第2話 異世界でもゲームしてていいんですか!?
「な、なんだ……」
気が付くと、俺は果てしなく広がる夕暮れ空の中に立っていた。
足元には、巨大な円盤状の床が雲海に浮かんでいる。
目に映る限りに空が広がり、風は穏やかで、なんだかすべてが心地よい。
まるで天国だ。
……って、天国?
「は.....? もしかして、わりぃ俺死んだ?」
思わず自分の身体を触り──透けないことを確認。
えぇっと……直前の記憶は、っと……
確か俺は、オンラインゲーム”アポカリプス・クロニクル”を27時間ぶっ通しでプレイしてて、それで──
「んおぉ!?!? な、なんじゃおぬし!? どうやってここに!?!?」
記憶を掘り起こすことに夢中になってて気付かなかったが、横には見知らぬ少女が。
「こ、ここはワシと創造神様しか入れぬ神域──ワシのぷらいべ~と空間じゃぞ!?!?」
「あ、どうも」
「あ、どうも──じゃないわ!! おぬし何者じゃ!?」
「えー、アポクロの最古参ギルドの一つ”レンデュランズ”のサブリーダーの高橋優太です」
「あ、あぽくろ?? れんでゅらんず?? 何を言っとるんじゃおぬし.....」
「──引きこもりニートゲーマーの高橋優太です」
「あ~……おぬし、みずっちと同じ、『げ~ま~』というやつじゃな?」
「ゲーマーで何が悪い!!」
「いや悪いとは言っとらんが……。知り合いにおぬしのように訳の分からぬ事ばかり言いおる神がおるんじゃ。テクノミズチ──通称、みずっちじゃ」
……というか、さっきから普通に話しているが……
ここはどこで、
この神とか言ってるイタい少女は誰か
分かる人いますか??
「……ん、おぬし死んどるようじゃし、神域に入った罰は一旦お預けじゃ」
「ば、罰!?」
「そりゃそうじゃろ。不法侵入なんじゃから」
……そりゃそうか。
──ん、というか、今不穏なこと言われた?
死んだ、とか。
「おぬし、もとは現世の人間じゃな?」
「現世??」
「まあ分からずともよい。おぬし、死んだときの記憶はあるかの? おぬしがここにいる理由が分かるやもしれぬ」
「ははは、死んだとかまさかそんなわけ.....ああぁっ!!」
──思い……出した!!
そうだ、完全に思い出したぞ。
俺はアポカリプス・クロニクル──通称”アポクロ”で一日中ゲイルニクス周回をしてて、それで……
「俺の大宝玉!!!」
嘘松とまで言われた伝説の激レアアイテム──嵐闇龍の大宝玉を手に入れ、そのことをギルドメンバーに伝えようとしたところで急に意識が朦朧として、それで……
「ちょ、嵐闇龍の大宝玉ぅぅぅ!! ちょっと!! まだアイテムの説明文読んでないんだけど!? これからひたすら自慢するつもりだったのですが!?!?」
錯乱状態で少女の肩を揺さぶる。
「ちょ、無礼者!?!? なに気安くカミサマ触っとるんじゃ!? やっぱおぬしは死罪!! ここで魂ごと消し飛ばしてやるわ!!」
「嵐闇龍の大宝玉ぅぅぅ!!」
──その後、ギャーギャー二人で喚くこと5分。
「ぜぇ~、ぜぇ~、……お、お互い一旦落ち着かぬか?」
「はぁ、はぁ、賛成……」
「……要するに、じゃ。おぬしはその...あぽくろ? なるげ~むでやり残したことがあるから、現世に生き返りたいわけじゃな」
「ま、まあ」
現世でやり残したことが激レアアイテムドロップ自慢とか俺だけだろ……
「結論から言おう。無理じゃ。ワシとしてもおぬしの扱いに困るし現世で生き返ってほしいところじゃが」
「な、なんで? アンタ神様じゃないのか!?」
「現世はワシの世界じゃないんじゃ。ワシら神々の長、創造神様の世界じゃ。じゃから好き勝手に人間を生き返らせたりできん」
なんだよ。がっくし。
せっかく宝玉を手に入れたのに……
「うぅー、何とかならないのか……?」
「そうじゃなあ……ワシが創造神様に頼もうにも、おぬしを生き返らせる理由がないからのう。創造神様としてもそのような異例の対応をしたくないじゃろうし。おぬしが現世で”それに値する行為”をしていれば可能性はあるやもしれんが……」
「ムリだな、うん」
俺がその創造神の立場だったら、ヒキニートゲーマーを生き返らせるわけないわ。
「そうじゃなあ、例えば……おぬしにワシが頼みごとをして、それに応えてくれれば、あるいは。神の頼みを聞くとは、それはもう徳の高~い行為じゃからな」
「──皿洗いでもなんでもします! 足も舐めます! 特に太もものあたり!!」
「気持ち悪いわ! だいたい、それなら靴を舐めるもんじゃろう! ……そうじゃなあ、おぬしに頼めるようなこと……ひきこもりの無職に何を頼めば……」
「なんとひどい物言いでしょう!」
「事実じゃろう。げ~むしか能のない──げ~む? そうじゃ!」
少女はパチンと指を鳴らす。
──すると突然、俺と少女の前によく見る三点セットが乗った机が現れた。
「これはみずっちからもらったものじゃ。おぬしならよく知っとるじゃろう?」
「そ、そりゃあ。モニター、キーボード、マウスだろ?」
「そうじゃ。みずっちはおぬしのように現世のげ~むに目が無くての。ついに好きが高じて、げ~むを自分で作ったらしいんじゃ」
「え、個人製作ってことか?」
「そうじゃな、一人で作ったらしい。みずっちはわし以外の友人もいないからの」
「……」
みずっちの悲しい話は置いといて。
でもあるあるだよな、ゲーマーがゲーム作ってみたくなるの。
俺もRPGツク〇ルとかでやってみたことがあった。
でも途中で投げ出してしまい、大体完成まで行かないんだけど。
「そのゲームの舞台がワシの世界らしくての。ワシの世界に実際にきゃらくた~を造り出して、それをこのき~まうなるもので操作するそうじゃ」
「……はぁ!? それって、現実世界を舞台にゲームができるってことか!?」
「現実世界というか、ワシの世界じゃな」
「なにその神ゲー!?」
「どうじゃ? おぬし、このゲームをやってみぬか?」
「え、いいのか!? そりゃやりたいが……それが依頼とどう関係あるんだ?」
少女が依頼をすることで、徳を積み現世に生き返るチャンスをもらえる、という話だった。
だが、俺がこのゲームをプレイすることで少女になんのメリットがあるのだろうか。
「実はの、みずっちが作ったげ~む、ワシの世界からしかぷれいできないそうなんじゃ。ぱすをとおせない?とかなんとか。じゃけど、ワシの世界に他の神を降ろすのも色々ややこしくての……。というわけで、ワシにプレイして、感想を求められておるんじゃが……。ほら、見ての通り忙しくての」
正直、全然忙しそうに見えないが……
そこは黙っておいた方が賢明だな。
「話が見えてきたぞ。アンタの代わりに、俺がその世界に転生して、そのゲームをプレイすればいいわけだな」
「そういうわけじゃ。おぬしが良ければ、すぐにでもワシの世界に転生させてやるが、どうじゃ? ここにいるのが他の神々に見つかると色々と面倒じゃし」
異世界に行ってまでゲームやるとか……
最高だな。
「ぜひやらせていただきます!!!」
「では善は急げ。ほら、さっさと転生するのじゃ。いつまでワシのぷらいべ~と空間にいるつもりじゃ」
「いや、転生って言ったってどうやって──って、うおおぉ!?」
シャ〇クス、腕が!
じゃなくて……
俺の身体のあちこちが透けていく。
「ではな~、向こうについたらまた声をかけるからの~」
「色々先に言えぇ!」




