プロローグ
世界は広く、喧騒としている。
決して穏やかではない世界。
かつて、世界の始まりにおいていくつかの種族が関わった。
例えば、最も力の強い種族として竜の種族。
火、水、風、土の性質を司る四つの部族からなるこの種族はその力をもって世界の均衡を保ち自然界のバランスを維持していた。
知恵において優れ、力によらずして社会の平和を維持していたのが人の種族。
が、やがて純血を保つしきたりは薄れ、それぞれの種族は交わり、互いを利用し、戦いが始まり、互いを裏切り、元々数の少なかった竜の種族は、実際に力を持つ部族の頭の直系以外はこの世から姿を消した。
そして、いつしかその直系たちでさえ伝説となり、地上には戦いのもたらす勝利と敗北の記憶を受け継ぐ人の社会が残された。
戦いの記憶は人々を孤立させ、孤立した民によってそれぞれに都市が建設され、敗北の記憶は人々に勝利を求めさせ、都市同士の争いが続いた。
さらには。
自然界の均衡を保っていた竜の種族の力が弱まった結果、人々の持つ負のエネルギーが思わぬものを作り出す。
「それ」は言うなれば闇の力。時として不意に現れる竜巻やつむじ風のように実体化して人々を襲い、食らう。
「それ」を恐れた人々は、いつしか「それ」こそが敵であると考えるようになり、いつしか都市同士の争いは休戦状態となり、いつ現れるかもわからない「敵」の襲撃に備えて防備を施した都市の中に固く引きこもり、その襲撃に備えて騎士隊が組織されるようになった。