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崩壊の六枚羽  作者: バタえもん
植獣編
9/17

9羽 圧倒

一度書き直しました。戦闘機がいつの間にか逆になっていたようで…。

ではどうぞ。

リュークがガタナノラに向けて吠える。ガタナノラはそれには答えず、黙って右腕を上げた。その切っ先はリュークを真っ直ぐ捉えていた。太く長い果実のような腕が上、右下、左下の三方向開くと、腕の内側に付いていた巨大な種子を散弾のように打ち出す技、シードバルカンを放った。リュークは予想もしない攻撃に反応が間に合わず、殆どの種子に当たってしまった。


「フゥオオオオオン!?」


そして直撃の刹那、種子が爆発した。悲鳴を上げるリュークの姿は爆煙に包まれ見えなくなってしまった。

それを見たガタナノラは右腕を閉じて下ろした。そして背中に付いた蕾を開き、そこから辺りに撒かれている花粉を吸収し始めた。

しばらく花粉を吸引していると、種子を失い細くなった腕で内側から爆ぜるように膨れ始め、吸収を終えた頃には本の太さを取り戻していた。

ガタナノラは勝利を確信し、くるりと背を向けコアプラントの方へ一歩踏み出した。その瞬間を狙ったかのように爆煙の中から青色の発光と共に凄まじい熱の奔流がガタナノラに向けて放たれた。


「キィイイイイイイ!?」


「フゥオン!!フゥオオオオオ!!」


背中に熱線、デストラクション・レイが命中し、ガタナノラは悲鳴を上げ前のめりに倒れた。

煙の中から姿を現したリュークはお返しだと言わんばかりに吠えてガタナノラに歩み寄り、地面にうつ伏せに倒れているガタナノラの後頭部を右手で掴み、地面に二度叩き付けた。


「キィイイ……キィイイイイイイイイ!!」


「フゥアウン!?」


三度目を喰らわせようとリュークがガタナノラの頭を持ち上げた瞬間、ガタナノラは左腕を振り回してリュークを振り払った。そしてそれと同時に立ち上がり、振り返る時の回転を利用して体勢を崩したリュークの顎目掛けて右腕でアッパーカットを繰り出した。

それは鈍い音と共にリュークの顎に当たり、リュークはあまりの衝撃に真横のビルに激突した。リュークの重さとぶつかった衝撃でビルはいとも簡単に崩れ落ち、リュークも体を支えるものが無くなり、再び地面と顔を合わせた。


リュークは素早く立ち上がるとチャージが十分済んでない状態でデストラクション・レイを至近距離で放つ。だがそれは瞬時にガタナノラを取り囲んだ金色の花粉のバリアによって拡散、相殺され、拡散したデストラクション・レイの一部がリュークの皮膚を削り取る。


「フゥオオオオオ…」


リュークは少し怯んだが踏ん張り、なんとか倒れなかった。

だが怯んだ隙にガタナノラがリュークの懐に潜り込み、腕を横に振ってリュークの脇腹に叩き付けたり、腹部にブローを入れるなどしてリュークに反撃の隙を与えない。そして渾身のストレートパンチがリュークの腹に入り、リュークは大きく後退させられた。


リュークは唾液を垂らしながらもチャージをし、デストラクション・レイを再びガタナノラに放った。

だがガタナノラはそれを高々と跳躍して回避すると、落下する力を利用してリュークの脳天にハンマーのような両腕を叩き付けた。

リュークは頭に付いている灰色の装甲のおかげで致命傷にはならなかったが、脳にはダメージが通っているようで足がふらふらしている。その隙にガタナノラはリュークの胸を蹴って距離を取り、今度は両腕の果実を広げてシードバルカンを繰り出した。


「クォ……………」


激しい爆発が再びリュークを襲った。煙や皮膚の焼ける臭いが立ち込める中、苦痛な声と共にリュークががくりと両膝を付き、遂に立ち上がれなくなってしまった。リュークの体は既にボロボロで、特に胸部は一部焼けただれていたりと酷い状態だった。

そんな力が尽きかけているリュークの息の根を完全に止めようとガタナノラは再度花粉を吸引し、瞬く間に種子を腕の中で成長させる。が、直ぐに吸引が止まり、ガタナノラがもがきだした。


もがくガタナノラの後ろから小さい影が飛び出した。それは迷彩色の戦闘機、ターミネーター…龍成の機体だった。

実はガタナノラが花粉を吸収している時、ターミネーターが背後から急接近して花弁の中目掛けて機銃を乱射し、たくさんの鉛弾を花粉と一緒に吸収させていたのだ。それはガタナノラにとっては身体の中に異物を強制的に入れられるのと同じ事。苦しむのは当然だった。


「ヘッ!!見たか植物野郎!!人間なめんなよ!!こっちだってなぁ、命張って戦ってんだよ!!」


龍成がコックピットの中で軽くガッツポーズをする。彼はまだ完全にリュークを信用した訳ではないが、後から戦闘機での戦闘が困難な面倒な敵を相手にするより、リュークを援護してガタナノラを倒した方が楽だと考えたからガタナノラを攻撃したのだ。

龍成の行動を見た秀則も銀色のターミネーターを上手く操り、金色の花粉に気を付けながらガタナノラに機銃を撃ち始めた。流石長年龍成のパートナーを勤めただけあり、考えが分かるようだ。


未だ悶え苦しむガタナノラに二機の戦闘機が攻撃を仕掛けていく、一見すれば戦闘機側の優勢のように見えるが、相手は人知を超越した化け物。表面に対するダメージはさほど受けていないようで、体内の異物に慣れ始めたガタナノラが不意に左腕を空に向けた。

その先にあるのは一機の戦闘機、秀則の乗る銀色のターミネーターだった。そして黄緑色の果実がゆっくりと開き、中についている黄色の丸い種子がむき出しになる。


「ッ!?秀則ッ!!」


「キィイイイイ!!」


それを見て泡を食った龍成が相棒の名を叫ぶが、それだけで何もする事は出来ず、銀色のターミネーターはガタナノラが腕から放った無数の種子を受けて、ボディから炎を上げながら墜落していき、空中で爆発した。

しかし肝心の秀則は爆発の直前に脱出し、空中でパラシュートを広げた。それに気付いた龍成はホッと胸を撫で下ろすが、すぐに顔を強ばらせた。


何故なら同じく秀則のパラシュートに気付いたガタナノラが、今度こそ秀則を落とそうとパラシュートに狙いを定めて腕を伸ばしたからだ。

戦闘機の時と違い、パラシュートは自力で避ける事は出来ない。龍成は何とか狙いを逸らそうと、広げられた右腕目掛けてミサイルを撃つが、例によって金色の花粉に軌道を逸らされてしまった。


全身から嫌な汗をかき、焦燥感と緊張感に心を支配される。そんな変な心境にとうとう思考が狂いだした龍成は自機をガタナノラの右腕に向けて急加速させていた。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


ガタナノラが横から迫る迷彩色のターミネーターに気が付くがもう遅い。

龍成は激突の寸前に脱出し、無人の戦闘機が大量のミサイルを積んだままガタナノラに激突し、大爆発を起こした。



◆◇◆◇side龍成



「秀則ッ!!秀則ーーーー!!」


俺はパラシュートで市街地の外れに着地し、秀則が着地したであろうポイントに走っていた。手には護身用のアサルトライフルを持っているため、段々と疲労も溜まってくる。それでも止まらず俺は走り続けた。だが、どれだけ走っても秀則の姿はもちろん、パラシュートの白い幕すら見えない。再び酷い焦燥感が胸を這う。


「秀則ーーーーーーーーーーーーーーッ!!」


不安で、思い切り息を吸い込み出せる限りの大きな声で相棒の名前を呼ぶが、あのおちゃらけた返事はもちろん、人一人の返事すら返っては来なかった。


「フゥオアアアアアアアアアアアア!!」


返したのはただ一体、あの六枚羽の怪獣だけだった。ただその返事はまるで秀則の代わりのように聞こえ、たまらなく不愉快だった。


「バカヤローーーーー!!俺が助けたかったのは…テメェなんかじゃねぇんだよーーーーッ!!」


その不快感を六枚羽にぶつけるように叫んでから、俺は再び立ち上がる六枚羽をじっと睨み続けた。



◆◇◆◇side大吾



「やっと着いたッス!!」


「遅せえな…。だからモーターケチらねえで良いの使おうって言ったんだよ…。なあ、先輩閣下よ!!」


「ぐっ…そう言う事言うなよ」


部室内のテレビがやっと有松市の火を映し出したのは午後七時を過ぎた頃だった。待ちに待った現場の映像に天が喜び、大我がヘリコプター、『きな粉』を操作しながら皮肉った口調で呟き、それを聞いた良泰が心臓を押さえて苦しむ真似をしながら顔をしかめた。

ヘリコプターから送られてくる映像には燃え盛る有松市が映し出されていたが、酷い煙と陽炎で細かい部分は捉えきれていないようだ。


「…思ってたより酷いわね」


「そうですね…」


それを見た炎田部長がぼそりと呟き、ゆかりがそれに同意する。

正直俺もそう思ったが、前回の闘いの痕を見てるからかさほどショックは受けなかった。

…いや、まてよ。普通ショック受けない方がおかしくないか?もしかして、俺頭のネジ外れてない?


「きな粉、左旋回!!」


「カメラ、右向け~右!!」


きな粉に搭載されたカメラを操っているのは春人だ。普段はでこぼこコンビな春人と大我だが、今回は上手いこといっている。

やがてだんだんと火の中心を軸に旋回するように画面が変わっていった。俺を含む皆が黙ってそれを見つめ続ける。


「あ、あれなんスかね?」


「ん?どれや天」


「ほら、そこ…何か動いてないッスか?」


天が仕切りにテレビの画面を指差し、その位置を確認した春人が手元のコントローラーを操作してカメラをズームする。そのカメラはあるものを捉えていた。

赤紫の体色、銀色と灰色の装甲板。見間違えるはずもない。リュークだ。だがその体は所々焼けただれていて、装甲も焦げたように黒ずんでいる。

更にリュークの目線の先にさらにもう一体の怪獣を確認出来た。全身緑色の花の茎みたいな怪獣だ。この怪獣も体の一部が焦げていたり、片腕が無くなっていて見てるこっちも痛くなる。多分これがさっきコネクターに書いてあったガタナノラって奴だよな。


「何だこの怪獣共…?」


「コイツらが街をめちゃめちゃにしたんか!?」


「緑の方、全然動かないですね」


おぉ…春人以外皆冷静に観察してるな…。いや、この場合正しい反応は春人の方な気がする…。


俺がそんな事を考えてる間に画面に変化が起きた。ガタナノラが動き出したかと思うと、片腕で地面を凄まじい勢いで掘り返すとあっと言う間に姿が見えなくなってしまった。おそらく逃げて体力を回復させに行ったのだろう。

対するリュークもぼろぼろで体力も限界なのか、追撃はせずに白い繊維のような六枚の羽を広げると、勢い良く飛び上がりカメラから消えた。


画面に残されたのは戦闘の爪痕。一夜にして破壊し尽くされた有松市の一面だった。





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