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第4話 漆黒騎士・ベルガモス

 ここまでが私が妹教発見に至った経緯。そのすべてだ。


 そして今回、私はまたあるキャラのガチャを控えている。

 今回の|特定のキャラが出やすいガチャ《ピックアップガチャ》で排出されるのは『漆黒騎士・ベルガモス』

 強力な全体奥義技を持ちながら、それでいて優秀な強化(バフ)スキルを持つキャラだ。

 こういう自己完結キャラは単体でも十分強いし、ほかの補助スキル持ちとパーティを組ませることで、よりその真価を発揮する。

 俗に言う人権キャラというやつだ。

 しかもベルガモスに関しては能力だけではない。

 ストーリーでの扱いは良かったし、イラストも声優も実に私好みなのだ。


 100パーセント確実にベルガモスを手に入れたい私は、妹教にすがることにした。

 妹教ならば、単発ガチャで望みの星5レアを引くことなど赤子の手をひねるよりも容易(たやす)いはず。すでにそのくらいの期待が妹教にはあった。


 だけど舞ちゃんの頭を撫でるというのは、言葉で言う以上になかなか難しい。

 さきほども背後から忍びよって頭を撫でようと試みたのだが、ご覧のとおりかわされてしまった。

 またリビングで寝ている隙にとも考えたのだが、最近は試験勉強も生徒会活動もそれほど忙しくないようで、昼寝をすることもなくなってしまった。


 ここで私たちの関係性を知らない第三者からしてみれば、「姉妹なんだから、好きに頭を撫でればいいだろう」と、そう首をかしげられてしまうかもしれない。

 本当は私だってそうしたい。

 本音を言えば、ガチャ宗教なんて関係なしに舞ちゃんの頭を撫でてやりたいし仲良しでいたいのだ。

 でもこの世には、そういうことが気兼ねなくできる関係の姉妹とそうでない姉妹のふたつがある。

 私たちは後者だ。


 昔は私のことを慕ってくれていた舞ちゃんだったが、彼女が中学生になったくらいのタイミングで、突然一方的に私と距離を置くようになってしまった。

 距離を置かれているといっても一応こちらから声をかければ返事はしてくれるのだが、向こうから話しかけてくれることは基本ない。

 なんとも微妙な関係。

 当初はそうなってしまった理由がわからず困惑した私だったが、今ではなんとなくわかるような気がする。



 舞ちゃんは姉の私から見ても美人だし頭もいい。

 加えて友人たちは、揃いも揃って少女漫画の世界から出てきたのかお前らはというくらいの眉目秀麗容姿端麗成績優秀な方々たちばかりだ。

 類は友を呼ぶ、とはよくいったものである。


 対して私はいたって平凡で、しがない地味な大学生。

 友達の数もそう多くない。それはもう、「おい、ぜんぜん類友呼んでねーじゃん」と言えるくらいに多くない。

 言わずもがな大学の食堂でご飯を食べるときは1人が基本だし、誰かと3人で並んで歩こうとすれば必ず1人だけ自然と後ろに追いやられちゃう、そういうタイプだ。

 まあこれに関しては、ソーシャルディスタンスなんて言葉が叫ばれている昨今は、ちょうどいいのかもしれない。

 私の社会的距離が人様よりちょっとばかし長いだけ。そう開き直らせてもらおう。



 とにかく私と舞ちゃんとの間には、あまりに大きな差が横たわっている。

 私が彼女に勝っているところといえば、精々身長と年齢くらいだろう。

 だがそのふたつを誇れるか? と問われれば答えは当然ノーだし、身長もいずれは絶対舞ちゃんの方が高くなる。そんな予感がする。


 そんな何もない私だからだろうか。舞ちゃんが私から距離を置くようになってしまったのは。

 きっと幼い頃は単純に姉というだけで慕ってもらえた。年齢差のアドバンテージによって、いくらか誤魔化しもきいた。

 だが成長するにつれて徐々にわかってきたのだろう。

 自分の姉はとても情けない存在なのだと。



 そこまで考えて、私はブンブンと首を振る。

 今はブルーになっている場合じゃない。

 漆黒騎士・ベルガモスのピックアップガチャは、今日の23時59分で終わってしまう。

 それまでに何としても舞ちゃんの頭を撫でなければならないのだ。

 頭の中で、某スパイ映画のオープニングが鳴り響く。

 舞ちゃんの頭を撫でるというインポッシブルなこのミッション。何がなんでもクリアしてみせよう。

 私は早速、頭に浮かんだ作戦を実行に移すことにした。

次話明日更新予定

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