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空から落ちる悪役令嬢の願いは叶いますか?  作者: 福与詩檻
第三章 戦争編

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33/79

33:休息

 集団生活において誰に決定権があるか、どんなルールが存在するのか話し合っていないと誰も感情を制御できない。ギャバジンには貴族や平民が暮らしている。そこには日々の鬱憤が募る機会は山のように存在していて喧嘩が絶えない。高度に組織化された社会なら多様性という環境の変化に適応できる。ストレスに対処できるほどの余裕があれば他者に寛容になれるはずだ。


 ここで道徳を説いたところで共感よりもさらなる否定に繋がる。


 数日の間に何度かリングとピロトグルは喧嘩を繰り返した。最初のうちはピロトグルが謝ることで終わっていたが葛藤の末に怒りが爆発して手がつけられなくなった。


「俺に責任を取れと言うが死ねば解決するのか?」


「そんなに単純な話じゃない。前も言ったが不都合な真実から目を逸らすな。平民には魔法が使えないから機械で子どもを作るしかない。だが、それには貴族の力がいる。どれもお前が実行した結果、このバーキン連邦がローウェル王国と戦えるようになった。あんな技術は誰にとっても脅威だ。ローウェル王国をたとえ倒しても争いは消えない。魔法を使えない人間があれほどまでに強くなれるなら、機械技術をすべてなくさない限りまた誰かと戦うことになる」


「だから不毛だって言っているんだ。将来は誰にもわからない。技術は技術でしかない。長い歴史で数えれば争いなんて思ったより少ないもんだ。そもそも古代技術は俺の専門外だ」


「ヨークドがいない代わりというのもある。だが、元々はピロトグルがいなければ平民は生きることすら困難になっていた」


「それを否定しようってのか?」


「この国にきたらそう思っても不思議じゃない」


「俺は詳しくは知らないが王国と名のつく国は九割以上は貴族だと聞く。それらの国にも問題があるようにバーキン連邦だって問題がある。一つの国を否定しても意味はない」


「今否定しているのはお前だけどな」


「俺はリングという人格まで否定してもいいんだぞ」


 僕は何度か話を聞いていたが会話が終わりそうになかったので、二人に近づき議論中の両者の頭を掴むと強引にキスをさせた。


「おい! サトウ!」


 リングが叫んだ。


「何するんだ!」


「仲良くなる手っ取り早い方法を思いついたからやっただけだが」


「始めてのキスがピロトグルとか嫌なんだが」


「俺もリングとなんて嫌だ!」


「何度も言うようで申し訳ないがここで暮らすなら平民や貴族という考えを捨ててくれよ」


 ピロトグルが僕に掴みかかる。


「それとキスにどんな関係があるんだ」


「何かあったら自分の体で実験するんだろ? それなら丁度いいからリングで我慢しとけ」


「嫌なものは嫌なんだよ!」


「俺だって嫌だから!」


「なあ、ラフィア。どうしようか」


「なんというか……こういうデリケートな話を解決できないか相談したのはわたしだけど。まさかそんな行動に出るとはね」


「僕たちも普段しているだろ。仲良くなるにはこれが一番だ」


「人前で恥ずかしいことを言うな」


「ラフィアの悪いところを僕は受け入れている。嫌なことをされても話し合って解決したい。それは僕がラフィアを愛しているからだ。それなら話は単純だろ」


「そんなに簡単な方法で解決できるなら苦労しない」


 リングがため息をつく。


「ラフィア、別に簡単じゃない。俺は確かに男性が好きだが好みというのがある」


「それには同意見だ。たとえどれだけ魅力的な体と思って性格が好みじゃない」


「お前俺のことをそういう感情で見ていたのかよ」


「見ているとは言ってない!」


「今言っただろ!」


「ピロトグルは貴族と平民の実験の為。リングは憎きバーキン連邦の平民の為。二人で愛せばいいじゃないか」


「サトウだっけ? 俺にメリットがないぞ」


「産まれてくる子どもにリングの考えを叩き込めばいいのさ」


「なるほど。いい考えだ」


「サトウ。いい加減になさい」


 まずいぞ、ラフィアが本格的に怒り始めたな。


「というのは冗談でこのギャバジンで暮らすのに多少はルールを作ったほうがいいと思って来ました。僕たちは人数も増えてきたから色々と決める必要があります。まずは喧嘩は極力しないことにしましょうか。たとえ正当な理由があったとしても誰かを傷つける言動はやめる。それができないならギャバジンから出てもらう。そしてこれが一番重要なことです。問題が起きたら必ず僕かラフィア、またはゴルアに相談すること。これはゴルアに確認が取れています。この土地を管理していたのは彼ですが、以前のように発展するのは喜ばしいことみたいです。それで責任者を決めることを言った時、みんなの賛同で僕たちに決まりました」


 喧嘩ばかりするリングとピロトグルが議論の場にいなかったからまた一から説明した。


 イニユラから帰ってきてみんなと話した結果。ここまで連れてきたのは僕だ。それでいて僕は転移したことや転生したことをみんなに話した。受け入れる者と納得できなくて悩んでいる者もいるが、僕とラフィアの言動を見て納得するしかなくなったようだ。


 お互いの意見が対立した時の為に僕はリーダーをラフィアにしたがラフィアは僕にした。ゴルアにしたかったが彼は僕たちを随分と気に入っているのかギャバジンでの方針に従ってくれた。


 僕は単純に元々この世界で育ったラフィアのほうがいいと指名したが、彼女は前世を合わせても年齢が上なことや自分よりも優しい人という意味で相応しいと指名してくれた。素直に僕の言葉を信じてくれるラフィアには嬉しかった。


 他にもギャバジンでのリーダーを決めようとしたが結果的に僕とラフィアになった。


 それは僕が別の世界での知識を持っていたことやラフィアと僕には膨大な魔力などの単純な戦闘力があることが主な決めてだった。後はゴルアが僕を見て神様に似ているなどと言って、一時的な責任者として認めてくれたのも関係している。


 僕だけだと背負いきれないので恋人同士で楽しくやっていこうと決めた。


「ラフィアが決めたことなら俺は文句は言わねえよ」


「まあ、キュロット……今はサトウ? どっちでもいいか。お前には世話になったから騒ぎは起こさないよ。ここにいられるのもお前が認めてくれたからだしな。それにしてもラフィアは大丈夫なのか。お前ローウェルの王族だろ」


「問題が起きないとは限らない。ローウェル王国との戦争が起きたら必ず戦うことを誓う。わたしは今も魔王たちを許していない」


「その時は僕も戦うよ。だけど最前線は僕にも任せて、意外と僕って強いみたいだからさ」


「見てたよ。あの巨大なロボットを基礎魔法だけで倒した。わたしが使える魔王の魔法よりもサトウのほうがずっと戦闘に向いている」


「それで話があるんだが僕もラフィアと同じ変わった魔法が使えるんだ。後で訓練に付き合ってくれないか?」


「何故サトウが? まあ、いい。後々もっと話を聞く必要がありそうだな」


 ピロトグルとリングは睨んだまま動かない。


「もう喧嘩しないと誓える? 誓わないとキスさせるぞ」


 二人は素直に頷いた。リングは立ち上がるとサテンと楽しそうな表情で話し始めた。ピロトグルは近づいてくるゴルアに「今までの研究成果を報告しとく」と言い真剣な表情になる。無理に仲良くさせようとキスをさせたことは良くなかった。僕がキスをしたら相手との関係が変わったことがあっても相手も同じとは限らない。


 廊下を歩いているとアーバンに話しかけられた。


「イニユラに行ったんだろ? ドラゴニアはいたか?」


「いなかった」


「そうか。残念だ」


 正確にはわからなかっただけだ。あの城にドラゴニアがいたとしても僕にはラインを助けることが精一杯だった。


「なあ、サトウはここで何をするんだ?」


「とりあえず満足に暮らせるように衣食住を提供したいな。ゴルアさんにも話をしてあるけど、シャギーにも手伝ってもらうことを頼んである。他にも手の空いた人にできることはないか言っておいてくれないか?」


「わかった。言っておくよ」


 アーバンが去っていくと僕たちはラインの元に行った。


 ラインはしばらくすると会話ができるようになったがまだ体調は万全ではない。ここの施設には医療分野も充実している。急激な魔力の減少にも対応して、更には肉体の欠損にも対応していた。単に肉体を機械化するだけではなく、細胞を移植したり復活させたりが一分もかからず可能だ。それでも最後は自分の体力との勝負になる。


「まさかサトウがキュロットとは思わなかった」


「言えなかった。信じてもらえるとも思えなかった」


「いいさ。複雑な気分だが俺は幸運だ。大事なものを手に入れたからな」


「ラインはいいよね。わたしも子どもほしいな」


 ラフィアとラインは笑い合っている。


「そのうちラフィアの願いは叶う」


「キュロットというかサトウか……ラフィアをよろしくな」


「どうしたんだ?」


「色々考えていたが俺には十分すぎる幸せだった。だから死んでもいいと考えて抵抗しなかった。それで運良く大きな怪我もなく助かった。アルベール王国はもうないが、次の女王はお前だ。キュロット」


「僕はサトウのつもりだ」


「でも、本当の体は女性だろ。こんなの意味はないがクロッグも認めていることだ」


「国は消えたが女王になれか」


「心残りは終わった。俺も役目を果たして満足した。ここで終わっても良かったが、この命がある限りはあなたの為に生きよう」


 僕とラインは握手をする。


「僕の心残りならまだある。アルベール王国の貴族の行方だ」


「それもある」


「他にも仲間を増やすことが重要だ。僕やラフィアは強いが仲間の数というのは大事だと思う」


「俺も王族としてかなり強いと自負していたが努力が足りなかった。何度も負けてきたがサトウとラフィアが一緒なら勝てる」


「二人だけじゃない。ラインも僕にとっては大事な仲間で家族だ。勝つのは難しい、負けないように勝負をしよう」


「これほど頼もしい言葉はない……ありがとう」


 未だに体調が戻らないラインを寝かせて僕とラフィアは部屋を出る。


「バーキン連邦に捕まった貴族を探すのと平民の仲間を見つける」


「随分と難しい話だね」


「僕とラフィアは白か黒か決められる立場じゃない。ラフィアは身内でも殺すことを決意した。それなら僕も君の考えに寄り添う」


「わたしたちは世間で認められる立場にはいない。男と女だけじゃなく、魔王の血を引くわたしがいる」


「認められるには勝つしかない。君の願いは僕の願いだ」


「わたしはあなたと幸せになりたい。もう十分幸せだと思っていた。でも、現実はそんな簡単じゃないみたい」


「僕が叶えるよ。君の願いを」


 またキスをした。


「あ、またキスしてる」


 フランネルの声を聞いて離れる。


「わたしね、怒ってるの」


「え?」


 僕は近づいてくるフランネルに壁まで追い詰められる。


「なんで好きな人がいるってことを言わなかったの?」


「あれはキュロットの時のことだし」


「そんなの言い訳になりません。これは浮気です」


「付き合ってないから」


「ラフィアにも言いたいけど……サトウが死んでつらかったんだね、とか言うしかないから。今はわたしの思いを真剣に伝えに来た。わたしと付き合ってください」


 ラフィアを見るが何も言わない。


「僕は男性でラフィアと付き合っているから無理です」


「一人の人とだけ付き合うなんて習慣ないよ。それにあなた女性でしょ」


「気持ちでは男性だよ」


「関係ない」


「もうちょっと歳取ってからね」


「歳は同じだけど」


「ラフィア……」


「またわたし以外との子どもが作られるのね」


「あれは事故だったんだよ」


「二人だけで話をしないでよ!」


「フランネルには今以上に訓練をしてもらう。僕がいなくても大丈夫なようにね」


「話を変えるな」


 フランネルのように少し肉体を機械化するのも今後は必要になってくるだろう。バーキン連邦の技術は驚くことが多い。魔法だけに頼るのではなく、他の武器を使うのも大切か。

 

「聞いてるの? わたしのこと好きなのか嫌いなのかはっきりして」


「好きだよ」


 まだ後半の言葉を言っていないのにフランネルは慌てて逃げてしまった。そんな僕の表情を見てラフィアは笑っている。


「サトウ」


 ラフィアは僕の手を引いて歩き出した。


「まだわたしがローウェル王国でしたことの全部を話したわけじゃない」


「いいよ。すべてを肯定するわけじゃないけど、それも必要なことだったんだろ」


「困ったな」


「ラフィア、ローウェル王国の情報がほしい。頼めるか?」


「どんなことでもするよ」


 この建物から外に出なくても大丈夫なようにギャバジンでの生活を充実させる必要が出てくる。食べ物だけじゃない衣服や家財道具も必要だ。ゴルアの話によればこの地下施設で他の技術者を招いて今後様々なものを作ることを計画中らしい。バーキン連邦以外にもフェザー連邦や他の王国にいた貴族も必要になってくるかもしれない。

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