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異世界でも引き籠ってゲームばっかやってたら、知らないうちに世界最強の冒険者になってました  作者: やおよろずの
第二章 モルティス旧墓地のアンデッド
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第26話 ガルーダ vs プラチナ級冒険者

 岸壁に挟まれた細い道を抜けると、視界の開けた場所にたどり着いた。


「着いたぞ。ここがク・タ・フィリア峡谷の中心部──”炎神鳥の聖域”だ」


「ここが……」


「すごい……」


 シルフォスの面々から感嘆の声が漏れ聞こえる。

 確かに初見だと、この光景はまさに圧巻だろうな。


 ”炎神鳥の聖域”と呼ばれるここ──ク・タ・フィリア峡谷の中心部は、岸壁に囲まれた巨大な円形の盆地のようになっており、盆地の中央には青々とした草原が広がっている。

 そんな草原の上には、小川が蛇行しながら流れ、水面は太陽の光を受けて煌めいていた。


 そして、そんな絶景の中を我が物顔で飛び回る存在がいた。


「ガルーダだ……!」


 ヴァンスが小さく、力強く呟く。

 それに反応するようにシルフォスの面々が息を呑み、全員で空を見上げる。


 空には、巨大な鳥の姿が見えた。

 全身が青緑色の金属的な羽毛で覆われた、家のように大きな怪鳥だ。

 翼を広げれば優に十メートルを超え、鋭い嘴と爪は日差しを受けて鈍く光っていた。


「空の、支配者……」


 ガレスの呟きに、シルフォスの面々は無意識に頷いた。

 ガルーダの悠々たるその姿は、まさに空の支配者と呼ぶに相応しかった。


「……想像以上、だな」


 ニックスの声には、明らかな緊張が混じっていた。


「あの羽毛……本物の金属見たいです……」


「あ、あんなの倒せるのか?」


 シルフォスの面々はガルーダの威姿に気圧され、及び腰になっている。

 その様子を見て、ヴァンスは黙って盆地の中央の草原に歩を進めた。


「お、おい!」


 ヴァルドが声をかけるが、ヴァンスは返事することなく進んでいく。


「なあ、お前ら。ビビったならついてくんなよ、雑魚」


 ニックスもヴァンスに続く。


「ニックスに同意だ。”怯え”は戦闘で非常に不利となる。無駄に命を落としたくなければ、ここで待機しておいてくれ」


 レイモンドも行ってしまった。

 エクリプスが去り、しばし沈黙が訪れる。


「……リーダー、どうする?」


 リアナの声には、まだ少し恐怖の色が残っているものの、その眼差しには決意の色も垣間見える。

 手を強く握りしめ、俯いたままのヴァルドだったが、突然叫び声を上げた。


「──ちくしょおぉ!! 行くに決まってるだろ! 冒険者がここで引けるかよ!?」


 ヴァルドが吹っ切れたようにずんずんと進んでいく。


「だよね、それでこそリーダー!」


 さっきの怯えた顔はどこへやら、シルフォスの面々もエクリプスに続いて進んでいった。


 よし、俺もガルーダ戦に備えて準備をしておくか。

 

「……どうしたの? ユウタ」


 シルフォスに続こうとするフロンが、振り返りユウタを見つめる。


「ん、ああ、ちょっと魔法をセットしたり、色々と準備してて。──これでよし、っと」


 俺はメニューを閉じると、フロンに追いつく。


「何を言っているか分からない。でもいつものこと」


 よく分かってるじゃないか。 


 二人で盆地の中央の草原に向かって歩き出す。


 ”対ガルーダ” の動き方はもう完璧に理解している。

 正直、クッソちょろい。


 ……ただ、ガルーダが複数出てきたときは、少し厄介だ。


 その場合に備えた魔法がセットしてあることを再度確認してっと。


 よし、大丈夫だな。


 中央の盆地では、エクリプスの三人が巨岩のそばに陣取ってガルーダを待ち構えていた。


「ニックス、準備はいいか?」


「ああ、ここなら上手くいきそうだな。──おい、シルフォス! そこでちゃんと見とけよ」


 ニックスが何やら準備をしつつ、シルフォスの方を向いて挑発的な笑みを浮かべる。


「くそぉ、見せてもらおうじゃねえか! プラチナ級冒険者の戦いってやつをよ!」


 ヴァルドはレイモンドの方を見る。答えるように、レイモンドが静かに頷いた。


「──じゃあ、戦闘開始だ。ニックス!」


 ヴァンスの号令が響く。


「はいよ」


 ニックスが巨岩の影から飛び出すと、鉄の矢を取り出してガルーダに向かって大弓を構える。


 彼は深く息を吸い、一瞬の静寂の後、矢を放った。


 放たれた矢は、まるで生き物のように空気を切り裂きながら飛んでいく。


 ガルーダの挙動も計算した完璧な軌道だった。


 ──が、ガルーダにたどり着く寸前で、矢は急に威力を失い、届くことはなかった。


「ちっ、やっぱりそのままじゃガルーダの生み出す風に負けるか」


 ニックスは舌打ちしたが、その表情には諦めの色はなかった。


「じゃあ──」


 ニックスが腕輪に手を触れる。

 突如、腕輪が緑色の光を放ち始めた。


「あ、あれは?」


 俺は思わず声を上げた。


「魔術具。あれは射手座の魔石(サジタリウス)で作られた腕輪型の魔術具。そして、緑色だから、風空の術式が刻まれているはず」


「色で分かるのか……」


 なるほど、魔石に術式を彫り込んでおいて、魔石が含む魔力で術式を発動しているのか。

 興味津々で見つめる視線の先──ニックスが声を荒げた。


「──〈|剛毅の一撃〈フォルテストラーレ〉〉!」


 ニックスの大弓から、大きな覇気を纏った一撃が放たれる。

 

 再び放たれた矢は、今度こそガルーダの風をも切り裂いて飛んでいく。


 しかし、ガルーダの青緑色の羽毛に弾かれて、予想以上のダメージを与えることはできなかった。


 あれが弓技……俺がいくら弓の熟練度上げても、覚えなかったんだよなぁ。


 もしかして、技の習得は熟練度じゃないのか?


 この前フロンも剣技使ってたし、聞いてみるか。


 なんて思っていると、ガレスが不安げに声を上げる。


「お、おい、大して聞いてないぞ……」


「黙って見てな」


 矢が刺さったことで、ようやくガルーダは俺たちの存在を認識したようだ。


「ズオォォォン!」


 イラッとしたのか、ガルーダは空気を切り裂く鋭い唸り声をあげる。


 その咆哮は峡谷全体に響き渡り、地面さえも震わせるほどだ。


「くるぞ!!」


 ヴァンスの警告が響くと同時に、ガルーダが翼を大きくはためかせる。


 瞬間、ガルーダの目の前に巨大な竜巻が巻き起こった。


 竜巻は見る見るうちに勢力を増し、周囲の木々を巻き込みながら俺たちに高速で近づいてくる。


「きゃああぁ!!」


 エリーゼが必死に木につかまって耐える。


「おい、踏ん張れ! 吸い込まれるな!」


 ヴァルドが叫ぶ間に、レイモンドが一歩前に出る。

 

「任せておけ。|大旋風〈だいせんぷう〉」


 レイモンドが杖を天に掲げ、呪文を口にする。


 魔法杖に複雑な紋様が浮かび上がり、緑色に輝き始めた。

 また緑に光ってる、ということはあれは風空の術式なのか。

 

 レイモンドの前方に、凄まじい豪風の刃が発生し、ガルーダの生み出した竜巻に向かって飛んで行った。

 |大旋風〈だいせんぷう〉の刃が竜巻を切り裂き、その勢いを瞬く間に弱めていく。


「面白っ、すげえ戦略的だな」


 俺の地味な戦いとは大違いだな……。

 フロンたちが俺の戦い方を見て冷めないか不安になってきたぞ。


 竜巻が消えた後、一瞬の静寂が訪れる。その静寂は、次なる激しい攻防の前触れに過ぎなかった。


 ガルーダは俺たちに竜巻が効かないと判断したのか、高速で飛び回り始めた。


 その動きは予測不可能で、目で追うのも難しいほどだ。


 そして突如、岸壁にあった巨大な岩を足爪で掴むと、俺たちに向かって投擲を行った。


 ヴァンスの言っていた『落石』だ。


 それに対して、ヴァンスが盾を天に構えた。


「ふん。|山嶽陣〈さんがくじん〉」


 ヴァンスの声と共に、彼の盾から黄色い巨大な盾型の波紋が発生する。


 その波紋は俺たちの頭上に広がり、天蓋のように覆いつくしていく。


 それは、ガルーダが投擲してきた大岩と衝突すると、波紋が強く光りはじき返した。


 岩は粉々に砕け散る。


「す、すげぇ……」


 ヴァルドが声を漏らす。


 ちょっと! 俺も技使いたいんだけど!

 ていうか早く戦いたいのだが!?


 激長ムービー見せられてて中々戦闘に移らないゲームあるある!?


「……そろそろだな」


 ヴァンスが呟く。


 『竜巻』と『落石』を防がれたガルーダがとる次の行動は1つ。


 ガルーダが翼を大きく羽ばたかせ、後ろに距離を取る


「──来るぞ!!『突進』だ!!!」


 一気に加速してエクリプスに向かって突進を始めた。


 あまりのスピードに空気が切り裂かれ、轟音を立てる。


 亜音速にも近い速度で、しかもあの巨体で衝突されたら、例え家屋であっても木端微塵になる威力だろう。

 ましてや人間なんて、まさにグロ注意。


「ニックス!!」


「今だ!!」


 二人の声に黙って頷くと、ニックスは迫りくるガルーダを真っ直ぐ見つめたまましゃがみ、地面に手を着いた。

 瞬間、ガルーダの前に巨大なクモの巣のようなものが現れた。


 なんだあれ……!? あれも魔術具によるものなのか……!?

 恐るべし魔術具。


 ガルーダはそのままクモの巣に衝突する。


 容易くクモの巣を破ると思ったが、異常に伸縮性が高いのだろう、ガルーダは急速に速度を落とし、クモの巣に絡めとられた。


「レイモンド!」


 それはヴァンスからの合図だった。


 レイモンドが再び杖を高く掲げる。


「──巨岩撃(コロッサルインパクト)!!!」


 今度は黄色い術式が杖に現れると、地面が大きくくり抜かれ、巨大な質量となってガルーダに衝突した。


 衝撃で辺りに土煙が立ち、一瞬視界が遮られる。


「ズオォォォン!」


 おおっ、かなりHPゲージが削れたぞ。

 あと数発殴れば勝てそうだな。


 ガルーダはニックスの罠に絡まり、未だに身動きがとれない状態だ。


「もう少しだ、一気に攻めるぞ!」


 ヴァンスは槍を、レイモンドは片手剣を、そしてニックスは短剣を取り出すと、一斉にガルーダに襲い掛かろうとした。


 その時だった。


「ヒュオォォォッ!」


「な、なんだ!?」


 突如響き渡った鋭い鳴き声に、エクリプスたちも攻撃の手を止め、全員が一斉に声のする方向を見た。

 そこには信じられない光景が広がっていた。


「……ガルーダが、2体」


 岸壁の上、俺たちの頭上はるか高い位置に、二匹のガルーダが佇んでいた。


次話は明日7:10投稿予定です!


ご覧いただきありがとうございます。

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