03 昼休み
さっきの休み時間。
鼻をつつかれ大声で返事をした俺は周りから注目されて、恥ずかしくなって逃げだした。
教室では俺の醜態を笑っているという妄想に駆られ戻ることもできなかった。
結局、休み時間が終わるまで教室には戻れなかった。
情けない話だ。
こんな調子ではすぐに振られてしまうかもな。
少し前に負った古傷が痛むような気がした。
お昼休み、いきなり横から真が肘でつついてきた。
「よう、ヘタレ野郎。休み時間はトイレにでも籠ってたのか?
「うるせーよ。胡桃沢さんは怒ってなかったか?」
「大丈夫だ。かわいいって笑ってたぞ」
「本当かよ。大丈夫なのかなそれ?」
完全に男としては駄目な気がする。
負けないように俺もぐいぐいいった方が良いんだどろか。
でも、胡桃沢さんってそういう男が苦手みたいなことも言ってたしな。
「なんだよ、不安なのか。俺がアドバイスしてやるよ。女ってのはな・・・」
「言わなくていい。聞きたくない」
「せっかく親友がアドバイスしてやろうと思ったのに。
まあ、そんなことより本当に付き合うことなったなんて、驚いたよ。
まさか彼女がB専だったなんてな。道理で俺に見向きもしなかったわけだ」
「殺すぞ。
ていうかお前、胡桃沢さんも狙ってたのか」
「まあな。このあたりのかわいい子には全員声をかけてるぜ。
胡桃沢さんはちょっと落せなそうだったからすぐに引いたけどな」
「あっそ。いい加減にしとけよ」
「安心しろ。俺に抱かれた女はみんな幸せになるんだ」
「死ねばいいのに」
真は基本的には優秀でスポーツマンな生徒として俺の中学校では先生からの好感度も高かった。
確かに真は勉強もできたし、生徒会の仕事もちゃんとこなしていた。
だが女性関係はひどいものだった。
可愛い女の子がいればとにかく声をかけ、相手をその気にさせてベッドイン。
しかし、真が誰かと真剣に付き合うことはなく、複数の女を日替わりで抱いていたこともあったそうだ。
女の方も遊び慣れている子が多かったようだが、枕を濡らした子も少なくないだろう。
クズ中のクズだが、勉強とスポーツ、生徒会までをしながら女も抱くバイタリティーは少しあこがれる。
「俺は胡桃沢さん一筋でいくんだ。お前のアドバイスは必要ない」
「一人の子を幸せにするのだってテクニックがいるんだぜ」
「わかった、わかった。後で聞くよ。俺は胡桃沢さんに会いに行く」
「俺も一緒に行くよ」
「はあ?」
「そんな顔するなって。邪魔はしねえよ」
こいつのことは友達としては嫌いではないんだが、これ以上なにかされるのはごめんだ。
「俺は結構お前のことを友達として信用している」
「なんだよ、いきなり褒めてきて。昼飯はおごらねえぞ」
「そうじゃねえよ。俺たちが友達でいるためにもこれ以上余計なことはするなよ」
「もちろんだ」
真は屈託ない顔で返事をしてくる。
この顔を見ると信頼したくなってしまうが、意外と平気で裏切ってくる。
それでも入学初日くらいこいつと飯を食うのも悪くはないか。
「話は終わりましたか、周くん」
やっぱりいいタイミングで来てくれるな、胡桃沢さん。
お弁当を片手に現れた胡桃沢さんはほほえましそうにこちらを見ていた。
「うん。さっきの休み時間はごめんね。ちょっと混乱しちゃって」
「許してあげます。でも、またいきなりどっかに言ってしまったら怒りますからね。
お昼一緒に食べましょう」
「あ、ごめん。まこも一緒でもいい?」
「はい、いいですよ。
二人ともお弁当はないんですね。一緒に購買に行ってみましょうか」
「うん」
俺たちは購買へに向かっていった。