序章
初めまして。初投稿になります。
楽しんで読んでいただけたら幸いです。
月夜の中、七の神子が演説を終えると、辺り一帯は歓声と拍手と熱気に満ち溢れた。
ある者は七の神子を称え、ある者は早速行動に移すため駆け出し、ある者は次の襲撃に備えるため周りと相談を始める。みな、心が一つになった奇跡的瞬間であった。
しかし、そんな中、紅玉は絶望していた。
違うと叫びたいのに、やっていないと否定したいのに――それが許される状況ではなくなってしまった。
これでは守れない。助けてあげられない。自分が最も大切にしてきたものを、また失ってしまう。
焦りと恐怖ばかりが募り、身体がどんどん冷たくなっていく。
「紅殿、落ち着け、落ち着くんだ……!」
非常に身体の大きな男性が紅玉にそう言い聞かせながら、紅玉の身体を支えていた。
しかし、紅玉の意識は別の方向へと向いてしまう。何故なら、紅玉の目の前に、たった今、演説を終えたばかりの七の神子が立っていたからだ。
桜色の柔らかそうな長い髪に、桜色のまつ毛で縁取られた愛らしく大きな苺色の瞳。肌は非常に瑞々しく、頬はほんのりと赤く染まり、桜の花弁のような艶やかな唇。
この世の美しさと愛らしさの全てを詰め込んだような非常に可憐な少女である七の神子は、大きな苺色の瞳に宝石のような大粒の涙を湛えながら、紅玉に向かって言った。
「全てはあなたのせいよ……〈能無し〉のお姉様」
神子の言葉に、紅玉は目を見開いた。
ドクリ――心臓が嫌な鼓動を立てる。
「あなたさえいなければ、あの素晴らしい神子のお姉様達は今も神子としてご活躍されていたに違いないのに……〈能無し〉のあなたと関わった事でこうなってしまったの」
神子の言葉に、紅玉は何も反論できない。
目頭が熱い――息ができない――胸が苦しい――心臓の鼓動がどんどん速くなっていく。
それでも、神子の言葉は止まらない。神子は柳眉を吊り上げて、はらはらと涙を零しながら言った。
「ああなんてっ、なんて不幸で可哀相な神子のお姉様達っ……あなたが代わりに犠牲になれば良かったのにっ」
その言葉を聞いた瞬間、心臓が一突きされたような感覚に陥った。
(ああ……本当に……その通りでございます)
ぐらりと世界が歪んだ。
「紅殿っ!!!!」
男性の叫ぶ声が聞こえたのが最後、紅玉の意識は黒く塗り潰されてしまった。
本日21時に二話目を投稿予定です。
引き続きよろしくお願いします。