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夜。  作者: K猫
1/5

家出



 吐いた息はまだ白くなるほどではないが、薄着だと十分風邪をひいてしまいそうな紅葉がはじまってきた頃の深夜1時ごろ。

空気が気持ちよかったので徒歩数分のコンビニまで歩いていった。

 

そこに深夜のコンビニの前という場には似つかわしくない人影がしゃがみこんでいた、それもなにやら見覚えがある。

人違いということもあるし、誰かを待っているだけの可能性もある、とりあえずコンビニに入ってコーヒーを買って出てきたが、中に客もいなく動く気配もない。

コーヒーを カシュッ と空けひと口ふた口すすりながらすこし考えた末



「……おい」

「……」

予想はしてたが返事はなかった


「…おーい」

「……」

「…」

返事はやはりなかった


ピトッ

「ッ⁉︎」


少しぬるくなったホットコーヒーでも十分に驚いたところをみると、どうやら本当に聴こえてなかったらしい。


「なにやってんだお前、こんなとこで、こんな時間に…」

見間違うわけもない、整い過ぎてると言っても過言ではない、乃木坂の齋藤飛鳥のクールで綺麗な要素を生意気なかわいさに変えたような目鼻立ち。天使の輪っかが出来ている綺麗なさらさらの黒のポニーテール、キメの細かい雪国育ちのような白い肌、最近何の心境の変化か着はじめたやけに丈の短いスカートとお気に入りであろうカーディガン、俺の勤める学童の女の子だ。


「小学生がひとりでそんな寒そうな格好でいる時間じゃないだろ、家の人と、か…」

そこで気がついた、目の周りが明らかに赤く少し腫れている、気づかれたことに気づいたようでまた顔を伏せてしまった


「……」ポリポリと頭をかいた後大きくとため息をついたあと前にしゃがんだ


「なにかあったのか?」

「………」


とりあえずなんか飲んで落ち着け、奢ってやるから

といっても反応はない

「なにがいい?買ってきてやるから」

「……」

「なんだ?飲み物じゃ不服か?あんまたかんなよ、貧乏人なんだら、何がいいんだよ?」

「……」


コイツ……ッ

普段わりと饒舌のクセにダンマリを決め込んでやがることにすこしだけ腹が立ってきたのでちょっといじめてやろうと


「あのさ、本来なら警察に届けるとこなんだわ、ただ立場上というか出来ればそれは避けてやりたいんだよ。せめてなんか言ってくれよ?まじで警察に電話すっぞ?」

「…」


ダメだこりゃ、とスマホを取り出して警察にかけるそぶりをみせると


「……っでいい」

「…ん?」


やっとしゃべった


「…れでいい……」

「あ?なんて言った?」


車の音もあるとはいえ声が小さすぎる


「そのコーヒーでいいっていったの!!」

「ッ!!……急に耳元ででかい声出すなや……」


これでいいってもうぬるいし飲みかけだしだいたいお前普段から間接ちゅーはウンタラカンタラ言ってるじゃねえか──といってる間に「うっさい!」と強奪されてグビグビと一気飲みされた


「うぇニッガ……」

「いや、おれコンビニのブラック飲めないしカフェオレで微糖だから苦いってほどじゃないだろ…」

「うるさいなぁノドからからだったの、そんなんだからモテないんだよ」


ハイハイ

とやっといつもの調子に戻ったようで


「んで、なにがあった?」

「あーお腹減ったなぁ」

「お前調子乗んなよ?」


食わせてやってもいいけどとりあえず事情を話せ

といっても


「そんなこと言ったって寒いしお腹空いてるからちゃんと話せないよ」

「寒いのは知らんわ…、とりあえずこれ着ろ」


と着ていた上着を着せてやろうとしたら


「えーやだよユウヤが着てたのなんてくさいもん」

「お前いっぺんゲンコツ喰らうか?」


はぁー〜…… と大きくため息をつき

「じゃあどうすんだよ?こんなクソ田舎じゃファミレスはおろかマックですら0時で閉まってるぞ?コロナ騒動でコンビニのイートインも使えないし」

「ユウヤん家でいいじゃん、近いんでしょ?」


えーっと、確かに以前に近くだと話したし歩いてくるくらいだからそれくらいは想定できるだろうけど


「あのね、それ一応〝誘拐〟になる危険があるんだわ」

「誘拐?自分でいくって言ってるのに?」

「自分からいきたいって言いだしてもだ」

キミの保護者が訴えたら高確率でなるね、まぁキミの親はそんな人じゃないのは知ってるけど

しかしキミみたいな容姿〝は〟端麗な小学生連れ込んだなんて知れたら仮に保護者が庇っても世間が社会的に抹殺にくる可能性も高いんだよ


「そんな美少女なんてほんとのこと面と向かって言うなんて今日はやけに素直だね〜照れるじゃん」

「……」


コイツの耳はどんだけ都合よく出来てるんだ…


「ということで家は不可です」

「じゃあ車は?車ならセーフじゃない?」

「車…?いや、どうだろう……普通にアウトじゃね…誘拐の定番アイテムだし……」

「じゃあここまで車持ってきてよ、コンビニの前なら防犯カメラもあるから大丈夫じゃない?」


そういう問題か?

と思いつつまぁそれならカメラに映るように駐車して助手席に座らせとけば無実を証明できるか

と思ったが


「ちょっと待て、俺が車を持ってくる間お前はどうするんだ?」

「?普通についていくけど?」

「いや家割れるじゃねえか…」


なにか都合でも悪いの?

とキョトンとしてるのが演技でなかったら普通にこわい…いや色んな意味で悪用するとまでは……思うなコイツなら……


「えっと、すぐもってくるしコンビニの中で待って…」


いや…この時間に数分とはいえ小学生、それもコイツをコンビニに置き去りにできるわけないよな……


「いや…なんでもない、すぐそこだからとりあえず来い」

「キャー誘拐される〜‼︎」


勝手にスタスタ歩きはじめた後ろを急いで

「あーもう冗談だって待ってよ」

と小走りでついてきた



──────



「わーほんとに近いね、わたしの家の1/3くらいの距離かな」

「お前それ以上無闇に個人情報晒すな…」


信用してない人に言ったりしないよー

と言ってるがそれでもだよ…と心で唱えながら

「……ん?まてよ、こっからどうやってコンビニに行くんだ??」

「え?なに言ってんの?車に乗ってくんでしょ」

「あーそっかーなるほどー」


ってならねぇからな!?


「ん?他にどうするの?」

「……」

コイツ絶対確信犯だろ……


「…よし、お前こっからコンビニまで歩け」

「……は?」

「おれが並走してやるから、大丈夫、不審者は80メートル走れば諦めるという統計がある、それだけあれば車止めてから走ってもおれの脚なら追いつける」

「え……ホントにこの時間にこんな道小学生美少女ひとりで歩かせるの…」

「ひとりでコンビニの前にうずくまって泣いてたガキがなに言ってやがんだ」

「泣いてないしっ!てかヒドい…こんな教育者、いや大人、いや人間いるの……!!」

「えーっと○○署の番号はーーっと」

「わーー!!ごめんなさいごめんなさい行きますちゃんと言われた通りにしますから!!」

「こんな時間にそんなセリフデカい声で言うなっ」


シーッ‼︎

とジェスチャーして素で出た声らしかった口をおさえる[[rb:彩夜 > さや]]

本当になにがあったかちゃんと聞いてやらないとダメだな


あとおれは別に教育者ではない。



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