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ルビィの苦悩

「来たわね!庶民!遅いわよ!」

 ふんっと少し怒った様子のルビィ。

 ……いや、怒ったふりをしているだけだ。口の端がピクピクしてる。

「ああすみません。家の手伝いをしてて遅れちゃいました。」

 ちなみに俺がここに着いたのは8時くらいだ。手伝いがあったとはいえそんな遅くないだろう。


 ……君は何時からいるんだい?と聞きたくなったがやめておいた。


 この世界の住民は電気がないから基本的に早寝早起きだ。

 お嬢様に至っては雑務は従者が行うから暇でしょうがないのだろう。

 るんるんで歩いていくルビィであった。

ある時は木の下で昼寝をしたり、川で遊んだり(あんなことがあったのに、水遊びを怯えたりはしなかった)、この数日はルビィと過ごして遊んだ。

 そんな3日目の夕方である。

「それでね、私は魚を食べるなら〜」

 3日通して分かったことがある。ルビィは結構お喋りな子だ。俺はうん、そうだねしか返さなくてもお構いなしにずっと話続ける。が、聞いてないとそれはそれで困る。

「で、庶民はどう思うかしら?」

 こんなパスが突然やってくる。返答が遅かったり、うん、そうだねって返した際には、「ちゃんと聞いてなさいよ!」と平手打ちが来る。(7敗)

 この短い期間で7敗する俺も俺だが……

 こうやって接している分には川に飛び込んだりはしないだろう。案外普通の子だったのだ。そんな風に油断していたときだった。

「ああ近頃家にいないと思ったら、庶民と戯れてたのか」

 いきなり、声がかかる。イヤミなやつだ。

 金髪の少年暫定ルビィ兄である。

「……お兄様、ごきげんよう」

 やはり兄であってたようだ。

 さっきまで元気いっぱいに離していたルビィだったが、急に萎れてしまった。

「ま、俺もくだらねえ庶民のもの同士仲良くした方がいいと思うぜ。お前のような女はカーノルドに相応しくない」

「ナーベルはくだらなくなどありません。

 私は……お兄様に認めてもらえるよう、精進致します。」

「ちっ、つまんねえ女だ。せいぜいつまんねえ庶民とよろしくしてな」

 というと去っていった。

 ぎゅっと唇を噛み締めたルビィ。しばらく場は静寂を支配した。

「ルビィ」

「今日は帰って」

「ルビィ……」

 とぼとぼと帰路に向かうルビィ。なんとなく、その背中を見送ったら二度と会えない気がした。だから俺は思わずルビィの腕を掴んだ。

「……なによ」

「辛いことがあるなら、話してください。ここで黙って帰らせられるほど、俺は甘くないですよ」

「何も知らないくせに。ほっといてよ」

 声は震えている。いくら言葉で突き放したって、真実ではない。

 ……俺にもこんな時期があった。前世で手を差し伸べてくれた人はいた。それでも信じられなくて、実は裏切るつもりなんじゃないかってビクビクしていた。本当は求めていたのに。助けを、求めていたのに。

 そう考えても、いや、かつての自分を見ているように思えるから余計にイライラする。

「ほっておけないからここにいるんじゃないか!心配だからそばにいるんじゃないか!いいからこっち向けよバカ!」

ぴたりと動きを止めたルビィ。やがて観念したのか俺の握ってない手で

「だれがバカよ、バカ庶民」

 目を赤くしたルビィがようやくこっちを向いてくれた。



 〈ルビィSIDE〉

 私は、カーノルド家の長女として産まれた。しかし、私は正妻との子供ではなく、当主がメイドに手を出して出来た不義の子である。

 私の母は私と入れ替わるようにして亡くなった。なんでも正妻、お兄様のお母様グエル様にいじめられて心労絶えずに亡くなってしまったらしい。当主、お父様も私が3才の頃に亡くなってしまった。

 お父様はお兄様も私も同じ子供として扱ってもらった。お父様が亡くなった後はお兄様は代替わりのできる年齢でもないため、グエル様が貴族としてのお仕事をなさっている。

 当然、家督はお兄様が継ぐのだろう。

 私はもともと家督になど興味はなかった。しかし、家族には認めてもらわなければならない。お母様は素敵な人だったと色んな方に言ってもらえた。お父様からも、一緒に働いていた執事やメイドの方々も。

 会った記憶はない。話した記憶もない。しかし、カーノルド家の全員に私を認めてもらうことで、お母様もまた認めてもらえるのではないかと考え始めるようになった。


 だからこそ私は、お兄様やグエル様に立派だと思わせる必要がある。誰にも頼らず1人で立ち向かうことで。


 そんな中、私は川で溺れてしまった。お兄様に認めてもらうために川に飛び込んだのだけれど、当のお兄様はどこか消えてしまった。

 私はここで死んでしまうのだと思った。


 しかし、そうはならなかった。その場に居合わせたナーベルという少年が助けてくれたのだ。機転を効かせ枝を使い、魔法を使い救ってくれた。

 私はナーベルに助けてもらったことが本当に嬉しかった。

 君はいてもいい存在だ。君は助けるに値する人だ。そう言ってもらえたような気がして。


 それだけでなく、彼はここ数日私と遊んでくれた。

 話したいことは山ほどあった。ナーベルって呼びたかったし、川でのお礼も言いたかった。好きなこととか、好きな女の子の髪型とか色んなことだ。

 ……そして、ナーベルと仲良くしているところをお兄様に見つかった。

 お兄様はナーベルのことを悪く言った。私の命の恩人に対して。私の……友達に対して。

 それがあまりにも切なくて、やるせなくて、情けなかった。

 私のせいで彼が嫌な気分になってしまった。そう考えるともう関わってはいけない、そう感じた。


 そんな私を見て、ナーベルはほっておけないと、心配だと言ってくれた。どうしても堪えきれず涙が頬を伝った。


 そして私は、お父様以外にはじめて心を開くことができたのだ。

趣味なのでのんびり書かせてもらいます。

誤字等あればこっそり教えて下さい!

見切り発車なため多少の改変あるかもです!

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