20話
今日で投稿し始めて1ヶ月になりました!という喜びを前書きでシェアしています。わーい!
「うぬぬ……! お前、もうちょっとあっちへ行くのだ」
「グルルルル……」
ベッドの上で睨み合う犬猫二匹。ホテルの自室に戻った俺達(主に一匹と一人)は、ベッドの並び順で喧嘩していたのだった。二人とも俺の隣がいいと譲らない。
「俺の左右で眠ればいいじゃないですか」
「ワウッ! ワンワン!」(訳:そういう問題じゃない!)
「近すぎるのだ! こいつはもっと離れて寝るべきなのだ! 敵であるぞ!? いつ寝首をかかれるか!」
「そんな事しないわよ! ただ監視してるだけだわん!」
部屋の扉がバン! と開き、漢太郎さんが言い合いに参加してくる。
「あ、おかえりなさい」
「ただいまだわん! こんなに優しくて可愛い兎立織くんを困らせちゃだめわんよ、私達に隣を譲るわん!」
「いーーーやーーーなーーーのーーーだーーー!!!」
キラと漢太郎さんって、仲が悪いのかな……。
「そんな事ないよ。キラと会話が続いてるって時点で、相手の事を認めてるって事だから。あれは戯れてるだけだよ」
「なるほど……?」
キラ飼育検定1級保持者の言う事なのだから、そうなのであろう。俺は二人を差し置いてベッドに倒れ込む。
風呂上がりに着替えていた際、下着に目をつけられてしまい一悶着があったのだ。やれ無くてもしないのはダメだとか、見えてもいい奴を使いなさいとか、せめてパッドを当てなさいとか、めちゃくちゃに怒られてしまった。だって知らなかったんだもの! 仕方ないじゃん! こんな時間から下着屋へ連れ回されたり採寸されたりとで非常に疲れてしまった。
俺は横になると、大きく息を吐く。ふかふかで大きいベッド、肌触りのいいシーツ、何かいい匂いのする部屋(匂いの出所はおそらく同居人達である)。今この瞬間だけならば、俺は人生で一番幸福な時間を過ごしているのだろう。
「あー……。ベッドきもちいい……」
眠気が襲ってくる。二人の言い合いも遠く聞こえて、いよいよ眠ってしまおうとした時。
ピピピ ピピピピッ! ピピピ ピピピピッ!
と、けたたましい音が部屋中に鳴り響き、びっくりして目が覚めてしまう。
「……っうわ! な、なんの音ですかこれ!?」
キラ達は落ち着いた様子で端末を取り出す。それを見て、俺も音の出所が自分の枕元に投げた端末から響いているのだと理解する。成程、人数分の端末が同時に鳴ったからあんなに煩かったのか。
「ふむ、これは……」
「チーム戦、ね。これは戦況が動くんじゃない?」
「わんね」
俺も端末を手に取って画面を表示する。
『アイドルの皆さんへ重要なお知らせ。※必ず目を通してください。
裏地球にご参加のアイドルの皆様。日々ご健勝の事と存じ上げます。
さて、本題ですが明後日よりライブ形式をタイマンから3人同士のチーム戦へと変更いたします。これは強制参加となり、2日後までにチームを組んでいないアイドルは強制的に知名度が0になります。チーム組みにお困りの方はマッチングシステムも合わせてご利用下さい。皆様の益々のご健闘をお祈り申し上げます。
裏地球運営本部より 本部長 犠王ノ宮』
な、何なんだこのメール……? チームを組めとか、勝手にお祈りを申し上げられてしまい心にダメージを受ける。ちくちくしてくる言葉だ。
「はいこれ、チームの申込用紙と新しいパンフレットね」
そう言って漢太郎さんは紙を二枚手渡してくる。
『最高の仲間と一緒に頂点目指そう! チャンピオンになったチームには本部長への挑戦権を進呈!』
なんていう、熱い言葉が並んでいる。青春っぽい展開だけど、そういうノリはいまいち苦手だ。……三人チームか、俺はキラとシオさんか漢太郎さんと組む事になるのかな?
「じゃ、私明日の朝から書類配りにあちこち回らないといけないからもう寝るわん。兎立織くんの隣もーらい」
ぽすん、と漢太郎さんが隣に倒れる。
「チーム戦かー……。チムメンならもう3人揃ってるし、別にいいやなのだ。我も寝るのだ」
キラも争いに興味を失くしたのか空いている隣にぽすん、と倒れ込む。先程までの勢いは何処にいったのか。二人とも本当は気が合うのか……? いや、とにかくもう眠りたい。
「キラがそう言うなら……。おやすみなさーい」
「電気消すね。おやすみ、皆」
シオさんが電気を消してキラの隣に眠る。子犬もいつの間にか俺の脇あたりに陣取って寝息を立てていた。
そうして、波乱の3日目もようやく終了したのだった。
翌朝。
漢太郎さんは既に起きたのか、ベッドには子犬だけが残されていた。『監視役』と書かれた首輪をしている。くうくうと寝息を立てる子犬をそっと撫でてやる。ちくちくとしてタワシみたいな毛並みだ。こんなちくちくなら大歓迎だな、と一人で笑う。
(漢太郎さん、本当に多忙な人なんだな)
ふと、社畜の二文字が頭をよぎる。いやいやそんな、まさかな……。
俺がそんな事を考えながら、だらだらと起床を拒んでいると隣のキラがガバッと飛び起きる。充電が完了したようだ。
「んぁあ〜! よく寝た起きたのだ快眠なのだ! 早速昨日の紙書いて出しちゃうのだ〜」
そう言って貰った申込用紙にカリカリと名前を書き込んでゆくキラ。既に起きていたらしいシオさんがキラの書いた書類を覗き込む。
「キラ。僕は皆とチーム組めないから、名前書いちゃダメだよ」
「え?」
カラン、とペンが落ちる音がする。
「あ……」
キラは固まって、暫くすると小さな声でまた動き出す。
「そう、であったな。そうなのだ。すまぬのだ、うっかりである」
「キラ?」
「我、ちょっと外に出てくるのだ」
「あれ、えっ? ちょっと……?」
キラはそそくさと部屋を出て行ってしまう。
「兎立織くん、ごめんね。キラに着いていってあげて欲しい」
シオさんも何だか申し訳なさそうにしている。二人の間に何があったんだろう。
「わ、分かりました。……キラ、待って! 俺も行くから!」
部屋を飛び出してキラの跡を追う。が、見当たらない。見失ってしまった様だ。
「はぁ、はぁ、はぁっ……! キラ、寝起きなのに早すぎるよ……っ! 息がくるしい……」
体力の無い俺は半ばでへばってしまった。どうしよう、キラの行きそうな所とか、全然検討も付かないし……!
「ワウッ!」
いつの間にか起きていた子犬が俺について来ていた。何かを伝えたいように俺の靴の紐を引っ張っている。
「ワウーン!ワンワン!」
「もしかして、キラの居場所が分かるの?」
「ワン!」
そうだと肯定するように鳴くと、子犬は俺を先導する様に走りだすので追いかける。キラ、何処へ行ったんだ……!?




