僕から君へ
寒いのなら抱き締めて暖めてあげる。涙を流すなら抱き締めて涙を隠してあげる。君を守れるなら全て捨てても構わない。君が笑顔でいてくれるなら。
「だからいなくならないでくれ」
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桜の雨が降り、太陽の光が注ぐ。そんな日に出会ったね。君の目を見たときに思ったよ。「寂しそう」だって。深海に潜む小さな光のように。なのにどうしてだろう。君の美しい瞳に吸い込まれたよ。あって話したいって思ったよ。でも君はハンカチを落としてどっかいってしまった。あぁこれはチャンスか?と思ったよ。急いで拾いに行き君を追いかけた。でもなかなか見つからなかった。そしたら森を抜けた大きな木のところであったね。「おじぃちゃん」君はそう名付けた。僕は笑ったよ。君も笑ってくれたよね。けど君は涙を流した。僕のせいかと思ったよ。君のハンカチを差し伸べたとき、何だか嬉しそうに見えたのは僕だけかな?さしたら君は笑顔で「わざと落としたの」て言ったよね。何でだよって聞きたかったけど聞けなかった。ヘタレだったよね。聞いとけばよかった。
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今なら聞けるよ。「何でわざと落としたの」て。ヘタレだった自分を恨んでるよ。君も僕に質問したそうだったよね。何だったんだろう?何も聞けない自分が本当に嫌だよ。
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僕たちはいつの間にか仲良くなって、よくあの木で会うようになった。僕はそれが楽しくて、部活が終わったら走って木え向かった。君は本を読みながら「おかえり」て毎回言ってくれたね。僕たちは同じ高校に行こうってよく話したよね。君はここがいいってキラキラしたまで話してくれた。君がおじさんの了承を受けたと話してくれたとき、僕はすごい嬉しかった。僕もお父さんに言えたよ。ここがいいって。お父さんは応援してくれた。
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もしあの時違う高校を選んでたらこんなことは起きなかったのかな?登校するときの道をちゃんと調べればよかったね。あの日、僕も一緒に行けなかったよね。1人でいかせてごめん。
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高校を入学して1ヶ月過ぎた頃かな。僕は家の用事で学校を休んだ。その日だよ。君が亡くなったって知ったのは。車にはねられたって。まだ聞いてないよ。何であんな寂しそうだったの?何でわざとハンカチを落としたの?って。何で君なんだよ。僕は君のいない人生なんていらない。
「だからいなくならないでくれ」