夢
少女はある日、男に言った。
「お兄さんは夢を見る?」
男は思い出すような仕草をし、答えた。
「うーん、ここ何年か見てないなぁ」
少女は男の言葉を聞くと悪戯っぽく笑んだ。
「じゃあ今日見るよ。久々の夢を」
男はその日、夢を見た。
白い天井。何処かの部屋だ。
電気はついておらず、薄暗い部屋。
男は体を動かそうとするが、体が動かない。
唯一動かせる顔を動かし周りを見渡す。
腕から伸びる点滴。白い天井。
そして男は気付いた。
男は夢から覚めると家から出て少女を探した。
少女を見つけると、男は夢の顛末を話し、最後に少女に訪ねた。
「また俺はあれを見れるか?」
少女は笑顔で顔を横に振り、男は泣いた。