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1話 ついてない高校生、神様にぶっ殺されました

処女作です。

頑張るんで応援よろしくお願いしますっ!



「お主は死んだ。だが喜ぶがいい。お主の能力を見込み、特別に転生を許可しよう」


 壁があるのかすら分からない、いるだけで気持ちが悪くなるこの真っ白な空間の中で、俺はそんなことを言われた。

 どうやら、俺は悪趣味な夢を見ているみたいだ。


 無理もない。


 思えば、俺は最近勉強ばかりしていた。

 親や先生からのプレッシャー、上手くいかない友達関係。

 それらのストレスがこんな夢を作りだしたのだろう。


 目の前にいるのは絶世の美女ではなく偉そうに玉座に座る老人で、俺の立っているところは真っ白な空間。

 しかも、夢の中で聞いた最初の言葉が「お主は死んだ」だ。

 なんと面白みのない夢だろうか。

 新たな冒険が始まる!とかならまだいいが、意識が覚醒した瞬間もう死体とはどういうことだ。

 滅べこの世界。


「最高神様、いまさっき意識が覚醒したばかりの青年に、そのようなことをおっしゃっても混乱を招くだけです」


 超ネガティブ思考の俺をよそに、玉座の横側の空間が弾け、バインダーを持った美女が姿を現した。


 よく見ると、長い栗色の髪の毛を耳に掛け、メガネをしている美女の顔はとても整っている。

 なんだ、良い夢じゃんか。

 てっきり、真っ白な部屋でおじいさんと出会ってお終い! みたいなふざけた夢だと思ったんだが。


 美女はバインダーに止めてあるプリントをパラパラとめくり、俺の情報を言い始めた。


「名前は大島マコト。年齢は16。趣味はなし。恋愛経験もなし。彼女も無し。成績優秀、運動神経も良いようです。これなら大丈夫そうですよ?」

「さりげなく中盤に悪口入れやがったな」


 失礼な解説を指摘すると、美女は笑顔で答えた。

 なんと美しい笑顔だろう。 

 この夢ならずっと覚めなくてもいいかもしれない。


「この仕事はストレスが溜まるもので」

「俺をストレス発散に使ったの!?」

 

 訂正しよう。この夢さっさと覚めろ!

 

 出会って数秒でおもちゃにされた俺をスルーし、美女はおじいさんにバインダーを渡した。

 どうしようコイツ殴りたい。


「転生先はどちらに?」

「例のところじゃ。その男、なかなか能力が高いからの。もしかしたら、やってくれるかもしれん」

「わ、わかりました。初期装備の方は?」

「聖剣クラスがないと厳しいじゃろうから、儂が用意しよう」


 なにやらゴニョゴニョ話しはじめる老人と美女の会話に耳を傾けると、「聖剣」とか「初期装備」とかファンタジーな言葉が聞こえて来た。

 なるほど、ここから冒険が始まるのか。

 今から三十秒後に獣耳美少女が飛び込んでくるわけだな。


「この夢がずっと続けばいいのに」


 ふと心の声が漏れた。

 俺はどうやら、自分でも気づかないところで現実に嫌気がさしていたようだ。

 そんな俺を見て、美女は困ったように口を開く。


「状況説明が不十分でしたね。いいですか。貴方は昨夜、塾からの帰宅途中に空から降ってきたノートパソコンに頭を強くぶつけ、即死しました」

「おいちょっとまて」


 さらっととんでもないことを口走った美女。

 あまりに淡々と言うその姿に、俺は美女の言葉が真実であると察する。

 だが、死因がおかしい。明らかにおかしい。

 ノートパソコンに殺されるとか、そんなダサい死因があってたまるか。

 

 俺は幼少の頃から精一杯生きてきた。

 取り柄なんて一つもないし、大して顔がいいわけでもない。

 でも、精一杯努力してまともに生きてきたつもりだ。

 一日の時間の大半を勉強に使い、週7で塾に通った。

 運動不足を治すため、毎日毎日早起きして走りこんだ。

 辛かった。苦しかった。でも、明るい将来のため、俺は頑張り続けたんだ。

 それなのに・・・・・・


「それなのに、なんでそんな100%ネタな死に方しないといけないんだよぉぉ!!」


 気付けば叫んでいた。俺の魂の叫びはこの無機質な空間では誰にも届かない。

 誰も同情してくれない。

 そう思っていたが、以外にも反応を見せた人物がいた。それは偉そうな老人だ。


「・・・・・・だってイラッと来たんだもん」

「へ?」


 行き場のない怒りを叫ぶことで抑え込んでいた俺に、老人は涙目で呟いた。 

 

 さっきまで偉そうに語っていた態度はどこへ行ったんだ。

 なんかいい年した老人が気持ち悪いんだけど。


「だって儂何もしてないよ!? 何もしてないのにMPKって・・・・・・あんまりじゃないかァァァ!! 怒ってノートパソコン投げたっていいじゃないかァァァ!!」


 MPK? ノートパソコンを投げた?

 ちょっと待て。頼むから待て。


「おい。それはつまり、お前がイラついてパソコンを投げたせいで俺は死んだのか」

「違う! MPKのせいだ! 儂は悪くない!!」


 なんということだ。

つまり、この老人はネットゲームでMPK――――-モンスター・プレイヤー・キルをされ怒り狂い、憂さ晴らしにパソコンを投擲。

それがどういうわけか俺の頭に直撃した、ということか。

くたばれこのじじい・・・・・・!!


「さっさと俺をもとの世界へ返せ。そして賠償金だ30億」

「どこの詐欺師!? 儂だってできたら返しておるさ! でもできないのだ。おとなしく死んでいるか転生するか選べ若造」

「お前何様!? 俺被害者なんだけど! 誠意を示せよ老害!」

「ろうがっ、貴様! 神の頂点に向かって老害だと!! もういい! お前を適当な世界にふっ飛ばしてやる!!」


 涙目の老人はそう叫び、手を大きく横へ振った。

 すると、手が通り過ぎた空間が歪み、ブラックホールのような風穴に変化する。


 ふっ飛ばすだと? 冗談じゃない。

 これ以上この老害に人生邪魔されてたまるか!


 俺は急いでブラックホールに背を向け、地面を蹴って逃げた。

 ここで逃亡に失敗すれば自分がどうなるかなんて、そんなことは容易に想像がつく。

 それだけは避けなければいけない。


 俺は必死に地面を蹴り、少しでもブラックホールから距離を置こうとする。

 が、老人の作りだした風穴は、人間ではとても耐えきれない程の引力を有していた。


「え、ちょ、タンm―――――――-」


 俺は老人に風穴を消すよう訴えかけようとするが、その前に俺の足場が崩れた。


「うっそだろぉぉぉぉぉぉ!?」

「ちょっと待ってください!! せめてこの聖剣『エクサカリバー』を!!」

 

 俺の視界がブラックホールに飲み込まれ、気持ちの悪い浮遊感が体を包み込む中。

 俺が最後に見たものは金色の剣を放る美女の姿だった。







◆◆◆






 視界を包み込んでいたブラックホールに突如光が差し込み、光が見えたことに喜ぶ間も無く俺は全身に強い衝撃を感じ取った。


「いっでで・・・・・・」


 頭をさすりながら、俺はゆっくりと体を起こす。

 体を確認するが、大きな怪我はしていないようだ。

 どうやら二度もあのじじいに殺される事態は回避できたらしい。


 現在地を確認するために、俺は辺りをぐるりと見渡した。

 血のように赤いカーペッドに、気味の悪い絵画。

 蜘蛛の巣が貼ったシャンデリアや、目の前にはやたらとデカいドア。

 後ろは終わりが見えない廊下がつながっている。アメリカのホラー映画みたいだ。


「あっ、聖剣がない」


 俺は消えた聖剣に気付き、慌てて足元を見まわす。

 が、聖剣は影も形も無くなっていた。

 最悪だ。

 あの殺人くそじじいに飛ばされた意味わからない場所で、唯一俺の味方をしてくれるものなのに!


 もうこうなったらやけくそだ。

 聖剣はなかった。きっとそうさ、あれは幻想だったんだ。


「ここにいても始まらん。おじゃましますよー」


 聖剣のことは一旦おいておくことにして―――――――というか存在を脳内から消去して、俺は目の前のドアノブに手をかけ、ドアを開けた。


 そっと中を覗くと、中は真っ暗闇で何も見えない。

 だが、ドアの開く音が響いていたからそれなりに広い部屋なのだろう。

 正直奥に進むのは怖いが、引き返しても長い廊下があるだけだ。進むしかない。


 ため息を吐きながら、俺は部屋に一歩踏み出した。


 その瞬間。


 ボッと青色の炎が部屋の両サイドで噴き上がり、部屋の奥まで走って部屋を明るく照らし出した。

 RPGのボス戦のような使用だ。この家の主はそういう類のゲームが好きなのだろうか。

 俺はゲームが好きな方の人間だし、だったら案外話が通じるかもしれない。


 そう思っていた俺が馬鹿だったんだ。


「汝、この魔王の城にようこそ。我が配下を下し、よくぞここまでたどり着いた」


 いきなり声が響き、俺は思わず飛び跳ねる。

 部屋が真っ暗だったため、誰もいないものだと思っていたが、そうでもなかったようだ。


 俺は声の主を確かめるべく血のように赤いカーペッドに沿って視線を走らせ、部屋の奥を見た。


「我としては今ここで・・・・・・このキャラ疲れるからもういいや。私としては今すぐにでもあなたと戦いたいんだけど、一応マニュアル通り聞くわ。私と組んでこの世界を収める気があるなら、世界の半分をあなたにあげる。どうする?」


 俺の視界に入ったのは女だ。


 趣味の悪い骸骨の模様があしらわれた椅子に偉そうに腰かけ、肩まで伸びたスカ―レッド色の髪を耳に掛けるその仕草は一見優雅だ。


 しかし、世の男性諸君はここで騙されてはいけないよ?


 この女、部屋に客人が来たというのに先ほどから足を組んで直さない。終いには肘をつく始末だ。

 断言しよう。この女は見てくれだけの残念な奴である。


「ねぇ! ちょっと聞きなさいよ! あ、私を目の前にして緊張のあまり固まっちゃった? 逃げたくなったら逃げなさい? まぁ、相当かっこ悪いけどね。プッププー!」


 まだ俺は一言も発していないのに勝手に一人で盛り上がる女に、俺は無意識に額に青筋を浮かべる。


 しかし、ここで感情に任せて女をぶん殴るほど俺も馬鹿ではない。

 俺は今すぐにでもあのジジイに再会し、同じようにノートパソコンをぶん投げたいのだ。


 ということで、俺はこの場から退散することにした。


「あ、じゃあ、逃げますんでさようなら。おじゃましましたー」


 軽く会釈し、右回れ右。

 最大限コンパクトに最低限のセリフを棒読みで言い切り、俺は部屋の扉を開け、外に出ようとした。

 しかし。


「す、すいませんでしだ~!!話を聞いでぐださい~!!」


 さっきまでのキャラを音速で木端微塵にした女が俺に抱き着き、俺を強制的に静止させる。

 つーか筋力強いなコイツ。


 人を小馬鹿にした発言に、上から目線の態度。正直、こんな奴の話を聞く道理などない。


 だが、ただの気まぐれか。それとも見てくれのいい女に抱き着かれたからなのか。俺は話を聞いてやろうと立ち止まってしまった。








 後に俺は、この時何で止まってしまったんだろうと何度も何度も後悔することになるのだ。







 あんの自爆魔がぁぁぁぁぁ!!!




読んで分かる通りの作品です。

一応ファンタジー小説ですが、シリアスはそこまで多くありません。

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