第28話 龍の古魔法
「な、何が起きたんだ!?」
ヴァルドたちが轟音に驚いて巨岩の陰から飛び出してきた。
「あ、それ以上近寄らない方がいいぞ。重力収束の効果範囲内になるからな」
重力収束はもう一度右クリックを押すまで効果がある魔法だ。
魔法発動時に大きくMPを消費し、その後発動している間は少しずつMPが消費される。
だから俺が解除するまで、ユウタに近づいたら上から押しつぶされてしまう。
フロンは何とか膝をついて耐えているが、ヴァルドたちは押しつぶされかねないからな。
「重力収束? 魔法かなんか? 聞いたことないな」
ヴァルドたちは首をかしげつつも、俺の忠告通りに歩みを止めた。
ヴァルドが知らないってことは、時空魔法はやっぱり五大元素魔法と比べてマイナーなのか。
「重力収束……え、それってもしかして、もしかしてですが──龍の古魔法ですか!?」
名前に思い当たる節があったのか、リアナが珍しく大声を上げて驚いていた。
そんな驚くような魔法なのか。
極性元素盤の時空魔法で一番最初に習得できる魔法だったんだけど……
確かに習得に必要なエーテルコアは10とかなり大きかったけども。
──というかなんだ? 龍の、古魔法?
なにそのカッコいい名前。これって時空魔法じゃないのか?
「そ、それよりも……彼女は大丈夫なのか?」
真っ先にフロンを心配するガレス。
「だ、大丈夫に見える……? おぉッ……!」
フロンは額に大量の汗を浮かべながら、苦しげに声を漏らした。
「解いちゃうとガルーダが動き出しちゃうからな。まあフロンなら大丈夫だろ」
「ぐおぉッ……!?」
フロンが一部の人に刺さりそうな声を上げて抗議の意を示すが、スルー。
「まあこれも修行、修行。フロンそういうの好きだし」
「んおぉお!?」
……それにしても、味方がこんなことになるんなら、今後は気軽に使えないな。
「フロン……まあいいや。それで、この後はどうするんだ?」
増大した重力に襲われ、地面から起き上がることもできないガルーダを見てヴァルドが言った。
「7対1のはずだったんだが……仕方ないな」
想定では地面にびたーんと倒れたガルーダを皆で袋叩きにするつもりだったが……
重力収束発動中はそれもできないな。
だからといって解除すると、またガルーダが空に逃げちゃって面倒だしな……
仕方ない、俺一人で殴るか。
右手で魔法を発動したまま、左手に【奇重石のハンマー】を構え、ガルーダに近づく。
「ユ、ユウタさんは平気なんですね……」
リアナは、重力に押しつぶされそうになりながらも必死に耐えるフロンと、まるで何事もないように歩くユウタを交互に見比べ、驚きの声を漏らした。
確かに、言われてみれば周囲の重力が増大しているのに、ユウタは動きが重くなったりしないな。
そこはやっぱりゲームだからな。ご都合主義なんだよ。
そんなことを思いつつ、ガルーダの目の前でハンマーを振り回す。
ガスッ! ──ガルーダのHPが少しだけ減少する。
……ハンマー、片手で持つと威力が下がるんだよな。早く新しい片手剣を新調したいところだ。
ガスッ、ガスッ、ガスッ。
ガスッ、ガスッ、ガスッ。
ガスッ、ガスッ、ガスッ──
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>ドロップアイテム 【ガルーダの青銅翼】を入手
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地面に猛スピードで衝突したことでかなりのダメージを受け、HPもあと少しだったガルーダは、目を回したままハンマーでタコ殴りにされて息を引き取った。
改めてひどい光景だな。敵ながらカワイソス……
「ひ、ひっでえ魔法! 魔物相手でも少し同情するわ」
「言うなヴァルド……これが一番安全にガルーダを狩れるんだよ。MP消費はデカいけどな。それよりも、さっき言ってた龍の古魔法ってのはなんなんだ?」
「私がシナンプーセット魔法学院の学生だった時に教わりました。永い時を経て失われた魔法がある、と。遥か昔、龍から伝えられたとされる原初の魔法。それが、龍の古魔法なんです」
いやなんでそれが初っ端に習得できるんだよ。
みずっちさーん、ゲーム設定ミスってますよー。
「へえ。俺は学校とか行ったことないから聞いたこともないわ」
「ぐ、おおっッ……」
「というより、そんな凄い魔法をどうして使えるわけ!?」
エリーゼが至極もっともな疑問をぶつけてくる。
俺が聞きたいよ。
「いや、魔法盤でエーテルコアを10消費して」
「……何を言っているのか分かりませんが、とてつもないことです。ドロシムウアにエクスケルシアル──あの御二人でも使えないそうですから」
「最強のドロシムウアに最高のエクスケルシアル……またビッグネームだな」
「最強? 最高? その二人は、凄い冒険者か何かなのか?」
「知らないのか? 世界で最も体内エーテル量が多いと言われ、第八天位の魔法すらも扱えるという最強の魔法使いドロシムウア。魔法理論の第一人者で、日々新たな魔法を生み出し続ける最高の魔法使いエクスケルシアル。こと魔法において、このお二人に並び立つ者はいません」
「ほえ~、強いやつは冒険者になるってわけじゃないのか」
「ぐうぅぅッ!!」
「まあ冒険者になるやつが多いけどな。でも、冒険者以外にも強者は山ほどいるぜ。お隣、帝国の切り札である帝国七柱、我らがメタリアス王国軍第一師団団長のヘネス・ヴァンデルミア、とかな」
「まあ、なんにせよ最強は我らがセラフィナイト級の御三方ですけどね!」
リアナが無い胸を張って言う。
なぜお前が自慢げなんだ。
「ぐぅぅ……っ──! 早くッ!! あぁあっ!!」
「あっ」
さっきからちょいちょい苦悶の声を漏らしていたフロンが、ついに崩れ落ちたのを見て、俺はついに重力収束を解除したのだった。
次話は明日7:10投稿予定です!




