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崩壊の六枚羽  作者: バタえもん
一章 接触編
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4羽 新都へ

一度書き直しました。


今回はコネクターの機能についての大まかな説明が大部分です。

「ふわあぁ…」


「あら大吾。香奈はもう寝たの?」


「ああ、ぐっすりだ」


今は夜の十時を回った所だ。はしゃぎ過ぎた香奈は客間の布団でぐっすりと眠っている。

と、言うよりは布団に入る前からぐっすり寝てた。風呂から出た香奈は俺のお古のパジャマに着替えてから茶の間を走り回っていたが、突然電池が切れたようにパタリと倒れてそのまま寝てしまったのだ。仕方なくまた俺がお姫様だっこ。明日は筋肉痛覚悟かな…。


「あなたも明日新都に帰るんでしょう?今日は早く寝なさいよ」


「そうだな…。んじゃ、お休み」


そう言い俺も自室に戻る。途中の横の窓から見える景色は平和そのものの南小村の景色。だが角を曲がれば正面の窓に映る煙が未だに上がっている街、遠見市が。

…あの戦闘が少しでも南小村の近くで起きたらと考えて体が震えた。自然と小走りになり、部屋に入ると同時に扉を勢い良く閉めた。


「…コネクター」


気分を変えるようにそう呟くとやはり左腕に白い機械が装着される。さっきの起動キーワードの説は正しいみたいだな。

俺は扉の鍵を閉め、クローゼットの中から工具箱を取り出した。このコネクターはワケが分からない代物だが、とりあえず機械であることに間違いはないだろう。ならば機械系男子として、やる事は一つ。


「さて、分解してみるか」


工具箱の中からドライバーを取り出し、コネクターをまじまじと見る。が、ネジのような物はどこにも見当たらなかった。それどころか溶接の跡すら無い。

仕方なくドライバーをしまって、コネクターの表面にある真っ黒なディスプレイに触れる。


『指紋認証確認。ロック解除』


「ぅええ!?…指紋認証機能付きか?」


触れた瞬間、ディスプレイにウェーブが広がり変に滑らかな音声と共にディスプレイに携帯のメニュー画面のようなアイコンが映った。

画面には良く分からない文字が記されていて、俺には全く読めなかった。とりあえず適当なアイコンをタッチしてみる。すると画面に多数の文字が並んだ。スクロールさせてみると、中には日本語や英語やらがあったので日本語のアイコンをタッチする。すると画面がメニュー画面に戻り、全て日本語に変わっていた。おかげで内容が分かる。


「『バトル』に『データ』に『カード』に『オプション』か…。バトルは…止めとくか。データとカードでも確認してみるか」


手始めに『データ』のアイコンをタッチする。画面が変わり、『モンスター』、『コネクター』、『ドライバー』、『エネミー』と表示される。

『モンスター』をタッチすると再び画面が切り替わり、リュークの全身像とステータスが映ったが、良く分からない。

左上のバックアイコンをタッチし、次に『コネクター』をタッチしてみた。画面がコネクターの立体図とへんなグラフに変わり、右下に円グラフで『コネクト36%』と記されていた。

バックして『ドライバー』のアイコンをタッチすると、俺の名前と細かな個人情報が…って何でそんなのが載ってるんだ?


「…?全然分かんねえ…。とりあえず後で良いや。次々、『カード』にしよ」


お次に『カード』アイコンを選択する。すると外側のカバーがスライドして内部に収納された。そこから出てる出っ張りに爪を引っ掛けて引くと、カードが入ってる何枚かのケースがコネクター内部から出てきて、扇形に展開された。カードは裏向きに収納されているので表が見えないようになっている。ケースの数は十二枚分。その全てにカードが入っている。

試しに一枚抜いてみた。そのカードはリュークの絵が描かれていた。下にあった名前は『サモン』。名前からしてリュークを召喚するカードだろう。横にはバーコードも付いていた。


「このカード…どう使うんだろう。バーコードがあるって事は…スキャンするって事かな!?」


ちょうど横の溝がスキャン出来そうなので、カードを溝に差し込んだが、止めた。もしそれが本当ならリュークがまた出現してしまうかもしれない。そんな事は、機械で遊んでて…なんて事で済まされるような事じゃない。

カードをケースに戻し、その横のケースからもう一枚取り出す。今度はリュークが白い羽を羽ばたかせて、その羽から白い何かが飛び出しているような絵が描かれていた。


「『フェザーナイフ』か…攻撃系のカードかな?」


ちょっと考えてからフェザーナイフのカードをケースにしまい、その横のカードをまとめて二枚抜き取る。


「って二枚共同じカードじゃん!!『バーストプラス』とか…絵も良く分かんねえし」


取り出した二枚のカードはどちらとも同じ『バーストプラス』だった。絵にはリュークは描かれていなくて、中央に黄色っぽい透明の球体が浮いているだけである。

考えても絵を見てもわけが分からないので仕方なくカードをしまって、次のカードを今度は三枚同時に抜き出した。


「次は三枚共ばらばらだな。『ガザリアス』に『リーゼオン』に『ディヴォイド』か」


今回取り出したカードには全てリュークの絵が付いていた。だがそれはリュークであるが、見た瞬間違和感を感じる。それもその筈だ。写っているリュークは全て姿形が異なっているのだ。

『ガザリアス』は手足が太く、力強さを感じさせるリューク。

『リーゼオン』は全体的に細くシャープな体格をしていて、羽が異常に発達したリューク。

『ディヴォイド』は体格はリーゼオンに近いが、羽が鰭のようになっていて、尻尾が魚のようになっているリュークだ。


「ふ~ん。とりあえずこいつらもスキャンしちゃいけないかな」


『ガザリアス』、『リーゼオン』、『ディヴォイド』をケースに戻し、残りの四枚を一気に取り出す。だが、


「…何これ?何も描いてないじゃん」


そう。空白だった。絵や名前、バーコードすらない。これ以上見てても仕方ないのでカード四枚をケースに戻してからケースを扇子を閉じるようにコネクター内部にしまった。


「…とりあえずもういいか。リムーヴ」


俺が「リムーヴ」と唱えるとコネクターは粒子化して消滅した。そしてベッドにダイブし、さっさと寝ようとした時だった。


「おにぃちゃ~…」


「え!?香奈!?」


部屋の扉が開き、香奈が目を擦りながら部屋に入って来た。

て言うか俺…確か鍵をかけてたような…。


「おにぃちゃ~…。寝れな~い…」


「え?」


「一緒、寝よ~…」


「え!?ちょ、あ…」


そんな俺の疑問はお構い無しに香奈はずかずかと俺の部屋に入ると、俺がいるベッド目指してふらふらと歩き、ベッドにダイブしたかと思ったらもうすうすうと息を立てて寝てしまっていた。

その寝顔は何故か安心したかのように笑っていた。俺はロリコンではないが、何か目覚めてしまいそうだ。


「Zzzzzzzzzzz」


「…いかんいかん!!香奈を客間に連れてかないと…!!…いや、ま、良いか」


もう一度香奈をお姫様だっこして客間に運ぼうと思ったが、せっかく気持ちよさ気に寝てるのを邪魔するのも気が引けるので、寝かせてやることにした。

いや、決して力が限界だった訳じゃないぞ。ちょっと大人な考えをしただけだ。ベッドを盗られて怒るほど俺は子供ではないからな。


「さて…布団持ってくるか…」


俺は客間に行き、香奈用に敷いた布団を自室に持って来て、部屋の中央に敷いて布団に入った。入った瞬間激しい眠気が俺を襲い、俺は瞬時に夢の世界へ引きずり込まれて行った。



◆◇◆◇side三島



『三島一士、坂井一士。着陸を許可します』


「『了解』」


俺は管制塔からの無線を聞き、すぐさま『航空自衛隊巴境見基地(こうくうじえいたいはざかみきち)』に機体を着陸させる。隣の滑走路に坂井が乗った機体が着陸する。俺は機体を降り、坂井と合流して作戦司令室に向かった。


「クソ!!逃がしたか…!!」


「まあ、そうカッカするなよ、『龍成(りゅうせい)』」


「お前はおちゃらけ過ぎなんだよ、『秀則(ひでのり)』」


俺が壁に当たると秀則が俺を茶化す。昔から何回これを繰り返したろうか。試験や任務に失敗した時や、プライベートな時も。秀則とはそれくらいの付き合いで、ライバルであり仲間であった。

コイツと話してると何故か時間が早く過ぎる。今回もそれは例外ではなく、あっと言う間に作戦司令室に着いてしまった。


「む、来たな。ご苦労だった」


「「はっ!!」」


作戦司令室に入るとたくさんの同僚達がデスクワークをこなしていた。その奥にある他よりちょっと立派な机と椅子に腰を掛けていた『門馬(もんま) (いさむ)二尉』が俺達に気づき、労いの言葉をくれた。

俺と秀則は姿勢をピシッと正し、敬礼をした。


「とりあえず姿勢を楽にしろ。報告はそれからだ」


「「はっ!!」」


俺と秀則はもう一度返事をし、足を開いて楽な体勢を取った。

門馬二尉はうむ、と頷いてから椅子に再び腰を掛けた。


「では報告を」


「自分が報告します」


「では三島一士から」


「はっ!!本日午後十九時四十八分、遠見市上空にて未確認飛行生物を確認、接触。その二十秒後、新たな未確認飛行生物を確認、接触。その後二十時十七分まで上空にて待機。未確認飛行生物が飛翔開始と同時に追跡、及び攻撃開始。自分が撃ったミサイル二発は未確認飛行生物の左腕に命中。猶も未確認飛行生物は飛行を続け、二十時二十一分、レーダーよりロストしました」


「うむ、報告ご苦労。後は今回の件を報告書に纏めろ。以上だ」


そう言い門馬二尉は報告書を纏め始め、俺と秀則も敬礼して作戦司令室を立ち去った。



◆◇◆◇side大吾



はて?今日は何だか体が重い?いや、上からかなりの重力が掛かっているような、そんな感じかもしれない。ともかく重い。苦しい。あれ?何か揺れ始めたぞ。


「…おっきろーーーーーー!!」


「おわああああああああああああああああ!?香奈!!お前の仕業か!!」


原因はすぐに分かった。香奈が俺の布団の上に跨がっていたのだ。

朝から凄まじい大声が頭に響き渡り、いやにも意識が覚醒する。と言うか反射で飛び起きた。そのまま未だ布団に跨がる香奈を怒鳴りつけた。


「にっげろ~~~♪」


するとその原因はあはははは、と笑いながらバタバタと部屋を出て行った。朝から騒がしい奴だ、全く。

俺はクローゼットを開き、その中から今日着る服を取り出し着替える。今日も半袖に短パンと動きやすく涼しい服装だ。


「おはよう…」


「おはよー!!」


「あら大吾。おそよう。今日は珍しく遅起きね。香奈ちゃんに起こしに行ってもらわなかったらあなた出発が遅れる所だったわよ。今日あなたサークルに顔を出すんでしょう?」


「う…そうだけど…」


リビングに行くと香奈が卓袱台の前にちょこんと座ってパンを頬張っていた。俺が挨拶すると香奈はパンを急いで食べ終え、元気に挨拶してきた。これに気づいた母さんも台所から顔を出し、「おそよう」と挨拶してきたが、事実も事実なのでスルーした。

そして母さんが持ってきた食パン二枚を香奈の斜め横に座って食べる。食べながら時計を確認すると帰りの新幹線が出るまでまだゆっくりする時間があるようだ。


「そう言えば香奈どうするんだ?」


「家で預かる予定よ」


「そうか」


内心安心した。新都の俺の家は一人暮らし用のマンション。そのため香奈が住むためのスペースが確保出来るか不安だったからだ。



◆◇◆◇



「…しばらくこの景色ともおさらばか…」


しみじみという俺の目の前には平和な南小村の風景が広がっている。今日で新都に帰るので次の長期休みでないとこれなくなる。なので出来る限り目に焼き付けようとさっきからじっと外を見ている。


「~~~~~~♪」


…そしてさっきから俺の視界に映る元気に走り回る黒髪少女は目に焼き付けるのを阻んでいるのか何なのか、一五秒に一回は俺の目の前を横切っている。まあ楽しそうだからいんだけど。


「大吾~。そろそろ時間よ」


「おっと、もうか」


「う?」


俺が縁側から立ち上がりそばにあった荷物を肩に掛けると、香奈は首を傾げてからトテトテとこちらに小走りで来た。


「チケットは?忘れ物はない?」


「大丈夫だって」


「…お兄ちゃんどこか行くの?」


「お兄ちゃんはね、ちょっと遠くに行くの。だからしばらく会えなくなるわよ」


「え…?…じゃあ私も行くーーーーーー!!」


「え!?」


母さんの説明を聞いた香奈は何を考えたかいきなり俺にしがみつき、行くと言って聞かなくなってしまった。母さんもこれには少し困っているようだ。


「行く行く!!行くったら行くーーーーーー!!」


「うええ…」


「じゃあ香奈ちゃんもお兄ちゃんについて行きなさいよ」


「え!?」


母さん…何を…!!


「良いの!?やたーーーーーー!!」


「…母さん?」


「仕送りは香奈ちゃん分増してあげるわ」


「…………………………………………」


結果…


「すーいすーい♪」


「はぁ…」


新都行きの新幹線に乗る俺の横には窓からの景色を見て喜ぶ香奈がいたのだった…。





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