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異世界でも引き籠ってゲームばっかやってたら、知らないうちに世界最強の冒険者になってました  作者: やおよろずの
第二章 モルティス旧墓地のアンデッド
19/46

第19話 ソウルバンシー

 アンデッド狩りを始めて一時間は経っただろうか。


 突然、アンデッドたちが地面に潜り始めた。


 なんだなんだ? もしかして沸く時間帯が決まってるのか?


 なんて思っていると。


「ギャアアアア!」


 突如、耳を劈くような悲鳴が響き渡った。


 音の方向に視点を向けると、半透明の女性が空中を漂っている。


────────────────────

>ソウルバンシーの慟哭が生者の精神を蝕む...!

────────────────────


 ソウルバンシー……あのアンデッドの名前か。


「お、おい、しっかりしろ……」


 ヴァルドの声に振り返ると、ソウルバンシーの叫び声を聞いた冒険者たちに異変が起きていた。


 リアナやシャルフは気を失い、ガレスやシャルフも耳を抑えて倒れ込んでいる。

 ヴァルドは何とか堪えているようで、仲間たちを安全な場所へと運び始めていた。


「……状態異常付与? 行動不能系?」


 確かにあの叫び声は、モニター越しでも心臓を直接揺さぶるような威力を持っていた。

 ホラーゲームで聞く女性の叫び声とは一味違う、本物の叫び声だ。


 まあ、俺はモニター越しだから特に問題はない。

 実際に聞いてたら気絶してる自信しかないけど。


「雑魚が消えて、新種が登場か。もしかして……」


 思い当たる節があり、急いで魔物図鑑を開く。


 開くのは、ゾンビのページだ。


────────────────────

≪基本情報≫

【魔物名】 ゾンビ

【種 族】 死霊種

【危険度】 E

【討伐数】 100/50


≪ドロップ≫

【通 常】 腐敗した肉

【希 少】 


≪解説≫

死してなお活動を続ける人型のアンデッド。腐敗した皮膚と肉体を持ち、特徴的な異臭を放つ。主に墓地や廃墟、戦場跡など、死者の多い場所に出現する。単独行動よりも群れで行動することが多く、時に大規模な集団を形成することがある。本能のままに行動するが、稀に上位の死霊種や死霊術師に使役されることがある。


痛みを感じないため、攻撃に怯むことなく、生者に襲い掛かる。また、ゾンビは食事の必要がないにも関わらず捕食行為を示す。主な餌食は生者の血肉であり、脳を特に好む傾向がある。


ゾンビの発生原因については、エーテル濃度との関係性が報告されているものの、現在も未解明である。


環境への影響は深刻であり、ゾンビの出現地域では植物が育たず、魔物が近寄らなくなる。更に、アンデッドの出現区域は際限なく広がることが明らかとなっている。このため、人間社会ではゾンビの徹底的な駆除が行われている。また、大量のアンデッドが発生する地域には霧がかかることが多く、関係性については分かっていない。


ゾンビを大量に討伐すると、何者かの叫び声が聞こえてくるという。事実、死霊種の上位個体にソウルバンシーという存在が確認されているが、現時点では噂の域を出ない。

────────────────────


「やっぱり……討伐数が丁度100だ」


 きっと、ソウルバンシーは出現条件が特殊なレアモンスターなんだろう。

 『ゾンビを100体討伐する』──これがソウルバンシーの出現条件のようだ。


 以前にも同じような記載を見たことがある。


 あれは……確かガルムのページだったはずだ。


────────────────────

≪基本情報≫

【魔物名】 ガルム

【種 族】 魔獣種

【危険度】 E

【討伐数】 87/30


≪ドロップ≫

【通 常】 ガルムの小牙、灰色の毛皮

【希 少】 魔狼の眼球、銀色の毛皮


≪詳細≫

狼に似た姿を持つ小型の魔獣で、主に深い森林や丘陵地帯の外縁部に生息している。濃い灰色の毛皮に覆われており、背中には特徴的な銀色の斑点が散在している。


通常、2〜3頭の小さな群れで行動するガルムは、主に小型動物や家畜を狩って生活している。繁殖期には個体数が急激に増加し非常に狂暴になるため、一時的に地域の生態系のバランスを崩すこともあり、注意が必要である。


また一部の地域では、ガルムは死者の魂を冥界へ導く案内者として崇拝されており、その遠吠えは不吉な出来事の前触れであるとされる。


特筆すべきは、稀に現れる真っ白なガルムの存在だ。これらの白化個体は幸運の象徴とされ、その毛皮は王族にも珍重されている。しかし、目撃例が極端に少ないため、これらの個体の生態学的な特徴や、通常個体との違いについては、まだ十分な研究がなされていない。


ガルムを崇拝する一部地域において、奇妙な噂が囁かれている。曰く、「陽の沈む間に、百の魔狼の魂を解放せし者の前に、月光の獣が姿を現す」という。この言い伝えの真偽は定かではないが、これを聞いた冒険者たちの幾人かは、これに挑戦し、消息を絶っている。

────────────────────


 そうそう、これだこれだ。

 単なる図鑑説明だと思っていたが、今回の一件で真実である可能性が高くなった。


 つまり、ガルムも100体倒せば何か出現するわけか。

 ただ、『陽の沈む間に』と書かれているということは、時間制限があるのか?


 俺が呑気に魔物図鑑を読んでいると、背後から声が聞こえた。


「ユウタ! 危ない!」


 画面が揺れ、ユウタがダメージを受けていることを知らせる。

 慌ててメニューを閉じると、視界が火の海に包まれていた。


────────────────────

>ソウルバンシーは《大炎上》を唱えた!

────────────────────


 大炎上──名前的に上位の火炎魔法か?


 うおっ!? 気付けばHPゲージが一気にミリに!?

 急いで【死霊のポーション】を2本がぶ飲みする。


 ……このダメージ量、もしかして負けイベか?


 いや、分からん。ただ、今のユウタのレベルに見合わない相手であることは間違いなさそうだな。


 ……だとすれば、倒すしかないよな!!


 初めての強敵にワクワクするのは死にゲー好きの性だろうか。


 とりあえず、まずは相手の行動パターンを把握するところから始めるか。


 ソウルバンシーは──居た居た、優雅に空を漂っている。

 と思ったら、何かをブツブツと唱え始めた。


────────────────────

>ソウルバンシーは《大炎上》を唱えた!

────────────────────


 さっきの魔法か。


 ソウルバンシーから火炎球(ファイアオーブ)よりも一回り大きな火の球が飛んでくる。


 追尾型では無さそうだな。自機狙い弾か?

 着弾のタイミングに回避すれば、無敵時間で避けられるか?


 試してみるか。


 そう思い、タイミングを見計らって回避を行う。


 しかしそれは地面に着弾すると同時に、広範囲を焼き尽くした。


「うおっ!? 範囲魔法かよ、しかもスリップダメージ!?」


 ぐんぐんと減っていくHP。


 慌てて火の海から逃げ出した頃には、HPゲージが半分近く削られていた。

 くそっ、こういう継続的にダメージ判定がある攻撃は無敵時間で避けきれないか……!


 再び【死霊のポーション】を1本飲み干す。


 ……これで残り1本か。


 ただ、二度と同じ攻撃は喰らわんぞ。ゲーマーとして。


────────────────────

>ソウルバンシーは《大炎上》を唱えた!

────────────────────


 来た!


 俺は急いで武器をしまい、全力で範囲外にダッシュ。


 間に合うか?


 ──後ろから火が燃え盛る音が聞こえる。

 無事に回避できたようだ。ソウルバンシー、お前の大炎上、見切ったり。


 視点をソウルバンシーに向けると、俺に命中しなかったのが不快だったのか、不機嫌そうに空を漂っている。


 それにしても……


「おい! 降りてこないとこっちも避けるしかないだろゴミモンスター!!」


 こっちはMPも尽きてて攻撃手段ないんだよ!


 そんなこっちの事情などお構いなしに、ソウルバンシーは空中を浮遊して俺の様子を観察している。


────────────────────

>ソウルバンシーは《大炎上》を唱えた!

────────────────────


 もうそれは喰らわん!


 再びダッシュで範囲外に出ることで、大炎上の回避に成功。


 ソウルバンシーに視点を向けると──ソウルバンシーが目前まで迫っていた。


 しまった、体当たりか!!


「危ない!!」


 ヴァルドの声が聞こえると同時に、俺は回避を押下していた。

 ほぼ反射的な行為だったが、(すんで)の所で回避に成功し、ソウルバンシーはすり抜けるように通り過ぎて行った。


 おいおい、降りてこいとは言ったけど、これじゃあ攻撃チャンスがないぞ……!


「大丈夫か!? 当たっているように見えたが!」


 声の方を見ると、仲間を安全な場所に運び終えたヴァルドが緊張した面持ちで立っていた。


「ああ、なんとか。そっちも大丈夫か?」


「俺たちのことは心配するな! それより──来たぞ!!」


 再びソウルバンシーが体当たりしてくる。

 これ単体なら避けることは容易だ。


 タイミングを見計らって回避をする。


「ヴァルド、この魔物について何か知らないか? ソウルバンシー、っていうみたいだが」


「ソ、ソウルバンシー!? Cランクの魔物だ!!」


 C……これまでで一番高いな。


「他に情報は? 弱点とか、何か知らないか」


「ソウルバンシーは生命力を吸い取ってくると聞いたことがある! 弱点は……すまん、聞いたことがない」


「いや、いい情報だ。ありがたい」


 生命力──ドレイン系の魔法でも使ってくるのか?


 それにしても、空に浮いている魔物は近距離武器だと非常に厄介だな……

 MPがあれば魔法を飛ばすことができるが、それ以前にあったとしても当てられる気がしないぞ……


 今後は弓も用意しておいた方が良さそうだな。


「ギャアアアア!」


 ソウルバンシーは叫び声を上げると同時に、俺目がけて体当たりを繰り出した。


 叫び声で動けなくなったところを狙ってるのか?

 幸いモニター越しの俺には効かないので、回避に成功。


 ……コイツ、知能が高いな、厄介だ。


 だが、今ので打開策を思いつくことが出来た。


 ソウルバンシーが体当たりをして来たところに合わせて、ハンマーをぶち当てる。


 タイミングを外したらダメージを喰らうし、当たってもソウルバンシーが怯まなければダメージを喰らう。


 苦肉の策だが、これしかない。


「ギャアアアア!」


────────────────────

>ソウルバンシーの慟哭が生者の精神を蝕む...!

>ソウルバンシーは《大炎上》を唱えた!

────────────────────


 おいおい、慟哭に大炎上に体当たり、全部やってくる気か!?


 バンシーを視界に捉えながら、何とか大炎上の範囲外に出る。


 ……やはり予想通り、バンシーが俺目がけて突撃してきた。


 ──今だ!!


 俺はタイミングを合わせて、ハンマーを振り下ろす。


「──!?」


 俺の渾身の一撃は、バンシーの身体をすり抜けた。


次話は明日07:10投稿予定です!

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