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大和撫子さまのお仕事  作者: 小茶木明歌音
第三章
139/346

空と先輩、そして




 研修一日目を終えた空と鞠が十の御社に帰って来た。


「疲れたっすーー!」

「I’m tired!」


 御社の玄関に足を踏み入れた瞬間、二人はそう叫びながら玄関に倒れ込んだ。


「おかえり、空」


 労わるような優しく低い声にハッと顔を上げると、そこには青と蒼が混じる美しい瞳を持つ己の父、蒼石であった。


「お父さん、ただいまっす!」

「I’m homeデース!」

「うむ、鞠殿もおかえり。二人とも慣れない地での研修は疲れただろう。よく頑張ったな」


 そう言って蒼石が二人の頭を撫でてやると、空と鞠は嬉しそうに微笑んだ。


「さあ手を洗って、食堂に行こう。紅玉殿と紫殿がすでに夕餉を作ってくれているぞ」

「ごはーーんっ!」

「I’m hungryデース!」


 ご飯と聞き、二人は急いで靴を脱ぎ始める。

 ふと、蒼石は空の前髪を上げるように額を撫でた。突然の父の行動に空は思わずキョトンとしてしまう。


「……お父さん?」

「空……何か悩みがあるのか?」


 蒼石の言葉に空は少し目を見開いてしまった。

 青と蒼が混じる蒼石の真っ直ぐな瞳が同じ色の空の瞳をじっと見つめる。優しくも、嘘や逃げを許さないといった強い意思が宿っていた。


 しかし、空は蒼石に真実を話すわけにはいかなかった。例え親であったとしても、しかもその親が神であったとしても、仕事の内容や他の御社の事情を話すわけにはいかないのだ。


 空はその意思を示すように首を振っていた。


「……心配かけさせてごめんなさい。俺なら大丈夫っすよ」


 少し無理をしているような笑顔に蒼石は眉を顰めた。

 だが、すぐに気がつく。自分では空の憂いを晴らす事ができないのだと。神の中でも竜神と呼ばれる強力な神力を有する存在だというのに……。


 蒼石は空の頭と頬を撫でる。


「もし、どうにもならなかった時は、必ず我の名を呼べ。おぬしは我の可愛い息子だからな」

「……ありがと。お父さん」


 空は己の頬に触れる大きな手の甲にそっと触れながら言った。




「おかえりなさい。空さん、鞠ちゃん」


 手を洗って、食堂に向かうと、出迎えたのは紅玉だった。


「只今戻ったっす!」

「I’m homeデース!」


 ビシッと敬礼する二人が可愛らしくて紅玉はころころと笑う。


「お疲れ様でした。研修はいかがでした?」


 その問いに真っ先に答えたのは鞠だった。


「トドロキさん、ヒッドイでーす! マリのコト、カツいでpatrolしたデース! ユラユラ、セカイがshakingデース!」

「あらあら」

「轟さん、大胆っす」

「しかも、トドロキさんオンナゴコロをnot understandデース! オンナドーシのtrouble、カイケツできまセーン!」

「め、目に浮かぶっす……」

「あらまあ……」

「Because、マリ、shoutしちゃったデース! トドロキさんのスットコドッコーイ!」


 最後に鞠は不満をぶちまけるかのように叫んだが、どことなく楽しそうであった。


 ちなみにその女心が分かっていないスットコドッコイの轟は、未だに自身の婚約者の事も思い出せていない。残念ながらスットコドッコイの汚名返上は当分先であろう。


「さあ、そろそろご飯にしましょう。お腹空いたでしょう?」

「ハーイ!」


 紅玉の一声で鞠がパタパタと台所へと向かっていく。研修から帰ってきたにもかかわらず、配膳を手伝ってくれるようだ。

 鞠の気遣いにほっこりとする紅玉だったが――。


「……先輩」


 少し真剣味な可愛い弟分の声を聞いた瞬間、思わず気を引き締めてしまった。

 空は青と蒼の混じる瞳で真っ直ぐ紅玉を見つめていた。


「……後で相談にのってもらいたいっす?」


 そう乞われて、紅玉に出来る返事は一つしかない。


「ええ、勿論ですわ」


 紅玉から返事を貰えると、空は一礼をして、鞠と同じように台所へ駆けていった。


 紅玉はチラリと少し離れた位置で立っていた蒼石を見遣る。

 恐らく紅玉と空のやり取りを見ていたのであろう蒼石は、紅玉に目礼だけすると、食堂の自分の席へと向かっていった。




 空が台所をひょいと覗くと、そこには蘇芳と紫がすでに作り終えた料理を盛り付けしているところだった。


「蘇芳さん、紫さん、ただいまっす! 次は何を運べばいいっすか?」

「空殿、おかえり」

「おかえり、空君。じゃあ、次は今日のメイン料理の豚の生姜焼きを運んでもらおうかな」

「豚の生姜焼き! 大好きっす!」


 紫に出来たての豚の生姜焼きの載った大皿を渡された瞬間、美味しそうな香りが空の鼻腔を擽った。腹の虫が鳴りそうである。


「空殿も鞠殿も、研修帰りで疲れているのだから、今日くらい手伝いを休んでもいいんだぞ?」

「俺も鞠ちゃんも体動かしている方が好きっすから」


 笑顔でそう言う空に、蘇芳は「そうか」と困ったように微笑んだ。


「ユカリさーん! マリもショーガヤキー、ハコびマース!」

「はいはーい。じゃ、これお願いね。熱いから気を付けるんだよ」

「Yeah!」


 そうして空は鞠と共に生姜焼きの配膳をしようと動き出した――。


「――マリにはハナしてね」


 そう耳元で囁かれた声に空は思わず鞠を見た。

 花緑青の美しい色合いの大きな瞳が空をじっと見つめて、可愛らしく微笑んでいた。


「マリとソラはキョーダイ――そうデショ?」


 それだけ言うと、鞠はパタパタと去っていってしまった。


 突然の事で少し呆然としてしまった空だが、同時にじわじわと喜びが込み上げてくる。


 神子管理部事務所では悔しさでいっぱいだったのに、十の御社には空の味方がたくさんいた。その事が嬉しくて、嬉しくて、堪らない。


「そ~ら~! ご~は~ん~!」


 遠くから可愛くねだる水晶の声を聞こえてきて、空はハッとしながらもすぐに動く。


「はいはいっ! 今持っていくっすよ!」




 てきぱきと元気良く働く愛息子の姿を見て、蒼石はほっと息を吐くのであった。




**********




 夕食を済ませ、後片付けが終えた後――神々や紫が入浴や寝る支度を始めた頃――紅玉と空と鞠はまだ食堂にいた。空の話を聞く為だ。


 三人分の茶を用意し、落ち着いたところで紅玉が切り出した。


「相談したい事とは何ですか?」


 空は少し俯くと言葉を紡ぎ出す。


「先輩は……神子管理部は神子様を守り支えるのが役目って言っていたから、俺も神子管理部として神子様や神様を守り支えたいと思っていたっす。でも……研修担当の那由多先輩は、神子管理部は神子様を見張り管理する立場だって言ってて……守り支えるだけは甘い考えだって……それで、ちょっと混乱しちゃって」

「なるほど……」


 あまりに純粋で可愛らしい悩みに微笑ましくも思ってしまう。尤も空本人は本気で悩んでいるようなので微笑ましいなど言ってはいけないが。

 少し困ったように微笑みながら紅玉は言う。


「社会に出れば、色んな意見の人はいます。それこそ意見が対立することなんて日常茶飯事です。那由多さんのおっしゃる……神子様を見張り管理するという事も、決して間違いではありません。実際、過去には過ちを犯した神子がたくさん居ましたから……」

「うん……」

「でも、空さんの言う、神子様を守り支えたいという事だって間違いではありませんわ。過ちを犯した神子もいれば、清く正しく生き、神子様としての仕事を全うされた方々だって多くいるでしょう? わたくしはそんな素晴らしい神子様のお力になりたいと思いますし、空さんの意見に大いに賛同しますわ。勿論、誤った道に進もうとする神子様がいるのなら、指摘して止めて正す事は必要です。神子様だってわたくし達と同じ人なのですから……完璧などあり得ませんわ」

「そっか……そうっすよね……!」


 確かに那由多の言っていた事は正しいのかもしれない。しかし、空は那由多の言い方がどうしても好きになれなかった。まるで神子が悪であるかのように言っているようだったから……。


 だけど、紅玉の言葉を聞いて、空はすっきりした。


「神子様だって同じ人っすもんね! 間違うことだってあるっすよね! そしたら、俺達神子管理部がダメだって言ってあげればいいっすよね!」

「ええ、その通りです」


 元気になった空の声を聞いて、空の憂いを晴らす力添えができた事に、紅玉はほっとした。


「俺、今度から晶ちゃんに『ご飯前にいもにんチップスの食べ過ぎはダメっす!』って注意できるようになるっす!」

「アトー、ヨフかしNon nonなのにGameしてたコトもCautionシマショー!」

「そうっすね!」

「ふふふ、その件に関しては後で詳しく話を聞かせてくださいね~」


 空と鞠からの予想外の報告に紅玉は思わず冷たい微笑みを浮かべる。どんなお仕置きをしてやろうかと考えながら――。




 水晶は自室で身震いをした。何か嫌な予感を察知して。




「先輩! ありがとうございますっす!」

「いえいえ」


 そう答えながら、起こり得る未来を予想して、紅玉は申し訳なさそうに言う。


「空さんはまだ新人で、その上とてもお若いです……これからもたくさん我慢させてしまうことが多いと思います」

「……うん」


 空はなんとなく紅玉の言葉の意味が分かっていた。そして、自覚もしていた――自分が神域では未熟な子どもだという事も、まだ力の無い存在であるという事も。


「ですが、わたくしはいつでも空さんの味方です。困った事があったらどんな些細な事でも相談してくださいな」

「おっす!」


 でも、空には紅玉がそう言ってくれる十分だった。それだけでとても心強くて、空は思わず笑顔になる。


 すると、鞠が肩を竦めて言った。


「Oh、シャカイジン、ヤマトジン、メンドクサイデース」

「ごめんなさいね。言いたい事を思い切り叫ばせてあげたいのですが……」

「ダイジョーブデース! マリもソラもオットナデース!」


 胸を張る鞠に紅玉はころころと笑った。


 すると、空が手を挙げた。


「先輩……もう一個、相談したいことがあるっす」

「はい、何でしょう?」

「困っている職員さんがいたとして、その職員さんに力を貸してあげることは余計なことっすか?」

「……詳しくお話ししていただけませんか?」

「えっと……今日の研修で行った先の御社の神子様のことで、補佐役さんが困っているように見えたっす。補佐役さんの報告があって御社訪問したっすけど、神子様は随分と自由すぎる印象があって、その事で補佐役さんが悩んでいるみたいで……」

「はい」

「那由多先輩はしばらく御社の動向を観察するようにって言ったっすけど、俺が御社の補佐役さんのお手伝いしなくていいんですか? って聞いたら……那由多先輩は、参道町配属職員の仕事は外から神子を見張ることで、御社外の人間の介入はダメって言ったっす。管轄外の仕事までする余裕なんてないって……」

「……なるほど」


 空の話を聞いて紅玉は納得した。しかし、同時に疑問にも思った。


(あの那由多がそんな事を言うなんて……)


 那由多はかつて神子反逆罪の疑いをかけられた事がある。しかも担当外の神子の素行調査や接触など、空に注意していた事とは真逆の行動だ。

 それに例え担当外であったとしても、担当区の主任や副主任などに許可さえもらえれば何ら問題がない。


 かつて神子反逆罪の疑いが掛けられた時に反省し、行動を顧みたのだろうか――。


(……それとも、何か思惑が……?)

「でも、俺……」


 思考の海に潜っていた紅玉だったが、空の言葉にハッとし、耳を傾けた。


「……あの補佐役さんがなんか辛そうに見えて、放っておけないっすよ」

(……あぁ……)


 放っておけない――空の口からその言葉が出た瞬間、紅玉は思い出してしまう――天色の長い髪を靡かせた紺と紫が入り混じる瞳を持つ空の母の姿を。


(晴さん……この子は本当に……貴女に似て、とても良い子に育ちましたわ)


 姉としてなんて誇らしい事か。


(晴さんに……見せてあげたかった……)


 込み上げてくる涙を必死に堪えて、紅玉は言う。


「空さん、こういう時こそ、わたくし達、朔月隊の出番ですわ」

「え?」


 キョトンとする空に、紅玉はにっこりと微笑みかける。


「我々朔月隊の役目は大和皇国の平穏を守ること。それにはまず神子様と神様の健やかな生活をお守りすることが非常に重要になってきます。しかしながら、その為に職員が苦しむ状況にあってはなりません。神子様を支えるべき職員の心と体も健康でなければ、大和皇国の平穏などあり得ませんわ。その原因に神子様が関係するのなら尚の事。速やかに解決しなくてはいけません。朔月隊は朔の如く影で動く秘密部隊です。神子管理部の許可などなくても動く事ができます」


 紅玉の言葉を聞いた空の顔がみるみる明るくなっていった。


「先輩……!」

「Missionデスネー!」


 鞠の言葉に紅玉は頷く。


「わたくしや幽吾さん達には外部から密かに御社の事を探ってみますわ。ですから、空さん、貴方には研修で見回りできるその立場を利用して、直接その目で御社の現状を把握してきて欲しいのです。重要な任務ですわ」

「おっす! 頑張るっす!」

「ソラ、Fightデース! マリもHelpしマース!」

「ありがとっす! 鞠ちゃん!」

「さあ、これから忙しくなりますわよ」


 紅玉はそう言うと、早速動く為に己の伝令役のひよりを呼び寄せるのだった。




(……紅殿がまた無茶をする予感)


 蘇芳は自室で密かに察知した。




**********




 ここは二十の御社の台所。

 もうすっかり夜も更けている頃、流し台で皿や箸を一心不乱に洗う女性がいた。


 この御社の神子補佐役である冬麻である。


 山のように積み上がった汚れた皿を一枚一枚丁寧に洗っては積み上げていく――そんな作業を繰り返しながら、冬麻は昼に訪れた那由多との会話を思い出していた。




「単刀直入に言います。二十の神子は神子としてあまりにも不適格です」

「え」

「神子管理部の副主任としては、彼女の神子解任も視野に検討しなければなりません」

「待ってください。解任だなんて厳し過ぎます……!」

「不特定多数の神との深い関係が疑われる神子は何かが起きる前に対処すべきです。三年前の悲劇を繰り返したいのですか?」

「そ、それは……!」

「あの事件の最大の元凶は藤の神子ですが、そもそもの始まりは不特定多数の神と職員と身体の関係を持ってしまった色欲の神子です。ハッキリ申し上げますと、二十の神子は色欲の神子に行動が非常に似ています」

「ま、まだ関係を持ってはいません! 私が見張っておりますから!」

「ええそうでしょうね。しかし、それも時間の問題です。もしそのようなことになれば、神子補佐役であるあなたは責任を取らなければならない。そのお覚悟はありますか?」

「そ、れは……」

「三年前の悲劇を繰り返さないために我々がすべきこと――それは神子の解任です」

「…………」

「あなたも薄々感じているのではありませんか? あの神子の素行の軽薄さに」

「…………」

「よく検討しておきなさい。これはあなたのためでもあるのですよ」




 冬麻は溜め息を大きく吐いた。


 すると、遠くの部屋から――恐らく宴会場だろう――神々の笑い声や神子の可愛らしい声が聞こえてくる。


 とても、とても、楽しそうな声が――。




「……………………」




 冬麻は再び皿を洗い出す。手を動かさなければ彼女の仕事は終わらない。

 この後、書類仕事も大量に待っているのだから――。




 溜め息もつく暇などない。




〈おまけ:十の御社の夕食の支度〉


 紫は夕食の準備の為に台所へ入っていた。今日は空と鞠も不在なので、紅玉も手伝ってくれている。紅玉には味噌汁作りをお願いした。

 紫はおかずの豚の生姜焼き作り担当だ。


(さあ、じゃんじゃん焼くぞ~!)


 豪快に豚肉を鉄板に乗せ焼いていく。十の御社は人数が多く、しかも男神が多いので食べる量が非常に多い。次から次へと豚肉を焼いていく。


(その間にキャベツを切っておこ~っと)


 慣れた手つきでキャベツの千切りを始める。あっという間にキャベツの千切りが山になっていく。


(あとはタレの材料を混ぜ合わせて~)


 目分量で醤油、砂糖、酒、みりん、生姜を入れて混ぜ合わせていく。生姜の利いたタレの芳ばしい香りが漂う。


(おっと、肉を引っくり返さないとね~)


 豚肉を引っくり返せば、程良い感じで焼けており、紫は満足そうに頷く。


(この調子でどんどん行くぞ~)


 意気揚々と豚肉を次から次へと焼いていけば、味噌の良い香りも漂ってきて紅玉が作っている味噌汁も完成間近である事を悟る。


 すると、勝手口から誰かが入ってきた。


「紅殿」

「あら、蘇芳様」

「子ども達と育てていたミニトマトが実ったんだ」

「まあ! 美味しそう!」

「一つ、食べるか?」

「まあ、よろしいのですか?」

「勿論だ」


 紫がチラリと隣を見れば、小さな赤茄子の蔕を取って紅玉に差し出している蘇芳が見えた。


「ほら、あーん」

「あー」


 紅玉が口を開けば、蘇芳はその中に赤茄子を優しく運んでやる。すると、紅玉の顔が嬉しそうに綻んだ。


「甘くて美味しいです!」

「だろう」


 蘇芳もまた嬉しそうに微笑んだ。


(…………あ、お肉。お肉を焼かなきゃ)


 ちょっとうっかり目を離した隙に、一枚焼き過ぎてしまったが、黒焦げではないから問題ないだろうと紫は己に言い聞かせる。


(あ、そうだ、タレ。タレを煮詰めなきゃ)


 タレを入れた小さな鍋を火にかけていると、紅玉が蘇芳に小皿を差し出しているのが見えた。


「あ、蘇芳様。丁度良かったです。御御御付の味を見て頂けませんか?」

「ああ、構わない」


 小皿の味噌汁を蘇芳が飲むのを尻目に見ながら、紫は沸々と煮立つタレをくるくるとかき混ぜる。


「……いかがでしょう?」

「うん。今日も美味い」

「よかったですっ」

「貴女の作る味噌汁は美味くて俺は好きだ」

「あっ――あのっ、そんな……っ!」


 生姜焼きのタレはとっくに沸騰しており、ジュワジュワと若干焦げ臭い香りと煙が鍋から上がっていた。


「爆発しろっ!!!!」

「紫様!? 爆発させてどうするのですっ!? 火を止めなさい! 火を!」


 慌てて火を止める紅玉を余所に、紫はもう羞恥の限界であった。そして、心の中で叫ぶ。




 頼むから余所でやれ! 仕事の邪魔をするな! そして、いい加減くっついてくれ!! ――と。


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