58:レルメッチ共和国での戦い
波打ち際で体を冷やしていたが、ローデン連邦から見える島々の距離を確認して立ち上がる。ローウェル王国の国土を幾つかに分けて海の上に落下させたようだ。移動には不向きな大地を切り分けて更に移動要塞としての役割を向上させるつもりだろう。ここで過ごしていたとしても追いつかれるかもしれない。わたしが目的なら一緒についてきた仲間は無事なはずだ。マグノメリアには行かずにローデン連邦で過ごすのも悪くない判断だと考えて重い足を動かす。
海に背を向けて大きく上に伸びる木々の間を抜けていく。頭上には太陽を隠すほどの巨大な葉が風に揺れている。
目の前を通り過ぎる物体を見て速さに驚く。バーキン連邦でもあまり見なかった乗り物が道の上を走っている。風に揺れる巨大な葉の幹に背を預けて安全に通り過ぎる瞬間を待つ。頭上の何もない空間が点灯して道を走る乗り物が止まり始める。何人かが喋りながらこちらに向かってくるのを見て、無意識にうつむきながら先に進む。今ある乗り物はすべて止まっていたが道を渡り終わると自然と動き出した。
周囲の目を気にしながら店に入る。手持ちのお金を取り出し、帽子や服に眼鏡を購入して着替えると明るい気持ちに切り替えることができた。
もう過去のわたしではない。
天高くそびえ立つ複数の建物を目印にして迷わないようローデン連邦を歩く。人々が行き交う姿や店の様子から都市部だと思われる。海から随分と歩いてきたが住んでいる人たちはみんな陽気で楽しそうだ。
わたしが以前来た場所とは違うようだ。観光用の地図を誰でも見ることができるようになっていて、ここが首都リルマだとわかる。様々な建物の屋外にある広告看板で度々目撃するリルマという文字からもローデン連邦で一番有名な場所なのは確かだ。
なるべく顔を合わせないよう人の少ない路地裏を選ぶ。そこでは陰鬱な顔の人が多くいて、先程よりわたしの顔を見ようとしてきた。
「おい」
見知らぬ男性に声をかけられたが無視をして歩き出す。
「無視は酷いじゃねえか」
その男性はわたしの腕を掴むと路地裏の奥に引っ張ろうとした。
「なに?」
男性は拍子抜けするほどあっさり腕を離した。
「あ、いや」
先程少し笑顔だったが腕を掴んだ瞬間から表情が変わった。
「なあ、もしかしてあんためちゃくちゃ強いのか?」
「強くはないと思うけど」
あまり筋肉があるほうではない。
「そうだよな……」
「もういい?」
「ああ」
こんな路地裏に行くと変な人に声をかけられるようだ。もっと別の道に行ったほうが賢明だろう。
そう思い路地裏を抜けると空に浮かぶ大地が見えた。思わずもう一度路地裏に戻る。周囲には大騒ぎで逃げ惑う人が大勢いた。ローウェル王国がローデン連邦の真上を通過していく。以前ならここまで大胆な行動はしなかった。
仕方なく先程から路地裏から動かない男性の元に戻る。バロック王国まで一番の近道は海を渡ることだ。ローウェル王国がいる以上は通常のルートではいけそうにない。レルメッチ共和国とローデン連邦は同じ平民の国だ。そこは今のわたしなら問題はないが手続きは面倒だった。
「ここから海に行ってレルメッチ共和国に行きたいんだが、船とかはないか?」
「通常の船を使えばいい」
「気づかれずにレルメッチ共和国に行きたい」
泳いで行くのもいいが魔力で見つかる可能性もある。体力が持つのかもわからない。
「……わかった。ついてこい」
男性に連れられて路地裏を進むと錆びたドアが見える。カフェか何かの看板で彼はドアを開けると酒や他の悪臭がした。テーブルに座る人たちは男女が複数人いて、どれも険しい顔をしている。近くのテーブルの席に座らされると男性は酒を注文した。
店員がわたしを見る。
「わたしは何もいらないです」
その店員は舌打ちをして去って行った。
「あの先程はなんでわたしを連れて行こうとしたんですか?」
席に座っている男性は「いいカモになると思ったから声をかけたがやめた」と言ってテーブルに置かれた酒を飲み始める。
「その腕……バーキン連邦のものだ。あまり詳しくない奴もいるがゴーストブラッドと言われている兵器だろ?」
「あまり使いたくはないけどね」
「正規の軍人でも持つ奴がいないようなものを一般人が持つわけがない」
「よくわかるね」
「ここはバーキン連邦で暮らしていたことのある奴も多い。都心部の闇の部分では色々と危ない取引も行われているからな」
「わたしは元々はフェザー連邦で住んでいた。色々あってバーキン連邦で暮らすことになったんだが戦争があってローデン連邦に来たんだ。でも、ちょっと用事があってレルメッチ共和国に行かないといけなくなった」
「そんな転々とすることあるんだ……まあ、それなら俺たちの仕事で行くことがあるから一緒に行けるかもな」
「仕事?」
「俺たちは元ロアマルカルテルで薬物や兵器とかの取引で金を稼いでいる組織なんだ。今はレルメッチ共和国をガルメアカルテルに奪われて他国にいるが、いつでも奪い返す準備はできている。今はガルメアカルテルの下部組織だが、今も俺たちはロアマルカルテルだと思っている」
「その手伝いをすればレルメッチ共和国に行けるというわけね」
「そうだ」
実際はバロック王国に行きたいわけでレルメッチ共和国に行きたいわけではない。他の国は既に滅びているし、目印となる場所はあまり残されていない。本気で彼らの手助けをしなくても途中で逃げてしまえばいいだけの話だ。
ロアマルカルテルがいるというビルの部屋に通されると大男が周囲に女性を置いていた。その男性はわたしを見ると「そいつは新しい俺の女か?」と言うがわたしを連れてきた男性は「いえ、ボス。彼女は我々組織の手伝いをしてくれる人です。強力な武器も持っています」と言った。
「こんな痩せた女がね……」
この大男は女性が好きなようで変わった趣味だな。ギャバジンとかなら増えてきたが一般的には多くない。
「俺はロアマルだ。ここの組織を頂点にいる。本当にそんな実力があるのか?」
ロアマルが遠くにいる男性を指差すと彼は銃を向けて躊躇なく発砲した。右手で弾丸を受け止めるとロアマルは手を叩く。
「歓迎するよ。名前は?」
「ラフィアだ」
一瞬引きつった顔をしながら握手をしようと手を出すもロアマルが侍らせている女性は、どれも武器を構えて睨んでいるようだった。
「ビジネスだよ」
握手をするとわたしは背を向けてドアに手をかける。
「レルメッチ共和国に行く時に呼んでくれれば仕事はする」
「次の連絡を待ってくれ。それまではしばらくローデン連邦での仕事をしてもらう」
「わかりました」
部屋を出てドアから彼らの声を聞く。
「もしも当たっていたらどうするんですか」
「別に怪我をするだけで死ぬわけじゃない。腕のいい奴だからな」
「あいつはゴーストブラッドと呼ばれている兵器を持っています。下手なことをしたら」
「そんなこと関係ない。それよりも……ラフィアか。まあ、違うか」
わたしはドアから耳を離して立ち去った。
翌日になってビルの中に入ると何人かの男性に囲まれていた。何か声をかけられていたので軽く返事をしていたら手を掴んできたので、一発だけ腹を殴ると怒涛の勢いで襲われた。仕方なく腹や顔を殴ると地面は血で染まっていた。様子を見ていた男性に近づく。
「ガルメアカルテルに潰される前に壊滅させられたいらしいね」
そう言ってからドアを開けると若干だがロアマルは昨日より機嫌が悪そうだった。
「あまり部下を傷つけないでほしいな」
「悪いね。教育がなってない子どもだったからしつけをしただけだよ」
わたしは貴族としては弱いほうだが彼らはあまりにも弱かった。
「言ってあるんだが話を聞かない奴が多くてな」
「そんなんだからレルメッチ共和国を追われることになるんですよ」
あまり歓迎されない雰囲気を見てきていい加減ローデン連邦を出たくなってきた。わたしは想像以上にこの場所が嫌いなようだった。
「喧嘩を売っているようだな」
「わたしは早く海を渡りたいだけです」
「そこまでの実力があるなら俺たちを頼る必要はないと思うが」
「色々面倒な敵が多いから隠れられる場所が欲しかっただけだ。あんたたちみたいな野蛮人でも利用できるなら利用する。それが一番疲れない選択肢だからね」
ここで魔力を使うことは避けたい。かといってゴーストブラッドを使用するのも魔力を大量に消費してしまうから普通の一般人じゃないのがわかってしまう。
「わかった。準備はもうできているから明日には出発する」
「なんだ。もう行ける準備はできていたんだ」
「少しは心の準備をしたいんだよ」
「そんな大男なのに小さいな」
「死にたいのか?」
「いいや」
わたしは近くの椅子に座ると女性からコップを手渡される。
「ありがとう」
あまり美味しくない酒の味だったが下手な水を飲むよりは良かった。舌が少しぴりぴりとしていたが変なものでも入っているようだった。多分体を弱らせる薬や他にも色々と入っているようだが強力な薬は使用されていない。
「あなたすごいね。たった一人でこんな場所まで来てボスと渡り合うなんて」
その女性はロアマルが侍らせていた女性の一人だった。
「これも好きな男の為だよ」
「そうなんだ……いいね。それ」
椅子に座りしばらく話をしていると近くにいた別の女性が顔を覗き込む。
「本当に綺麗な顔をしているね。ボスの女にはならないの?」
「あんな豚のどこがいいの?」
一瞬辺りは凍りついたように静かになった。ロアマルはその様子を見て睨んでいたが、わたしは気にせず話を続ける。
「可愛い女性、かっこいい男性。人の好みは様々だから文句は言わないが楽しく食事をするなら、性格の悪い奴を選ぶもの好きはいないよ」
舌打ちをしたロアマルがわたしに近づく。
「お前はレルメッチ共和国を取り返した後はわかってるのか?」
ロアマルは今にも殴りかかりそうな様子で拳を構えている。
「悪かったよ。この酒にも色々入っているからあまり信用していないんだ」
「普通は飲んだ瞬間から動けないはずだが……本当に普通の人間じゃないんだな」
寝ている時でさえも魔力で肉体を強化するよう鍛えている。努力次第で誰でもできることだが魔力の大小によっては毒で動けなくなる確率も上がるはずだ。
わたしは運がいい。
「ごめんね。ラフィア」
座っていた女性は謝るが「いいよ。そういう雰囲気なのはわかったから」と言って酒をロアマルに投げつける。
「準備が出来たら呼んでよね。わたし近くの路地裏で寝ているから」
わたしが立ち去ると未だに根に持っている人が見える。呆れるほどのしぶとさにため息が出る。満足に魔法を使えないわたし程度でも倒せる人しかいない。ローウェル王国の兵士やバーキン連邦の兵士は随分と強かったのだとわかる。
路地裏で寝ていると朝が来たようで背伸びをしていると遠くで見ていた男性が目に入る。前にわたしをロアマルカルテルに連れてきた男性だ。その男性はガクリと呼ばれているようだ。何度も話をしているのに今日始めて自己紹介をした。若干わたしを恐れているようにも感じられた。
「震えてる?」
「いや……」
わたしが彼の魔力を見ると他の人よりも魔力の量が多くあるように感じた。
「ガクリだっけ? あなたは優秀だと思うから、もっと別の仕事で働いたほうがいい」
こんな場所で働いてもいいことはない。
「そんなことできないよ。俺はここで生きて、ここで死ぬんだ。妹の命はボスの手に握られている。あいつはレルメッチ共和国にいるガルメアカルテルに取引材料として渡された。俺が不甲斐ないせいで妹は……」
その表情を見て考えが変わった。
「じゃあ、その妹の為にも頑張らないとね」
ロアマルカルテルは既に崩壊した後の組織で本来の名前はガルメアカルテルだ。ローデン連邦は以前ローウェル王国との取引でレルメッチ共和国にいるロアマルカルテルの力を借りていた。十年前わたしが逃げ出したことでローデン連邦から理不尽にも責められたロアマルカルテルは、レルメッチ共和国の協力なしではローデン連邦での立場がなかった。ローウェル王国が以前認めていた薬の件もわたしが逃げた結果、逃した責任はローデン連邦にあるとして大罪人を処刑できなかった国を責めた。結果的にローデン連邦はローウェル王国との協力関係を結べずにロアマルカルテルはローデン連邦を追われた。
ローウェル王国としてはフェザー連邦がいるからローデン連邦の必要性が薄かったのだろう。
元々レルメッチ共和国でガルメアカルテルと熾烈な争いをしていたロアマルカルテルは、レルメッチ共和国での立場を追われてガルメアカルテルの下部組織となった。本来はローデン連邦を裏で糸を引いていたロアマルカルテルに居場所はなかったが、ガルメアカルテルはローデン連邦での取引に彼らを利用した。
それがガクリの妹コバールのようだ。彼女をガルメアカルテルのボスに差し出すことを提案したようだ。ガルメアカルテルのボスが女性という話をしていた時不安そうな表情をするガクリ。ロアマルは女性を侍らせているが同じようにガルメアも女性を侍らせている。異性か同性かの違いでしかないが大した違いはない。どちらも家族としては不安なのは変わらない。
「あいつらガルメアカルテルはロアマルカルテルが不利なのを知って、ローデン連邦に取引を持ち出したんだ。ロアマルカルテルが使っていたすべての薬物や武器のルートをローデン連邦に差し出した。その代わりにガルメアカルテルはローデン連邦とレルメッチ共和国との、大きな繋がりを大勢の人間によって達成した。言ってしまえば政略結婚のようなものでロアマルカルテルは従うしかなかった」
「その妹さんを助けたいならわたしも今以上に協力することを誓うよ」
その会話の中にラフィア・ローウェルという内容もあったが、もう十年以上も前の話で当時を知っていた組織のメンバーは半分以上は死んでいる。当のロアマルもわたしを見ても何も言わなかった。こうして話をしている彼もわたしを王族として見ているようには思えない。
「その……ラフィア・ローウェルという人のことをどう思っているの?」
思わず聞いてみると「ラフィア、君と同じ名前だね」と言いながら手に持つ銃を眺める。
「その名前を忘れたことはない」
「そうなんだ」
「ラフィア・ローウェルはローウェル王国の王族らしいけど、詳しいことは未だにわからない。ローウェル王国内でもローデン連邦内でも大罪人としか知らされていない。奴が逃げ出した時、まだ俺は若かったが当時の光景をよく覚えてるよ」
わたしが何も言えずにいると彼は船までの道を案内するように先を急ぐ。
大きな船に乗り込んだが武器を持つ人間は少ないように思えた。主な作戦内容はわたしが突撃することで切り開く。まずはレルメッチ共和国で敵を引き付けて国にいる兵士たちを倒す。ロアマルカルテルの大部分は失われた仲間の救出作戦だ。他にも薬物や武器を取り戻すことも考えているようだが、わたしという存在が現れたことでローデン連邦での取引を優位にできると考えている。ロアマルは終始他の人間への犠牲者を恐れて、わたしを先頭に立たせることを指示していた。本来なら逃げても良かったが彼の妹コバールの話を聞き考えが変わった。
船を降りてわたしたちはレルメッチ共和国に近づいた。わたし以外の人は正門には行かずに他の壁や別の入口を行く。ここでわたしがゴーストブラッドを使用して壁を破壊して、レルメッチ共和国での救出作戦を優位に進める。
その後はわたしもレルメッチ共和国に行き、救出作戦を実行することに決まっていた。
他の人たちが壁から少し離れた位置に行ったことを魔力で確認する。わたしは右腕を外してゴーストブラッド機を使用する。巨大な体になったことでレルメッチ共和国の全体が把握できた。複数の入口が見えてきたがどれも塞がっている。武装を魔力で生成して大きな銃を作り出すとロアマルカルテルのみんなが見ていた壁をすべて同時に破壊する。その後も次々と壁を壊して彼らの逃げ道を作っていく。気づいた者が空を見上げると即座に攻撃していく。
地上では大騒ぎになっているのか人々が逃げ惑う姿が確認できた。
兵士たちが近づく度に攻撃をしていたが少しの威力でも死んでしまうようだ。強力なゴーストブラッドは魔力消費が大きい。地上に降りて土煙が舞うの中、レルメッチ共和国内部に入る。建物内に入っていくと思わず鼻をつまんでしまう。地面には死体が放置されていた。腐敗臭のする室内を歩くとロアマルカルテルの人間が銃でガルメアカルテルの人間と戦っている。わたしが基礎魔法で気絶させると一瞬、彼らロアマルカルテルの人間はわたしを驚いた表情で見ていたが手を振り去って行く。
更に大きな騒ぎのする方向へ向かうとロアマルとガルメアらしき女性が戦っていた。ロアマルは防戦一方のようで壁に隠れている。一方でガルメアは鞭のような剣で壁に隠れるロアマルを追いつめている。
「おら! どうした! そんなんでよく今まで生きていられたな!」
わたしはガクリの魔力を探していると内部に彼の魔力を見つけられた。
ガルメアは手を緩めずに攻撃をしているとわたしに気づき驚き手を止めた。
「待て……ラフィア・ローウェル……正しかったのか?」
「今だ!」
ロアマルの声で周囲に隠れていた仲間が一斉に銃を撃ち始めた。ガルメアは体に数発攻撃を受けながらも後退していく。その姿を見ているとガクリが連れている女性を見る。彼は妹を救出したようでわたしに向かって走り出した。ガクリはわたしを見ると「後は頼んだ!」と言って撤退を始めた。わたしはここで残ってロアマルカルテルのみんなが逃げるのを助けることになる。
誰もいなくなったことを確認してからいつでもゴーストブラッドを使用できるよう構えていると、ガルメアが瓦礫の山から出てきてわたしに微笑んだ。
背後から近づく鞭のように長い剣に気づかずに背中を切られた。
「首を斬ろうとしたが手元が狂ったか」
叫びそうなほどの痛みに涙が出そうになったが耐えて右腕を外そうとする。
「おっと、動くな。こいつがどうなってもいいのか?」
彼女の手には長い鞭のような剣が見知らぬ女性の首に巻きつけられている。
「動けば首が飛ぶぞ」
わたしが動けない時を狙って背後から複数人の女性が覆い被さるように襲いかかる。
「賭けだったが成功したようだな」
ガルメアが女性の首に巻きつけられている剣を戻すと、基礎魔法で覆い被さる女性の一斉に吹き飛ばして一瞬でガルメアを蹴り飛ばした。
「随分と手ぬるいな」
「わたしは女性には優しいんだよ」
瓦礫の山から出てきたガルメアは近くにいた女性に目配せをしている。何人かの女性が運び出してきた死体に驚いた。わたしの目の前にロアマルが死んだ状態で地面を転がっていた。
「ロアマルは不正な取引で問題が多かったことで、組織内ではロアマルを支持する者は現在では少なくなっていた。そんなローデン連邦も業を煮やして動き出すところだった。元々ロアマルカルテルなんて昔の組織を未だに取り戻そうとするのは奴くらいなもんさ」
「ちょっと……それって裏切ったってこと?」
「裏切るもなにも始めから仲間じゃないだろ」
「まさかすべて茶番だったのか……」
「そんなわけないだろ。こっちにも死傷者が出ている。事前に連絡があったのは確かだが、ここまでやるとは思わなかった。どうにもロアマルカルテル内部でも色々あるようだからな」
ガルメアは立ちすくむわたしを見ながら言った。
「誰からの通報かはわからないが、若い男性だったのは間違いない。ロアマルを差し出す代わりにコバール・ランシノを要求してきた。価値が全然違うから素直に受け入れたが、思ったより被害が大きい。あいつらには報いを受けてもらうと思っていたが……肝心の首謀者はレルメッチ共和国にもローデン連邦にもいないだろうな」
ロアマルは好きではなかったが、これほどあっさり死ぬとは思わなかった。
「お前ラフィア・ローウェルか?」
「……ラフィアなのは間違いないが違う」
「そうか。渡された情報の通り指示を受けただけだが、別に本人じゃないなら問題ないかな」
ガルメアが穴の開いた天井を見上げると空は暗く何も見えなくなっていた。
「この上にはローウェル王国がいる。ここにラフィア・ローウェルがいるのではと通報があったんでね」




