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難攻不落の胡桃沢さん  作者: 佐藤周
2/5

02 休み時間

入学式を終えて初めてのホームルームだ。


恒例の自己紹介が始まったが、どうでもいい。

今は彼女のことで頭がいっぱいだ。


残念なことに胡桃沢さんとは違うクラスだった。

俺は2組で、彼女は4組だ。


これから彼女と仲を深めなくてはいけないのであれば大変な事態だが、

すでに彼女なので心に余裕がある。

授業中なんて話もできないからな。


気にしない、気にしない。


休み時間が楽しみだな。


「城崎中学校から来た、大原真です。中学時代は生徒会長をしていたので、高校でもやりたいと思っています。サッカーが得意なので、ぜひみんなと一緒にやりたいです」


どうでもいいので聞き流していた自己紹介だったが、見知った奴がいたのでそちらに顔を向けた。


大原真は小さいころからの友達だ。

背はそこそこ高く、少しワイルドな顔のイケメン。

生徒会長をしながら、サッカーのキャプテンを務めていた文武両道の秀才だ。

友人も多く、モテる男だったが特定の彼女がいたという噂はなかった。


しかし、俺は知っている。

あいつはとんでもない女たらしだ。




ホームルームと授業が終わり、初めての昼休みだ。


クラスの連中は近くの人と友達作りを始めている。

だが俺はとにかく胡桃沢に会いたかった。


急いでクラスを出ようとしたところで真に声をかけられる。


「おい、周。せっかく同じクラスになった親友に声もかけずにそこに行くんだ」


「ごめん、まこちゃん。実は彼女ができたんだよ。

 違うクラスなんだけど、すぐにでも会いたくて」


「えっ、いつの間に。受験で忙しくて、那奈ちゃんに振られてからはそんなそぶりもなかっただろ」


「今日、できたんだよ」


「はあっ?何言ってんだ?」


「マジなんだよ。登校してきた時に一目ぼれして思わす告白したら、なんとOKをもらったんだ」


「嘘だろ。よっぽど押しに弱い無知な女か、飢えた女なんだろうな。

 どんな子なんだ?名前は?」


「銀髪の子で、胡桃沢さんって子だよ」


「嘘つけ、馬鹿」


真は急に興味を失ったようにあきれ顔になった。


「なんで嘘なんだよ」


「当たり前だろ。難攻不落の胡桃沢さんだぞ」


「なんだよそれ?」


「知らねえのか?

 男嫌いで有名な難攻不落の胡桃沢さん。

 白百合学園の風紀委員長で、文武両道の超絶美少女。

 オーストラリアと日本人にハーフだ。

 とくに有名なのが白百合の乱」


「なんだよ、白百合の乱って。

 そんなの習ったか?」


「そんなことも知らねえのか?」


「うるせえな、友だちが少ないんだよ」


「白百合の乱は、胡桃沢さんが不良グループに狙われてた女の子を助けた話だ。

 どうやったっか知らないが、10人以上の不良に連れていかれた女の子を一人で救出したらしい」


「すげえな」


「そんなこともあってか、なかなか男を寄せ付けないらしい。

 だから付き合えるわけねえだろ。

 彼女は白百合学園やそれ以外の中学校からも告白に来た数多のイケメンを振ってきたんだぞ」


「でもほんとなんだって」


「馬鹿。変な妄想してないで、現実を見ろ。

 他にも可愛い子はいっぱいいるぞ。

 ほら、今教室に入ってきた銀髪の・・・・胡桃沢さんだ!」


真に肩をたたかれながら出口の方を見ると、ちょうど胡桃沢さんが入ってきた。


「周くん。約束通り会いに来ましたよ。そちらはお友達の方ですか?」


「うおおお、周。話しかけられてるぞ」


真が俺の服をひっぱりながら言ってくる。

引きちぎれそうなのでやめてほしい。


「だから、付き合うことになったんだって」


「そんなわけねえだろ」


「ほんとですよ」


胡桃沢さんはまっすぐこちらを見て、少し微笑みながらそう言った。


「な、なんでですか、胡桃沢さん。

 中学時代は男嫌いだったって聞きましたけど」


「そうですね。

 確かに中学時代はギラギラした目を向けてくる男の子が多くて苦手でした。

 私にその気がないのに、やたらとそういう方向にもっていこうとして」


「そうでしたよね。じゃあ、なんで周と!?」


「もともと、中学時代は男女交際はせず、高校からと思っていましたから。

 周さんは見た目も私の好みですし、誠実な方ですよ」


「そんなことないです!こいつだってエッチなことで頭がいっぱいです!」


「おい、コラ!まこ、てめえ」


確かにいやらしいことをしたいのは否定しないが、胡桃沢さんの好感度を落とすようなことを言うな。

お前と違って、俺は一人の女性を誠実に愛するんだ。


すけこまし野郎はだまってろ。


「周くんはそんな人ではないですよ」


胡桃沢さんが柔らかい笑みを浮かべながら近づいてくる。


人差し指で俺の鼻をツンっとつついた。


「ねっ、周くん!」


とびきり可愛い小悪魔笑顔でそう言われた。


「はい!!!」


俺の声は教室中に響き渡った。

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