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死体

 二階の廊下は東西に伸びており、片側には窓が、その反対側に部屋の扉が続いている。


「一部屋ずつ見る?」

「そうだな。怪しい部屋があれば、そこだけでも調べてみるか。本当は、あまりこんなことはしたくはないが」


 ついさっき、サーラが寝台の台枠の隙間から紙をみつけたという前例があり、調べずに去ることを選ぶのは難しかった。

 他にもなにか手がかりが見つかるかもしれないと考えてしまうのだ。 


 まずは廊下の右側から、先ほどの部屋の隣、更にその隣と見てゆくが、特に気になるものはない。


 室内はおそらく、事件のあったときのままなのだろう。

 来客用の部屋はきれいに整えられた状態だが、伯爵夫妻の部屋、兄妹のものと思われる部屋の家具などには使用中だったのだろうと思われる痕跡が残っている。

 しかしそれらの上には埃が積もり、最近触れた様子はない。


 ふたりは引き返し、続けて左側の廊下に並ぶ部屋を見る。


 これまでと同じように部屋を確認してゆく。

 三番目の扉を開けたとき、ツァルの動きが止まった。


「ツァル?」


 ツァルの後ろにいたサーラは、どうしたのかとツァルの脇から部屋の中をのぞく。

 扉を開けてすぐの場所に、横たわっている人の姿が見えた。


 ひっ、とサーラは短く息を吸った。


「サーラ、見るな」


 ツァルが自分の体でサーラの視界を遮ろうとする。


「どうしたの? 大丈夫? 早く助けないと……」

「もう遅い。死んでる」

「えっ……」


 うつぶせに倒れ、頭は反対側を向いているから、顔は見えない。けれど床には赤い血が見えた。

 かなりの量だ。

 一階にあった黒い滲みとは違い、ぬらぬらとした血が体の下から広がっている。 


「ここで待ってろ」


 ごくりと唾を飲みこんで、ツァルが室内に踏み込む。

 サーラはついて行きたい気持ちと、恐怖とが胸の中でせめぎあい、結局一歩を踏み出すことができなかった。

 突っ立ったまま、ツァルを見守る。


 その死体は男性の服装をしていた。

 フェーン・リュートだろうか、とサーラは疑う。


「知ってる人?」

「いや、知らない」


 腰を落とし、顔を確認していたツァルが平坦な声で答える。


「殺されたの?」


 サーラの声は微かに震えている。


「この状態じゃあ傷が見えない。けれどここに落ちている剣には血がついていないようだ」

「自殺じゃなさそうね。じゃあ、さっき出て行った人が犯人かもしれないってことだわ」

「その可能性はあるだろうな」

「どうしよう。誰かに連絡を……」


 そのとき、階下で複数の足音が聞こえた。


 まずい。


 さあっと血の気がひいた。

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