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22話



 なんか、ふらふらする。


 気持ち悪いような、身体が熱いような。風邪でも引いたのかな、俺。でも、眠っている割には何だか苦しい。ここはベッドの上じゃ、ない?


 違和感に薄らと目を開ける。視界が赤い。それに、何だか地面が逆さまになってる気がする……?


「お前も馬鹿なヤツだよね。相棒を犠牲にして手に入れた、と思ったら逆に手懐けられちゃうなんてさ」


(……キラ!)

 キラが目を閉じて眠っていた。棺の様な台に乗っており、その周りには人骨や何かの工具・刃物が転がっていて物騒だ。その前には、灰色の髪をした小さな女の子が逆さまに立っている。逆さま?

 上を見ると、そこにあるのは知らない天井ではなく、マグマがぐつぐつと煮えたぎる大きな鍋だった。

(……っ!? 何だこれ!?)


 上がそうなら下はどうかと目を向けるが、やけに首が重たい。もしやと思ったが、やはり足が縄で吊るされていた。

 さらに何と言うことか。スカートが丸ごと裏返り、昨日下着屋で調達したばかりの黒いレースの下着がお見えになっていた。自分でも綺麗だなーと思う、スレンダーな鼠蹊部が丸出しである。


(っわ!! ちょっと!! ちょっと!! 縛り方!!)


 丸見えのパンツに動揺して物音を立てたのに気がついたのか、幼い少女が振り返る。

 灰色の髪が顔にかかっており見えづらいが、人形のように整った顔立ちが不機嫌そうにこちらを見つめる。


「…………」


 何も言わずにじっと見つめてくる。じろじろと見られている。沈黙が辛い。


(あんまり見られると、恥ずかしいんですけど……!)


 俺が何とかして隠せないかと格闘する所を暫く存分に観察すると、少女は口を開いた。



「お前、恥じらいがあるんだな。……見所あるじゃん」


 と、ニタリと邪悪に笑った。紅い目を前髪の間から光らせながら、こちらににじり寄ってくる。


「ひいっ!?」

 恐怖に悲鳴を上げてしまう。とても幼い少女のする顔では無い。

(身の危険を感じる! 二重の意味で!)


「素材にしちゃおうと思ってたけど気が変わった。お前、あたしの人形になれ」


「っ!」

「ん? あれ?」


『敵意を感知した為、スキル【アベレージ】が発動しました』


 脳内にアナウンスが鳴り響く。

 と言うことは、何かしらの攻撃をされて、反撃した……筈だが。


「お前、何か変な技を持ってるんだな。身体がくずずずれれれ てク   の」


 ぐしゃ、と崩れていった。部品がバラバラになる様に。少女はあっという間に小さなガラクタの塊になってしまった。


「う、うわ……」

 自分に危害を加えようとした人物とはいえ、人が目の前で崩れていく光景に青ざめてしまう。

(この少女が居なくなったら、俺はこのマグマの上で宙吊りになったままなのか……!?)


 周りを見渡すと、改めて眠ったままのキラの姿が目に入る。


「キラ! 起きて! 一緒にシオさんの所に帰ろう!」


 声をかけるがびくともしない。そもそも本当に眠っているのだろうか。まさか、死んでるんじゃ……!?


「全く、久しぶりにスペアを引っ張り出したぞ。洋服が焦げちゃったの」


 後ろから少女の声がした。


「お前への攻撃は反射される、でもお前自身は雑魚だ。この部屋へ連れ込んだ時に熱さで気絶する程度には」


 シャキ、と手にした大きな鋏を鳴らす。


「ならばお前を取り巻く環境を変えてしまえばいい。お前を吊るすロープを切ってしまえばいい。そうすればお前はその煮えたぎる溶岩に落ちて死ぬ。そうだよね?」


 何と言うことだ。このスキルの弱点が最悪のタイミングで発覚するとは。確かに、発動する際のアナウンスは敵意を感知した為といつも言っていた。敵ですらない、ただの物や現象にはどうしようもない。


「……っ! ま、待ってください! 話し合いましょう! 俺はキラを探しにここに来ただけで……!」


 俺は取り敢えず対話を試みる。俺はまだ何もしてない! スキルが勝手に発動しちゃっただけなんです!


「キラ。……お前、キラの、その……友達、なの?」


 少女は鋏を手にしたまま、もじもじしたように聞いてくる。出会った時にも聞かれたな、これ。


「えっと、どうなんでしょうか……? と、友達。友達………………が居たことがないので、正直分からないです…………」


 悲しいかな。ぼっち歴20年、友達が居ない人間には、新しく出来た人間関係を友達と称せる程の勇気も経験値も無いのだった。


「えっ。そ、そうなの……? 人間にも友達居ないヤツいたんだ……。えっと、ごめんね……」


 少女はそう言って鋏をジャキジャキと鳴らしながら謝ってくるが、心なしか嬉しそうだ。馬鹿にされてる!?

「あ、あのね、違うんだよ。あたしも友達いないから嬉しくて、あっあっ違うの!お前に友達が居ないのが嬉しいんじゃなくてあたしと同じのがいたんだっていうのが嬉しいんだからね!」


 ノンブレスで弁解してくれた。何か、居ないのが分かるというかシンパシーというか……。複雑な心境である。


「えっと、うん。じゃあこうしよう。あたしと友達になってくれたらマグマに落とさないし、縄も解いてあげる。それで」

「なります!!」


 食い気味で答えてしまった。

 人生初の友達が出来ました。や、やったー!



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