6話
「アイドルになって戦うのは分かったんですけど、それでどうやって勝敗が決まるんですか?」
色々説明して貰ったけど、まだまだ分からない事が多すぎる。
「これに書いてあるのだ!」
そう言ってキラが紙を手渡してくる。これは……チラシか?
「それが地球から配布されたビラだよ」
「えーっと何々…?」
受け取った紙を見ようとする。
しかし
「果たし状ですわーーーーっ!!!」
「うわーーーっ!?」
いきなり控室の扉が開き、ものすごい勢いでカードが投げ込まれる。
ビリッ
「あーっ!?」
飛来したカードがビラを切り裂いてしまう。
しまった、まだ肝心な所が読めていないのに…!
「失礼しますわ! 弱小チームの皆様方!」
そこに立っているのは、俺がボコボコにしてしまったデーモンさんだった。
「デーモン貴様! 我らの居室に何をしに来た!」
キラが吠える。
興奮してバチバチと炎が舞う。それが落ちたビラを焦がしてしまう。
「あらご機嫌よう。弱小チームにピッタリの貧弱な控室ですわね。今度こそ捻り潰して差し上げますわ! あんな試合は無効です。
再戦決定ですわ!!」
デーモンさんも興奮して黒いオーラと風が室内に吹き荒れる。焦げてダメージを受けたビラはバラバラに裂かれてしまう。
シオさんが壁に刺さったカードを引き抜き読み上げる。
「なになに……。
未申請のメンバー乱入、キラ氏の不正行為発覚により、試合結果は無効とする。兎立織氏にはペナルティの上再戦を行う事とする
地球防衛機構運営より」
「な、なんだってーー!?!?」
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試合開始10分前
あの後デーモンさんは高笑いをしながらさっさと消えてしまった。
俺達はステージの袖で待機していた。
俺はビリビリに破かれたビラをかき集め、何とか読めそうな部分を修復していた。
「えっと……バトルのルールについて
『出演者は1対1に分かれて戦って貰います。勝敗はどちらかの戦闘不能、もしくは観客の支持率が90%を超える事で決まります。
アイドルとして舞台に立つ以上、必ずマイクパフォーマンス・歌唱・ダンスを行なって貰います。この3つを疎かにしたと判定された場合、ペナルティが発生します。歌唱中・着替え中の攻撃は厳禁です。この場合も…』
ペナルティが発生します。結構ルールが細かいんですね、これ」
「そうだね。中でも歌唱とダンスは重要なんだ。荒れ狂う神々も、邪悪な魔王もアイドルになったからには皆、真剣に練習して身につけているんだ。そうしないと観客からの支持が得られないからね」
「なるほど……。昨日から缶詰で歌と踊りを練習したのも、それが理由なんですね」
そんなやりとりをしている間、シオさんは俺の衣装や髪を綺麗に整えてくれていた。
……美人な人に髪や服を触られるのって凄くドキドキするな……!
「あれ、そういえばキラはどこに行ったんですか?」
そういえば姿が見えない。レッスンと紙の修復で存在を忘れていた。
「あぁ……。キラはルール違反で裁定者に連れてかれてるよ。この試合が終わるまでは戻ってこれないんじゃないかな」
「裁定者?」
「この宇宙のルールや大会の規定を取り締まっている連中だよ。君には警察っていう概念が近いんじゃないかな?」
「なるほど……? 大丈夫なんでしょうか、酷い目にあったりとか……?」
「うーん、まぁ。何回も連れてかれてるし、大丈夫なんじゃない?戻って来たらケロッとしてるよ」
キラは問題児のようだった。
「さあ出来た。気にしてもしょうがないよ、頑張っていってらっしゃい!」
優しく背中を押される。
「は、はいっ! 行ってきます!」
ステージを駆け上がる。もう一度この場所に立つ事になるとは……。
一歩一歩を緊張しながら踏み締める。
影を抜け、スポットライトの当たるステージへ立つ。
熱い。
光も視線も自分自身も。正面を向けば、見渡す限りを埋め尽くす観客達。俺がステージに上がった事に反応してサイリウムを振ってくれる。
(わ、嬉しいな……。この人達、観客っていうけど何処から来たんだろう……? この人達は……人間?)
「来ましたわね小娘。」
デーモンさんが反対側から歩いてくる。
「試合乱入、歌唱中の妨害行為、そして貴方が眷属にしたキラ=ニャフルゥワ氏の現地人への不法介入、その他諸々の違反行為の責任者として、貴方のスキルである転移ボーナスは封印させて頂きます。正々堂々勝負しらっしゃい!!」
「ええーーーーっ!?」
次回、デーモンさんvs 仙下谷 兎立織
いざ尋常に勝負!
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おまけのコーナー
デーモンさんのひみつ
本名デーモン・ナル・ウコワ
(6000歳) 男 魔族
異世界からやってきた、長年魔界を支配した元魔王。闇と風の魔法が得意。
魔界の王として非常に長い間君臨していたが、その事を子孫や革新派の市民に疎まれて異世界に飛ばされてしまった。元の世界に帰っても自分の子孫や知り合いと殺し合いになる為、どう振舞おうかと悩んでいた所、地球で神を決める大会が開かれると知り勇んで参加した。
己や他人に厳しくルールには厳格。しっかり歌と踊りを練習し、自分なりに着飾って可愛いアイドルになろうと努力している。
紫の髪を伸ばし、ゴージャスなドレスを纏っている。自慢の角と羽はそのままに、悪魔で魅力的なアイドルだ。
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