第27話 vs ガルーダ戦
一瞬の沈黙の後──まるで堰を切ったように驚愕の声が響き渡る。
「なっ!? ガルーダが2体……!?」
「そんな、バカな! ガルーダは縄張りを持ち、群れないはずでは!?」
声を荒げるニックスとレイモンドの顔は明らかに引き攣り、額には冷や汗が浮かんでいた。
「や、やっべぇ……!! こりゃ逃げた方がいいんじゃねえか……?」
「い、今ならまだ距離もありますし!!」
シルフォスの面々もパニックに近い驚きようだな。
ヴァルドの顔もすっかり青ざめてしまっている。
「ダメ。ガルーダの機動力、移動速度は見たはず。背を向けたら直ぐに殺される」
フロンはしっかりとガルーダを見据えて言った。
「ガルーダ3体……犠牲は避けられない」
シルフォスの女性陣がビクッと肩を震わす。
足の遅い自分たちのことだと思ったのだろう。すっかりと怯えてしまっている。
……思っても言わない方がいいぞ、 地雷プレイヤーフロン。
「……考えるのは後だ。今は目の前のガルーダに集中するぞ」
緊迫した空気が場を支配する中、ヴァンスは槍を握り直し、罠にかかったガルーダを冷徹な眼差しで見据える。
一方、檻となったクモの巣に囚われたガルーダは、必死にもがき続けるも、その束縛から逃れることはできない。
「ヴァ、ヴァンスの言う通りだ! かかるぞ!!」
リーダーの言にやるべきことを思い出したニックスとレイモンドは、お互いに頷き合うと、致命傷を与えんとガルーダに近づいていく。
しかし暴れ狂うガルーダの抵抗に遭い、中々とどめをさすことができないようだ。
……そろそろ、俺も戦いに参加するか。
「おーい! エクリプスのお三方!」
「……?」
「ガルーダ2体はこっちで何とかするから、三人はそいつのトドメよろ~!」
「「!?」」
エクリプスの二人の顔に驚愕の色が広がる。
「なっ!? ユウタ、何を言っているんだ!?」
「気でも狂ったのか……」
なんちゅう言い草だ……
「……勝算はあるのか」
ヴァンスが背を向けたままそう尋ねる。
「たぶん!」
「……ふっ。そこはもう少し自信を持って答えてもらわないと困るな」
ヴァンスの口元に、かすかな笑みが浮かんだ。
「任せたぞ、ユウタ」
そう言うと、ヴァンスは暴れ狂うガルーダに飛び掛かっていった。
ニックスとレイモンドもそれに続いていった。
「それで、どうするの。Bランクの魔物と2対2。なかなか分が悪い勝負だけれど」
遥か上空を舞うガルーダたちの方を向いたまま、フロンが尋ねる。
おいおいフロンさん、ナチュラルにシルフォスを戦力外にしなさんな。
「いや、7対1を2回繰り返す。これ定石です」
「7対1? それが出来れば苦労しないけど……」
「まあ見てなって。ヴァルド!」
「な、なんだユウタ! 俺もいけるぞ!!」
見ると、先ほどまで真っ青だったのに、もう剣を構えて戦闘態勢。
コイツ、度胸あるのかないのかよくわからんな……
「俺が良いというまで、そこの巨岩の裏で隠れて目を瞑っててくれ」
「は、はぁ!? なんだよそれ!? 雑魚は足手まといだから隠れとけってか!?」
「いや、そういう意味じゃ──」
「分かった! 後は任せたぞユウタ!!」
ヴァルド……それでいいのか……冒険者としてのプライドは……
いや、その方が長生きするか。
「じゃあ、そろそろ始めるぞ」
戦闘開始だ。
まずは、状況把握。
瀕死のガルーダは、エクリプスたちに任せるとして。
2体のガルーダはまだこちらに気づいていないみたいだな。
ということは、1体に気付かれないようにしながら、もう1体をおびき寄せ、例のアレで総攻撃を仕掛けるか。
じゃあまずは……この魔法からだな。
左手にセットして、っと。
遠い方のガルーダに狙いを定めて、俺は魔法を唱える。
「闇纏」
最近習得した暗影魔法の1つ──闇纏だ。
これは対象を暗闇状態にする、所謂 ”状態異常付与系” なのだが、1対多の状況において非常に重宝するんだよな。
発動とともに左手から漆黒の霧が噴出する。
その霧は瞬く間に広がり、遠くにいるガルーダの一体を目掛けて飛んでいく。
闇の霧はガルーダを包み込み、まるで生き物のように纏わりついた。
「あ、暗影魔法!?」
驚くフロンを尻目に、闇の霧に覆われたガルーダの様子を確認する。
宝石のようなその目はどこにも焦点が合っていないようで、空中をフラフラと漂っていた。
しっかりと暗闇状態にかかっているな、よしよし。第一段階は成功だ。
次は、残りのガルーダの気を引くために、”弓チク” だ。
【ガルーダボウ】を装備して、っと。
……あ、このガルーダボウ、ドラゴンスミスのエリナ特注のものだ。
────────────────────
【ガルーダボウ】 <攻撃力 +49>
ガルーダをも撃ち落とすとされる大弓。
────────────────────
少し性能は落ちるものの、安くしてくれたのでオーケー。
使う矢はケチって攻撃力1の【木の矢】だ。
あるよね、弓にはお金かけるけど矢はケチるみたいなやつ。
暗闇状態のガルーダは置いといて、もう一体の方に狙いを定める。
.....ここだ。
エイム時のブレ減少、距離減衰低下、矢の速度上昇──【弓】の熟練度上昇の恩恵が詰まった一撃が放たれる。
矢は風を切り裂き、ガルーダの風の鎧を軽々と貫通して着弾した。
「ズオォォォン!?」
ガルーダは苦痛の叫び声をあげる。
【隠密】スキルの【暗殺Ⅰ】のおかげで、未発見状態での一撃がほぼクリティカルになり、さらに【急所の達人】でクリティカルのダメージも上昇している。
そのため、木の矢でもダメージはかなりのものだ。
一方の暗闇状態ガルーダはというと、すぐそばで相方が叫んでいるにもかかわらず、未だに空をお散歩中だ。
やっぱ暗闇状態つえぇ。
ガルーダの巨体が大きく揺らぐのを見て、フロンは驚きを隠せなかった。
「弓技でもない、魔術具も使っていない……普通の一撃なのに」
「最近ずっと弓ばっか使ってたからな。剣やハンマーよりももう熟練度は上だよ」
「そんな一朝一夕で上がるものなの!?」
まあ、ゲームだからな。
はてさて、やっと俺らの存在に気付いたガルーダ。
弓矢での一撃が余程堪えたのか、随分とお怒りの様子だ。
「バギュアアアア!!」
ガルーダは怒りに任せ、その巨体を一気に加速させた。
亜音速で迫りくる巨体は、モニター越しでもド迫力だな。
──ここだな。
右手を突き出し、魔法を唱える。
「重力収束」
瞬間、周囲の空間が歪んだ。
「ズオォォォン……!?」
超速で飛来するその巨体がまるで鉛の塊のように地面へと引き寄せられていく。
そして轟音と共に地面に衝突した。
重力収束は時空魔法の一つで、名前の通り周囲の重力を強くする効果を持つ。
魔法の範囲はあまり広くないものの、ユウタ自身には影響ないので、これもメチャクチャ使いやすい魔法の一つだ。
「──!?」
見ると、フロンが膝をついていた。まるで目に見えない巨大な手に上から押さえつけられているようだ。
……ただ、味方にも効くみたいだから使いどころは考えないとな。
次話は明日7:10投稿予定です!




