ある日の夢
眠りが浅くて、今日の夢は長かった。どこかの駅ビルのようなところ、もう春近づいているような内装で男の子と歩いていた。年は小学生ぐらい。あぁ思い出した。俺はバスに乗っていたんだ。そこで乗り過ごした気がして怖かった。後、大事なものを落としたみたいで一度立ち上がって、それを拾った。写真?A4ぐらいの紙だった。席に戻ると隣に座っていた男の子に話しかけられた。
「僕、お兄ちゃんの事知ってるよ。」
俺は知らない。
「どこで会ったの?」
「交差点。」
「どこの?」
「・・・」
答えなかったかもしれないし答えてくれたけど忘れたのかもしれない。
その前のことも思い出した。殺されそうになっていた。火、ナイフ。大きなホテルのようなところで追い詰められて火を放たれた。多分ナイフは追いかけてきたやつが持ってた。目の前に鍵の閉まった木の扉があって、これなら破って外に出られそうな気がした。その時、誰かが助けに来てくれた。なんか刑事ドラマで見る相棒みたいな人だった。別に俺も助けに来てくれたやつも刑事ではなかったけどその雰囲気が似ていると思った。ここに来る前に見てたドラマのせいなのかも。
そして火の海から逃げることに成功した俺の体は急に中に浮き出した。地面に着きたくても着けない。まるで磁石のN極とS極が反発し合うかのように。相棒のような男はそれが当たり前のようで俺に別れを告げた。俺は遠くなっていく相棒を見つめてた。
どうやってバスに乗ったのかは覚えてない。気がついたら乗っていた。前から1か2番目の右側の席で前のフロントガラスから景色がよく見えた。眠ってしまったようだ、夢の中で。
バスで出会った男の子とはお互いに終点駅で降りた。その駅は俺の最寄り駅だった。空は茜色が薄くなっていて闇になるまであと10分もないだろう。
「急ごう」
俺は男の子の手を自然につないでいた。階段を上りきった時、あの春の内装が見えた。少しの間見とれてしまった。男の子に手を引かれて我に返った。走ってバスターミナルに行くともう既に闇だった。男の子と手を強く握り合って闇の中の海へと飛び込んだ。息は不思議と苦しくなかった。俺は必死でバスの光を探していた。闇の海はとにかく重く、田んぼの泥に溺れているようだった。
溺れてからかなり時間がたった。やっと遠くに小さな光が見えた気がした。男の子にも同じものが見えたようで俺の手を少し強く握った。ターミナルの全体が見えてきた。止まっているバスはみんなワゴン車ぐらいの大きさしかなくて、8人乗りのようだった。自分のバスを見つけると、男の子も同じバスだったようで手を離さなかった。リアガラスからは女の人が1人乗っているようだった。開いているドアから入ると女の人は少しい嫌そうな顔をした。男の子を女の人の隣に座らせて俺はその隣に座った。バスが静かに出発していて窓からはいつも見ていた景色だった。俺たちのバス以外には車も人もいなくてまるで真夜中のような感じだった。バスはどんどん進んでいく。女の人に話しかけられた。よく見ると俺とあまり年が変わらないようだ。彼女は感情がないように感じた。話すときもボーット外を見ながらだった。彼女の視線の先を見ると俺が降りるバス停を過ぎていることに気がついた。
まぁいいこのままどこかにいってしまおう
いつもあのバス停が家から一番近いという理由で降りていて一度もその先へ行ったことなかった。子供のころは何度も行きたいと思ったけど行かなかったし、行けなかった。お金もなかったし、そんな勇気もなかった。だからといって今は勇気があるってわけではない。お金あったけ?そもそも俺お金もってるのか?自分のほうの窓を見ると見たこともない景色が広がっていた。
現実の世界はまだ太陽は昇ってなかった。