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俺と彼女たちは桃太郎と家来なはず・・・

作者: 七乃瀬雪将

 むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。


「うむ……」

「そうね」


 おじいさん(市川大五郎(いちかわだいごろう))、おばあさん(花森紫水(はなもりしすい))はどちらも寡黙で言葉数少ない人ではありましたが、それなりに幸せに暮らしていたそうな。


 あるとき、おじいさんは山へコーヒー豆の採取に、おばあさんは隣町に住む新人漫画家の原稿を回収に行きました。

 おばあさんが漫画家に催促、と言いますか、超絶恐ろしい圧力をかけに行った帰り道、川沿いを歩いていると、川の上流から何やら大きな桃が流れてきます。


 どんぶらこっこ~どんぶらこ~


 おばあさんはそれを拾って家に持ち帰り、おじいさんに見せました。


「うっむ……」

「そうね。桜井農園のブランド桃『桃果(とうか)』ね」

「さぁ……!」

「待ってて。今切るから」


 おばあさんはそう言って、持っていたボールペンを胸ポケットから取り出し、桃から約二メートルほど離れます。そして、ものすごい速さで上から下に向けて、ボールペンで弧を描きます。すると、桃はぱっくり割れ、中から子供が出てきました。


 ブルブルブル……


 子供は震えていたそうな。まだ赤ん坊でしたが、すでに意識があるのか、自身に及びかけた身の危険を自覚していたのでしょう。


「あら、可愛い」

「あぁ……」

「それはいい考えね」


 おばあさんは変わらず抑揚のない淡々とした口調で話します。おじいさんもそれに対して、

「本当にその通りだね、おばあさん。どうだろうか、うちは子宝に恵まれなかったから、この子を我が家で引き取って、育てるというのは……。きっと、素直でいい子に育ってくれると思うんだ。私はこう見えて結構子供が好きでねぇ。子育てに憧れの気持ちを抱いているんだ。おばあさんと二人の生活も幸せだが、子供がいるともっと楽しく暮らせると思うよ」

 と提案し、おばあさんはそれに承諾しました。


 こうして、おじいさんとおばあさんの間に引き取られた赤ん坊は、二人によって『桃太郎(ももたろう)』と名付けられ、便宜的に『翔平(しょうへい)』と呼ばれるようになりました。翔平はすくすくと素直でいい子に育ち、翔平もそれはそれは幸せに暮らしていきました。


 悩みがあるとすれば、二十歳になっても顔つきが幼いままということです。渋い顔つきのおじいさんを羨ましく思うこともしばしばとか。

 まだ悩みがあるとすれば、育ての親であるおじいさんの言っていることが分からない時があるということです。言葉足らず過ぎて理解できないこともしばしば。

 更に悩みがあるとすれば、おばあさんがとても怖いということです。小さい頃には、悪さをする度に西の都で伝説となっている雷神様も仰天するほどの雷が、おばあさんによって落とされたこともしばしばあったそうな。


 そして、更に悩みがあるとすれば……


「翔平。あんた、まだ就活を始めていないの?」

「は、はい……」


 大人の仲間入りを果たしたにも関わらず、就職先の見当を付けていないことでした。


「でもおばあさん! まだあと半年以上あるし、何とかそれまでには!」

「半年なんてあっという間に過ぎる。そんなに悠長に考えていていいと思っているのか? インターンも行ってないそうだな。今まで一体、何をしていたんだ?」

「そ、それは……」


 翔平はおばあさんの凄みに負けて何も言い返せません。おばあさんは、本当に怒っている時に口調が変化します。なので、普段は淡々とした喋り方ですが、本当に怒っている時は判別できるのです。そして、今はまさに怒りの頂点に達しているということを翔平は理解していました。


「しょうがない奴だ。それなら、お前にあることを命じる」

「あること、ですか?」

「そうだ。最近、都で物品がなくなるという事件が発生している。その犯人は、おそらく鬼ヶ島に住む鬼とのことだ。お前には、そこへ行って鬼を粛清してもらう」

「え!? それと就活に何の関係があるんですか!?」

「インターンだ」

「いやいやいや! 鬼ヶ島に就職とかしませんから!」

「鬼を倒せば、就活に有利になる」

「絶対うそだ!」

「行け」

「……はい」


 おばあさんの命令に逆らえず、翔平は鬼ヶ島に行くことになりました。おばあさんは横暴だ! 鬼ヶ島の鬼よりもよっぽど鬼らしいっての! そう思ったことは、おばあさんには内緒です。


 翔平は、内心でおばあさんに『血も涙もない鬼』と二つ名を付け、旅に出たのでした。旅に出る直前、おじいさんがおそらくは激励のために来てくれたのでしょうが、翔平には「ふっ……」としか聞こえませんでした。


 *


 道中、翔平はお腹が空いたため適当な岩に座って、腰につけた巾着袋を開けました。中には、おばあさんがこしらえてくれたきびだんごが入っていました。


 うん、美味しい! 流石はおばあさんだ!


 おばあさんのきびだんごに舌鼓を打っていると、空から緑色のきれいな羽を広げて一羽のキジが飛んできました。


「美味しそうなきびだんごね! 良かったらそのきびだんご、私に一つくれないかしら?」

「良いですよ、キジさん。……はいどうぞ」

「ありがとう♪」


 翔平は巾着に入っていたきびだんごを一つ、キジに差し出すと、キジは美味しそうにきびだんごを食べました。


「ごちそう様でした! とっても美味しいきびだんごをありがとう!」

「いえいえ、喜んでもらえて何よりです」

「何かお礼しないとね」

「お礼なんてそんな……」


 そうだ! きびだんごのお礼というわけではないけれど、キジにも鬼退治の旅に同行してもらおう! キジの機動力があれば偵察係に申し分ないし、鋭いクチバシは高い攻撃力も備えているはずだ!

 翔平はそう思い、キジに提案しようとしますが、先にキジが口を開きます。


「そうだ! きびだんごのお礼に、私が君のお姉ちゃんになってあげるわ!」

「…………はい!?」


 ……聞き違い……かな? 今、お姉ちゃんって言ったのかな? 家来じゃなくて?


「あれ? 聞こえていなかった? 君、私の弟になって!」

「いやいやいやいや! 聞こえていましたから! 別にお姉ちゃんとかはいらないですから!」

「そんな! 私、お姉ちゃんに憧れていたのに! 桃太郎さんはお姉ちゃんはいらないって言うの!?」

「それよりも鬼退治に付き合ってくださいよ! 付き合ってくれるなら、一回だけ姉扱いしてあげますから」

「う~ん……。分かったわ! それじゃあ、きびだんごのお礼に私も鬼退治手伝うよ! だから一回! ね?」

「それなら承知しました。それじゃあ……」


 正直、キジに対してお姉ちゃんだなんて、おかしい話ではあったが、翔平は鬼退治を引き受けてくれたキジにお礼の気持ちを込め、その言葉を発した。


「ありがとうございます、『お姉ちゃん』」

「…………」


 そう言った途端、飛んでいた体をプルプルと震わせ始めたキジ。何事かと思った翔平は、キジの前に顔を近づけ、再度呼びかける。


「お姉ちゃん?」

「キャーーーーーーーーーーー!!!!!♡」


 突然ピンクの悲鳴を甲高く叫び羽をバッサバッサと振りまくるキジ。頭から生えた一本の体毛が高速回転し、ピンッ! と垂直に立ち上がる。


「ゲハッ!!!」


 キジはやがて口から大量の血を吐き出し、地面に落ちた。


「ちょっ! キジさん!?」

「弟……可愛すぎぃぃ……」


 目をハートにした状態でピクピクと羽を震わせる緑色のキジ。桃太郎はそれに若干引きながらもキジの体を両手で覆って持ち上げる。


「大丈夫ですか!? めっちゃ血が出てますけど!」

「ダイジョウブダイジョウブ。大丈夫だからもう一度『お姉ちゃん』って呼んでもらっていい?」

「呼ばないですよ! そのせいで死にかけているんですよ!?」

「えーーーーー!? 呼んでよーーーー!!! 私、お姉ちゃんでしょ!!」

「キジですよね!? もっと言うと僕の家来ですよね!?」

「ハァーーー!! 桃太郎さんの顔、小さくて幼くて可愛ぃぃぃ!! 私のクチバシでツンツンしたい。ハァハァ」

「何でそんなに息荒くしてるんですか! 気持ち悪いですよ!」


 とてもその美しい姿からは想像できない奇行に桃太郎は絶えずツッコミ続ける。

 種族と立場を完全に無視した自称「姉」。姉とは一体なんだろうか?


 *


「ふふっ、翔ちゃ~ん♪」

「あの、ミド(ねえ)。くっつきすぎなんですけど。羽があるんだから飛んでくださいよ……」

「違うよ~。羽やすめだよ~。私、鳥ですから。キジですから!」

「何で二回言ったんです?」


 羽やすめと言いつつ、人型に変化(へんげ)し翔平に抱きついた状態で頬ずりするキジ、(みどり)。人間同士じゃないけど、周りの目が気になる……。


「翔ちゃんに触れる度に私のお肌もツヤツヤになっていく……」

「あなた、キジですよね……? ツヤツヤも何も本来は長い体毛に覆われているんじゃ……」

「鳥肌立つほど、お肌すべすべーーーーーー!!」

「矛盾してない!?」


 鳥肌のブツブツをすべすべとのたまうキジのハイテンションについていけない翔平。偵察とかしてくんないかな~……。


 またしばらく歩いていると、大きな果樹が広がる山道に差し掛かりました。その果樹を横に見ながら歩いていると、看板が立てかけられています。


『桜井農園 果樹エリア』


 どうやらここは、桜井農園が管理する果樹園のようだ。特に気にも留めずに歩いていると、人相の悪いおじいさんと一匹のイヌに出くわしました。


「さっさとここを掘らんか!」

「うぅ。ココ掘れわんわん。ココ掘れわんわん」


 イヌが掘り起こしたその穴から出てきたのは、小さな骨だけでした。それにおじいさんは激怒。


「またか! このダメ犬が! さっさと埋蔵金の場所を掘り当てろと言っているのに!」

「そんなの分かるわけないです! 埋蔵金は匂いがしないですもの」

「えぇい! 言い訳など聞きたくないわ! またお仕置きが必要みたいだなー!」

「ひぃ! 叩かないでください!」


 そう言って、持っていた大根でイヌを殴ろうとするおじいさん。これはいけない! そう思った翔平は、バッとおじいさんの前に立ちはだかり、大根を両手でつかみます。


「むっ! 何じゃお前は!」

「こんなもので叩いたら痛いじゃないですか! ミド姉!」

「ケンケーン!」

「いたた! いたたたた!」


 翠は動物型に変化(へんげ)すると素早い動きでおじいさんの顔めがけて飛んでいき、鼻やら目やらをバサバサと羽で叩きつけます。おじいさんは観念して捨て台詞を吐き、去っていきました。


「覚えていろよ! 十四歳がーー」

「誰が十四歳だこらーーー!!! 俺は二十歳だーーーー!!」


 おじいさんの捨て台詞に憤慨するが、おじいさんは行ってしまった。ふぅ、とにかく、このイヌを助けることができて良かった。うん、別に気にしてないし……。


「怪我はないですか? イヌさん」

「は、はい! ありがとうございます!」

「本当に良かったです。助かって」

 翔平がそう言いながら笑顔を向けると、イヌは頬を紅潮させます。


 ポッ


 イヌは恋に落ちました。犬なのに人間に恋愛感情を持ちました。


「(これが、これが運命だと言うの?)」


 イヌは微熱を帯びたような表情で、桃太郎を見つめます。しかし、それは緑色の他種族によって遮られます。


「翔ちゃん! 私、君のお姉ちゃんとして頑張ったよ!? だからまた頬ずりさせてーーー!!」

「確かに頑張ってましたけど、お姉ちゃんとしてですか!? 家来として頑張ってくださいよ! 鬼退治なんですからね!?」

「あぁーーん!! またお姉ちゃんってーーー! カハッ!!」

「あぁもーーーー! またですか!」


 翠は再び吐血しました。それに振り回される翔平。イヌはこの光景を見て、キジが自分と同じく桃太郎に好意を抱いていることを悟りました。

 むむっ。わたしだって、桃太郎さんとお話したいのに! イヌはキジに嫉妬しました。どうすれば、桃太郎さんともっとお話できるかな?

 そうだ! わたしも桃太郎さんと一緒に鬼退治に行こう! それがいいです! そしてゆくゆくは距離を縮めて告白するんです! イヌは決意を固め、桃太郎にお願いします。


「桃太郎さん! わたしもあなたの……」

「お姉ちゃん、幸せ……」


 キジは何やら恍惚な表情を浮かべています。イヌは、桃太郎の横に倒れるキジも気になりますが、意識を桃太郎に戻して話を続けます。


「お姉ちゃんにしてください!」

「……は?」

「なっ!!」


 キジに気を取られて言葉を間違えてしまったイヌ。ですがもう後には引けません。

 こうしてイヌも何故か姉となり、桃太郎は旅を続けることになりました。


 *


「ちょっと(もも)ちゃん! そんなに翔ちゃんにくっついていると翔ちゃんが歩きにくいでしょう!? もう少し離れないとダメ!」

「ミドちゃんだって、隙あらば翔平くんに頬ずりしたらだめだよ! 間違ってクチバシが当たったら痛いでしょ?」

「いいんです~。私は翔ちゃんの第一のお姉ちゃんなんだから、頬ずりが許されるんです~。クチバシだって今は人型だからそう簡単に当たりません~」


 旅をしながら言い争いを続けるキジの翠とイヌの桃果(とうか)

 どうしてこうなった。翔平は突然できた二人の姉に辟易(へきえき)しながら旅を続けていた。なぜ、普通の家来ができない……。いつの間にかモモも人型になってくっついてくるし……。これで鬼なんか倒せるのかな?


「ミドちゃん、第一のお姉ちゃんとか言っているけど、それは大きな間違いだって気づかないのかな?」

「どういうこと?」


 桃果は別に姉でいたいわけではないが、姉という設定は翔平にくっつくのに都合が良いということと、自分が翠より姉らしければ、翠を打ち負かせると考え、あえて挑発的にそう言った。


「翔平くん、もとい桃太郎さんは桃から生まれたんだよ? しかも、そのブランドの名前は桜井農園の『桃果』! わたしの名前と同じなんだよ!」

「それが一体何だって言うの? ただ同じ名前の桃から生まれたってだけじゃない!」

「甘いね! 桃の果汁以上に甘いよ、ミドちゃん! 何を隠そう、わたしの元飼い主はブランド『桃果』の生みの親なのよ!」

「そ、それが?」

「まだ分からないの? つまり、わたしの飼い主、つまり親が作り上げた桃から生まれた子供が翔平くんということは、親が翔平くんを生んだのと同義! ここまで言えば、もう分かるよね?」

「ま、まさか……!」

「そう、そのまさかだよ!」


 桃果は翠にニヤリと笑い、大きく宣言した。


「つまり、わたしと翔平くんは必然的に姉弟ということだよ!」

「まさか、義理の姉弟ですって……!!」


 何じゃそりゃ。屁理屈にも程がありすぎでしょ……。その理屈だと、親が作った桃から生まれたんだから、俺の親は桃ってことになるんじゃ……。桃太郎は冷静に論理的思考を行い指摘しようとする。が、やめた。めんどくさい。

 桃太郎はこれ以上の修羅場はゴメンなようだ。出生のことなど話さなければ良かったと後悔してももう遅い。


「ただの設定ってだけであるミドちゃんと違って、わたしは翔平くんの正式なお姉ちゃんなんだよ!」

「だからどうしたって言うの? 私は翔ちゃんに『お姉ちゃん』って呼んでもらってるんだからね!」


 いや、呼んでないから。「お姉ちゃん」じゃなくて「ミド姉」だから。何か勝手に呼んでいることにされても困るから。


「そ、そんなの関係ないよ! やっぱり現実は受け入れないと! ミドちゃんは姉じゃなくてあくまで家来よ!」

「それを言ったら桃ちゃんだって家来でしょ!? 私は一応敏捷性を活かして安全に偵察係もできるし、戦闘になれば鬼怒李流(おにどりる)も真っ青なドリルくちばしだってかませるんだからね!」

「犬の嗅覚と牙の鋭さを甘く見ないでよね! 索敵、戦闘はもちろんのこと、慈苦座熊(じぐざぐま)以上のものひろいスキルだって持っているんだから、有用道具の採取にも一役買うことだってできるんだよ!」


 ぐぬぬとお互い譲らない自称「姉」たち。聞いたこともない生物だけど、どこに生息してるんだ? 国の東地方かな? それとも南西地方かな?


 翔平は自称「姉」たちのそんなやりとりにうんざりして嘆息する。


「ミド姉もモモも喧嘩しないでくださいよ。鬼退治の仲間なんですから」

「「じゃあ、どっちがお姉ちゃんなのかはっきりして!」」

「どっちも違うから! 家来だから!」

「「そんな!?」」


 涙目となる鳥と犬。何だかこの家来、本来の目的見失っていない? てか、最初から自覚していたのかも怪しいぞ。


 仲間にする編成を間違えたかと若干の後悔をしながらも旅を続けていると、木の陰から一匹のサルが姿を現した。


「ちょっとあなたたち! 待ちなさい!」


 命令口調で翔平たちの足を止めるサル。サルにしては珍しく、頭部の毛並みが金がかっている。


「そこの桃太郎が持っているきびだんごとこの柿の種を交換してあげるわ! 感謝しなさい!」


 何故か上からな態度であるサルに対して、桃太郎は難色を示す。


「いや、別に柿の種とかいらないんだけど……」

「この柿の種を植えれば、毎日好きなだけ柿が食べ放題なのよ? いい話でしょう?」

「あ~、僕たち鬼退治の途中で育てる暇ないんで結構です。では」


 そう言ってサルに背を向けて再び歩き出す桃太郎一行。サルは眉を釣り上げて、


「待ちなさいって言ってんでしょうが!」


 どこからともなく取り出した渋柿を桃太郎の頭めがけて投げた。その渋柿は見事に桃太郎の後頭部に直撃する。


「痛っ!? 何すんだよこの金毛サル!」

「あなたが許可なく勝手に立ち去ろうとするからでしょう!」

「断ってるんだよ! 誰が柿の種なんか欲しがるかっての!」

「素直に交換しなさいよ! これだから聞き分けの悪いガキンチョは!」

「誰がガキンチョだ!! どう見てもお前の方が歳下だろ!」

「はんっ! その容姿でよくも堂々と歳上と宣言できたものだわ! あなた、自分の顔を鏡で一度見た方がいいんじゃないの?」


 この……生意気な金毛チビサルが……。


 ぐぅ~~


 突如、サルのお腹の虫が鳴きました。それを止めるようにサルはお腹を抑えます。


「~~」

「もしかしてお前、お腹空いてるの?」

「何よ! 悪い!?」

「はぁ~。もうちょい素直になれよ。別に鬼じゃないんだから、きびだんごくらい分けてあげるよ」


 そう言って翔平は呆れたように巾着からきびだんごを取り出し、サルに手渡します。サルはそれを勢いよく食べ終えると、


「あ、ありがとう……」


 とお礼を言います。お腹が満たされて落ち着いたのでしょうか、とても素直です。


「きつく当たってしまってごめんなさい。お腹が空いて苛立っていたみたいだわ」

「よっぽどだったんだろうから別にもういいよ」

「お礼に、あたしも鬼ヶ島に付き合うわ!」

「本当に? ありがとう! 頼りにしてる!」


 こうして桃太郎とサルの間で何やら友情のようなものが芽生え、桃太郎はようやくまともな家来を一匹連れることに成功しました。


「翔ちゃん、サルさんに粗相されたのにきびだんごあげちゃうんなんて、やっぱ優しいのね! お姉ちゃん誇りに思うわ! そんな翔ちゃんにお姉ちゃんからプレゼントよ! スリスリスリスリ」

「あ! ミドちゃん! どさくさに紛れてずるい! 翔平くん! 義理のお姉さんからもご褒美だよ! ペロペロペロペロ」


 キジはアホ毛をピョンピョンさせながら、イヌはしっぽをフリフリさせながら、それぞれ桃太郎の顔に頬ずりしたり舌で舐めたりします。

 サルと握手をしていた桃太郎は、メス二匹に囲まれる形となります。その様子を見ていたサルは、プルプルと手を震わせると、次には翠と桃果を引き剥がし、


「ウキーーーー!!」

「ギャーーー!!」

「翔ちゃーーーん!!」

「翔平くーーーん!!」


 そしてすぐ、翔平の顔に連続して引っかき攻撃を行います。引っかきを受けた翔平は地面に倒れ、左右に転がります。


「他種族のメスを篭絡して何ハレンチなことさせているのよ! この変態!」

「ギャーーー!! 顔がーーーー!!」


 翔平は顔の痛みに耐え切れず、サルに返答できません。相変わらず、地面を転がっています。


「違うわ! 私は翔ちゃんのお姉ちゃんなの! だからこういうスキンシップも姉弟のそれなのよ!」

「そうだよ! 正真正銘の義理の姉弟なんだから、何も問題ないよ!」

「まさか、サルさんも翔ちゃんのお姉ちゃんになりたいってことじゃないでしょうね!? それはダメよ! 翔ちゃんのお姉ちゃんは私一人で十分よ!」

「ミドちゃんは家来でしょ! 本当のお姉さんはわたしよ!」


 自称「姉」たちの言い争いに顔をしかめるサル。この動物たち、どっかおかしいんじゃないの? これはあたしが何とかしないと……。そうしないと、あの桃太郎に簡単によからぬことをされてしまうわ!


 サルは桃太郎と共に同行することを改めて決意しました。結局桃太郎は、まともと誇っていい家来を一匹も連れないまま、鬼ヶ島を目指すのでした。


 *

 

「ようやく着いた!」


 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


 鬼ヶ島に続く橋を渡り終えた一行。荒れ狂う海、乱れる天候の中、そうした効果音が聞こえてきそうな禍々しさで鬼ヶ島は存在していた。


 翔平はその凄さに圧倒され、それ以上続く言葉を失い、固唾を飲み込むしかなかった。



「犬なんて吠えるだけで何もできないじゃない! いざという時頼りになるのは鳥類よ! 制空権持ちの鳥類に勝てるものはいないわ!」

「人間の役に立てるのは同じ哺乳類の犬だよ! 実際、人間との同居率は鳥より圧倒的に高いんだから! 地上で暮らす人間の危機に迅速に対処できる戦闘力を備えているのは犬だよ!」

「ちょっとあなたたち! 言い争いはやめなさいよ!」


 翠と桃果はここが鬼ヶ島ということもお構いなしに、どちらが頼りになるか言い争う。それを人型に変化したサル、朱里(しゅり)が止めようとしているが、耳に届いていないのか、完全にスルーされている。


「言ったわね! だったらキジの強さを見せてあげるわよ! ケンケーン!」

「望むところよ! ワオーン!」


 そう言って二匹は人型を解除し、お互い動物型に変化した。


「我が必殺の奥義、高速神鳥(ごっどばーど)を食らっても同じことがいえるかしら!」

「そんなもの、わたしの超衝撃突進(ぎがいんぱくと)で返り討ちにしてあげる!」

「雰囲気ぶち壊しなんですけど!! ここが鬼ヶ島ってこと意識してくれません!?」



 必殺の一撃を放とうとする二匹に向き直り、涙目でそう訴える翔平。心なしか、旅に出た時よりやつれている。


「あなた、大変なのね……」

「うぅ。こんなの家来じゃない……」


 朱里はげんなりして翔平に同情する。最初は反発していた朱里だったが、この旅の中で翔平に同情を抱くほどの心変わりを見せていた。それほどに、翔平の苦労は凄まじかったのだ。


「ここはもう敵地なんですから、ミド姉もモモも緊張感持ってくださいよ」

「「はぁ~い」」


 不本意そうな声を出す二匹。目的地に到着したのにこの反応とか……。マジで別のキジとイヌにすれば良かった! 翔平の後悔は今や最高潮に達していました。


「さて、鬼はどこにいるんだ?」

「翔平! あれを見て!」

「ふふふ。よくここまで来ましたわね」


 朱里が指差した方向を見ると、確かにそこには人の形をしたシルエットがありました。シルエットは段々と大きくなり、やがて、その姿を現します。人間と同等の骨格を持つ人型の生物で、その鬼は見る者を魅了する美しい金髪を携えた女性でした。


「出たわね! お姉さま……、じゃなくて金髪鬼!」

「え? 今お前、お姉さまって言ったの? 何で? 何でサルの姉が鬼?」


 朱里は翔平の疑問をスルーしてぐぬぬと金髪鬼に向かい合います。


「ようやくここまで来たわ! あなたの悪行もここまでよ! 覚悟なさい、緋陽里(ひより)!」

「え!? ミド姉までなんで鬼の名前知ってるの!? 友達!? 友達なの!?」


 翠はそれまでとは一変して、ラストバトルにふさわしい態度で金髪の鬼に立ちはだかる。もちろん、翔平の疑問は耳に入ってこない。


「金髪の鬼さん! そちらは一人でこちらは四人! 圧倒的にわたしたちが有利ですよ!」

「ふふふ。確かにその通りですわね。それでは、悪いですけど戦力を増強させていただきますわ」

 桃果がそうやって金髪の鬼に対して強気に出ていると、鬼は不敵な笑みを浮かべた。ジリっと何が起きても対処できるよう、翔平たち全員は足に力を入れて鬼の行動を待った。


 鬼はどこからともなく小槌を取り出し、一回だけ振った。するとたちまち、鬼の隣が煙で覆われた。


「何だ!?」

「これは、『打出の小槌』といいまして、使用者が望むモノ・人を召喚することができる道具ですわ」

「それで、あなたの武器を召喚しようというわけね? それならそれが召喚される前にあたしの引っかきで!」

「おい! 無謀だ!」


 朱里は先手必勝とばかりに翔平の制止も聞かずに十数メートル先の鬼へ走り出す。


「あらあら。相手が悪かったわねぇ。朱里」

「どういうことよ!」

「あなたじゃなかったら、この打出の小槌も意味をなさなかったのに」

「?」


 朱里は鬼の言っている意味が分からなかったが、怯まずに突進を続ける。次第に煙が晴れ、人型のシルエットが浮かび上がる。

 しめた! 召喚するのが人なら、状況を悟られないうちに攻撃してしまえば戦闘不能にできる! そう思った朱里は、向かう方向を煙に変え、動物型に変化して爪の準備をする。


 朱里が爪を振り上げると、煙が晴れ、召喚された者が姿を現した。


「あ? ここはどこだ?」

「!?」


 中から現れたのは、整った顔立ちをした髪色の明るい青年だった。その青年は、白の軍服、黒のスーツパンツ、背中には赤のマントをつけ、西方の国にいそうな王子のような格好をしていた。

 

「何でオレ、こんなとこでこんな格好してんの?」


 召喚された青年自身も自分の状況がよく分からないらしく、辺りを見回している。と、近くにいた朱里と目が合う。


「あれ? 陽ノ下(ひのもと)じゃん。お前も何でそんなサルみたいな格好してんの?」


 いつの間にか、朱里は振り上げていた手を下ろし、攻撃を中断していた。


「朱里! 早くその男をやっつけろ! 強力な能力を持っているかもしれないだろ!」

「てあれ? あそこにいるのって翔平? あいつも何であんな格好してんの? ここってもしかして演劇の舞台だったりするのか?」


 翔平は朱里に向かって叫び声を上げるが、朱里は何故か青年を見つめたまま動かない。


「お……」

「お?」

「王子さまーーーーーー!!!」

「「「「えぇーーーーー!?」」」」


 金髪鬼以外の全員の声が重なる。朱里は突然目の前に現れた憧れの王子様に口をパクパクさせている。


「(あたしが大好きな本の理想の王子様そのままだわ!)」


 顔も、髪型も、格好も、すべてが朱里の理想を捉えている。朱里はこれが鬼の作戦ということに気づかず、ひたすら王子に目を奪われている。


「さて、王子様。ちょっと朱里を褒めてあげてもらえます?」

「は? あんた誰……陽ノ下、サル姿のお前も最高にキュートだぜ」

「ふぇ!?」


 青年は自分の意思とは無関係に、言葉を紡ぎだす。打出の小槌で召喚された者は、召喚者に服従なのだ!

 青年の言葉にみるみる顔を赤くし、目を渦巻きのようにぐるぐると回す朱里。


「さて、トドメと行きましょうか。王子様、朱里に口づけをなさってもらえますか?」

「何でそんなこと! むぐぐぐ……」


 青年の足が勝手に動き、朱里に近づいていく。朱里はアワワワワと近づいてくる青年に動揺しまくるのみ。そして、


 青年の唇が朱里のおでこに触れた!


「ひゃひぃぃぃぃぃぃぃぃ」


 おでこに口づけをされた朱里は、そのまま興奮のあまり地面に倒れた。


「朱里ーーーーーー!!」


 翔平は大声で朱里の名前を叫ぶが朱里が起き上がることはない。鬼はその様子を見て、ニヤニヤ笑っています。


「ふふっ、ご苦労様でした、王子様。もう結構ですよ」

「おい! てめぇふざけん……」


 ボンッ


 再び煙をあげて、青年の姿は消えた。戦闘不能になった朱里と金髪鬼だけが煙の周りにいました。


「これで、三対一ですわね」

「朱里ちゃんがあんなにあっけなくやられるなんて! 強い!」

「あれって、実は勝てたんじゃ……」

「強すぎる! 流石は鬼ヶ島の金髪鬼!!」


 翔平の主張は家来二匹によって遮られます。なんだか納得いかない翔平ですが、敵が強敵なのは事実! 気持ちを集中させます。


「翔平くん、ミドちゃん。一人で向かうと朱里さんの二の舞になる。ここは三方向から同時に叩こう」

「分かったわ!」

「よし」


 そう言って、桃果と翠は人型を解除し、それぞれイヌとキジに変化した。そして三人はお互いにバラバラの方向に走り出す。桃果は正面、翔平は右、翠は左だ。鬼もそれに合わせて正面に走り出す。


「う~ん。やっぱりまだ人数多いですわね。それでは次は桃果さん、あなたを無力化しましょうか」

「どうやってするつもりなのかな? そう簡単には……」


 と、桃果がそこまで言うや否や、桃果の方に向かってきていた鬼は桃果にしか聞こえないくらいの声で囁いた。


「桃太郎さんを好きなこと、ばらしちゃいますよ?」

「え!?」


 動揺した桃果の横を金髪鬼は見事にくぐり抜け、桃太郎一行の三方向からの攻撃は失敗に終わる。


「どうしたの、桃ちゃん? 攻撃を出せなかったみたいだけど?」

「だ、大丈夫だよ! ちょっと動揺しちゃっただけだよ! 次は上手くやるから!」

「あらあら。できますかね~。桃果さん、そこの岸壁に頭をぶつけてきてもらえますか? さもないと……ですわよ?」

「そんな安い挑発に乗るもんですか! 行くよ! 二人とも!」

「「了解!」」


 そうしてまた鬼に向かって突撃する三人。鬼の脅しになんて屈するものですか! 桃果は強い信念を持って、鬼に正面から向かいます。


「そうですか。それは残念ですわね~。では……」


 金髪鬼は翔平の方を向いて大声を上げ始める。


「桃太郎さ~ん! 実はですね! 桃果さんの好きな人っていうのは~……」

「ワオーーーーーン!!」


 やっぱダメーーー! 顔を真っ赤に染めながら、桃果は近くにそびえ立っていた岩に頭を打ち付けて自爆しました。


「キューン」

「「えぇーーーー!?」」


 その様子を見ていた翔平と翠は突然の桃果の奇行に驚くあまり、攻撃を中断しました。金髪の鬼は相変わらずニコニコと笑っています。二人は彼女が鬼ではなくて悪魔のように見えました。

 

「これで残るは二人だけですわね」


 金髪鬼は鬼の左にいる翔平の方へ歩き始めたかと思うと、いつの間にか翔平の横に移動してきていました。


「(早い!?)」

「翔ちゃん、危ない!」


 やられる! 翔平はそう思ったが、意外なことに鬼は翔平の腕に自分の腕を絡ませてきました。


「ふふっ。桃太郎さん……いえ、翔ちゃん。本当に可愛いですわ」

「え!? ちょっと!?」

「なっ……!!」


 翔平とは反対側に位置していた翠はそれを見て、唖然としています。


「ちょっと、何してるんですか!」

「どうです? 翠なんて姉に向いてないでしょう? わたくしが翔ちゃんのお姉さまになってあげますわよ?」

「お姉さまって! 密着しすぎですよ!」

「嫉妬深いキジなんかより、元々人型のわたくしの方が、翔ちゃんのお姉さんに適していると思いますけど?」


 翔平の腕に金髪鬼のたわわな胸が当たる。ハァ、最高! 何この感触! 大きくて柔らかすぎーー! 

 って、違う違う! これは鬼の作戦! 色仕掛けで俺を落とすなんて、考えが甘い! 今の俺は姉耐性が付いているんだから!


「ちょっと緋陽里ーーーー! 人の弟に何やってるのよー!」

「ダメダメな姉に代わって、わたくしが翔ちゃんのお姉さまになってあげようかと思いまして……」

「ダメダメじゃないわよ! 私は翔ちゃんの頼りになるお姉ちゃんよ!」


 どの口がそれを言うんだ……。一瞬そう思ってしまった翔平。一応心の中で謝罪しておこう。


「あら? イヌと姉争いを繰り広げる嫉妬深いキジさんのどこが姉らしいと? 姉たるもの、常に堂々と凛々しくいなければならないのでは?」

「そ、そんなことないわよ! 私の翔ちゃんへの愛情はそこらの姉とは格が違うんだから!」


 愛情あるならもう少し俺のこと考えて欲しいなぁ。今までの旅の出来事を思い出し、白い目で地面を見つめる翔平。


「そんなことより、何であなたは都の物品を奪ったりしていたんですか? 鬼ヶ島は大きい島なんですから、モノには困らないはずでしょう?」

「それはですね……」


 翔平は話を鬼の窃盗事件についてシフトした。金髪の鬼は、不敵な笑みを見せると、衝撃の回答を繰り出した。


「わたくし、可愛いものに目がないんですわ!」

「……はい?」

「都には鬼ヶ島で手に入らない動物の写真集などがありますよね? それを手に入れていたんです。ついでにゆるキャラとかのストラップも工場出荷前に全部強奪しましたわ」


 今いち緊張感に欠ける回答だった。てか、盗まれたのって作物とかお宝とかそういうのじゃないんかい! ぶっちゃけ大した被害ないじゃん!

 翔平は心の中でつっこみました。商人にとっては大損害とは分かっていながらも、鬼退治のモチベーションが下がる翔平でした。


「今度は、何を集めようかしら。でもまずは、そこの愚かにも姉を名乗るキジから、可愛らしい弟を奪ってから考えましょうかね」

「翔ちゃんはあなたに絶対渡さないわ! これでも喰らいなさい!」


 翠は、どこからともなく一冊の本を取り出し、鬼と翔平の横に投げた。鬼は投げられた本のタイトルを見て、目の色を変えた。


「そ、それは!! わたくしが探しても手に入らなかった全国のゆるキャラの情報を一冊にまとめ上げた、『全国ゆるキャラ大辞典初版3280円』!」

「桃ちゃんのものひろいスキルがこんなところで役に立つとは思わなかったわ!」


 鬼は翔平から手を放し、ゆるキャラ大辞典に向かって走り出す。それと同時に、翠は大気からエネルギーを吸収!


『みどりを はげしい ひかりが つつむ!』


「ハァーー! 夢にまで見た『ゆるキャラ大辞典』ですわ! ハッ!!」

「喰らいなさい! 高速神鳥(ごっどばーど)!!」

「やぁぁーーーーん!」


 翠の一撃により、金髪の鬼は倒されました。翠は人型に変化し、翔平の隣にスタッと降り立つと、腕を絡めて負けじと姉アピールをする。


「どう!? 私だって役に立ったでしょ? 頼りになったでしょ!?」

「そうですね。今回はミド姉の功績が一番大きいです」

「ふふっ。そうでしょ! 私、頼りになるお姉ちゃんですからね!」


 翔平はやれやれといった調子で嘆息すると、一番の功労者である家来に労いの言葉をかけた。


「本当にミド姉は頼りになる『お姉ちゃん』ですよ! 見直しました!」


 この後、翠が再び吐血したことは言うまでもなかった。


 *


 鬼退治を終えた翔平は、お供に連れた三匹の家来と共に家で祝賀会を開いた。


「最後に鬼を仕留めたのは私なんだから、翔ちゃんにアーンをするのは私よ桃ちゃん! その手を放しなさい!」

「ひとまず姉の座は譲るけど、それは譲れないよ! 大体、わたしの拾ってきた本がなければ倒すことはできなかったんだからね! ここはわたしが翔平くんにアーンをするのよ!」

「お付き合いもしていない女性にアーンさせるなんてあたしが許さないわ! あなたたちもうちょっと自重しなさい!」

「そう言って朱里ちゃんも隙を伺おうって魂胆なのね!? 朱里ちゃんじゃ翔ちゃんのお姉ちゃんにはなれないのよ! 年齢的に!」

「べ、別にそんなんじゃないわよーー! 何見てんのよ翔平! この変態!」

「ぐはっ! 別に何も変態な要素ないだろ! ふざけんなお前!」

「目つきがいやらしいのよ! 美女二人にアーンしてもらえるからってニヤニヤしてんじゃないわよ!」

「ニヤニヤしてないわーーー!」

「さぁ、翔平くん! これ食べて! 桜井農園で採れたブランド桃『桃果』だよ! これをわたしだと思って、さぁ! あ~ん!」

「ちょっとずるい桃ちゃん! それはお姉ちゃんの特権なんだから!」




 ……はぁ。俺と彼女たちの関係は桃太郎と家来なはず……だよね?


 ハーレムなのは嬉しいことなんだけど、二人ともちょっと姉主張が強すぎてついていけないっす。姉っていうなら、もうちょい弟の苦労を考えてくれないかな~?


 それでも、内心そこまで嫌な気分ではない翔平なのでした。めでたしめでたし。



 俺と彼女たちは桃太郎と家来なはず・・・」を読んでいただきありがとうございました! 個性豊かな面々が織り成す桃太郎の世界。いかがでしたでしょうか?


 この作品ですが、本編「俺と彼女の関係は設定上の姉弟なはず・・・」の番外編なのです。本編を読んでくれている方には、少し違った物語を楽しんでもらうために、新規の方には読みやすい短編として読んでもらうことで、本編に興味を持ってもらうために執筆したものです。何で桃太郎かというと、まぁ、みんな知っているだろうなと思いまして(笑)

 個人的には、キジとイヌの言い争いが割と好きです。急に「鬼怒李流」と言い出したときはびっくりしました。その流れで桃果にも同じようなことを言わせたりしたんですけど、まさか決着に関わってくるとは思ってもおらず……。もはや桃太郎じゃないですねこれ。ポ○モンですね、はい。


 とまぁ、何はともあれ、七乃瀬雪将という人物はこういった作品を書くというのを読んでくださった皆さんに知っていただけたなら、とても嬉しいです。本編や、本編の短編集「設定姉弟しょーと!」はまだまだ連載中ですので、興味がある方は是非ともページをめくってみてください! URLはこの短編のあらすじに書いてありますし、作者マイページからも飛んでいけると思いますので、どうぞよろしくお願い致します!

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