴るだけで倒せる上に、素材が高値で売れるからかなり美味いんだよな。
「もう終わる、って。そりゃお前、ガルーダだぜ?Bランクの魔物3体って分かってて言ってるのか?」
ニックスが半ば呆れたような目で見てくる。
「ニックスの言う通り、我々エクリプスは先ほどの戦闘で体内エーテルを相当量消費した。確かにユウタの戦法を用いればまだ倒せるかもしれないが、この体内エーテル量では万一の際に他の手段を取ることができない。我々はそのような危険を冒さないことで、プラチナ級冒険者に登り詰めることができた」
「悪いが、俺もヴァンスと同意見だ。それに、こいつらを入口まで持って帰らないといけないしな。あとはギルドの回収班が何とかしてくれるだろうし」
ヴァルド、お前今回何もしてないだろ……
「そうだそうだ、お前ら氷結は使えるか? ガルーダの肉は美味いから、悪くならないように凍らせておいた方がいい」
「あ、それなら私使える!」
「じゃあ頼むわ。今日はガルーダの肉でパーッとやろうぜ!」
もうすっかり打ち上げ気分のシルフォスに辟易しつつ、俺はさっきドロップしたアイテムを思い出す。
【王鳥の心核】って、多分レアアイテムだよな?
魔物図鑑で確認してみるか?
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≪基本情報≫
【魔物名】 ガルーダ
【種 族】 魔鳥種
【危険度】 B
【討伐数】 37/10
≪ドロップ≫
【通 常】 ガルーダの肉、ガルーダの青銅翼
【希 少】 王鳥の心核
≪解説≫
鷹に似た姿を持つ巨大な魔鳥。全身が青緑色の金属的な羽毛で覆われており、鋭い嘴と爪を持つ。
主に高山や深い峡谷に生息し、広大な縄張りを持つ。高速で飛行し、中型の魔獣を好んで捕食する。翼から強力な風を起こす能力を持ち、時に竜巻を生み出すこともある他、知能が高く落石による攻撃も行う。
通常は単独で行動するが、群れを形成して大型の獲物を狩ることもある。繁殖は三年に一度で、卵を産み育てる姿が観測されている。
数十年に一度、ガルーダの中でも並外れた巨躯を持つガルーダロードの姿が確認されている。ガルーダロードは一度に五百の卵を産み落とすとされ、ガルーダたちは群れを作ってこれらを守る習性がある。
古来より空の王者として崇められ、その羽は幸運のシンボルとされてきた。一方、現存するガルーダは、かつて存在したとされる「ガルーダ原種」の末裔であることが研究により明らかとなっている。また、古文書にもガルーダ原種についての記載が見られ、ガルーダ原種は炎のように光り輝く羽を持ち、炎神鳥と呼ばれていた。現存するガルーダがなぜこのような姿に進化したかは未解明であるものの、エーテル濃度の変化が一因である可能性が高く、太古に大規模なエーテル濃度変化が発生した証拠とする動きもある。
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おおっ! やっぱりレアドロップ!
Bランクの魔物のレアドロップならかなりの価値があるのでは?
仕方ない、今回はレアドロップに免じて引き上げるとするか。




