勉強会の後
どまども、毎話更新する度にお久しぶりですという、カトユーです。
今回は海良香ちゃん回です!
「わ、私、華彩のこと好きだったの!」
うえ!?夕日に照らされ、少し赤く見える顔をした茶髪ツインテールの美少女に告白された。
遡ること、三十分ほど前のこと。
「あ、あのね。華彩。少し、二人っきりで話したい事があるの。」
全ては幼なじみの海良香の一言が始まりだ。と言うか、妹の和花がいる前でそんなことを言わないでくれよ。滅茶苦茶、睨まれるんですけど。
ただ、ここは住宅街のど真ん中で、とてもじゃないが二人きりになんてなれない。
「とりあえず、豊田駅まで行ってからにしようか。」
そう言って、一旦話を変えた。と言ってもそんなことを言われた手前、自分と海良香の間は何とも言えない空気に包まれたまま電車に乗った。
そんな中、
「兄さん、さっきは勉強出来ました?」
和花がさっきの勉強会の話を切り出してくれる。いや~気が利くね。まあ、ほとんど勉強してないけど。
「まあ、ぼちぼちかな。」
「嘘つき!てが止まってたよねー。」
いや、知ってるなら話題にするなよ······。それより、自分のこと見てたのかよ!
「そんなに見てたのか?」
「べ、別に!」
いきなりすねを蹴ってそっぽを向いてしまった。ああ、貴重な話し相手が······。
一人、しょぼーんとしているうちに豊田駅に着いた。改札を出ると、
「兄さん、先に帰ってるね。」
そう言って和花は足早に帰っていった。さっきの話を聞いていて、気を利かせてくれたのだろう。
「華彩、行こっか。」
そう言って、自分の手を繋いで歩き始めた。いやいやいや、すごく自然だったけど今手を繋いでいるんだよね!?これだと恋人みたいだよ。それに、海良香は美少女だし意識してしまう。ドキドキしてるのばれてないよね。
手を繋いだまま、駅から十分程歩いたところにある公園に着いた。ああ、懐かしいな。小学生の頃は海良香と和花と一緒に日が暮れるまでここで遊んだ記憶がある。そういえば、あの頃の海良香はショートカットでボーイッシュな感じだったなと思い出していると、噴水の前のベンチまでつれてこられていた。
「とりあえず、昔話でもしよっか。」
そう言うと、海良香はベンチに座るよう勧めた。言われるままにベンチに座ると、海良香は出会った頃の話をし始めた。
「私達ってここで会ったんだよね~。」
そう、あれは小学校に入学してすぐのことだった。自分はいつものように友達❰この頃はたくさんいた。ってやかましいわ!❱と遊んでいると、砂場で一人寂しそうにしている子を見つけた。気になって話しかけてみると、遊ぼうと話しかけても「女なのに男みたいな格好しやがって、キッモー」と相手にされなかったそうだ。確かに小さい頃って何気ない言葉で人を傷つけたり、傷ついたりするよね。
だけど、自分はそんなこと気にならなかったので
「ならさ、俺と一緒に遊ぼうよ!」
普段、友達に接するように遊びに誘った。海良香は最初、悩んだようだったがすぐに頷いて、鬼ごっこをした。それから外で遊んだり、自分の家でゲームをやったりと毎日のように遊んだ。家が近かったこともあって、親どうしも仲良くなって、一緒にバーベキューに行ったり、お泊まり会をやったりした。
そんな海良香との関係が変わったのは、小学校の高学年になってからだ。ショートカットだった髪を伸ばし、女友達が増えて、自分との関わりが急速に減っていった。そして、中学校になってからは会ったらあいさつするぐらいの仲になってしまった。
それが今までの海良香との関係だ。
「······実はね、華彩と話さなくなったのには理由があるの。」
おお、ついにわかるのか!自分がなんかやらかしたのかな······
そして冒頭の告白に至るのである。
「わ、私、華彩のこと好きだったの!」
うん、どうしてこうなった······。
「えっと、さっきの話と関係あるのかな?」
「うん、その、小五で自分の気持ちに気づいて、そこから華彩のこと意識しちゃって話せなかったの。ごめんね!」
なんだ、そうだったのか。てっきり、嫌われたのかと思ってた。
「なら、何でイメチェンしたの?」
「それは、そのー」
何でそんなモジモジするの?
「華彩に女の子として見てもらいたかったの!」
そういうことだったのか!?
「別にそんなことしなくても、最初から女の子として見てたよ。」
そう言うと、海良香は今までの努力はなんだったの?と呟いてた。いや、まあ、そのお陰でこんな美少女になったんだから結果オーライだろう。
「で、付き合ってもらえるかな?」
心配そうに上目遣いで聞いてくる海良香。今までとのギャップにドキドキしてしまう。だが、返事は決まっている。
「すまん、少し考えさせてもらえないか?」
我ながら優柔不断だなーと思ってしまう。一応、言い訳をさせてもらうと、妹からの告白も保留にしてあるので即決できるような話ではないと思う。❰二人もキープするなんてサイテーと思わないでもらいたい❱そして、今日話してもらったことが衝撃的だったからだ。今までの疑問はなくなったし、良いことなんだろうけど心の整理が追いついていない。よって、保留しか選択肢はないと思う。もちろん、フリーだったのなら快諾してたよ。
「そっか······」
明らかに海良香は落ち込んだ様子だ。それもそのはず、保留の場合はほとんどフラれるからだ。
生憎、自分にフォローもできるはずもなく、落ち込む海良香を家まで送り、何かから逃げるように急ぎ足で家へと帰った。
家に入ると、和花がソファーに座ってスマホをいじっていた。
「お帰り~」
そう言って自分の顔を見て、びっくりしていた。
「兄さん、何で泣いてるの?なんかあったの?」
そう言われ、顔を触ってみると頬が濡れていた。
おそらく、自分の優柔不断さや情けなさに悲しくなったのだろう。自分でも気づかずに涙を流すくらい。
「まあ、色々あったんだよ。」
吐き捨てるようにそう言って、自分の部屋に逃げるように入った。荷物をおいて、ベッドにうつ伏せになる。そうすると、今日あったことをなぜか思い出してしまう。そして、海良香の告白。恥ずかしがりなからも必死に思いを伝える表情をはっきりと思い出してしまった。
「はあ~、これからどうすればいいだろうか」
そう呟いて、自分は寝てしまった。
どーでしたか?
次回は、妹に慰められる兄のお話を予定しています。
それではまた!




