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空から落ちる悪役令嬢の願いは叶いますか?  作者: 福与詩檻
第四章 魔王編

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55:魔王の気持ち

 ローウェル王国の王は代々魔王を名乗っているが、これは外部的な要因が大きく関係する。国内でも使用されるようになったのはローウェル王国と名乗ってからだ。国王となった者はカンターレン・ローウェルと名乗るのは襲名のようなものだと思われているが、実際は昔から魔王は何も変わらず生きている。人間より長く生きられる魔王と子孫たちは長い時間を過ごすことで膨大な知識と経験を手に入れる。実際は産まれてきた子孫のほとんどが争いを好む者が多く長生きはしない者ばかりだ。


 どの子孫も俺の魔法を使えるが得意な魔法ばかり使うのは好みなどだろう。ラフィアに関しては女神の力を持っていたことも関係しているのか複数の魔法を扱えた。サトウは神の力で他人の魔法でさえ扱える。今も魔法も扱えるが神の力を完全に掌握したわけではなかった。


 核となる魔王の存在と神の力は本来相容れない。サトウという人格と神が女神を欲しがる気持ちがラフィアに繋がっていなければ体さえも動かせないことになる。


 今も魔王ではあるが以前のような魔王とはいかない。


 大勢いる兵士の中にいるクルタ・ドルオーガとミュール・ハインドが他の兵士に混じって頭を下げている。どちらも魔王が変わったことを知っているが反旗を翻す気はない。一度魔王の姿が変化したことで混乱はあったが歴代の魔王は受け継がれる者だと知っているからか何事も起こらず過ごせている。


「魔王様。現在第三部隊が移動を開始しています」


 兵士の顔と名前をすべて覚えているわけではないが、今俺と話をしている者は記憶にない。きっと魔王の苗床となる為に産まれてきた人間だろう。他にも実験の結果誕生した生物もいるはずだ。このクルタとミュールを見ていたことを気づかれたのか二人共気にしている様子だ。


「ミュール・ハインドは何も言わないのか? 俺は魔王だが同時に佐藤星(さとうせい)でもある。この佐藤星(さとうせい)の為にも忠誠を誓えるか?」


 彼は口を開こうとしたが返答に困っていた。


「悪い。変なことを言ってしまったな。今の俺は魔王カンターレン・ローウェルだよ」


「わ、わたしは魔王様に忠誠を誓っています……」


 ミュールの声は小さかった。


「昔と随分体も顔も変わったからわからなくなるのも不思議じゃない。昔の友人と思ってくれていい」


「わかりました! サトウ! で、いいのかな」


 その時のミュールは緊張がほぐれたようで口元が緩んでいた。


「ミュール! 魔王様はどんな時も魔王様だ。すみません」


「いいさ。クルタ、いつもありがとう」


 少し汗を流しながら返事をする二人。誰に対しても期待などしていないが気持ちは穏やかだ。ここにいる者は以前の魔王を知っているせいか緊張をしているようだが昔よりは人間を大切にする気持ちがある。


「ここにいる全員に感謝の気持ちを伝えたい。君たちがいなければ魔王として受け入れてもらえなかった。俺も全力を尽くしてローウェル王国にいる人の為に力を尽くそう」


 その言葉を聞き驚きながら兵士たちは全身の緊張がほぐれたようだ。神の力の影響か佐藤星(さとうせい)の影響か恐怖で支配する気持ちにはなれない。


 俺は兵士たちの報告を聞きながら今後について考えていた。以前の魔王はあまりにも人の命を軽視しすぎて国を何度も滅ぼした。管理者としての考えが魔王の心を動かしていることも関係しているのか実験動物として人間を扱うことが難しくなっている。ラフィアを手に入れることが女神を手に入れることにもなるおかげで今の魔王がある。


 今の俺は非常に不安定だ。


「……以上になります」


 兵士は俺が違うことを考えている時に現在のローウェル王国の状況を伝えていた。すべて頭に入れていたので他に聞くことはない。帰っていく兵士たちを見ながら横目で窓の外で浮かぶ大地を見る。今第一部隊以外の大地にいる兵士は、それぞれの土地で準備を整えている。浮かび上がる大地はすべてローウェル王国のもので、事前に準備していたことだが上手に切り取ることができたようだ。この都市ローウェルを動かしていたのは以前なら魔王の魔力だが、今では古代技術と現代の技術の融合で強力な推進力を備えて浮かんでいる。膨大なエネルギーは空中に散布されるものや鉱石など、どんなものでもエネルギーになることが可能で当然魔力も使っている。


 土地を切り取って動かすことで機動要塞のように扱うのも魔王が以前から使っていなければ、ローウェル王国の住民は混乱していたことだろう。


 第三部隊だけで済む話で本来は他の部隊は行く必要もない。だが、女神の力に覚醒したと思われるラフィアには全力で挑まなければローウェル王国は負ける。


 神としての力は無限の魔力で単純な能力なら女神には負けない。それが完全に女神として覚醒したラフィアなら神にも手が届く。神と女神は同格だが魔法に特化しているのは女神だ。単純な質なら神は勝てないが量だけなら魔王と融合した俺にも可能性はある。


 既に第三部隊はバーキン連邦に入っている。あそこはストルジ山脈からアンボラとムルクバ砂漠とラフバ山脈に至るまでの巨大な土地だ。少し前に兵士たちと一緒に宇宙へ行き隕石を落としたことでバーキン連邦に動かせる人員は限られるはずだ。ラフィアだけなら逃げることも可能だが他の人間はどう動くかわからない。


 ドアをノックする音が聞こえて兵士が「失礼します」と言う声が聞こえた。玉座にいるよりは気楽な狭い室内にいるほうが安心する。


「報告します。第三部隊からラフィアの侵入が確認されました」


 彼女は既に王族として扱っていないので誰も敬意を払っていない。


 兵士は淡々と侵入経路を話す。


 確か前に報告で第三から第六までバーキン連邦に向かっている話は聞いた。残しているのは第一と第二だけだ。他の部隊が動かす土地は第三部隊の後ろからゆっくり移動している。それというのも第三部隊の土地というのがあまりに大きすぎて他を移動させるのが困難だからだ。


「ラフィアを捕らえることは難しいはずだ。第三部隊以外は空中で待機。もしもの時を考えて第三部隊には分離と落下の指示。バーキン連邦の戦力はきっとギャバジンだけになるが、あそこは狙われない限りは動かない」


「それと報告がもう一つあります。フェザー連邦にいるグラードがどうにも怪しい動きをしていると言っているようで調査をしたんですが、そのグラードという人物の居場所がわかりません」


「謝る必要はない。グラードは手強いからな。そいつの元には俺が行く、奴は顔と名前を変えるのが得意だからね……俺みたいなものだと思えば強いのは当然か」


「既に傘下に入っているフェザー連邦とローデン連邦にも怪しい動きの者がいます。対処を続けているのですが」


「そこは大丈夫だ。レルメッチ共和国とは昔から仲が良い。あのバロックという古の大地に住む人間は以前の戦いでほとんど死んだ。今はレルメッチ共和国程度しか生き残りはいない。あの国の協力さえあればフェザー連邦とローデン連邦も重い腰を上げてローウェル王国に協力する」


 あの腐敗したレルメッチ共和国は金と人間さえ渡せば従順だ。フェザー連邦とローデン連邦は今のところ力で従っている。だが、同じ平民の国のレルメッチ共和国の力さえあれば更に従わせることが可能だと思う。昔見た時よりも領土を拡大して他の王国にいた平民も取り込んでいると聞く。既に帰る国がない他国の貴族はローウェル王国にいるが、そこでできた家族の為にも戦わないといけない。


 貴族も平民という存在が気に食わないのかやる気になる奴は多い。余計にバーキン連邦は下手な貴族よりも強力な武器を持つので、倒すのが長年困難だったことを知る貴族は戦いに志願する者ばかりだ。


 それにこの十年で作られた数々の兵士は強力すぎる肉体を持つ。人間の形を保つ者やそうじゃない者も含めて、他国の貴族や他国の平民などローウェル王国には現在世界人口の半分以上が味方だ。バーキン連邦にいる者は人工衛星や隕石を落とすことで随分減った。その後の戦いで更に減ったのは間違いない。

 

 優勢なのは明らかなので焦る必要はない。


 一度フェザー連邦に行きグラードの顔を見ることに決める。


 魔力を探すもあまりに小さい魔力で探すことができない。都市ローウェルとフェザー連邦は距離は近いはずだが平民の魔力は小さすぎて感じられない。


 ドアを開けて廊下を歩き武器庫で以前使った銃剣を目にする。それを取ろうとして近くにあった指輪を見て武器を取らずにドアを閉める。そういえばあそこには銀色のネックレスも置いてあった。あれは武器ではないはずなのに何故か武器庫にあるが理由は不明だ。あれはラインから贈られたもので以前の魔王が死体となった元々の佐藤星(さとうせい)の肉体から外したものだ。


 諦めて何も持たずに行くことにする。この身だけで強力な武器になるのだがローウェル王国とも繋がりがある優秀なスパイのグラード。彼と本当に戦うのであれば必要だと思ってのことだが、昔の記憶が邪魔して手に取ることはできなかった。

 

 近づいてくる兵士にフェザー連邦に行くことを伝えると「まさか本当に?」などと言いながら俺を見ている。


「行くだけだ」


「……そうですか。準備を整えますね」


「ああ、連れて行くとしても少人数でいい」


 誰かをお供にする必要もないがカルガモの親子のように後ろを追いかけてくる。この世界にそんな生物がいるかはわからないが迷惑な話だ。


 兵士たちの中から現れたのはクルタとミュールだった。彼らは元々フェザー連邦に詳しいようで俺としても心強い。より少人数で行くことを決めたことに不満はあるようだが、魔王の決定を覆すほどの理由はフェザー連邦にはない。もしかすると兵士たちはフェザー連邦に攻めることを考えていたのかと思うほどの重武装で見ていた。クルタとミュールには動きやすい服を与える。以前よりも緊張していないように見えるミュールに比べてクルタはあまり変わらない。


 グラードを探すことを決めたがどんな場所にいるのか。そして今はどんな顔で動き回っているのかが重要なところだ。


 このローウェル王国にはグラードの本当の顔を知る者はいない。そしてそれは俺も同じだが本当の魔力を知るのは俺だけだ。今ラフィアを探すのは他の者に任せてあるが捕まえるのは無理だ。グラードを頼ることが多いツキヨとゴルアを叩くよりグラードを拘束したほうが比較的楽だ。可能ならば殺したくはないがいざとなれば容赦はしない。


「魔王様?」


 クルタの声が聞こえる。


「なんだ?」


「あ、いや」


「クルタは魔王様が笑っているように見えたから気になったんだよ」


「いや、そんな」


「ミュールはクルタのことなら詳しいんだね。実際笑ったと思うよ」


 何度も話したことのある人物を殺そうと思っているのに、人格が混ざったことが影響しているのか不思議と気持ちは穏やかだった。

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