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「そのスライム、再起動してみてください」

「カスタマーサポートセンター、佐藤でございます。いつも異世界冒険者サポートをご利用いただきありがとうございます」


『はぁ、はぁ…助けて!私のペットスライムが突然暴走して、部屋中の物を溶かしはじめたの!』


 若い女性の慌てた声が響く。背景からは「ブクブク」という泡立つ音が聞こえている。今回は、特殊な魔法通信クリスタルを介した映像付き通話の様子だ。


「ご状況は承知いたしました。まず安全な場所に避難していただき、スライムから距離を取ってください。スライムの色や大きさはどのようになっていますか?」


『元々は透明な水色だったのに、今は赤紫色になって、サイズも2倍くらいに膨れてるわ!目が3つに増えたみたい…!』


 雄一はすぐに「スライム・色変化・暴走」で検索をかけた。


「お客様、そのスライムは最近何か異常な物を食べませんでしたか?特に魔法の素材や薬品などは?」


『えっと…昨日の夜に魔法薬の調合をしていて、失敗した薬を床にこぼしたんだけど…スライムが掃除してくれたの』


「なるほど。それが原因かもしれません。スライムは魔法薬の成分を消化しきれず、一時的な暴走状態になっている可能性が高いです。ペットスライムには固有名称をつけていらっしゃいますか?」


『ぷるぷるって名前よ』


「では、スライムから安全な距離を保ちながら、大きな声で三回『ぷるぷる、リセット』と呼びかけてみてください」


『え?そんなので大丈夫なの?…ぷるぷる、リセット!ぷるぷる、リセット!ぷるぷる、リセット!』


 数秒の沈黙の後、


『あ!止まった!動きが止まったわ!…あ、今度は小さくなって…元の色に戻りつつある!』


「よかったです。ペットスライムは飼い主の声紋を記憶しており、特定の呼びかけパターンでリセット機能が働きます。基本的なスライムの機能の一つですが、あまり知られていません」


『すごい!ありがとう!でも、部屋中がスライムの溶解液でべとべとになっちゃった…』


「スライム溶解液の後処理には重曹水が効果的です。重曹がない場合は、木灰と水を混ぜたものでも代用できます」


『了解!本当に助かったわ。これからは魔法薬の実験をするときは、ぷるぷるを別の部屋に入れておくわね』


「それが良いかと存じます。また、月に一度はスライムのメンテナンスとして、塩水に30分ほど浸す『塩浴』をお勧めします。不純物の排出を促進し、暴走を防止する効果があります」


『そんな知識、魔法学校でも教わらなかったわ!賢者様ってすごいのね!』


 通話が終わった後、雄一は「ペット・トラブル対応」フォルダに新しいメモを追加した。スライム関連の問い合わせは珍しくないが、色の変化を伴う暴走は初めてのケースだった。


「スライムのリセット機能か…自分のPCもたまにリセットしたくなるな」と呟きながら、雄一は次の通話を待った。

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