第18話 【影響力Ⅰ】
俺はトレインを駆使してゾンビを狩り続ける。
【奇重石のハンマー】の移動速度上昇効果もあってか、基本的に後ろ歩きしていれば追い付かれることは無く、非常に安定して狩れる。
ゲームのように段々とゾンビが固くならないのもイイね。
「グオォォ……」
おっ、きたきた。
そんなことを考えながら、攻撃範囲に入ったゾンビ目掛けて溜めに溜めた一撃を振り下ろす。
ぐしゃっという破裂音とともに、ゾンビは肉塊と化してピクリとも動かなくなる。
既にMPが切れてしまっていたので、こうして『距離を取って溜め攻撃してから後ろ回避、また距離を取る』を繰り返す方式に変更したが、これはこれで爽快感があって良いな。
オレ、アンデッド、スキ。
「おー! そいつで80体目だぞ!!」
「おめでとー!」
「もう全員やっちまえ!」
……などという居酒屋トークが後ろから聞こえてくる。
ヴァルドたちはすっかり元気になったらしく、こうして俺が倒したアンデッドの数を数えて遊んでいるようだ。
モルティス旧墓地には雰囲気に似付かわしくない、随分と和やかな雰囲気が漂っていた。
◇
「すげえなあいつ。何者なんだ?」
ヴァルドが呟いた言葉に、冒険者パーティ『シルフォス』のメンバーは頷きながら同意した。
「ギルド証を見る限りはブロンズのようだが……」
シャルフは鋭い目つきで件の冒険者──ユウタを観察しながら、静かに答える。
「嘘! アレがブロンズだったら、シルバーの私たちが嘘になるよ」
「しかも、さっき五大元素魔法を一通り扱えてたように見えたしな」
ヴァルドは腕を組み、思案顔で続ける。
「それでいて、前線でハンマーを振り回すこともできる、と。振りかぶったまま固まる動作は謎だが」
「化物だな」
ハンマーでゾンビを粉砕するユウタを見ながら、ガレスが低い声で呟いた。
「絶対ブロンズじゃない! それか、フロンみたいに別で鍛えていたとか?」
「フロン──ノブルクレス家の次女か」
ガレスが思い出したように呟く。彼の言葉に、シャルフが補足を続ける。
「幼少期から戦闘の英才教育を受けて育ったって噂だよな。確か彼女もまだブロンズだったはず」
「確かに、ユウタもその線はあるだろうな」
「メタリアス王国軍の人だったりして」
静かに見守っていたリアナが、小さな声で呟く。
「それはあるかもな。王国軍の窮屈さに馴染まず冒険者になったやつは多いって聞くぜ」
「なんにせよ、あいつはすぐに上に上がるだろうな」
ガレスは少年の動きを追いながら、深刻な顔つきで言った。
すると突然シャルフが立ち上がり、声を上げる。
「それより、俺たちも加勢しないか? ユウタを見ていたらなんだか簡単に見えてきたんだが」
「バカ、それは錯覚だ。……と言いたいところだが、何故だか俺も今なら簡単に倒せる気がするんだよな」
ヴァルドは自分の言葉に戸惑いを覚えながら答えた。
「分かる。後ろで見てるだけなのに、何だか私たちまで強くなった気分」
リアナは両手を胸の前で組み、不思議そうに言った。
「そうなのよね、まるで、彼の経験を分けてもらっているみたいな……」
エリーゼの言葉に、全員が頷く。
ヴァルドは咳払いをして、リーダーらしく言葉を紡いだ。
「落ち着け。気持ちはわかるが、ガレスのケガもある。それに、ユウタのあの奇妙な戦法の邪魔になりかねない。今回は見ているだけにするべきだ」
リーダーであるヴァルドの言葉を聞き、シルフォスのメンバーは納得したように頷いた。
そして、再びユウタがアンデッドを引き連れる様を眺めているのだった。
次話は19:10に投稿予定です!




