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㉚ 病院行って来た


「病院行ってきた」


 愛花が俺の部屋でクッションを抱えながら、晴れ晴れとした顔で教えてくれた。午前中、授業を休んで行ってきたらしい。おばちゃんの付き添いのもと問診した結果、記憶に関しては感情面に関わることが抜け落ちているのかもしれないと言われた。念のため、頭のCTも撮ったけど、異常なしだったそうだ。


「そうか。俺、実は不思議だったんだ。記憶ないはずなのに、難しい言葉知ってるし、日常生活に支障ないみたいだったから」

「それアイカも不思議だった。記憶はないのにとくに困ることがなかったから」


 愛花が「これいい?」と言って、この前とは違う工芸茶の茶葉を手に取った。結構根幹に関わるような会話内容のはずなのに、片手間に話す愛花にふと疑問に思う。


「サラッとしてんな?」

「何が?」

「うーん。記憶に関してのことは、すごく繊細なことなんじゃないかなーって、なんとなく思ってたからさ。まさか、茶葉選びながら聞くことになるとは思ってなかったって言うか……」

「そっか、そんな風に考えてくれてたんだ……アイカはどっちかっていうと安心したんだ」


 どんな記憶が残っていて、どの記憶が抜け落ちているか今まで分からなかったから、自分の記憶だと思っているものの中に、自分が勝手に作り上げた記憶が混ざっているのではないかと不安もあったらしい。


 医者に「感情面に関わることが抜け落ちているのかもしれない」と言われたことで、自分の残っている記憶に自信が持てるようになったと、にこやかに話してくれた。「だけど……」と表情を曇らせる。


「だけど、『感情面が抜け落ちている』ってことは、やっぱりアイカは前のアイカと違うのかなって」


 おばちゃんと三人で卒業式をした日の愛花の手紙の「アイカはお母さんたちが知っているアイカですか?」という言葉を思い出す。ずっと不安だったのだろう。すぐに思いついた「俺は今の愛花も前の愛花も好きだけど」という言葉を飲み込んだ。


「んー。環境が人を作るっていうから、そんな気にしなくてもいいと思うけど。俺と弟も性格は確かに違うけど、考え方の核みたいなのは似てるなーって思うし。それに、卒業式の時おばちゃん『ずっと私の知ってる大事な愛花よ』って言ってただろ? 前の愛花と同じじゃなかったとしても、おばちゃん達は愛花を大事に思ってて、愛花も同じように大事に思っている。それが一番大事なことだと思う」

「そうかな……」

「そうだと思う。もし、自分に自信が持てなかったら、おばちゃん達に自信を持つってどうだ?」

「どういうこと?」

「おばちゃん達が娘を大事に思わない親なはずがないって」


 「それならできそう」と愛花が微笑む。そもそも、記憶があろうとなかろうと家族じゃない俺がくっついているんだから、そこにも自信を持ってほしい。じゃないと俺が悲しい。俺が傍にいることが愛花の自信になるくらい愛花の大事な人になれたらいいのに。


 愛花はクッションを絨毯の上に置いて、手に取った茶葉を紅茶ポットに入れて、ケトルのお湯を注いだ。緑色と茶色の混じったような色の葉っぱの上に山吹色の菊みたいな花が咲いた。愛花は茶葉が開いていくのをうっとりと見つめて、スマホでカシャリと撮影した。


「この花が開くところ録画できたらいいのに」

「できるよ?」


 俺は愛花にカメラからビデオに切り替える方法を自分のスマホを使って教えて、愛花に動いてみるように伝える。愛花はヒラヒラと手を振って「これでいいの?」と言った。撮った動画をすかさず保存して、「ほら」と愛花に見せて、愛花に教えるために撮ったのだと印象づける。


 俺は愛花コレクションのためなら、どんなチャンスも見逃さない。浴衣姿を取り損ねたあの日に固く決意したのだ。そして何度でも言おう。削除したくないんだ、俺は。


 スマホの画面の中で、愛花が手を振って「これでいいの?」と言った。愛花は興味津々で「ここをこうして……こうかな。ハルキ動いてみて」と俺に指示を出した。俺は「動いてまーす」と言いながら手をヒラヒラと振った。


 スマホで俺の動きが再生された愛花は満足そうに頷く。俺のスマホに自分の動画が保存されたことに関してなんとも思っていないようだ。良かった。


「あ、そうだった。それでお医者さんがね。暴露療法するなら、必ず誰かと一緒にって言ってた。外出できないと将来困るだろうから、克服できた方がいいって。自分で考えてもう実践してるなんて偉いね。って褒めてくれた」

「そうか。素人が勝手に、なんて言われたらどうしようかと思ってた……」


 ホッとして思わず不安を吐露してしまう。愛花がむぅっと頬を膨らます。


「ハルキはアイカの我儘に付き合ってくれてるだけなんだから責任感じなくていいの! 感じないで!」


 俺は愛花に対して力になれない無力感を感じていたけど、愛花は俺に対して、自分に付き合わせている罪悪感を感じているようだ。それこそ感じなくていいのに。


「じゃあ、俺もしたくてしてんだから罪悪感感じるなよ。前もそう言ったろ?」

「……わかった」

「うん」


 俯いて髪の毛が顔の横に垂れて、愛花の顔が見えなくなる。俺は愛花の髪をそっと耳にかけた。もちろん自分の耳にじゃない。愛花の耳にだ。

 ……最近、時々ふいに隆の「キモい」という声が聞こえる気がするんだ。それで、気付くと自分に言い訳してしまう。隆のせいだ。


「でも、そう言ってもらえたってことは、この前立てたSPプランはOKってことだよな?」

「うん。先生にも見てもらった。段階はちゃんと踏んでねって注意もされたけど。あ、アイカの両親とみんなとのグループLIMEのこともいいねって言ってた。親世代を煩わしく思う年頃なのに、良い友達を持ったねって」


 愛花の両親とのグループLIMEは先日滞りなくできた。愛花におばちゃんの許可を取ってもらい、愛花が覚えたての知識で両親のスマホにLIMEアプリを追加した。愛花はグループLIMEの作り方を知らなかったため俺がみんなを招待した。


 隆発信なんだから、このくらい俺がしないと、なんだか悔しいからな。


 みんなが招待の承認を終えて、メッセージ画面には「亜紀です。よろしくお願いします」「隆です。お願いします」「春樹でーす」「愛花です。よろしくお願いいたします」と文字が並んだ。愛花のメッセージ内容はなんか違うような気がしたが、それはあえて誰もツッコまなかった。そのメッセージに応えるように、おじちゃんとおばちゃんの感謝の言葉が並んだ。即席SP作戦始動準備完了だ。


「先生にお墨付きをもらえるなんて、俺も嬉しい」

「愛花も誇らしい気分だった」


 ふふっと愛花が得意気に笑う。俺もそんな友達に慕われている愛花を自慢に思う。


「病院の帰りに、『ちょっと寄ってみようか?』ってお母さんに言われて、スーパーに行ってみたの。なんともなかったよ」

「そうか、よかったな」

「いつか、美容院に行って、亜紀みたいにかっこいい髪形にできるかな?」

「きっと。でも俺は愛花の今の髪形似合ってると思うけどな」


 美容院に行けない愛花の髪はおばちゃんが切っている。あばちゃんの美意識上、自分の腕前で肩より上に切ることは絶対にしたくないそうだ。だから、愛花の髪の長さは肩下から腰までの間で上下している。

 

 それにこれはこっそりと思っていることだが、俺が愛花の髪を切ってやりたいんだ。だから高校を卒業したら美容専門学校に行って美容師になりたい。隆に言うと「将来の夢まで愛花ちゃん絡みとかキモい。重い」と言われそうなので口が裂けても言わないけど。


 愛花が横座りしていた足を正座に直して俺に向き直った。


「ハルキ……これからもよろしくお願いします」

「こちらこそ」


 お互い向き合い頭をペコリと下げ合い、顔を上げた視線がぶつかり笑顔で微笑み合った。


***


 今日は愛花と図書館に行ったあと、俺の家に寄って二人で昼食を作る予定だ。両親は出かけると言っていたからいないと思うけどキッチンには弟も姿を現すかもしれない。邪魔だ。


 愛花の家に迎えに行って玄関に待つ愛花と合流する。あいにくの雨なので安全のため手は繋げない。残念だ。傘をさして会話をするが、傘に雨があたる音でお互いの声が聞こえない。


「そっち行ってもい……」

「おぅ!」


 相合傘の素晴らしい提案に食い気味に応じてしまったが仕方がない。突然のご褒美だ。俺がさしている傘に入った愛花と手を繋いだ。愛花は傘をささないことになったから片手は空いている。安全だ。


「昨日はお父さんとお母さんの休みが一緒だったから、ショッピングセンターに行ってきたの。アイカ今まで服を買いに行くことできなかったから、お母さんが買ってきてくれたものを着てたんだけど、服の種類ってあんなにいっぱいあるんだね?」

「愛花、ネット通販するのに服は見なかったのか?」

「うん。服はあったし、とくに着ていくところもなかったから必要性を感じなかった」

「そうなんだ」


 そう言えばスマホも家から出ないから必要ないって言ってたな。


「これ初めて自分で選んだの。……どうかな?」


 愛花は恥ずかしそうに自分の着ている服を見下ろしたあと、ヘヘッと笑いながら俺を見上げた。

 サーモンピンクのタイトなニットに黒いフレアスカート、黒のストッキングに黒のショートブーツといったかわいくて清楚なシックな装いだ。何を着ても愛花はかわいいけど、いつもの女の子らしい華やかな色使いの服と違って大人っぽくって、これもまた良い。


「大人っぽいのも似合うね」

「ふふっ。ありがと……。お母さんが何でも好きなもの買っていいよって言ってくれて、お父さんが好きなだけ買ってやるって言ってくれて。結局、アイカ、お母さん、お父さんの好みの三パターンのトータルコーディネートを買ってくれたの」


 あれ以降一緒に出掛けて服を見るなんてことなかったから嬉しかったんだろうな。おばちゃんとおじちゃんに次々と服を充てられて、ちょっと困りながらも嬉しそうに微笑む愛花が目に浮かぶ。


「今度またおじちゃんとおばちゃんが選んだ服も着てみせてくれな?」

「うん。着るの楽しみ」


 二人でもっといろんなところに行けるようになったら、今度は俺も選んでみたい。おじちゃんとおばちゃん達に着いて行くのもアリだ。


「そうだ。四人のグループLIMEに一応メッセージしておくな。それ見て亜紀ちゃんも誘いやすくなるかもしれないし。……大丈夫だったんだよ……な?」

「うん。なんともなかった。それで、そのままフードコートの隅でごはんも食べてきたよ。愛花に余計なものが見えないように席を考えてくれて、外食もできた」

「よかったな」


 できることが増える誇らしさと喜びに胸を膨らませているのだろう。「今度は何に挑戦してみようかな」と嬉しそうだ。


「『ちゃんと段階は踏んでね』って医者も言ってたんだろ? 焦るのはダメだからな」

「ハルキまでそういうこと言うーーーー」

「ははっ。おばちゃん達にも言われたのか?」

「うん……」


「遠回りに見えて、一番の近道って言葉もあるだろ? 俺だって愛花と色んなところ行きたい。だからゆっくりやってほしいんだ」

「……ありがとう。ゆっくりするよ」

「間違っても、朝起きたらいない、なんておばちゃん達を心配させたらダメだからな?」

「アイカ、防犯ブザー持ってる」

「そういう口答えは受け付けないからな!」

「はい」


 しょんぼりしてしまった……。だけど、大事なことだから。


「それにさ、今の段階で随分前に進んでると思わないか?」

「そうかな? アイカはなんだかもどかしい」

「それは、前に進んでるからそう思うんじゃないかな」


 俺の言葉に愛花は視線を巡らせ思案しているようだった。ハッとして「そういえばそうだ」と言う。


「前まではこんな、前に進みたいのに止められてモヤモヤすることなかった! そうだ! そうだね! 前に進んでるからもどかしいんだ」

「そう。愛花は充分頑張ってるんだから、焦らないで出来た自分を一つ一つ丁寧に褒めてやったらいいと思うよ」

「褒めていいのかな?」

「なんでそう思う?」

「だって、アイカ以外の人は当たり前にしてることだよ?」

「愛花は愛花なんだから他と比べる必要なんてない。俺が愛花なら、今の自分を大絶賛だね」


 「じゃあ、褒めとく」と、ふふっ。と控えめに笑った。


 そんなこんなで図書館にも無事着いた。もう休日の午前中は完璧にクリアじゃないか、と心の中だけで呟いた。愛花が瞳を輝かせて俺を見つめる。期待に満ちた目が眩しい。


「アイカもう、休日の午前中は完璧じゃない?」


 せっかく心の中にとどめておいたのに……。俺はねちっこい視線を愛花にぶつけた。


「アイカ……」

「……はい。『遠回りに見えて、一番の近道』。焦ったらダメ」

「よしっ」


 愛花を抑えることに成功した俺は労う気持ちを込めて頭を撫でる。

 せっかくだからと図書館内をうろつく。愛花がソファーに座り、小説を読みだしたところで俺の声は届かなくなった。暇になったので俺も適当に本を選び、愛花の横に並んで腰かけて読書を始めた。


 気付いたら時計は十一時をさしていた。言葉で呼んでもたぶん気付かないから、敢えて愛花の肩を叩く。


「愛花、帰って昼飯にしよう」

「え? もうそんな時間? いいところなのに……」

「借りていけばいいじゃん」

「……そうだね! アイカ返しに来れるもんね!」


 図書館で本を借りて、また返しに来る。それがすごく嬉しいようで満面の笑顔を見せてくれた。俺も途中になっていた本をそのまま借りていくことにした。貸出手続きを終えて帰路についた。


 俺の家に着いて二人で昼食の準備だ。愛花には「母さんのだけど」と言ったけど、俺が今日のために買った愛花用のエプロンだ。嘘ではない。初めて袖を通すのは愛花だけど、家においておけば、そのうちそうなる。


 赤のギンガムチェックのスリッパに合わせて赤色のエプロンにしてみた。愛花は赤が好きみたいだけど、持っているのは小物ばかりだからエプロンなら赤でも抵抗ないだろうと考えたのだ。と言うか、愛花からしたら俺の親のだと思っているからなんとも思わないのだろうけど。


 二人での共同作業は、簡単にバターロールサンドだ。俺がきゅうりを切って、シーチキンマヨを作る。愛花は卵サンド担当だ。「この前ネットで見て作ってみたらおいしかったの」と、鍋に酢水を作り、沸騰する前に卵を割り入れて、ポーチドエッグを作ってくれた。


 そしてレタスを洗ってちぎった。真ん中を切ったバターロールに俺はレタスときゅうりとシーチキンマヨを入れて、愛花はレタスとハムとポーチドエッグを入れてくれた。食べてみるとポーチドエッグより黄身が固めで緩やかにバターロールに浸みこみ、おいしくて食べやすかい。


 俺も今度してみようと思う。愛花の未来の主人なのだから、愛花一人に家事を押し付けるようなことがあってはいけない。カレーを作れるだけで満足している場合ではない。


 昼食を終えて、またこの前とは違う工芸茶を飲み一息ついた。今日は紅茶ポットの中にピンク色のカーネーションみたいな花が開いて、愛花は楽しそうに動画を撮っていた。


「これ、送れるんだよね? どうやって送るの?」


 動画の送信の仕方を教えると、ピコンと俺のスマホが鳴った。どうやら四人のグループLIMEに送ったらしい。「きれいだったから」とメッセージ付きで動画が流れる。隆に見られると思うと恥ずかしい……。


 いや、俺が買った工芸茶とバレなければ……! と思っていたら、「これで良かったよね?」という愛花の声と「うん、そう」という俺の声がスマホから聞こえてきた。軽く死ねる。隆には、愛花の気を必死に引こうとしている俺の水面下の努力がバレるだろう。もしかしたら、亜紀ちゃんにも。


 勘の良さそうな子だからたぶん、絶対。せめて亜紀ちゃんだけに送ってほしかった……。いや、この動画から分かることは、この動画を撮ったときに俺と愛花が一緒にいたということだけだ。大丈夫。たぶん。そう思いながらも、「必死だな」と苦笑する隆の顔が頭をよぎった。


 ピコンとスマホが鳴ってLIMEのアイコンをタッチすると、隆の憎たらしい笑顔の横に赤いマークがついていた。ハラハラしながらそこをタッチすると「必死だな(笑)」とメッセージがあった。とりあえず、orz型に項垂れているスタンプだけで返信した。俺には予知能力があるのかもしれない。


 バタバタとうるさい足音が響き、部活を終えた弟がキッチンに入って来て、ロールサンドを強請ってきた。愛花が笑顔で差し出して、お礼を言って立ったままパクリと口に入れた弟の視線が紅茶ポットで止まる。次に俺に視線を向けてニヤリと意味深に片方の口角だけ上げた。


 ……お前までそんな、全てを見透かしたような目を俺に向けないでほしい。なんだ、この怒涛にやって来る追い詰められ感は。



***



 先週から一週間経った今日、俺は愛花と仲良く手を繋いで図書館に来ていた。先週、俺が風呂に入っていてスマホチェックをできなかった間にこの予定は決定していたのだ。


 先週――夕食後にスマホチェックをすると愛花の両親を含む六人のグループLIMEの中で、俺は愛花と図書館に行くことになっていた。俺の入れたメッセージで、愛花がショッピングと外食ができたことを知った亜紀ちゃんが、愛花の両親から愛花を図書館の近くのカフェにランチに誘う許可をもらい、それなら穴場を知っていると隆が言って、更に本の返却日に合わせた来週の土曜日はどうかと愛花が日程を提案していた。


 隆は午前中部活で、亜紀ちゃんはバイトのため午後から合流する、と全ての俺の予定は隆によって決定していた。


 別にいいんだけどね……。隆の「春樹ならいつでも予定ないようなもんだから問題ないっしょ!」の文面がひっかかっただけで……。


 また二人並んで本を読んでいると愛花のスマホのバイブが鳴った。亜紀ちゃんたちとのランチの予定が遅れないようにとアラーム設定しておいたらしい。


 とても楽しみのようで、流行る気持ちを抑えられないらしい。俺の手を引っ張るように図書館をあとにした。隆たちとは図書館を出てすぐの交差点を渡ったコンビニで待ち合わせしている。


「ハルキ、早く」

「分かったって」

「こっちだよね?」


 俺の手をグイグイと引っ張って、交差点へと向かう。生き生きとした愛花にホッコリする。愛花の小走りくらい余裕で追い抜けるが、無邪気にはしゃぐ愛花がかわいいから引っ張られておく。


 歩行者用信号機の青の点滅を見て愛花が慌てて走り出す。


 横断歩道を渡る途中で、車が右折して、こちらに向かって来るのが視界の左側に映った。俺は反射的に愛花をかばうように抱きしめる。



 大きな衝突音と左肩の衝撃とほぼ同時に俺の意識は途切れた。

 

次は「㉛ 全部アイカのせい」です。

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