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17話 最弱冒険者、男友達できました

「いや~!! まさかこんなところで日本人に会えるとは!! 人生って分からないな!」

「全くだ! にしても、悪かったな。あんな地下牢に閉じ込めたりして」

「それはもう過去のことだ! 今日は飲もうぜ!」

「よっしゃあ!!」


 手錠を外してもらった俺たちは、飯ぐらい出させてくれとのことでハルトの城で酒を酌み交わしていた。


 日本では禁止にされてる未成年の飲酒も、この世界なら法に触れない。

 それどころか、酒の一つも飲めないとこの世界ではやっていけないと思う。

 まぁ、さすがにハルトの飲酒量は異常だが。


「おーい!! 樽ごと持ってこい!!」

「お、王様! これ以上飲まれてはお体に毒ですよ!!」


 ハルトは顔を赤く染め上げながら、テーブルを叩いて酒を要求する。

 

 もう俺の中での王族のイメージがめちゃくちゃなんだが。

 今のハルトは王族と言うよりはたちの悪い酔っぱらいに近い。

 というかただの酔っ払いだ。


「ど、どうなってるんですか・・・・・・」

「きっと、二人とも頭がおかしくなっちゃったのよ。放っておいてあげましょ」


 未だに俺とハルトが和解した理由が掴めていないクリーミネは、疑問を抱きながらも黙々と飯を食べている。

 翌朝に食糧庫が空になっていないことを願おう。


「ちなみにスカーレッド。お前の発言はちゃんと俺に聞こえてるからな。 俺の協力なしで地上に帰れると思うなよ?」

「わかりましたご主人様!」

「よろしい」


 凄まじいまでの掌返しで自分の分の皿を献上するスカーレッド。

 その姿を目にしても何のリアクションもしないようになったクリーミネとエールには、今度好きなものを買ってあげよう。

 

「で、マコト。お前どうやって帰るんだ? 間欠泉でも使って吹き飛んでいくか?」


 さっきまでの王族口調から、おそらく本来の口調である砕けた口調になったハルトは、酒を飲みながら言った。


「そんなことできるか! それ以外にないのか? 地上に行く方法は」

「火山の噴火に合わせて吹き飛ぶ」

「間欠泉で帰らせてください」


 酔っぱらいの言うことは、冗談なのか本気なのかわからないから怖い。

 だが、マグマと一緒に吹き出るくらいなら間欠泉に乗った方が大分ましだ。


「次にお湯が吹き出るのはいつなんだ?」

「三日後だな。それまでここでゆっくりしていけばいいさ。町の住人にはこの地上人は信頼できると伝えておくよ」

「それはつまり、観光できるっていうことですか!?」


 突然、勢いよく立ち上がるクリーミネ。

 見れば、その瞳は今までで一番輝いていた。

 二日間と短い間ではあったが、牢獄で過ごしたのが余程堪えたんだろう。

 クリーミネは、今すぐにでも外へ出たいと使用人に頼み込んでいた。


「地底で観光しながら城で生活・・・・・・すごい贅沢だよマコト!」

「ま、これくらいは当然よ。できれば財宝もあっていいわね」

「ハルト、スカーレッドは牢獄に送ってくれ」

「ごめんなさいマコト様~!!」


 スカーレッドの言葉に、城の使用人さんが早速顔を引きつらせている。

 すいません! 迷惑はかけませんから!


「あ、地底には結構強力なモンスターがウジャウジャいるから、国の外に出る時は俺を呼んでくれ。俺がなんとかするからな」


 酒をグイッと飲むハルトの顔は、自身に満ち溢れていた。

 俺としてはこの国の外にも地底が続いているのにも驚きだが、ハルトがそれほどの力を持っているのにも驚きだ。


「あれか? ハルトはあの殺人じじいに何かチート武器でも貰ったのか?」

「罰が当たるぞお前・・・・・・。俺は武器じゃなくてな、能力を貰ったんだ。武器だと無くしたり、奪われたりしたら終わりだろ?」


 なんて賢いんだろう。

 異世界に来た瞬間、すでに聖剣をロスト状態だった俺とは大違いだ。

 この脳を前の俺にも分けてほしい。


「で、能力とは?」

「見てな」


 ハルトはそれだけ呟くと、食事用のナイフを手に取り、大きなテーブルに乗っているリンゴに向けた。

 

「もしかしてあれですか!? 一瞬でウサギの形に切るんですか!?」

「そのどこがチート能力なんだよ・・・・・・」


「俺の能力は刹那に終わる。この能力を行使した瞬間、剣技において、俺は他の追随を許さない」


 俺たちが静かに見守る中、ハルトはリンゴを一閃した。

 どうってことはない。ただの一太刀。

 そう思っていたのだが。


 リンゴは次の瞬間、すりおろしリンゴのように切り刻まれていた。

 ハルトはリンゴを切ってから微動だにしていないし、誰もリンゴに触れていない。

 突然ぶれたかと思えば、気がつけばすりおろしリンゴになっていたのだ。


 そんな俺達にかまわず、ハルトは淡々と能力についてしゃべった。

 

「俺の能力は『千刀流』。俺の斬撃は如何なる時も千本の刃と化す。故に、剣技においては無敵。まさか、千本の刃を全部弾く化け物はいないだろうからな」


 ナイフを持て余すハルトは、この世界で誰よりも主人公らしかった。

 チートスキルとはなんて良い物なんだろう。

 そしてなんてかっこいいんだろう。


「すごいです! 魔法を使わないでそんなことができるなんて!」

「どっかの長ネギ王とは大違いね!」

「私とパーティ組まない?」


 チート能力を見た瞬間、目の色を変えてハルトについた奴らは埋めて帰ろう。


「お、俺は国王やってるからパーティはちょっと・・・・・・。ま、マコトは何貰ったんだ?」


 馬鹿三人衆に囲まれたハルトは、助けてくれと言わんばかりの目で俺に話を振った。

 三人は俺を一瞥し、再び目を輝かせる。

 

 なんだ、俺にチートがあればこっちにつくってか。

 早く言えってか。


「俺も貰ったよ。確か・・・・・・『聖剣エクスカリバー』って大層な名前の武器を」

「「「「え、エクスカリバーッ!!??」」」」


 声を張り上げ、大袈裟なリアクションをとる四人。

 俺はその姿を見て首を傾げた。

 

 何でそんなに驚くんだろう。

 確かに有名な剣ではあるが、ハルトの能力を見ればエクスカリバーも霞んで見えてしまう。

 だって、こっちは良く斬れるだけの剣だ。 

 千のカマイタチが襲ってくるような派手なもんでもない。


 首を傾げる俺の心情に気付いたのか、クリーミネは自分を落ち着かせるかのように水を飲み、ゆっくりと口を開いた。


「マコトさん。一応言いますが、『聖剣エクスカリバー』はこの世界最強の武器です。それを手にする者は、あらゆるものを断ち、あらゆる戦いで勝利を収めると言われています。ですが、その存在は伝承上でしか確認されていなかったはずなんですが・・・・・・」


 クリーミネは目を一層輝かせ、俺に尋ねる。


「エクスカリバーは、どこに保管してあるんですか?」

「無くした」

「「「「え・・・・・・?」」」」


 俺の即答に、みんなは脳内の処理が追いついていないらしい。

 

「だから、無くした。なんかスカーレッドの城辺りで、気がついたらなかった」


 俺の言葉を聞いたスカーレッドは、肩を震わせ始め、


「な、な、何やってんのよバカ――――――――ッ!!」


 ただの人間にはあまりに強すぎる拳を俺の顔面にめり込ませた。

 あいつ俺を殺す気かっ!!




◆◆◆



 深夜の大宴会が終わり、次の日の早朝。


 数々の嫌がらせを決行して疲れ切っていた俺は、クリーミネにベッドごとひっくり返されて、こんな早朝に起きる羽目になっていた。

 周りを見れば、スカーレッドとエールが眠そうに目を擦っている。

 こいつらも叩き起こされたのか。気の毒に。


「では、観光に行きましょう! せっかく地底を発見できたんです! 観光しなくて何をするんですか!?」

「昼寝に一票」

「「右に同じ」」

「みなさんはニートじゃないんですから・・・・・・」


 回れ右してすぐに城の部屋に帰ろうとするエールの服を掴み、そのまま元の位置に戻すクリーミネ。

 あいからわずの怪力だな。


「マコトさん。今、なんかすごい失礼なこと思いました?」

「はて。覚えがありませぬ」


 とぼける俺を一睨みし、クリーミネは城の方をちらちら見ている。

 なんか企んでいるのだろうか。

 うん、嫌な予感しかしない。


「地底の何処を見に行くべきか迷ったんですが、皆さん疲れていそうなので! 今回は温泉に行こうと思います」


 ・・・・・・何?


「確かに疲れてるから行こう。すぐ行こう。今すぐ行こう」

「温泉と聞いたら妙に元気になりましたね・・・・・・。ちなみに、聞くところではこの地底の開拓はあまり進んでいないそうで、混浴も多いそうですが・・・・・・。マコトさんの期待するようなことが起こらないように、男女別の所に行きますから」

「おい、クリーミネ。お前が俺のことをどういう風に思ってるかは知らんが、こう見えて俺は紳士だ。ということで安心して混浴に行きましょう」

「行きませんからね! 絶対にっ! 絶対に行きませんからっ!!」


 クリーミネは何度も釘を刺しながら、スタスタと荷物を抱えて城の門をくぐっていった。









「ねぇ、マコト。気のせいかしら、クリーミネが町の外に出ようとしているわ。余程の秘湯に行くつもりのようね」

「なぁ、スカーレッド。問題はそこじゃないと思うんだ。ハルトが言ってたろ? 外は危険だって。あのBAKAは何を考えてるんだろうHAHAHA!」


 街の通りをひたすら北上し、外へと続く門前で立ち止まったクリーミネ。

 心なしか町人の視線を集めているきがする。

 見慣れない地上人だからだろうか。

 でも、地上人を見ても騒がしくならないのは、おそらくハルトが町人たちに俺たちの存在を伝えたからだろう。

 持つべきものは友達だ。


「クリーミネ~!! 街を出るのは危ないって言われたけど・・・・・・もちろん出るよね?」

「むふふーん! 当たり前でしょう」


 なるほど。

 裏でクリーミネにコソコソ吹き込んでいる奴がいたのか。

 あの回復魔法スリリング中毒め。

 後でどんなことをしてやろうか。


「クリーミネ! 温泉に行くために死んだら元も子もないだろ? 一旦引き返してハルト拉致るぞ」

「マコト、私はその方が殺されると思うわ。一国の王様を拉致するなんて、クリーミネよりも馬鹿よ?」


 スカーレッドが俺に失礼なことを言ったので、振り返ったその時。


「じゃあ行きますよー!!」

「おー!!」

「「あ!!」」


 状況を読む力がナッシングな2人は、猛然と外へ繰り出していた。

 これ絶対怒られるやつだ・・・・・・。


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