原チャリ爆走ペーパードライヴ
※作者は車を運転したことがありません。免許も持っていません。
2XXX年、世界の交通事情は混沌の様相を呈していた!
「うへ、へへへへ、俺は免許持ちだぞ……俺が道路の王者なんじゃい……」
バンパーの代わりに電ノコ、ライトの代わりに火炎放射器を装備し車体を鋭利な針でおおわれたアサルトワゴンR。その運転手である男は血走った眼をギョロギョロさせながら辺りを伺い走っていた。
「ァッ……見つけたぜ今日の獲物をよぉおおおおおおお!!!!」
その目がとらえたのは『BABY IN CAR』のステッカーを付けた軽自動車、しかも武装もしていない自らを弱小種であると宣言する愚か者だ。中の様子を見ると赤ん坊と母親だけが乗っているようだ。
男は凶悪な笑みを浮かべて赤ん坊入りの高速棺桶の横につける。
「フーンフフーン。アラ? 何かしら……イヤァァァァアアアアアアアアアアア自動車ヤクザよぉぉぉおおおおおおおおお!!!!! 一般車両から免許を強奪して回る自動車ヤクザよぉぉぉおおおおおおお!!!!!」
「オラッ死ね! 弱者は公道から出ていけ!」
ガンガンと車体をぶつけダメージを与える男。抵抗する武器を持たない母親は持ち前の運転技術だけでなんとか回避しようとする。
しかし前へ出ようとすれば男の車のアームが電ノコバンパーを振り回し先をさえぎる。さりとて減速しようものならそのまま引きずりおろされてミンチになること必至だ。
「やめてええええええええ赤ちゃんが乗っているのよ赤ちゃんんんんんんんんん!!!!!」
「ケッ! 知るかボケ! 公道はなぁ戦場なんだよ! 助手席の奴も、後ろで座ってる赤ん坊も爺も初心者も! 誰も助けちゃくれねぇ! 頼りになるのはてめえとてめえの車だけなんだよぉおおおおおおお!!!!!」
「イヤァァァァアアアアアアアア!!!!!」
母親とあかちゃんの車は走行不可能となり煙を吐きながらひっくり返った。
獲物をしとめたアサルトワゴンRから降りた男はずるずるとはい出てきた親子を見下ろした。
「お、お願いします……免許証でも何でも差し上げます……ですから息子だけは……」
「ほーう、殊勝な心がけだ。よこしな」
そういって母親からカードケースを取り上げる。
「ブルーの更新3年タイプか、ハズレじゃねぇか。他にめぼしい免許はねぇのか……」
舌打ちをしながら吐き捨てるようにつぶやく。イライラして足をゆすりながらギョロギョロと視線を動かしケース内のカードをチェックするも免許証は最初の一つだけだった。
「スーパーファミコンが4000円安くなるクーポン券なんか持ち歩いてんじゃねぇぞコルァ!!!!!」
「ヒィィィイイイイイ! 赦して赦して」
「死ねやあああああああああああああああああああ!!!!!!」
改造発炎筒を親子の車にぶち込んで自分の車に戻る男。
親子の車は爆発四散しアスファルトと一体になった。
「初心者マークのザコも、シルバーのジジイも、クソ親子連れ共も、すべては俺のために免許を運んでくるための養分なんじゃ……ふへふへ、へへへ」
不気味に笑いながら車を発進させる男。この男にとってブルー免許は通過点に過ぎない。もっともっとたくさんの免許を集め、ゆくゆくはゴールド免許を手に入れすべての道路の王になる。この自動車戦国時代の誰もが持つ野望をこの男は持っていた。
――自動車戦国時代
2XXX年初頭、自動車運転AIの技術にブレイクスルーが起き、人間による運転は無用のものとなった。すべての教習所の教官は職を失い暴走族は行き場をなくし世界中のハンドルがブロッコリーに差し替えられた。
そんな世界の体制に反旗を翻した暴走族や教習所の教官やタクシードライバー、名古屋の荒くれものとその他自称運転上手い族の男たち、自動車ヤクザ達は各国の交通を牛耳る機関を占拠し、自動運転に関する技術を、それに関わる技術者を軒並み排斥してロストテクノロジーにしてしまった。そして新たに免許を持つことを禁止し、AI導入期以前に免許を持つ者こそが最も権力のある社会体制を築いたのだった。
後に自動車戦国時代と呼ばれる現在、公道は免許のある者たちの免許を奪いあいの戦場と化している。無免許たちは免許持ちの気まぐれで轢かれないかビクビクと脅えながら唯一の公共の交通機関であるバスによる移動を余儀なくされている。
電車? 東京湾に浮かんでるよ。
「今日の収穫はブルーの5年3枚と3年が1枚、グリーンが1枚か……まぁまぁだな」
時速180kmを超えたスピードで公道を走る男。気まぐれに歩道の市民を電ノコアームで八つ裂きにしながら進んでいると後方からサイレンの音が聞こえてきた。
「ケッ、ポリ公かよ……厄介なのに見つかっちまったぜ。俺が国家権力ごときに従うと思ってんのかクソが……」
「そこの改造車停まりなさーい。ゆっくりスピードを落として停まりなさーい」
男の車のスピードを超える速さで追従したポリス車両が男の車を制止する。男は大人しくスピードを落とした。
2台の車が停止するとポリスが車から降りて窓をコンコンと叩く。
「へへ、どうもポリスさんお勤めご苦労様です」
窓を開けた男は手をもみながらへこへことポリスへ頭を下げる。
「君ィ、今の運転は何だね免許証見せたまえよ」
高圧的な態度で問い詰めながら懐から大量の赤切符を漁り出すポリス。はなから見逃すつもりはさらさらなくどんな言い訳をされようが罰則で免停にしてやろうという気配を隠そうともしない。
おかめ納豆みたいな顔をした男はポリスが地面に赤切符をこぼすのもお構いなくカードケースから5枚の免許証を取り出す。
「うへ、いやこれ免許証です、これくらいでどうすかね、へへへ……」
受け取ったポリスもおかめ納豆みたいな顔をして満足する。
「ほほう、どうやら違反のように見えたのは私の間違えだったようだ。今後も安全運転を心がけたまえよ」
「へへ、そりゃもう、もちろんです、もろちんもろちん」
警察は去った。免許証はパワーであり権力だ。どれほど横暴の限りを尽くそうとも免許証さえあれば赦される。それが自動車戦国時代。
都内のとあるバスの停留所は重苦しい雰囲気に包まれていた。誰もが下を向きぶつぶつと恨み言をつぶやいている。
バスを使うのは無免許だけ。これはこの時代の一般常識だ。免許を取らなかったり取れなかった者や他者から免許を奪われたもの、免停を喰らったもの達に残された最後の選択肢がバスなのだ。
そんな底辺の掃きだめのような場所に黒い外套をかぶった男が並んだ。無免許人は目をつけられないように目立たない服装をするのが常だがこの男の真黒な衣装は遠目からでもかなり目立つ。
おそらく免許を奪われたもののまだ免許人気分が抜けていない愚か者だろう。周りの人間はそう断じて目を合わせないようにしていた。
停留所にバスが到着する。待っていた人々がぞろぞろと乗り込み黒い外套の男も後に続いた。
バスの中はがらんとしていた。黒い外套の男が最後尾を陣取る。その周囲に座っていた人間は厄介ごとに巻き込まれることを恐れて前の席へと移って行った。
バスが発車すると車内は停留所の比ではないほどの陰鬱な空気が立ち込める。皆自分が免許を持っていない理由や免許を奪われたときのこと、それでどれだけ不自由しどれだけ大切な人失ったかを話し合い傷をなめ合うのだ。
「俺のねぇちゃんさ……俺たち家族の分まで頑張るって……みんなを守るって言ってたんだ……それがあの日……通勤中に自動車ヤクザに襲われて……」
「AT限定に人権がなくなるとは思ってなかった」
「俺も昔は自動車ヤクザだったんだが頭にバンパーをぶつけられてしまってな……」
「なぜおまえたちは嘆いている」
いつも通りの風景のはずだった。その日変化を与えたのは黒い外套の男だった。
問いかける男に対して周囲の人間は空耳のふりをして一斉に窓の外を眺め始めた。
「なぜ抵抗しない、なぜ立ち上がらない。今が苦しいのなら、立ち向かえ。AIに反旗を翻し、戦国時代を築いた自動車ヤクザのように」
車内の空気が重苦しくなった。いや、今までも十分重苦しかったのだが別種の重苦しさに代わっていた。いうなればまだ電車が動いていた時代、これから数十分は次の駅に止まらない電車の中で自分の近くにちょっと頭のおかしい人がやってきて騒ぎ始めたときのような重苦しさだ。
――誰でもいい、何とかこの空気を打破してくれ――そんな願いが通じたのか、キチガイを軽んじたことで神の怒りを買ったのか、とつぜんバスの車体が大きく揺れた。
「なんだお!」
「見ろォ! こっちの右側に!」
「あ、あれは……アサルトワゴンR! 最近この辺で力をつけてきてる自動車ヤクザだ! バスの運転手の免許を奪うと同時に俺達無免許人を痛めつけようとこっちを狙ってる! 電ノコアームでものすごい殴ってくる! めっちゃ揺れる!」
「クケケケケケ! クケ、クケココココ!」
先ほどポリスから免許証を5枚も奪われて気が立っているアサルトワゴンRの男は車体に備え付けられた鋭利な武器を振り回してバスを攻撃してくる。
残念ながら無免許人を乗せるバスに武装を積むことは自動車戦国時代では許されていない。この時代においてバスは目をつけられれば死は確実の動く集団墓地と同義だ。
「やめろォ! 死ぬゥ!」
「もうだめだ、おしまいだぁ……」
乗客が嘆いているとアサルトワゴンRはバスの後ろにつけた。
何をするのか動揺する乗客。そんな無免許人をあざ笑いながら男はハンドルを押す。
「ココココ、火炎放射器で焼き殺してやるぜ!」
「イヤー! こんがりとピンチに!」
「助けてくれぇ!」
バスの内部の温度が上がっていく。このままでは皆蒸し焼きにして殺されてしまうだろう。
そんな絶体絶命の中、今までじっと動かなかった黒い外套の男が立ち上がり運転席まで歩いて行った。
「運転手よ、このバスの上を借りてもいいか?」
「うん」
了承を取り付けると黒い外套の男はフロントガラスをぶち破ってバスの上部へと躍り出た。
「なんだぁ? てめぇは」
「自動車という強い立場に居ながら交通弱者を痛めつけるお前を俺は絶対に許さん」
バスの上から黒い外套の男に見下されアサルトワゴンRの男は怒りに震える。
「ケッ、お前は免許持ってねぇだろ。俺はいっぱい持ってるからな、俺が一番偉いんだよ道路で……免許持ってるやつが一番偉いんだよオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
「愚かな……力に溺れ勘違いをした貴様に、罰を与える!」
憐れむ男が前に手をかざす。男の手にはどこからともなく光の結晶が集まりはじめ始めまばゆく輝き、光の球体を作り出した。
「我が戒めの封印よ、今楔を解き放ち、力となれ!」
――封印されし疾走する力!!――
「な、なにィ!? 貴様免許を!?」
球体を砕くと外套の男は大きな光に包まれた。
「おお、あれは!」
「知っているのか爺さん!」
「うむ、あれはペーパードライヴ。昔、自動車を運転する力を持ちながらもその大きすぎる力を制御することができない者たちが居た。彼らは周囲の人間を傷つけぬようその大いなる力を自らを戒めるために封印したのじゃ。彼らは追い詰められ、必要に駆られたときのみ、その大いなる力を解放する。それがペーパードライヴ!」
まばゆい光の中から二輪車に乗り外套の男が現れた。外套の男はバスの上からそのままアサルトワゴンRへダイビングアタックを敢行する。
「ヘッ! しゃらくせぇ!」
アサルトワゴンRのアームが二輪車を弾き飛ばす。ようやく相手の姿を確認したワゴンの男。相手の目を見てワゴンの男は頭ではなく心で理解した。こいつと俺は同じ世界では生きられない、こいつだけは絶対に殺さねばならぬと。
「自信満々でフッかけてきたかと思えばてめぇのは情けねぇ、バイクですらない原チャリじゃねぇか!」
「車乗りの強さに車種は関係ない」
「バカかてめぇは! 車乗りにとって力とは車と免許! てめぇのペーパーなんたらと何の武装もねぇ貧弱原チャリにこの俺が負けるわけねぇだろうが!」
アサルトワゴンRの電ノコアームとヘッドライト型火炎放射器が原付を襲う。
しかし外套の男は原付を巧みに操りそれを回避していく。
「すげぇ蛇行運転だ! ありゃ普通の免許持ちにはまねできねぇぜ!」
「あれが前方に居たら死ぬほどイラつくだろうな」
外套の男は激しい攻撃を縫うように交わし、周囲の流れに乗らない天衣無縫の運転技術でワゴンRの刃物がついていない部分に体当たりをしていく。
「猪口才な!」
「車の性能にかまけて技術を磨かないからこうなる」
「てめえは車にすら乗ってねぇだろ!」
だがしばらくの攻防を続けると原付の動きが鈍くなってくる。攻撃の回避も紙一重といったものばかりになり始めた。
「や、やばい! あの黒い原付の人、押され始めた!」
「うぅむ、ペーパードライヴは大きな力を得る代償に体に多大な負担をかける。原付ごときでアサルトワゴンRに立ち向かえるほどのパワーをいつまでも維持できるはずがなかったのだ」
「ど、どうすんだよ……あいつがやられちまったら俺たちも……」
原付が苦戦し始めるとバスの乗客たちも浮足立ってくる。このままでは全滅必至だ。
しかしそんな絶体絶命の中で、普通に生きることを諦め、ただ虐げられるだけだった人々の心境に変化が表れ始めた。
何か、何かないのか。自分たちにできることが。
そんな逡巡の最中、とうとう原付が捕まった。アサルトワゴンRの電ノコアームは外套の男ごと原付を鋏み込んでいる。
「ぐ……!」
「ふへへへへ、散々イラつかせてくれたが、これで止めだあああああああ!!!」
捕まえた原付を火炎放射器で焼き尽くす。
「ぐあああああああああ!!!!!」
苦痛に叫び声をあげながらも抵抗を続ける。最期の力を振り絞って電ノコアームを脱出し前に出る。しかし外套の男はもはやトレードマークの外套をも焼き尽くされこれから地の文でどうやって表現すればいいの。
「最後の力で前に逃げたか……だが少し寿命が延びただけだ。このままひき殺してやらぁぁぁぁああああアアアアアアアア!!!!」
しかし速度を上げようとしたワゴンRの前に大きな影が飛び出してきた。
「な、なんだ!? クソデカいバナナの皮!?」
回避しようとハンドルを回すも速度を上げたワゴンRは回避しきれない。バナナの皮らしきものを踏みそうになった瞬間、男はそれを見た。
「ち、違う! これはバナナじゃねぇ! 背中合わせに座ってバナナっぽく見せたバスの乗客共だ!」
「そうだ! 俺たちはあの外套の人……いやノー外套の人みたいな力はない! だけどこうやって人間スリップバナナとしてお前を妨害することはできる!」
「く、クソッタレがぁぁぁああああああアアアアアアア!!!!!」
人間スリップバナナを踏み潰したアサルトワゴンRはスピンして減速してしまった。それを見てバスの乗客たちは人間緑の甲羅や人間偽アイテムボックスとして特攻していく。
「この程度でやられるほどやわな車じゃねぇんだよ!」
所詮は生身の人間の体である。片っ端から引きちぎられては投げ捨てられていくバスの乗客たち。しかし彼らの目的は別にあった。
「頼むノー外套の人! 俺たちが時間を稼いだ居る間に逃げてくれ! あんたは俺たちの希望だ!」
彼らはノー外套の男に希望を見出していた。この男なら、無免許人も大手を振って歩ける世界を取り戻してくれる。そのための時間稼ぎとしてその身を投げうつ。例え命を失ったとしても!
――ノー外套の人!
――がんばれノー外套の人!
――NO・GAI・TOH! NO・GAI・TOH!
免許を持たざる人々の希望が、ノー外套の人に集まっていく。
年齢が足りず免許を取れなくて家族を失った少年、免許更新をサボって免許を取り上げられた青年、息子に勝手に免許を返納されていた爺さん、皆の希望が、ノー外套の人に力を与える。
――息子よ――
そして最後に、彼に運転の力を教えてくれた今は亡き父親が。
――息子よ、よく聞け。父さんな――
「父さん、ネズミ取りにつかまっちゃった」
「うぉぉぉおおおおおおおオオオオオオオオオオオOOOOOOOOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!!!!!」
――解放されし疾走する力!!――
先ほどまで黒焦げだった原付は真新しい新品の原付に生まれ変わっており、神々しい金色のオーラを放っていた。
「な、なんだ! さっきよりもとんでもないパワーが!?」
「運転する力は他人を蹂躙するためにあるんじゃない! 人々がお互いに譲り合い、心地よく道を通れるようにするためにあるんだ! それを理解せず迷惑ばかりかけるお前を、俺は絶対に許さねぇ!」
「な、なんととてつもないパワーじゃ、完全に原付の制限速度を超えておる!」
「凄いパワーだ……いけー! ノー外套の人!」
「これで最後だ! 行くぜ俺の原付! 制限速度超過衝撃破!」
「く、クソッタレが! 最後になんのはてめぇだぜぇぇぇええええええ! 火炎放射だああああああああああああ!」
猛スピードで前を走っていた原付を180度回転させアサルトワゴンRと対峙する。金色のオーラを更に吹き出し一気に突っ込んでいく。
対するアサルトワゴンRのほうも最大出力の火炎放射で迎え撃つ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
ぶつかり合うパワーとパワー。巨大な爆発。そして――
「へっ、まさかこの俺が、免許取ってからろくに運転してない野郎に負けるとはな……」
「お前と俺では覚悟と信念が違った。もしお前が正しい運転する心を、教習所の学科の授業を受けていたころの心を持っていれば、俺も危なかった」
「そうか……俺学科ほとんど聞いてなかったな……ノートの端に落書きばっかしてて……」
「なあお前……いや、ノー外套。違ったのかな……俺、もっとちゃんと学科の授業受けてれば……まっとうに生きられたのかな……」
夕日を見ながら語り合う二人。どちらの車も粉々に砕けて治すこともできそうになかった。バスはさっさと目的地に向かって消えた。
「いや、知らん」
「へっ、つめて―野郎だ」
「知らんもんは知らん」
「ふっ、ハハハハハ。まったく終始むかつく運転すると思ってたがこんな最後の最後までむかつくヤローだぜ……」
「俺を倒したくらいでいい気になるなよ……俺なんざ所詮ブルー免許。いずれお前の前にはゴールド免許の自動車ヤクザたちが立ちふさがるだろうぜ……」
「ゴールド免許……」
ゴールド免許、それは最強であり、すべてを許された道路の王の証。
「もしお前が本当にかつての平和な道路を取り戻したいなら絶対に勝たなきゃならねぇ相手だぜ……」
「負けはしないさ。無免許と免停の希望と、お前との戦いを心に刻み付けた俺は負けない」
「ヘッ、バカかよ……」
「負けんじゃねぇぞ……ノー外套」
「こんな悲しい戦いを増やしてはいけない。俺は絶対に、自動車ヤクザをすべてぶちのめして平和な世界を取り戻して見せる!」
ノー外套は戦う。日本に、世界の道路に平和を取り戻すその日まで。
ご愛読ありがとうございました。