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大和撫子さまのお仕事  作者: 小茶木明歌音
第二章
128/346

父、来訪のもう一つの目的




 真名を介する契約を交わし終えた紅玉と蘇芳は仕事に戻ろうと応接室から出てきた瞬間、二人仲良く目を剥いてしまった。


 二人の視線の先にいたのは、先程帰ると言って先に応接室を出たはずの韋佐己。何故か箒を持って廊下の掃除していた――愛らしい飾り布がついた前掛けと三角巾を付けて。


「………………」

「………………」


 あまりにも衝撃的な光景に紅玉も蘇芳も言葉が出ない。

 一方、韋佐己はそんな格好である事も気にせず、懸命に箒で塵を掃き続けている。


 すると、水晶が窓枠に指を滑らせ――ふっと指についた埃を吹き飛ばし、言う。


「ちょっとおじちゃん、ここちゃんと拭けてない。やり直し」

「申し訳ありません」


 大の大人である韋佐己が、神域最年少神子である水晶に頭を下げるという奇妙な光景である。


「おーい、小僧」


 韋佐己を小僧呼ばわりした槐が、廊下の隅を指差しながら言う。


「隅の方にも埃が溜まっておるぞい。しっかり掃けい」

「はっ、ただいま」


 槐の指摘を受け、颯爽と廊下の隅を掃き出す韋佐己――を仙花といろはの女神二人が影から見ながら言う。


「いくら最強一族といえど、掃除もできないのでは、子どもと大差ないのではなくて?」

「あらいやだわ~本当ね~。せっかく立派な身体をお持ちなのに……ちゃんと考えて掃除をして欲しいわね~」


 くすくすという嗤い声のおまけ付きである。


 すると、鞠がポンと手を叩き、韋佐己を指差して言った。


「マリ、しってマース! カラダStrongでオツムButなコレ、『ノーキン』デース!」

「鞠ちゃん、人を『コレ』呼ばわりして指差しちゃ、ダメっす。いくら融通が全く利かない、力で物を言わせる脳筋さん相手でも失礼っすよ」


 空の発言も五十歩百歩といったところだろう。


「えっと、韋佐己部長、大変申し訳ないんですけど、昼食の後片付けもお願いできますか? あと洗濯物干しと大浴場掃除と……あっ、決して僕が仕事放棄している訳ではなくて、神子様神様命令って事で仕方なく、仕方なく言っているだけですからね。そこのところはお間違えなく。仕方なくです」


 言い訳がましく言いながら、紫は仕事内容を書いた書付を韋佐己に押し付けた。ちなみにその顔は晴れ晴れとした笑顔であった。


 これは完全ないじめだと紅玉は思った――それも悪質な。

 あるいは姑、小姑による嫁いびりだ。


 そんな御社の光景に紅玉は思わず頭を抱えた。

 そして、聞くまでもないと思いつつも尋ねた。


「えっと……皆様、一体何を……?」

「うみゅ、見ればわかるじゃん。いびってんの」

「晶ちゃん!! お止めなさい!!」


 妹のあまりに可愛い笑顔から飛び出した言葉に紅玉は思わず叫んでしまっていた。


「だってだってぇ、お姉ちゃん虐めたじゃ~ん、このおじちゃ~ん」

「姉はもう気にしていませんから!」

「うみゅ、晶ちゃんは許した訳じゃございませーん」

「もう! お止めなさいって言うのに!」

「うみゅ、これでもメイド服に着替えさせようとしたのを我慢したんだから」

「メイド服!? せめて執事服になさい!」


 いや、そういう問題ではない。


「ぶっ!!」


 紅玉の隣に立っていた蘇芳が盛大に吹き出し、肩を震わせ笑いを堪えている。


「もうっ! 蘇芳様も笑っていないで止めてくださいまし!」

「す、すまんっ……ふはっ、はははっ」


 もう笑いが堪え切れないでいる。


 そんな蘇芳の姿を見て、韋佐己は顔を綻ばせた――ほんの一瞬――だが、紅玉は決して見逃さなかった。


 そうしている内に水晶が言う。


「うみゅ、んじゃ、おじちゃん、ちょっとこれに着替えておいで」


 そう言って水晶が差し出した服は、少々煌びやかな服というより衣装である。


「……晶ちゃん、これは?」

「ピチピチ白タイツのプリンス衣装」

「せめて執事服になさいと言っているでしょう!?」


 だから、そういう問題ではない。


「うみゅ、それじゃあただのイケおじじゃん。おもしろくない」

「そういう問題ではないでしょう!? それに韋佐己部長は『王子』という年齢に程遠いです!」


 重ねて言うが、そういう問題ではない。そして、遠回しに韋佐己に失礼である。


「んじゃやっぱりメイド服にする?」

「何故それに戻ってくるのです!? そして、スカートの丈が短過ぎます!」

「うみゅ、お姉ちゃん、いちいちうっさい。じゃあこの辺で勘弁してあげるよ。ばんちゃんご愛用のサンバ服~」


 やたら派手な孔雀の羽根と煌びやかな布を使った衣装だ――布地面積の非常に少ない。


「晶ちゃああああああんっ!!!!」

「うみゅーーーーーーっ!!!!」


 紅玉の怒鳴り声と水晶の悲鳴が響き渡った瞬間、十の御社の神々は笑い声を上げ、紫や空や鞠は微笑ましく見守り、蘇芳は慌てて姉妹二人の喧嘩の仲裁に入る。


 そんないつも通りの十の御社の光景を隅で見ていた韋佐己の顔は――優しく微笑んでいた。




**********




 韋佐己が十の御社での仕事を終えた頃には夕方となってしまった。

 紅玉に晩御飯を一緒にと誘われたが、蘇芳や水晶をはじめとする十の御社の住人達に睨まれてしまい、断るしかなく、そのまま十の御社を後にした。


 すっかり十の神子や十の御社の神々に嫌われてしまった事を自覚しつつも、その確執の原因である紅玉に手を上げた事に関しては一切の後悔も反省も韋佐己の中では無い。自分は正しい事をしたとそう思っている程だ。


(十の御社の住人達とは一生相容れないだろう。天罰が下らない事を祈るばかりだ)


 そんな事を考えながら帰路につく。




 すると、前から良く知る人物がやってきて、韋佐己は立ち止まる。

 そうしている内にその人物も韋佐己の前で立ち止まった。


「……親父」

「金剛」


 それは自分の息子であり、八の神子である金剛だった。

 自分によく似た顔に無精髭を残し、自分と同じ金色の瞳で、父である自分を睨みつけている息子の姿に怯む事無く、韋佐己は真っ直ぐ金剛を見つめ返す。

 息子に睨まれても一切表情を崩す事が無い父に、金剛は思わず眉を顰める。


「……俺は言ったよな、もう二度と蘇芳の前に姿を見せるんじゃねぇって」

「…………」

「あんた達が蘇芳にした事は永遠に赦されるものじゃねぇ。その目と腕が何よりもの証拠だ」

「……そうだな」


 金剛にそう指摘されると、韋佐己の潰れた左目と無いはずの左腕にズキリと痛みが走った気がした。


「あんた、蘇芳に何を言いに来た?」

「……蘇芳を次期当主に指名すると伝えた……拒否されたがな」


 いや、拒否ではなく、絶縁だな――と思い返す。


 韋佐己の言葉に金剛はますます眉間の皺を深くし、吐き捨てるように言った。


「……今更過ぎるんだよ」

「ああ……そうだな……あの子が愛情を求めていたあの頃に手を握ってやれば……未来は変わったのかもしれないな……」


 そう考えてしまうと、後悔しかない。

 初代盾の再来と呼ばれる最強の戦士を見す見す手離す事になってしまった事に対してなのか、大事な息子に絶縁されてしまった事に対してなのか――。


 どちらかと言えば、今は後者の方が強いな、と韋佐己は思う。


「……あんたのことだ。目的はそれだけじゃないんだろう?」


 金剛の言葉に韋佐己は僅かに目を見開く。


 この息子、昔からそういう勘が鋭く、現に目覚めさせた異能も「直感」だと韋佐己は思い出す。

 恐らくここにいる理由もその異能が働いたからなのだろう。


 韋佐己は下手に黙っていても、金剛に見透かされるだろうと思い、正直に告げた。


「初代盾の再来と呼ばれるあの子が見初めた女性を見にな」


 勘が当たったのだろう――金剛は得意げに笑うと言った。


「どうだ、良い子だろう? 〈能無し〉とは思えねぇ程優秀な子だしな」

「そうだな。自由奔放な十の御社を見事まとめ上げていたし、恐ろしい容姿のあの子に曇りのない笑顔を見せる稀有な存在だった」


 十の御社で働きながら紅玉を観察し抱いた感想がそれだ。


「……だが、心配なことが一つある」

「あ?」

「我が盾の一族は真面目一辺倒。故に一途」


 韋佐己のその言葉に金剛は「ああ」と呟く。


「蘇芳は特に一族のその気が強いからな」


 金剛の言葉に韋佐己は頷くと言葉を続ける。


「盾の一族の血を引く者は、一度守るべき大切なものを決めたら、命を懸けてでもその大切なものを守る。言い方を変えればそれが盾の一族の弱点でもある」


 韋佐己の言う心配な事に納得しつつ、金剛は言う。


「例えそうだとしても、蘇芳は紅ちゃんを必ず守りきる。あんたの心配することはない」

「……私が心配しているのはそれではない。彼女が危険分子であることだ」

「……はあ?」


 韋佐己の言葉を金剛は理解できないでいる。

 そんな金剛に韋佐己は言う。


「彼女は、神域最強のあの子だけではない。影の一族の末弟にも認められ、妖怪の先祖返り達の友人でもあり、十の神子の姉でもあり、只の人間でありながら十の御社の神々からの信頼も厚い……〈神に捨てられし子〉であるにも関わらず」

「……何が言いたい?」

「彼女は皇族をも脅かす存在になり得るということだ」


 韋佐己の言葉に金剛は目を見開き、韋佐己が言わんとしたい事を理解する。


「私は皇族の盾。この身は皇族を守るために存在する。彼女が皇族の脅威となるならば、私はいずれ彼女と相対することになるだろう」


 つまりこの男、脅威となり得る紅玉を排除するつもりだ――皇族の盾として。


 金剛はカッとなった。


「あんたなぁっ!!」

「――勘違いをするな、金剛。皇族の盾の私だからこそできることもある」

「ああっ!? どういう事だ!?」

「私はあの子に愛情を与えてやれなかったからな……」


 少し愁いを帯びた表情でそう言った韋佐己に、金剛は思わず何も言えなくなってしまう。父のそんな表情を初めて見て、動揺してしまったのだ。


 その隙に韋佐己は金剛の横をすり抜け去っていく。


「お、おい! 親父!」


 慌てて呼び止める金剛の声に、韋佐己は大きな傷の残った左目を向けながら言った。


「彼女にどうか伝えてくれないか」

「はあ?」

「蘇芳を頼むと……相対する日が来ることがないことを祈ると」

「…………」


 去りゆく父の背を見つめながら、父の言葉の意味を考えたが、真意が全く見えないまま、やがて韋佐己の姿も見えなくなってしまっていた。




**********




 金剛は考え抜いた結果、紅玉に韋佐己の言葉を伝える事にした――「蘇芳を頼む」という言葉だけを。

 韋佐己の言葉を金剛から聞いた紅玉は僅かに目を見開き、少し考えて、「そうですか……」と返事をした。


 流石にもう一つの言葉は伝える事は憚られた。

 要は紅玉を危険視しているという敵対の言葉も同意だったからだ。


 紅玉も災難だと、金剛は思う。

 蘇芳を助けようとして神域警備部の詰所で大暴れしたせいで韋佐己に痛い目に遭わされ、挙句蘇芳が大事にしている存在だからという理由で目を付けられてしまった。

 ただでさえ〈能無し〉であることで苦労をしているというのに。


「なんか、いろいろわりぃな……紅ちゃん……」


 思わず謝罪をしてしまう――いろんな意味合いを含めながら。


 すると、紅玉は言った。


「……韋佐己部長は……不器用な方なのですね」

「……はい?」

「やっぱり、韋佐己部長は蘇芳様と金剛様のお父様なのですね」


 ふわりと柔らかい声でそう言う紅玉の真意が全く理解できないでいると、紅玉は更に言う。


「大事な息子である蘇芳様を本当は心から思っていたはずなのに、その愛情があらぬ方向へ走ってしまい、結果疎遠となってしまって……蘇芳様に一番近いわたくしに頼むしかないだなんて……なんか切ないです」

「紅ちゃん、おいたん全く君の言う事が理解できないんだが?」


 流石の金剛もついには直接聞いてしまう程困惑している。

 すると紅玉ははっきりと答えた。


「韋佐己部長は息子思いの優しいお父様という事ですわ」

「ええええ……そうかぁ?」

「はい。時折、蘇芳様を見つめるお顔が、大変優しい顔でしたもの。息子を思う父のお顔でしたわ」

「…………」


 紅玉にそう言われ、金剛もふと思い当る節があった。

 いつも偉そうな父にしてはやけに大人しかった気もするし、何よりもあの愁いを帯びた顔が頭から離れない。


(ま、どちらにしても今更だけどな)

「それにしても――」


 紅玉はふわりと微笑むと言った。


「韋佐己部長のお優しい顔と蘇芳様のお優しい顔がよく似ていらっしゃったので、流石は親子って思ってしまいました」


 「ふふふ」と楽しそうなころころと笑う一方で、金剛は思わず無言になってしまう。


「……紅ちゃん」

「はい?」

「蘇芳は優しいかい?」

「はいっ、いつもいろいろ助けてくださって、本当にお優しい方です。感謝しかありません」

「そうかい」


 嬉しそうにそう語る紅玉の姿を見て、金剛も嬉しくなる。


 蘇芳の顔は確かによく見れば非常に整っているが、残念な事に世間の評価はどちらかと言えば、勇ましい、恐ろしい、仁王、軍神といった表現がよく用いられる。優しいなどという表現には程遠い。

 その原因は蘇芳の生まれ持ったその真面目過ぎる性格にもあるのだろう。仕事中も仕事で無い時も、常に警戒を怠らず、眼光を鋭くし、その表情を崩す事が無いからだ。


 故に一族の中でも、神域の中でも敬遠されがちで、常に孤独だった蘇芳の身を、兄として金剛は心配していた。


 だがしかし、そんな弟に変化が訪れた。常に「無」だった心に「種」が宿ったあの日、蘇芳は劇的に変化していった。傍で見守り支えてきた兄だから分かる。

 そうして蘇芳はいつしか「初代盾再来」ではなく「普通の人間」としての表情を見せる事が多くなった。


 そのことに金剛がどれほど嬉しかった事か――きっと「種」を蒔いたこの女性は分かっていないだろう。


 そう思いつつ、金剛は紅玉を見る。


「……ありがとうな、紅ちゃん」

「お礼を言うのはわたくしの方です。蘇芳様を八の御社から十の御社に快く異動させてくれた事、本当に感謝しております。蘇芳様には毎日助けられてばかりで申し訳ないくらいです。何か恩返しができたらと思っているのですが……」


 紅玉はそう言って、少し俯く。その頬が少し赤く染まっている事に金剛は気付き、ニヤッと笑う。


「恩返しなんていらねぇよ、あいつは。紅ちゃんが幸せに笑っていてくれさえいれば」

「そうはいきませんわ。きちんと何かお返しがしたいのです。それに幸せになるべきなのは蘇芳様の方ですわ」

(まったくこの子は、ホントいつも人の事ばっかだなぁ)


 それが紅玉の美点であり欠点だと、蘇芳が言っていた事を思い出す。

 そして、その時の蘇芳の顔と今の紅玉の顔がよく似ていると思ってしまい、金剛は思わずニヤリと笑う。


「紅ちゃんも素直じゃないな」

「……はい?」

「蘇芳の幸せを願う程、好きなんだろ?」

「へっ!?」


 瞬間、紅玉の顔が面白い程真っ赤に染まった。


「な、ななな、何故、そんな事を……!?」

「いや、大概の人間は気づいているよ。紅ちゃんの蘇芳への気持ち」


 呆れたようにそう言う金剛に紅玉は愕然としてしまう。


「そっ、そんなはずはありませんわ! わたくしは蘇芳様を先輩として尊敬しているのであって、いっ、異性としてそのような……っ!」


 ますます顔を赤らめて困ったように言い訳する紅玉の姿は墓穴を掘っているようにしか見えなかった。

 金剛は思わず笑ってしまう。


「あのね、紅ちゃん、おいたんも蘇芳には早く幸せになってもらいたいんだよ。だから、早く紅ちゃんと蘇芳にはくっついてもらって欲しいんだよ」


 二人の(酸味の強めの)甘酸っぱい恋路を見るのが少々(いやかなり)じれったくてしょうがないというのが金剛の本音であるが。だが、二人の周りにいる人間も同じ事を思っているに違いないと、金剛は自信満々だった。


 しかし、金剛のその一言に紅玉は表情をどんどん暗くしていき、最後は首を振って言った。


「……それはダメです」

「えっ!?」

「それは……ダメです、いけません」


 まさか紅玉自身から拒否の言葉が飛び出すとは思わず、金剛はうろたえた。


「な、何で? 蘇芳のどこが嫌なんだ? 鼾がうるさいとか? 屁をこくとか? あ! まさか服を脱いだら脱ぎっぱなしとか!? それくらい目を瞑ってくれよー! なっ!?」


 あまりにも具合的過ぎる。


「ご安心ください。蘇芳様はきちんとされている方ですわ」


 そして、今の金剛の話は自身の体験談なのだろうと思った。


「そうではなくてですね……蘇芳様の気持ちを考えてあげてくださいまし」

「え? 蘇芳の気持ち?」


 蘇芳の気持ちなど金剛はとっくに知っている。「この子は何を言い出すんだ?」と思いながら、金剛は紅玉を見た。


「蘇芳様は……藤紫ちゃんの事が好きなのですよ……ずっと……わたくしに優しいのはわたくしが彼女の幼馴染だからです」

「………………」


 金剛は突然駆け出した。


「蘇芳!! おい蘇芳!! 面貸せぇっ!!!!」


 珍しく怒鳴り声を上げながら十の御社の敷地内を駆けていった金剛の背中を紅玉は首を傾げて見つめた。


 そして、遅れてやってきたジクジクとした胸の痛みを必死に堪える。


(言葉にしてしまうと……やっぱり切ないですわね……)


 それほどにまで蘇芳に想いを寄せてしまっている自分がいる事に、紅玉は自嘲する。


(想ってはダメ……これ以上はもうダメ……諦めなさい。わたくしには為すべき事があるでしょう?)


 紅玉は懐から手帳を取り出し、幼馴染達と写った思い出の写真を見つめた。


「貴女の無実を必ず証明してみせますわ……貴女の為にも、蘇芳様の為にも……だから、どうか……諦めずに生きていて……灯ちゃん……」


 そう決意を口にして、彼女は自分の恋を殺す――何度でも――。





<おまけ>


駆け出した金剛のその後


金剛「いい加減、紅ちゃんに告白しろおおおおおおっ!!」

蘇芳「いきなり何なんだ!? 兄貴!」

金剛「紅ちゃんの性質の悪さが怖いぃいいいいいいっ!!」

蘇芳「紅殿を愚弄するなっ!!」

金剛「怖いぃいいいいっ!!」

蘇芳「紅殿を化け物扱いするなっ!!」


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