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14話



 Sホール ステージ裏にて。


 俺は一人、ステージ裏でライブの支度をしていた。


「あれ、この道具ってどうやって使うんだ!? メイクってどうしたらいいの!?」


 ステージ裏には化粧道具や三面鏡が揃っており、身だしなみを整える場が用意されていた。

 だが、俺はお洒落のおの字も知らないただの男子大学生だ。以前はシオさんが全て行ってくれていたが、今は周りに誰も居ない。


「リボンも上手く結べない……! どうしよう、このまま行くしか……」


「兎立織くーーん! ライブ始めるよーーーっ!」


 ステージの向こう側から漢太郎さんが叫んでいる。

もう始まるのか!? ええい、ままよとステージへの階段を駆け上がった。




 階段を踏み抜けると違和感に気づく。

(ん? 今までのステージと何か違うような……)


 ステージの上は控えめの照明で照らされており、背面のモニターには『かんたろーちゃんの新人研修⭐︎with仙下谷兎立織ちゃん』とテロップが浮いていた。

 

 観客席の方を見遣ればサイリウムはオレンジ色と黒色で統一されており、服装もオレンジと黒の人が多かった。


 漢太郎さんは既にステージに上がっており、俺の姿に気づいたようで声がかかる。


「来たわんね。……んー? ちょっと身だしなみが整ってない気がするわん。触るわんよ」


 そう言って俺の衣服に手をかける漢太郎さん。衣装を整え、リボンを結び直してくれた。難しい顔をしながら、俺の髪の毛も触ったり整えたりしている。


「お化粧はしてないわんね。ここに立つようなアイドル達は皆顔が可愛いから、下手な化粧で台無しにするよりはすっぴんの方がマシわんけど……。舞台用の化粧は必要だわん。後で着付けとメイク講座もやるわんよ。今はこれでよーし!」


ポンポンと肩を叩かれる。


「あ、ありがとうございます……?」

今から戦う相手なのに随分と優しくしてくれる漢太郎さん。もうステージの上だというのにラフなやりとりだ。


 パン! とスポットライトが当たり、会場の雰囲気が引き締まる。


「ごほん! かんたろーちゃんのわんわんファンクラブのみんなー! そして兎立織くんファンのみなさま! お待たせしましたわん!

これからエキシビションマッチ、新人アイドル研修を始めるんだわん! 応援よろしくなんだわん♪」


「うおおおおお!!!」


 観客席から歓声が上がる。


「かんたろちゃーーん!!! 待ってたよーー!!」「今日も最高に可愛いーー!!」「俺の事も逮捕してくれー!!」「ワォーーーン!!」


オレンジ色の法被を着た人達がクルクルとサイリウムを振る。どうやら漢太郎さんのファンらしい。……わんわんファンクラブ?


「りおりーーーーっ!! ライブ待ってたよー!」「研修頑張れーーっ!!」「すっぴんのりおりー、イイな……」「応援してるよーーー!!」


 黒っぽいを着た人達も俺に声援を送ってくれる。もしかして、これが俺のファン……!?

(わー! うわー!! 俺の名前、覚えてくれたんだ……! 照れちゃうけど、すっごく嬉しい……!)


 俺は照れ笑いを浮かべつつ、応援してくれる皆に手を振り返す。


 ステージの向こう側の人達は、現実ではどんな人達なんだろうか。何をしていたんだろうか。どんな生活を送っているんだろうか。

 沢山の人達が黒いサイリウムを振ってくれている。声援を送ってくれる。ここに来る前の自分では出来なかった、誰かとのコミュニケーションに感動しつつ、このライブも精一杯頑張ろうと手をぎゅっと握った。



「このライブについて説明するわんよ!

これは新人研修の一環として行われるライブわん。エキシビションマッチの為、敗者の認知度喪失と存在消失は無いんだわん。皆安心してアイドルを応援するんだわん!」


(ん……? 認知度喪失? 存在消失!?)

 なんか、穏やかじゃない単語が聞こえた気が。


「今回のライブはランダムではなく、それぞれのファンの中から観客が選ばれているわん。

説明はまた後々やるからさっさとライブ始めるわん!ミュージックスタート! だわん!」

(急だ!?)


 音楽が流れ始める。これは聞いたことの無い楽曲だけど……?

 漢太郎さんがステージの中央へ駆け寄る。


「私のソロから始めるんだわん♪ 前のライブから空いちゃったからやりたくて待てなかったんだわん。マジすまんのだわん!


わんわんわんわん!」


 そう言うと、漢太郎さんは観客へと掛け声を送る。


「うおおおっ!!」「わんわんわんわん!!」


 観客からも応援の声がかかる。ファンの人が集まっているだけあって、応援の熱が濃い……!


 漢太郎さんは前奏に合わせて踊っている。いろんな音が早いテンポで鳴っている、おもちゃ箱の様な楽曲だ。これを電波系と言うのだろうか、カワイイ路線だ。


「〜〜♪」


 早い曲調だというのに息を切らしていない。ハードな動きと歌唱にも関わらず、踊りの節々からは可愛く魅せるという意識が伝わってくる。絵顔を絶やさず、観客へアイコンタクトを取っている。


(すごいパフォーマンスだ……! あっ、今のターンの締め方可愛いな、俺も真似しよう)


 宣言の通り、漢太郎さんは手強い相手のようだ。これは気合を入れてライブしなくては……!



「宇宙へジャーンプ!」


 漢太郎さんは掛け声と共にサビで大きくジャンプする。

「「「ハーイ!!」」」


 それと同時に観客達もジャンプをする。

 漢太郎さんも観客達も皆、ライブを心から楽しんでいる。会場が一つになったかのようだ。

(……感心してる場合じゃないな、俺も頑張らないと!)


 漢太郎さんはくるりと回るとポーズを決める。ソロ曲が終了した様だ。


「ワォーーーーーーーーーーン!!!」

「うおおおおおお!!!!」「最高ーーー!!!」「ありがとおおおお!!!」


「みんなーー!! 聴いてくれてありがとっ! 次は兎立織くんのライブだわん!」


 次は俺のソロ曲だ。

 会場のボルテージは高まっている。俺も! この熱に応えるんだ!

 ファンの期待に応えるべく、俺はステージの中央へ進んだ。


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