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エピローグ:「異世界のお客様、お待たせして申し訳ございません」

朝方5時、雄一のシフトも終盤に差し掛かっていた。この2時間、問い合わせがなく、雄一は仮眠を取っていた。

突然の着信音で目を覚ます。


「カスタマーサポートセンター、佐藤でございます。いつも異世界冒険者サポートをご利用いただきありがとうございます」


『…………』

 無言。しかし、かすかに息遣いが聞こえる。


「もしもし?お聞こえでしょうか?」


『…お前たちは何者だ?』

 低く、威厳のある声が返ってくる。雄一は背筋が寒くなるのを感じた。


「弊社は異世界と現代を繋ぐサポートセンターでございます。どのようなご用件でしょうか?」


『近頃、我が配下のモンスターたちが次々と倒されている。勇者どもの力が急に強くなったと思ったら…どうやら貴様らの助言があったようだな』


 雄一は固まった。その声の主が誰か、瞬時に理解できた。


「も、もしかして…魔王様でしょうか?」


『フッ、その通りだ。なぜ勇者どもを助ける?我に味方すれば、この世界の半分をくれてやろう』


「大変光栄なお言葉ですが、弊社はすべてのお客様に平等にサービスを提供する方針でございます。もしお力になれることがございましたら…」


『ほう、我も「お客様」になれるというのか?』


「はい、もちろんでございます。魔王様にも同様のサポートをご提供できます」


『面白い。では聞こう。我の城に勇者が攻めてくるのを阻止する方法はあるか?』


 雄一は焦った。マニュアルに「魔王からの相談」はない。倫理的にどう対応すべきか…


「申し訳ございませんが、直接的な戦闘サポートはご提供しかねます。ただ、一般的な城の防衛強化や、モンスターの士気向上についてのアドバイスでしたら…」


『ふん、詰まらん。だが貴様の誠実さは気に入った。来月、我が城の通信設備を強化しようと思っていたところだ。正式に契約を結ぼうではないか』


「契約…ですか?」


『そうだ。我が領土すべてに魔法通信網を敷きたい。これほど便利なものは初めてだ。我のモンスター軍団にも相談サービスを提供してほしい』


「それは…大規模なご契約になりますね。弊社の法人営業部に繋がせていただきますので、少々お待ちいただけますでしょうか?」


『構わん。待とう』


 雄一は慌てて上司に緊急連絡を入れた。

「魔王から法人契約の打診があった」という前代未聞の状況に、会社中が騒然となった。


その日から異世界コールセンターは大きく変わった。

勇者専用回線と魔王専用回線が別々に設けられ、中立の立場を保ちながらのサポートが始まった。


雄一は昇進して「異世界VIP対応チーム」のリーダーとなり、勇者と魔王の両方の相談に乗るようになった。そして世界の均衡を保つ重要な役割を担うことになったのだが…それはまた別のお話。

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