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異世界転生

体がどんどん水に沈んでいく。

抱くべき勇気ではなかったかもしれない。早計だったかもしれない。ひんやりとした感覚が体を支配する。

 だが、自然と後悔をすることはなかった。

 視界にもやがかかってきた。暗転し、もう目覚めることはない……はずだった。


「あうっ」

目が覚める。ここはどこだ。

 病室のような白い部屋で目覚める。

 天井はボロい。俺の住んでいたところは都心の真っ只中。多少田舎に下ったとしても日本の病室とは思えない。

 ここはどこなんだ。そんな思案を続けていると

 うおっ!なんだなんだ?

 とんでもない力によって持ち上げられる。最新の病院には病人を持ち上げるシステムが確立しているのだろうか。


 そのまま俺は流されるまま女性の前に置かれる。


 かなりの美人だ。たなびく金髪を持っている。

 ……でもかなりでかいな。

 もちろんでかい素敵なものの話ではない。女性自体がかなり大きい。

「あぅ」

 必死に声を絞り出す。もしやとんでもない後遺症を患ったのだろうか。焦りから冷や汗が出てくる。


 ……いやそうではない。周りがでかいのではなく、俺が小さいのだとしたら。


 俺の手を確認する。赤子のような手。


 ようなではない。おそらく赤子だ。

 どうやら俺は前世の記憶を持ったまま転生をしてしまったらしい。

あれから数ヶ月が経ち、俺の名がナーベルであることがわかった。言語は日本語ではない。英語でもないから俺が知っているような国ではないだろう。


 それもそのはず、電気やガスに該当するものがない。掃除機やパソコンなどの機材がないことから日本よりも原始的な国であるようだ。


 前世に未練があるわけではない。ただ今まで科学を利用させていただいた身にしてみれば、不便と言わざるを得ない。


 夜中は電気なしでろうそく。蛇口から水なんて出ないから井戸水を組む必要がある。まだ赤子である俺は水を汲みに行ったりする必要はないが、いずれやるときがくるであろう。せめて水道くらいはなんとかならないものか。


 俺の父親がディーゼル、母親はジーナと呼ばれていた。二人ともとても若い。前世であれば高校生のカップルでも通用するだろう。それもそのはず、ディーゼルは20才。ジーナは18才である。


 ディーゼルは茶色がかった髪色で、ジーナは輝くような金髪だ。西洋風な顔立ちであり日本人離れした美貌を二人とも持っている。


 俺が生前17才であったから、実年齢は負けているものの、高校の先輩程度の年齢の人を親と思うのは違和感が強い。だが、高校の先輩程度の人の胸を揉んだり吸ったりできるのはなかなかに悪くない。


 くるしゅうないぞ。余は。


 ともあれ、そんな2人の長男として俺は転生したのであった。


 はじめは神を呪った。自らピリオドを打った詩に待ったをかけられれば不快だろう。


 だが、次第にその感情は薄れていった。代わりに俺は人生をやり直したいという感情に移り変わっていった。


 戦うのが怖かった。戦うことでさらに辛い目に合うかもしれない。


 俺はどんどん逃げることを覚えた。そして最も尊いはずの人生すらも手放してしまった。


 誰かに必要とされない孤独を、誰もが疎ましく思う自身の存在が何よりも耐えられなかった。


 でも、今の俺は違う。望まれた子として生を受け、両親の愛を一心に受けている。


 これからは誰かに必要とされるために。誰にでも望まれる存在に。

人生は一度きり。本当ならば。二度も貰えた俺はとてつもない幸運である。無駄にしないよう、全力で生きることを俺は誓ったのであった。

生後からどれくらい経ったか。ハイハイで移動できるようになった俺はジーナの目を盗み書斎へと入り浸った。


 初めて書斎に入った時は、その荘厳な雰囲気に圧倒されたものであった。しかし、分厚い表紙の本は、実は面白いフィクションのようなものであった。


 赤ちゃんの1日はあまりにも退屈すぎる。元々本を読むのが好きだった俺は隙を見て本を読むようになった。


 両親のどちらの趣味かは知らないが、ゲーム世界のようなお話ばかりあるので趣味が合うかもしれない。


 文字については数ヶ月で覚え始めた。話し言葉は1ヶ月でわかるようになったし、文字もこんな速さで覚えるとは思っても見なかった。


 元々勉強ができる方ではなかったが、赤子の力は末恐ろしいものだ。前世ではゴールデンエイジと呼ばれるものがあった。曰く、6〜12才頃に運動をしていると運動神経がグッと伸びるというものだ。勉強に関してもそういった時期があるのだろう。


 今回は魔導書について読もう。


 なんの小説かは知らないが、びっしり魔法について書かれている。かなりしっかり練られた設定資料である。


 ええと、魔法には詠唱と魔力が必要である。極めて集中力を要求するため、魔法使いは後衛に構える。


 ふむ、RPGの鉄則だ。

 魔法にはそれぞれ才能があり、神に与えられた属性しか使うことができない。


 なるほど、火属性使いは火属性の魔法しか使えないわけだ。まあ血液型みたいな設定なんだな。


 才能を判明させるにはこの呪文が必要である。

「顕現せよ。血の契約により我が力を示さん」

 なんだこれ……厨二全開の痛詠唱じゃねえか。


 てあれっ?

 俺の体が青く光り始める。なんだなんだ?

 もしかしてこの魔導書本物か?

どうやらこの世界には魔法があるらしい。さらに読み進めていくと俺は水属性の魔法の才があるらしい。


 どうせなら火魔法とかかっちょいい魔法が使いたかったが、決められているならしょうがない。


 早速俺は水魔法使いが読む詠唱を読み漁った。

 そして声に出して読む。

「現れ、いでよ創元の水槍ウォーターランス!」

「発現せよ、水上の守人よウォーターウォール!」

 ……

 だが、出てきてくれない。もちろん、日常会話で使っているわけではないため、発音が間違っている可能性もある。なんとなくで当てはめて話しているだけだ。


 ただ、直感では根本的ななにかが違う気がする。


 そもそも魔法があると言ってもどういう原理なんだろう。水が集まるには飽和水蒸気量を下回る必要があるから、急速に冷やしているのだろうか。


 まるでエアコンみたいに。

 水魔法使いはクーラーならば意外と悪くないかもしらない。快適な水使いの旅を想像する。

 ってあれ……手汗がすごいな、


 ポタポタと水がしたたり落ちる。

 もしかしてこれが魔法か?


 そのまま水が急速に冷やされるイメージを使う。

「おお!」

 握り拳一つくらいの水が球状になって現れる。

 あれ、急に眠くなって……

 そのまま俺は気絶してしまった。


〈ディーゼルSIDE〉

 

 「ねえディーゼル。あの子ちょっと天才かもしれないのよ!」

「ああ、そうかもな。」

 我が家に待望の子供が出来た。長男のナーベル。夜泣きもぐずりもしない子ということで体が弱いのではと心配していたが、半年経った今でも健康そのものだ。


 彼は産まれてから書斎が気に入ったようでジーナの目を盗んでは入り浸っている。


 文字も言葉もまだわかってないだろうに、真剣に本を眺めている。


 はじめは俺もジーナもベビーベッドを抜け出していくナーベルに心配を覚えた。


 でも普段おとなしい長男を見ていると、多少ヤンチャしてくれた方が安心するというものだ。


 赤子では超えられないだろう柵付きのベビーベッドであったが、ナーベルは器用に登ってしまうために柵を取ってしまった。


 下手に超えようとして落ちたら危険だからだ。ジーナが見守ってはいるが、障害は少ない方がいいだろう。


賢くも意外と暴れん坊なナーベルには、極力危険性を排除してのびのびさせてあげるという方針になった。


 危ないことも言わずとも理解しているような節はある。調理をしている場や火には不用意に近づかない。が、言って聞くような年でもないため見張っていかねばなるまい。


 なにしろ男の子が産まれたら剣士にすると話し合っていた。ジーナは魔法を教える気満々だったが、やはり男子たるもの武器を持たねば格好がつかないというものだ。


 剣を教える日がとても待ち遠しい。ディーゼルはウズウズしていた。

 もちろんジーナも例外ではない。両親ともども、長男ナーベルの将来が楽しみで仕方がなかった。

 

趣味なのでのんびり書かせてもらいます。

誤字等あればこっそり教えて下さい!

見切り発車なため多少の改変あるかもです!

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