石破政権はある種の「素敵な陣容」
◇石破内閣の“狙い”
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は石破内閣の陣容について見ていこうと思います。
まず高市氏の推薦人は0人、支持した麻生派から2人、高市氏を支持した人も2人(木内氏と加藤氏)しか起用されませんでした。
それに対して石破氏を推薦した人から入閣は6人、石破氏に近い無派閥から3人入りました。
質問者:
石破さんはしかし高市さんを総務会長にしようとしたのを拒否したという事のようですが……。
筆者:
皆さんの中には安倍元首相に対して独裁的なイメージがあったかもしれませんが、
政権奪取し返した直後は石破氏を党内で最も権限が強い予算配分・党公認の権利を持つ幹事長や地方創生担当大臣に起用したりと、
対立候補と言えど起用していました。
高市氏もそれに倣って当然、幹事長か最低でも経済安全保障大臣留任を要求したに違いありません。
高市氏が石破氏から要請された総務会長というのは「党四役」とは言われるものの大臣から見ると「降格」と言えるので拒否したのでしょうね。
質問者:
なるほど、幹事長が党の役職で頭一つ抜けてるという事なんですね……。
高市さんに近い人達を入れないことのメリットはどういう事があるんですか?
筆者:
非常に簡単に言うのであれば、現職の大臣などの役職についていないと衆議院選挙で当選しにくくなります。
勿論高市氏本人は地元で圧倒的な力があるので再選されますが、近い人たちが落選することで選挙後における高市氏の力を削ぐことが出来るのです。
閣内不一致の可能性も下がりますし、政権の安定感は上がります。
質問者:
な、なるほど。結構”エグイ”話なんですね……。
筆者:
ただ、当然ながらメリットもあればデメリットもあります。
政治に関心がある方であればあるほど、高市氏に近い人が入閣していないことに対して憤慨します。
そのために高市氏に投票した約3割の自民党党員は離反し、投票に行かなかったり、他の保守系の維新の会や国民民主党などの野党に投票してしまう可能性が上がるのです。
質問者:
自民党支持層の3割も入れないのは痛いことでは無いのですか?
筆者:
ただ、石破氏の方が高市氏より中道層が投票する可能性が高いと言われていますので、
そこはプラスマイナスの勘定でほぼゼロだと踏んでいるのでしょう。
◇石破内閣のリスク
質問者:
初入閣の方が13人という事なのですが、どうにも期待されていた「刷新感」と言うのがあまりない気がするのはどうしてなんでしょうか?
筆者:
やっぱり「有能そう」って感じの方があんまりいないからでしょう。
小林鷹之氏が入閣しなかったのは特に大きいでしょうね。広報本部長を打診したそうですが、その程度では断られても仕方ないと思います。
そしてこの「初入閣が13人」と言うところが石破内閣のリスクと言えます。
スキャンダルが無いかの調査である、いわゆる「身体検査」をしきれていない可能性が高く、「文春砲」を選挙中に浴びてしまえば致命傷になりかねないこともあり得ます。
質問者:
確かに、大臣の不祥事で内閣支持率が低下している傾向がありますからね……。
筆者:
また、先日も述べましたが「自民党改革者としてのイメージ」がある石破氏が早速「解散宣言」をするなど公約違反を早速してしまいました。
石破氏は岸田氏同様”総理大臣になりたいから”という理由で目指していただけであり、理念も信念もなさそうに見え始めたというのは大きなマイナスと言えるでしょうね。
更に選挙で裏金議員や統一教会支援者を自民党公認するようであれば「改革者のイメージ」は完全に崩壊していく可能性は高いです。
しかし、石破政権が長期化しそれらの人間を冷遇するようであれば自民党が分裂する可能性があります。
※自民党を改革することは不可能に近いと思っているので、党が分裂して共倒れになってくれるのが日本にとって望ましいと言えます。
質問者:
これまでのご自身の言動が「リスク」に繋がってしまうというのは何とも皮肉ですね……。
筆者:
石破氏はこの内閣を「納得と共感内閣」と名付け、「謙虚で誠実で温かい政治を行っていく」と宣言してきました。
しかし、幹事長に新しく就任した森山氏の進言に従って解散を行うようです。
国民からの要請ではなく長老の進言で、こんなにあっけなく自民党総裁選での公約が崩れ去っていくようでは、「謙虚で誠実で温かい政治」は期待できそうにありませんけどね。
◇起用から見える石破内閣の「方向性」
質問者:
内閣に起用した方から見える「方向性」みたいなものは何か見えるものはありますか?
筆者:
非常に特徴的なのは石破氏もそうですが、小野寺政調会長、中谷防衛大臣、岩谷外務大臣の4人も「防衛大臣経験者」が揃っていることです。
これほどまでに防衛大臣経験者が閣僚や重要ポストに就くことはかなり異例だと言えます。
質問者:
つまり「防衛を重視」と言う方向性なのでしょうか?
筆者:
外務大臣の岩屋氏はちょっと心配になりますけどね。
岩屋氏は防衛大臣時代の2018年に韓国から受けたレーダー照射問題を事実解明や再発防止を置き去りにしたまま韓国との関係を維持する姿勢を見せてそのままになりました。
味気なく国際問題を妥協してしまうリスクがあるので大いに警戒したいですね。
※レーダー照射は攻撃準備行動ともいえる非常に危険な行為
質問者:
今の激動とも言える国際情勢で強く言えないととんでもないことになりそうですね……。
筆者:
前外務大臣の上川氏も中国に対して領土問題などに関して弱腰でしたが、それよりも弱くなったら危険水域だと思います。
また、石破氏の政策としては「アジア版NATO」や「日米地位協定見直し」について提言していることは特徴的です。
ただ、どちらも関係するアメリカの元防衛次官補代理のエルブリッジ・コルビー氏(大統領がトランプ氏になれば要職に起用される見込みがある)は、
「依存ではなく、真のパートナーが必要。日本はGDP比で防衛費は3%程度に引き上げる必要がある」
と発言しています。
GDP2%に引き上げるために「防衛増税1兆円」と言われているのに、さらに引き上げるとなればかなり厳しい負担を国民に強いることになると思います。
しかもアメリカから型落ちトマホークを買わされたみたいに「大した防衛に貢献できない防衛費増」になる可能性も非常に高いと思われるんですね。
質問者:
それはとんでもなく嫌ですね……。
筆者:
また防衛増税がさらに増えつつ、自衛官になれば極端に優遇されるようになる「経済的徴兵制」と言うのが日本でも始まる可能性があります。
これは国民が困窮し増税が進めば進むほど効果があるので今の日本には効果は覿面と言えると思います。
特に防衛大臣になった中谷氏の実績と評判は上々なのですが、
2015年に集団的自衛権の行使を強引に憲法解釈で可能とする法案に対して強引に正面突破した中心的存在になったことがありました。この“強引さ”が「とんでもない防衛」に発展しないことを心の底から願いたいですね。
◇野党は解散総選挙を「チャンス」と喜ぶべき
質問者:
維新の会の馬場代表などは今回の早期解散について「敵前逃亡内閣」などと述べられているようですがそれについてはどうなんですか?
筆者:
政権交代して欲しい派の僕としては公約違反と批判することも大事だと思いますが、ここは「受けて立つ」と堂々として欲しいというのが本音ですね。
皆さん忘れつつあるのが恐ろしいですが、裏金議員への審判を早期に下せる大チャンスと捉えることが出来るわけです。
これを「論戦から逃げる」と指摘するのはちょっと違うと思っていまして、
「これが自民党の有権者に対する姿勢です。国民の皆さんよろしいですか?」
と余裕のある態度を示して欲しかったんです。
批判だけをしている状況は「準備が出来ていない」と早くも白旗を上げているようなもので、本当に情けない状況と言えます。
質問者:
議員の擁立や準備が間に合っていないんですかね……。
筆者:
しかし、今年の6月や8月にも解散が囁かれていた時期がありましたし、
まだ準備が出来ていないのは「選択肢を示す政党」としては2流と言えますね。
質問者:
自民党はこんなにも無用な増税や政治不信を招いているのに政権交代出来ないのは野党がしっかりできていないからですよね……。
筆者:
前首相になった岸田氏の方が支持率が「危険水域」になってもニヤニヤと笑っていたので、得体の知れなさが凄く不気味で嫌でした。
僕から見ると石破内閣は「穴だらけ」であり、野党から見ると「素敵な陣容」とも言えるわけです。
しかし、それを突くことが出来ず、野党は政策内容で自滅しかねない状況にあるわけです。
野党がしっかりできるように言論人の端くれとして今後も僕は個人的な意見を発信していきたいと思いますね。
という事でご覧いただきありがとうございました。
今回は石破内閣の「方向性」について解説していきました。
今後もこのような政治・経済について個人的な解説をしていきますのでどうぞご覧ください。