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第四節「行き止まり」

ばくるばくると心臓が跳ねている。

乾いた(のど)が笛のような音を立てる。


ほとんどの者が帰途(きと)について去った宮殿はすっかり静まっている。

それでもなお、コッパーはひたすら暗がりの方へと進み続ける。

(はし)に着いては引き返し、下へ通じていれば降りていった。


そんな逃亡は、三方の冷たい石壁に(はば)まれて止まった。


ここはどこだろう。


周囲は水底のような暗黒に包まれている。

上方に、夜の青い光が、細い窓の隙間(すきま)から淡く差している。


最後の方は壁に時々体をこすりながら、階段を降りてきた。

それも長い階段を降りてきた気がする。

角に突き当たることのない円柱状(えんちゅうじょう)の壁。

螺旋階段(らせんかいだん)


ここはどこかの階段の一番下だ。


階段を上がる力はもう無い。

行き止まり。


いよいよ疲れ果てた。


コッパーは冷えた石の床に膝をつく。

あの場から毛布を引き抜いてこれたことは幸いだった。

肩から巻いて端を尻に()くようにして、行き止まりの角に座り直す。

背を壁へつけて、長く息を吐くと力が抜けて、横の壁にもたれた。


そうしてしばらくは何も考えられないでいた。


そのうち、心音が耳をすませなければ聞こえないほどに落ち着き、口が湿ってくると、汗が冷えてきた。

寒くてたまらない。


しかし、あの部屋に戻るのが恐ろしい。


このまま(こご)えて死ぬのだろうか。

にわかに重くなってきた(まぶた)を閉じるにまかせていいのだろうか。


いいだろう。

少し休めば、歩けるはずだ。


()()()()を知っている。


階段の上方がかすかに白赤く明るくなったのを一瞬(とら)え、コッパーは目を閉じた。

短期アルバイトが始まり通勤時間が発生したとたん執筆がみるみる進むようになりました。

必要なのは他に何もできない時間。

今回と次回は少し短い区切りになります。

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