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大和撫子さまのお仕事  作者: 小茶木明歌音
第一章
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可愛い弟分と妹分

閲覧と評価頂き、ありがとうございます!

拙い文章ですが、これからもよろしくお願いします!




 新入職お披露目の儀へ出かける為、水晶が準備をしている最中、紅玉や蘇芳は御社の庭で水晶の準備を待っていた。

 本日は快晴。式典を行うには、絶好の日和である。

 広い庭には紅玉達の他にも多くの神々が待機しており、良き天候に恵まれたこの日を笑顔で祝福していた。中には酒を片手に祝杯を上げている神もおり、なかなかな賑わいである。それもそのはず。何故ならば、本日この御社で育った二人の少年と少女が新たなる門出の日であり、十の御社の者にとってはめでたき日なのだ。

 多くの神々が見守る中、温かな日差しが降り注ぐ庭にて、その少年と少女がくるりと一回転し、紅玉にその姿を見せつけていた。


「先輩、先輩! 俺、変な所ないっすか? 大丈夫っすか?」

「ええ、とても立派ですよ。(そら)さん」

「ベーニちゃんっ! マリは? マリのcoordinateはNo problemデスカ~?」

「はい、(まり)ちゃんは本日もとってもお可愛らしいですわ」


 空と呼ばれた少年と鞠と呼ばれた少女は、それぞれ飛び上がって喜んだ。

 そんな二人があまりに可愛らしいと思った紅玉は、微笑みながら自分よりやや上にある二人の頭を撫でた。


 空という少年の特徴と言えば、その髪の鮮やかさだ。まさに名前と同じく空色。その髪には髪留めが二本飾られている。瞳は青と蒼が混じる美しい色合いだ。穢れ無き真っ直ぐな瞳である。にかっと笑った顔が晴れ渡る空のようで、性格の明朗快活さがうかがい知れる。幼さの残る可愛らしさと男らしさが見せ始める成長期真っ只中の少年である。その身に纏う着物は昔で言う御用聞きの格好を少し変えたものである。これは空の隣にいる鞠の手によるものだ。


 一方のその鞠は着物ではなく、軍人が着用するような真っ白な制服だ。こちらも自身の手製なのだから驚きだ。ひらりと翻る下衣は膝上丈で短いが、それを着こなせているのは鞠のその容姿がなせる技だった。きめ細やかな白い肌にスッとした鼻梁。長い金のまつ毛で縁取られた大きな瞳は、緑と淡い青を混ぜた美しい色合いの花緑青(はなろくしょう)。そして、星屑のように煌めく金の髪は編み込みまとめている。まだ十代ながらも妖精の如く美しい少女だ。手足もスラリと長く、程良く引き締まっており、その白い制服を嫌味なく着こなしている。


「それにしても、空さんも鞠ちゃんもついに入職とは……時の流れとは早いものですわ」


 紅玉が感慨深く思うのも無理はない。何故なら空も鞠も、出会った当初はまだ十二歳程だったのだ。その彼らももう今年で十六歳になり、社会人として働ける年齢になった。二人とも出生が異例の為、進学はできず、神域管理庁へ就職しか道がなかった。その為、就職試験は免除されていたが、その分紅玉や蘇芳がみっちり鍛え上げてきたので、何の問題も無い。

 その小さい頃から面倒を見てきた空と鞠が「新入職お披露目の儀」でいよいよ神域管理庁の職員となる……姉のような立場として接してきた紅玉は嬉しく思いながらも、一抹の寂しさも感じてしまう。


「先輩、しんみりしちゃダメっすよ! 俺達はこれからまだまだいっぱい成長するんっすから! まだまだ先輩に教えて欲しい事たっくさんあるっす!」

「Yeah! マリもソラも、ベニちゃんとイッショにWorkingデキルのタノシミにしてマシタ! Thank you in advance!」

「あらあらぁ」


 可愛い弟分と妹分にそう言われてしまっては、まだまだお姉ちゃん分は卒業できないようだと紅玉は思った。


「ふふふっ、ではお姉ちゃんも負けずに頑張らなくてはですね。空さん、鞠ちゃん、入職おめでとうございます。わたしからもどうぞ言わせてくださいね。改めてどうぞよろしくお願いしますね」

「せんぱーーーいっ!」

「ベニちゃーーーんっ!」


 三人はぎゅうっと抱き合い、改めて互いの絆を分かち合う。

 そんな微笑ましい光景を十の御社の神々と蘇芳がほのぼのと見守っていた。本当はそのままそっとしておきたいくらいなのだが、残念ながらこれから式典が控えており、空と鞠はまさにそれに出席する主役の一人なので、急がなければならない。蘇芳は申し訳ないと思いつつも紅玉達に声をかける。


「すまん、紅殿、空殿、鞠殿、そろそろ……」


 本当に申し訳なさそうに声をかけてきた蘇芳を三人は見上げた。


「あらいやですわ、もうそんな時間ですか。さあ、空さんと鞠ちゃんは先におゆきなさい。わたくしと蘇芳様は晶ちゃんと共に後から参りますから」

「はいっす!」

「But! そのマエに、スオーさんもイッショにHugシマショーッ!」


 鞠は蘇芳を手招きするが、蘇芳は手を挙げ、首を横に振った。


「いや、自分は……」

「Why? コレはChanceデースヨー?」

「……何のだ?」

「Oh……モーイイデース……」


 蘇芳の鈍さに鞠は呆れ顔だ。

 鞠の意図がわからず、蘇芳だけでなく、紅玉も空も首を傾げていた。

 ちなみに鞠としては、蘇芳と紅玉にお節介を焼いたつもりなのだが、世の中ままならないものである。


「あっ! 鞠ちゃん、本当に時間無いみたいっすから急ぐっす!」


 時計を確認した空が鞠の手を引いて駆けだした。


「OK、ソラ! Let's go! ベニちゃん、スオーさん、see you again!」

「それじゃあいってきまーす!」


 そう言い残し、元気な少年少女は出かけていく。それを紅玉や蘇芳、神々がその姿を見送った。




鞠の異国語はニュアンスで読んでいただけますと助かります…!

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