12話
2部開始しました。隔日投稿の予定です。宜しくお願いします!
目覚めたら、知らない場所に居た。
薄暗い辺りを見渡せば、一面の汚れたコンクリート。身体の上には薄汚れた布が申し訳程度にかけられており、身じろぎすれば段ボールで出来た敷布団がカサカサと音を立てる。
目を閉じたり開いたりして暗闇に慣れるのを待つ。一瞬夢かとも思ったが、冴えて来た目と感覚が現実だと教えてくれる。
慣れた目で再度辺りを見回してみる。
周りはボロボロで汚い。目に入る生活備品はどれも質素で、窓には鉄格子が嵌められている。ちなみに扉にも鉄格子が嵌められていて、俺の手首にも手錠が掛けられていて……?
「監獄っ!?」
びっくりして飛び起きた。ガシャガシャと手錠が音を鳴らす。
昨日は確か、ホテルの自室で3人並んで寝たはず。キラとシオさんは何処に?
テッ、テッ、テッ、テッ…
辺りの様子を伺っていると、プチプチとした小さい音が牢の外から聞こえてきた。
何かが、こちらに近づいてくる?暗闇に目を凝らすと、小さな影が動くのが見える。
テッテッテッテッ…
ホントに小さいな…。膝下くらいの。丁度、小型犬くらいの。
でも犬ってあんなに…足は沢山付いてないよな?物陰は足が小刻みに連続して動いている。多足の虫を連想して震えてしまう。
まさか巨大なダンゴムシ?それとも蜘蛛?いやいやいや…そんなのが目の前に居たら怖すぎてどうにかしてしまう。
俺が不気味な影に怯えていると、小さくて大きい影は俺に声をかけた。
「アンッ!アンアンッ!ワフ!」
―――――――――――――――――――――――――――
「犬で良かった〜〜〜〜!!!!」
俺は足下にじゃれつく犬を抱っこして撫で回していた。なんとこの犬、足が沢山生えている犬だった。虫とかじゃなくて本当に本当に良かった…!
「ハフッ、ワフッ、スンスン…。ワフッ!」
犬は俺の上に乗り、その沢山の足を活かして俺にしがみついたり、服の上から掘る仕草をしたり、足踏みをしたり、体重のかかった肉球を押し付けたりしていた。弄られているようでくすぐったい。
(やっぱいくら美人でも女の子に囲まれるより、犬と触れ合ってる方が癒されるし性に合ってるかも…)
なんてニヤけながら謎の犬と戯れていた。
「ワフワフ、ごほん。キミは私の姿を見ても逃げないんだねぇ。それどころかこんな熱烈に歓迎してくれるなんて。地球人っていうのは本当なのかな?」
あれ?声がした。犬の方から。それも人間の。
驚いて犬の顔を見つめる。
「キラ一行の新入りっていうから調べてみたけど、危険度も低そうね。おめでとう、キミは釈放なんだわん!」
そう言うと、犬はポンッ!と音を立てて煙に巻かれる。ドサッ!
「うぶっ!」
何かが上から覆い被さり、押し倒されてしまう。むぎゅっ。
…この感触は、昨日散々触れ合ったような。
恐る恐る目を向けると。そこには、やはり美少女が俺の身体を押さえつけている現場があった。視線がガッチリと合う。顔が近い!
「申し遅れたけど、私の名前は漢太郎。美少女アイドル兼裁定者!もとい宇宙警察犬なんだわん♪」
「漢太郎!?女の子アイドルなのに!?」
「本名長いから営業名だわん。アイドルは初見のインパクトが大事なんだわん。あと本当は男だわん」
こ、この美少女も元男…。いや元オス犬…?
目の前の女の子はピンクブラウンの髪を2つに束ねて、長めのツインテールにしている。服装もザ・アイドルといった感じで、日本にもこんな子居そうだなという印象だ。
「ほらさっさと立つわん。キラ本人にも話を聴かなきゃいけないんだから」
そう言って牢の鍵を開ける漢太郎。何処かに行こうとするので急いで着いていく。まだ手錠を外してもらっていない!
「キラ…!?そうだ、キラ達は何処に?俺は何の目的で誘拐されたんですか!?もしかして次の対戦相手の方ですか!?だから有利に立つ為に…とか?」
「キミはホントに何も知らなそうだねぇ。私からすれば、どうしてキミがキラのような奴と手を組んでるのかが疑問だわん。地球人まで引き込んで、また何か悪巧みしてるのかと思ったけど、双方真面目にアイドル活動に取り組んでるみたいだし?」
キラの事を悪く言われてムッとする。
「何も知らないのはその通りですけど…!質問に答えて下さい!俺やキラが何をしたって言うんですか!?」
「そりゃあ元の世界で宇宙警察にしょっぴかれるような悪い事を沢山。あと裏宇宙での規約違反の数々。キラは目的の為なら手段を選ばない、かなりの問題児だったわん。私達警察は手を焼いてたんだわん。
まぁ今はデカめのペナルティを食らって大人しくなったけど、それ以前の悪行の観察処分中だから。私には報告書をまとめる義務があるわん」
「違反行為、悪事、ペナルティ…?観察処分中?」
俺は首を傾げる。
「つまりキミが拉致監禁されたのも、キミの相方の素行不良のツケなんだわん」
「キラがそんな事…!」
……いや、しないとは言い切れない。行動がアグレッシブだし、結構強引だし…。しょっ引かれるのに慣れてるって言ってたし…!
曇っていく俺の表情を見てうんうんと頷く漢太郎さん。
「もしかしたらキミは騙されて手を貸してるんじゃないか、って思ってたわん。もしキラの悪事を知ってたら私に報告するんだよ」
廊下を進むと明かりが付いている牢が見えた。
こちらの外して足音に気が付いたのか、向こうからも
「ここから出すのだーーーーーっ!!!!!」
と、キラの声とガシャガシャと暴れる音がする。
「はいはい。釈放だわんよ」
そう言って牢を開け、俺達の手錠も解除していく漢太郎さん。
「良かった。兎立織くんも無事だったんだね」
「シオさんも!2人とも無事みたいで良かったです!」
シオさんはキラのように手荒な待遇は受けていないらしく、手錠もかけられていなかった。
「我は何もしておらん!冤罪だ冤罪!」
「うーん。怪しい所なんだけど、証拠が無いからには仕方ないわん。地球人が裏地球に行く分には、宇宙のルール的に問題ないし…。いまはそういう事にしといてやるわん」
キラが漢太郎さんに噛み付いている。どっちが犬だか分からない。
…キラは、本当に悪い人なんだろうか。もし、もしそうだとしても。何でもない自分に手を差し出してくれたのはキラなんだ。できれば俺は2人を信じたい。もし悪い事をしていたとして、それが手を離す理由になるのだろうか。
「釈放したけどまだキラの疑いが晴れたわけじゃないからね。暫くはキミたちの事を付きっきりで見張るから、宜しくだわん!
ちなみにホテルも同室に変更したわん。逃げられると思わない事だわん」
も、もう一名同室者が増えてしまった…!




