第17話 アンデッド100体でキルかな
「ぐああっ!?」
冒険者たちの悲鳴が墓地に響き渡る。
グールの鋭い爪が、一人の冒険者の腕を切り裂き、血飛沫が舞う。
「ぐううっ! う、腕をやられた……!!」
「ガレス!!」
負傷した腕には力が入らず、ガレスはついにメイスを落とす。
それは、前線の崩壊を意味していた。
「くそっ! もう、持たん……!」
「キャアアッ!?」
アンデッドたちの腕が後衛の二人に伸びる。
「や、やだ!! 死にたくない!!」
死霊の腕が少女たちの命を奪おうとするまさにその時、燃え盛る火球がゾンビたちを焼き尽くす。
《火炎球》っと。
……おっ、出た出た! かっけ~!
火の塊が宙を飛んでいくと、冒険者たちに群がる死霊種に命中し燃え上がる。
ゾンビたちは悶え苦しむと、そのまま絶命していった。
初めて魔法を使ってみたけど、めっちゃ便利だな。
ユウタには五大元素盤の各属性の最初級魔法をショートカットにセットしていたので、今みたいに出したいときにそのキーを押すだけですぐに発動することが出来た。
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>ドロップアイテム 【腐敗した肉】を入手
>ドロップアイテム 【骨片】を入手
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よしよし、ローズマリーご依頼のアイテムもドロップ出来ることを確認、っと。
「ひ、ひぃい……」
後衛の少女はあまりの恐怖に腰を抜かしてしまったようで、その場に座り込んでしまった。
「お、お前は……!?」
「誰でもいい! 今がチャンスだ!!」
前衛らしき男は少女を抱える。
「このまま突破するぞ!!」
冒険者たちはユウタの《火炎球》により出来た空間に流れ込み、なんとかアンデッドの包囲網を抜けることが出来た。
「は、はあ、はあ……助かった……」
「ぐううっ……」
ひ、ひどいケガだ。
腕がズタズタに引き裂かれている……
「──ポーション、どぞ」
死霊のだけど。
そのことは秘密に、俺は死霊のポーションを『手に持つ』。
「えっ!? い、いいのか……?」
「ああ、めっちゃ高かったから味わって飲んでくれ」
嘘です。タダです。
「あ、ありがたい....!」
深手を負った冒険者は死霊のポーションを受け取ると、ごくごくと飲み始めた。
そして、半分ほど飲んだところで今度はポーションを傷口にかける。
なるほど、消毒的な効果もあるのだろうか。
……【腐敗した肉】で出来たことを知っていると、なんとも言えない気持ちになるな。
なんか逆に菌とか入りそう……
「はあ、はあ、た、助かった。ありがとう」
「腕、大丈夫なのか?」
「ああ、おかげさまで切断する事態は避けられそうだ」
なるほど、即時回復はしないのか。
段々と回復していく感じなんだな。
「と、というか誰なんだ? どうしてここに?」
「えー、アポクロの最古参ギルドの一つ”レンデュランズ”のサブリーダーの高橋優太です」
「……お、おう。ユウタか。俺はヴァルド。で、右からガレス、シャルフ、後ろの二人がエリーゼとリアナだ。それでユウタ、どうしてここにいるんだ?」
「アンデッドを狩るとギルドから報酬がもらえると聞いて」
他にもドロップアイテムやレベル上げなどの目的もあるが。
「……変わったやつだな。アンデッドなんていくらもらっても戦いたくない相手なのに」
「そうは言いつつ、こうして来てるくせに」
後衛の女性冒険者がそう突っ込む。
「仕方ないだろ、『このままだと街にまでアンデッドが押し寄せてくる』とかガンドルさんが言うから──ちっ、こんなに危険だと知っていたら」
「明らかに異常よね、ここ」
「ああ。アンデッドどもの数もそうだが、なによりあのグールとルストだ」
「異常事態だ。何が起こってるのか分からんが、ほっとくとガンドルさんの言うように街に危険が及びかねない」
「その通りだ。一刻も早く撤退して、ギルドに報告しなければ……」
「この数は、プラチナ級冒険者の手を借りる必要があるかもしれん。もしかするとその更に上──無手の剣士の力を借りることも考えねば」
「ミルドナイト級冒険者──無手の剣士セリーナか。なんにせよ、早く帰らなければ」
そう言うと、ヴァルドはアンデッドの群れに目を向ける。
かなり距離を取ったはずが、もうそこまで迫ってきていた。
「ユウタ、先導してくれ」
「えっ? いや、俺はアンデッド100体倒すまで帰れま10やるつもりなんだけど」
そう言うと、冒険者たちは唖然とした。
「何言ってんだ!! 見ろ、あのアンデッドの数を!!」
「グールにルストまでいるんだぞ!?」
「はいはい」
うるさい外野は置いといて、さっさとヤろう♠
俺は左クリックを押下し、武器を構える。
【奇重石のハンマー】だ。
「おい、待て! マジで何考えてるんだ!?」
ヴァルドが慌てて俺の肩を掴もうとするが、俺はすでに動き出していた。
「ヒャッハー! アンデッドは粉砕だァ~!!」
俺は軽やかにアンデッドの群れに飛び込むと、左クリックを長押し──溜めのモーションに入る。
「グオォォォ……」
目の前のゾンビが腕を伸ばしてくるが、そんなの関係ない。
「どりゃあああっ!」
溜めた一撃を解放すると、ゾンビは頭から叩き潰され──木っ端微塵に砕け散った。
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>ドロップアイテム 【腐敗した肉】を入手
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よし、2体目。
この調子なら100体と言わず200体はいけるぞ。
「な、何なんだ、あいつ……」
「アンデッドの前で固まったかと思うと、ゾンビを一撃で……」
俺はそんな声を聞き流しながら、次々とアンデッドを薙ぎ倒していく。
うーん、縦振りよりも横振りの溜めの方が複数体巻き込めるか?
などと色々試していると。
「ん? あれがグールってやつか?」
俺の視線の先には、先ほど冒険者たちを追い詰めていたグールがいた。
灰色がかった皮膚の大男ゾンビだ。
あの鋭い爪での一撃は、確かに大ダメージを喰らいかねないな。
「…………」
グールは俺を見つけると、獲物を見つけた猛獣のように目を血走らせる。
だが、移動速度はそこまでではないようだ。
俺はグールたちを正面に捉えたまま、後ろに下がる。
すると、グールたちは俺目がけてついてくる。
だが、俺の方が移動速度が速いので、彼らが俺に追いつくことは決してない。
ゾンビゲーでよくあるトレインってやつだ。
「な、なんだあれ……」
「ア、アンデッドを引き連れてる……」
うーん、トレインするなら明らかに遠距離武器の方が良かったかも。
こんなことなら弓にすればよかったか?
ただ、どう考えてもスケルトンに効かないよな。骨の間すり抜けるだろ……
──ああ、魔法で代用するか。
せっかくだし、セットしておいた五大元素盤の魔法たちを一つずつ使っていく。
火炎魔法の《火炎球》──安定と信頼の高ダメージ。
氷結魔法の《氷結針》──弓と同じ刺突属性のせいか、ダメージは僅か。
雷電魔法の《連裂雷》──当てやすく、近くの敵にダメージが連鎖した。
風空魔法の《風切》──当たり判定が広いのか当てやすいのがグッド。
地砕魔法の《岩塊》──打撃属性だからアンデッドに効きやすいようだ。
などと色々試していると、知らんうちにグールとルストがお亡くなりに。
いや、元から死んでたんだけども。
というかルスト、お前出番無かったな……
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>ドロップアイテム 【グールの爪】を入手
>ドロップアイテム 【黒化した骨】を入手
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しっかりとグールとルストのドロップアイテムもゲット。
この調子で、討伐100体できるかな、っと。




