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グローサー・マジック  作者: チャラン


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第8話 メカニズム

 なかなかの勢いで研究成果を話したワイズに、フラットは若干たじろいでいたのだが、ここまでの論述を聞き自分なりに考える中で、ある疑問が浮かんできた。


「モールベアが大岩壁を登れるのを見たってのは凄いと思うよ。凄い発見だよ。でもよ、なんでモールベアはわざわざ大岩壁に登るんだ? 高い所に登る習性があるにしても、大岩壁は高すぎないか?」


 フラットがワイズに投げかけたこの質問は、論述の本質を捉えていたらしく、


「非常にいい質問だ。フラット、お前はよく分かっているな。ここまで理解力があるとは驚いたぞ」


 と、この変人学者はうなずき、満足そうに回答を始めた。


「モールベアは胸斑病の保菌動物でありながら、胸斑病を発症することがない。なぜそうなるのか? 俺はこの事象についても興味を持ち、モールベアの観察を更に続けた。そして、あることが分かった。モールベアはサッキン草という薬草を定期的に食べ、体内の菌を殺して減らすことで発症を抑えているんだ」


 自分の質問に対してまだ回答の途中なのは分かっているのだが、


(サッキン草?)


 フラットは、ワイズの口から胸斑病の治療につながるキーワードが出てきたのに気づき、固唾をのんで続きの話を待っている。


「モールベアの生命線とも言えるサッキン草は、大岩壁の頂上に群生している。ここからは推測になるが、成体となったモールベアは胸斑病による死を回避するため、本能的にサッキン草の在り処を嗅ぎつけ、大岩壁に登るのだろう。ここまでが観察結果に基づいた論述で、さっきのお前の質問に対する回答にもなっているはずだ」


 論述を聞き終わり、自分が何を()すべきか道が見えてきたフラットは、先程までと明らかに目の輝きが違ってきている。


「そういうことか……分かったぞ! リースが(かか)った胸斑病を治すには、サッキン草を手に入れればいいんだな!?」

「その通りだ。すぐに支度をしろ。モールベアの生息域に行くぞ」


 変人学者の驚異的な観察眼と知識が、幼馴染を救いたい少年に希望をもたらそうとしている。フラットは言われた通りすぐに支度を整えると、この丘から見て西に少し行った所の、モールベアが住むなだらかな山へ、ワイズと共に向かった。




「ハアハア……重い……。それにしても重い!」


 普段から食料雑貨店の手伝いで、重い荷物を運ぶのには慣れているフラットだったが、今は背負っている木箱の重さに息を切らせながら、先を行くワイズのカンテラ明かりを頼りに、歩いている最中だ。


 少年が背負う木箱の重さは相当なものである。何が入っているのかといえば、大中小の各サイズが1枚ずつセットになった黒鏡だ。先刻、ワイズのあばら家内で実験を行ったが、そのときに使った黒鏡もセットに含まれている。


「あいつは小さい手鏡しか持ってないのに……何で俺ばっかりなんだよ!」


 軽い荷物しか運んでいないワイズにわざと聞こえるよう、不平不満を叫ぶフラットであったが、先行する変人学者は後ろも振り返らず御構いなしだ。背中の重さに耐えながら、何とか追っていくより他はない。


 そんなこんなで凸凹コンビは歩を進めていたのだが、ようやく目的地の山にたどり着けたようだ。


(まず一息つこう)


 兎にも角にもそう考えたフラットは、重い木箱を下ろすとへたばるように座り込み、月明かりに照らされる辺りの尾根をゆっくりと見回している。

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