第二節「むかしがたり:ふたつ」
これは、夢だ。
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神が腰を下ろしてまだ浅く。
美しくかしこく健康な働き者の娘がいました。
はなやかな娘は皆から好かれ、村中の若者から求婚されましたが、
娘はなにもかも完璧な結婚相手でなければいやだといって断ってしまうのでした。
両親は娘の結婚が決まるのかということをいつも心配していました。
やがて村には娘の望みに応えられる若者はいなくなりました。
娘は旅人に望みをかけ、村に人が訪れるたびにその姿を見に行きました。
しかし理想の相手は現れません。
ある日のこと。旅人の当てが外れた娘が落ち込んで帰る道のこと。
星は強くかがやき、不思議に明るい夜。
ひらけた長い道を、木の傷を目印に娘は歩きます。
しかし霧に巻かれて、娘は森で道を見失いました。
すると、娘に呼びかける優しい声が聞こえました。
娘はそちらに向かいました。
川のそばに、男のような影がありました。
近づいても影は晴れません。
男は影そのものの姿をしていたのです。
全身が夜の色をして、髪と瞳には星の輝きが瞬いていました。
男は夜の使いだと名乗りました。
娘は異様な姿に怯えましたが、
彼から香る良い香りが、優しい声が、娘の気を引きます。
娘はいつの間にか男の胸に収まっていました。
娘は彼こそが美しくたくましい理想の青年だと舞い上がりました。
二人はその晩結ばれました。
翌朝、森の中で、両親が探し当てた娘は一人きりでした。
夜の使いのことを娘が話すと、誰も信じませんでした。
しかし娘は夜の使いとの子を宿していたのです。
人々はおどろき、娘の言葉を信じることにしました。
しかし、生まれたその子も朝をむかえる星のように消えてしまいました。
村の人々はその子を「ルウハス(溶ける星)」と呼びました。
娘はそれ以来、男と同じ香りのする花を見つけ、
毎晩その花とともに泣いて眠ったと言います。
結婚相手に高望みをしてはなりません。
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夢現で、コッパーは物語を見た。
これも…イメナータが話していた昔話の一つ。
…浮かぶ景色が、奇妙だ。
この物語は、そもそも…この国の話だろうか?




