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魔法科学校入学生

ハリビア家の案内も済んだところで、俺とエルナはハリビア家が用意してくれた1部屋をありがたく使わせてもらい、この家に慣れるようシュミレーションをしていた。

「ほんとに色々お家ですよね。案内中にもメイドさんや執事さんもかなりの人数見かけました。」

異世界ならではの光景に俺もどこかワクワクしていた。

「少しの間とはいえここでお世話になるわけだからな。ところでさっきから思ってたことなんだが、大浴場を見た時からずっと入りたいと思ってたんだ」

この世界に来てからまともに温かい湯に浸かりリラックスすることなんてできてなかったので、ものすごく気になっていた。

「そうですね。結局この格好のままでしたから、私もずっと気がかりでした。あのお風呂に入りたいと私も思っています」

「通りかかった人に聞いてみるか?俺たちも入らせてもらえるか」

ここでの暮らしの許可をもらったのだから、断られる心配はないだろうが、決まった時間やルールがあるのかなど聞いてみるしかなさそうだ。

「俺が聞いてくる。少しここで待っていてくれ」

そうして俺は廊下へ出て丁度こちらへ歩いてくる男性へと声をかけることに。

「あの、少し聞きたいんですけど」

「はい、ガウル様。なんなりとお申し付けくださいませ」

こういう丁寧な対応には慣れていないので、少し遠慮気味に聞いてみる。

「えと、お風呂に入りたいのですが、その辺の決まりとかあったら教えていただきたく…」

「私たちは入る時間を決められておりますが、ガウル様はお客様なので、特別お決まり事はありませんよ。浴場は二手に別れており、それぞれ男性と女性で別れております。マークを見ればすぐ分かると思いますので、ぜひごゆっくり」

そう優しく微笑み一度頭を下げ去ってゆく執事。

「いやぁ、なんとも優しい世界だな…ここは」

ということらしいのでそのことを伝えてエルナと一緒にお風呂へと向かう。

「じゃあ俺はこっちだから。難しいことはないと思うから、ゆっくり浸かってくれ」

「わかりました。ガウルさんもごゆっくり」

俺は男性用の風呂場へと足を運び、部屋に備わっていた着替えなどをロッカーに置いて、服を脱ぎついに念願のお風呂へ。

まずは桶で体をサッと洗い流し、ゆっくりと浸かっていく。

そして肩まで浸かったところで背もたれに寄っかかる。

「ふあぁ。風呂に入れるって、めちゃくちゃありがたいことなんだな…」

心の中で感動するように涙を流し、疲れた体を癒してくれるお風呂の存在にただただ感謝をする。

だが、ここでやはり自分の体の『異変』に目を向ける。

「…やっぱりこれは気になるな。違和感はないがどうしても気になってしまう」

そう、この世界に来てからずっと自分だけ気にしてきた部分。俺の胸の中央に埋め込まれている緑色に輝く石のようなもの。大きさはそれほどなく、形は丸みを帯びたひし形のような形をしている。痛みなどの感覚は全くないのだがどうしても気になって仕方がない。

ただ今これが何かを突き止めることはできないのでこの先調べればいいと今はお風呂を味わうとしよう。

それから置かれてあるシャンプーのようなものから体を洗うものまで全て利用させてもらい、しばらく堪能させてもらったところで風呂から出る。

少し名残惜しかったが、お風呂は今日だけではないのが実にありがたい。

着替えも済ませ部屋に戻ってくると、先に出たであろうエルナと、先ほどとは違う格好のエイリスが居た。

「あ、ガウルさん。お風呂気持ちよかったですね」

「ほんとにな。エイリスには感謝してもしきれない」

「喜んでいただけたのならこちらも嬉しいですよ。偶然エルナちゃんと一緒のタイミングでお風呂だったから」

それでここにいるわけか。

「用事は済んだのか?随分風呂に入るのが早いようだな」

俺たちは早く入りたかったので使わせてもらったが、エイリスからしたら入るのは早いと言えるだろう。

「私の用事は大したことではありませんでしたから。今日は早く入りたい気分だったんですよ」

それならこちらとしても言うことは何もない。

「エイリスちゃんと一緒にね、体洗いっこしたんだよ」

えへへーと嬉しそうに話すエルナに対し、エイリスは恥ずかしそうにその話を止めにかかった。

「ちょ、ちょっとエルナちゃん?!ち、違うんです今のは……その…」

「いや大丈夫だ。2人の仲が深まれば俺としても歓迎すべきことだからな。お嬢様だからといって恥ずかしがることじゃないと思うぞ」

2人とも子どもにしてはしっかりしているが、内面はまだまだ子どもなところがあると改めて思い、それはそれで微笑ましかった。

「この事は秘密ですからね、もう」

それにしても一緒に一度お風呂に入るだけでお互いのことを『ちゃん』呼びできていることにも少し驚かされる。

恐らくエルナの方から何かしら提案したのだろうが、女性のことはなかなか理解できそうにないな。

「もうそろそろしたら、お食事のお時間になりますので、どうぞお2人もいらしてくださいね」

そう伝えるとエイリスは部屋を去る。

「お前、人と仲良くするの得意だよな。素直に尊敬する」

「得意というより向こうから仲良くしてくれるだけだから、私はそれに甘えてるだけって思います。こうしてエイリスちゃんとも仲良くなれてちょっと気が緩んじゃいました。すみません」

「元々のエルナはそういう性格なんだろ?別に変にかしこまらなくてもいいと思うぞ。なんなら俺にももう少しそういう風に接してほしいくらいだ」

しっかりしているのはいいことだが、エルナはまだまだ幼い少女だからな。

「試しに、さん付けをやめてみないか?この見た目だとエルナと歳もそう変わらないからな」

まずはということでそう提案してみる。

「急にやめるのは少し難しいですが、ガウルさん…じゃなくて、ガウルがそう言うならそうしてみますね。確かにガウルにずっと敬語なのも周りから見たら不自然ですからね」

やや冗談交じりにニコッと笑い、俺はエルナの内面を少し見れたと嬉しく思った。

「まぁ共に生活していればいずれその辺も慣れてくるだろ。とりあえずご飯食べに行こうか」

歓迎してくれたハリビア家での最初の晩御飯。大きな扉を開けエルナと入室すると、大きな室内には豪華なお食事が並んでいた。日本食とは異なるが、美味しそうなお肉に野菜類、十分過ぎるほどだな。

「遠慮はいりませんよ。ガウルさんもエルナさんも存分に召し上がってくださいね」

その豪華さに驚き急激にお腹がすいてきた。

少し離れた席には執事とメイドさんたちが食事をしていて、俺たちはハリビア王女とエイリスのテーブルで食事をする。

「それでは皆様揃ったことですし、食べ始めましょうか」

それぞれいただきますをし、俺とエルナも目の前の食事に手を伸ばす。

この世界に来てから、いや、転生前を含めてもトップレベルの美味しさにもはや感動を抑えきれない。

そうして食べ進め食事を終えた時、ハリビア王女が話を切り出した。

「ではガウルさん、朝の件でご報告があります。まずはこのハリビア大国にある魔法学校の途中入学に関する契約を申請できました」

なんとも早いもので契約はスムーズに進んだらしい。

「ガウルさんたちもなるべく早い方がいいでしょう。準備など含め早くてあと3日ほどで入学できるとの事です」

制服の準備、クラス分けと席の準備、恐らくそれらを含めあと3日ほどで俺たちは魔法学校の生徒になれるらしい。

「随分と流れが早いですね。こちらとしては願ったり叶ったりですよ。ありがとうございます」

「いえいえ。では、その方針で話を進めますね。また改めて報告させていただきます」

もう一度お礼を言い、俺とエルナは部屋に戻ってきた。

「魔法学校…どんなところなのでしょうか?話を聞く限りではかなり大きな学校のようですね」

「やっぱり敬語なんだな」

「あっ。どうしても無意識に敬語になっちゃう…」

「無理に親しくしてくれとは言わない。強制させるつもりもないしな。悪かった」

こういうのはすぐにできるわけでもないので、急かすのは違うだろう。

俺たちは寝る準備を済ませ、翌日を迎える。

「こんなに気持ちよく目覚めたのはいつぶりだろうか…。」

ふかふかのベッドで寝れてエルナも顔色よく起き上がる。

「おはよぉ」

「快適に寝れたようだな」

「もうずっとここで過ごしてたいよ」

そういう気持ちになるのも凄くわかる。

その後は朝食もいただき、俺はエイリスに少し学校について知っていることを聞かせてもらった。

その魔法学校に何度か言ったことがあるらしい。

まず年齢別で学年が別れており、日本で言う小学生から高校生までの生徒がいること。もちろん棟などは分かれているが、同じ敷地内なので見かけることは多そうだ。

次にクラスは、俺たちが所属するであろう最下級生と呼ばれる学年は4クラスに分かれているらしい。能力の差に関係なくバランスよく配分されているとのこと。

ちなみに日本でも同じように、18歳で認定を貰えればこの世界では十分な資格になるようだ。年齢が上がるにつれ内容も難しくなり、もう一度小学生になる気持ちがして懐かしく思いつつも今回は異世界の、さらに魔法の学校なので気を引き締めないといけない。

学校についても軽く説明を受け、エルナもイメージを膨らませていた。

それから1日、2日と生活をしていき、学校側から制服や書類などをもらい、ついに明日は入学生として実際に学校へと行くことになっている。

このハリビア家での最後の夜を俺たちは過ごしている。

「きっと学校の寮はここより快適とは言えないんだろうな。そう思うと少し名残惜しいな」

「そればかりは仕方ないよね。また野宿するよりは随分助かると思いましょ」

まぁその通りなんだけどなぁ。早くも最後の睡眠を記憶に刻み込み、ついに今日は入学当日だ。

いつもより少し慌ただしく全ての準備を済ませ、ハリビア家の玄関へと足を運ぶ。

「ハリビア家に泊めていただき本当にありがとうございました。入学の手配やら全てお任せしてしまい、感謝してもしきれません」

「そんなにかしこまらなくても良いのですよ。これは私がやりたくてやっただけのことですから。学校での生活も早く慣れていけたらいいですね」

「周りに追いつけられるように精一杯頑張りますよ」

「私も一言。ガウルさん、それからエルナちゃんも、短い間でしたが一緒に生活できて楽しかったです。元々は私の不注意が原因でしたが、あなたたちとこうして出会えたことに感謝しています」

少し寂しそうに、だが笑顔で握手を求められる。

俺とエルナもそれに応えるように手を握った。

「ではこれで失礼しますね」

最後まで見送ってくれた2人に心の中で感謝しつつ、学校へと続く道を歩く。

歩いて40分ほど距離があるが、このハリビア大国を知るいい機会にしたかったので丁度いいだろう。

色々見渡しつつ遅れないように歩いていると、学校が見えてきた。

「ついに見えてきたな。思っていたよりも大きいな…それもそうか」

「私たちはみなさんが登校した後に紹介されるんでしたよね?クラスも決まっているようですし、緊張してきました」

少し緊張もするが、23歳なんだよなぁ俺。

学校の門を通り、入口にいた教師と思われる人に声をかける。生徒はほとんど登校した後なのか、姿は見えない。

「あの、今日から入学することになったガウルと言います。こっちはエルナです」

「あぁ君たちか。ようこそハリビア魔法科学校へ。いち教師として君たちを歓迎するよ」

そう微笑んで歓迎してくれた爽やかな男性教師。

「君たちのクラスを担当しているシルウェスです。これから案内するね」

ここで俺たちを待っていたのか。

「ガウルくんとエルナちゃんはこの棟の2階の教室だね。ガウルくんたちはAクラスだから1番奥になるよ」

色々説明を受け案内について行くと、ついに教室の目の前までやってきた。

「さぁ、緊張せず入ろうか。先に説明は軽くしてあるからさ」

そう言われたので素直に入って見ることに。

教室の前に置かれた少し大きめの教壇にそれぞれ並び、紹介される。

「みんな、この子達が今日からこのクラスに入ることになったガウルくんとエルナちゃんだ。仲良くするように」

教室の空気はみんな仲良く…な雰囲気ではなく、強く敵対心を向けてくる者と、そもそも興味が無い者が大半だった。

魔法社会なこの異世界では、下級生でも思ったよりずっと競争社会のようだな。この空気に少し不安を感じるエルナは戸惑いながらも意気込みを口にしていた。俺もそれっぽいことを言いそれぞれ席に着くよう促される。日本の学校とは違う教室にまだどこか落ち着かないが、今は従うしかないだろう。エルナと少し離れた席で、俺の席はやや後ろ側だった。

クラスメイトの間を通る時、周りから警戒の目を少し向けられているのが分かった。

そんな中俺の席の右隣に座っていた女子がすぐに声をかけてきた。

「途中から来たからって優しくしないから」

一言残し、ふんっと反対を向いてしまった。どうやら歓迎されていなかったようだ。

一方、左隣に座っていた女の子があわあわと少し気恥ずかしそうに小さい声量で声をかけてくる。

「えっと、一緒のクラスのアイビアって言います。よろしくね」

アイビアと名乗った方は数少ない歓迎組なのだろう。「あぁ、よろしくな」

短いあいさつをして、先生が話を切り出す。

「新しい仲間が増えて先生は嬉しく思う。2人にも慣れてもらえるように工夫してみるがみんなも仲良くしてほしい。さて、話は以上だ」

そう言い少しの自由時間を与えられる。

そこで俺は、先ほどからずっと送ってきている視線を感じ取る。周りの生徒も軽く見てくることはあっても、ずっと見てくることはない。その視線の先を辿ろうとすると、向こうから近づいてきた男子生徒。さらにその後ろに2人男子生徒がついてくる。

「お前さ、このクラスの全員が仲間だと思ってんの?途中から来たお前を仲間だと思ってるやつなんか一人もいないぜ?」

「ちょ、ちょっとやめようよ!」

その言葉にいち早く反応したのは俺ではなくアイビアだった。やはりこの子は仲間意識があるのだろうか。

「やめとけよアイビア。こいつに優しくしたって足手まといなだけだ」

「ハイト様の言う通りだぜ」

「間違いないっすね」

「ハイト様?そんなにすごい人なのか」

後ろに連れている2人はハイトと言った生徒の舎弟のような感じで接している。ハイトがどんなやつなのか素直に気になったので聞いてみることにした。

「お前!ハイト様を知らないのか?なんて失礼なやつなんだ…」

「まぁ良い。これから嫌でも俺の存在を脳に刻むことになるだろうからな。楽しみにしてるぜガウル」

素直に答えてくれるわけではないが、何となくどういうやつなのかは感じ取れた。

「みんななんで仲良くしないんだろ…喧嘩はやだな」

「あんなに喧嘩腰なのは男子だけでしょ?堂々とあんなこと言うなんて鬱陶しいだけよ」

アイビアの言葉にキツく言うように右隣に座る女子が話す。

「お前もその内の1人なんだぜ?エニス」

「私にあんたが勝てるところなんてあるはずないでしょ?魔力も学力も私の方が上よ」

「勝手に言っとけよ。女のお前が俺の相手になると思ってねーよ」

お互い煽るように話していた。まだクラスメイトの1部しか知らないが、なんとも個性豊かな生徒達だな。

「覚えとけよガウル」

なぜここまでターゲットにされるのか理解に苦しむが、面倒事に目をつけられたのは確かだな。

エルナの方は少しの女子が話しかけており、特に目をつけられている様子は見たところなかった。

さて、この学校で俺がすべきことはこの世界の情報収集と共に魔法を使えるようになること。

今日からは忙しくなりそうだな。だが、どこかワクワクした自分がいることに驚いていた。

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