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空から落ちる悪役令嬢の願いは叶いますか?  作者: 福与詩檻
第二章 転生編

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31:命がけの戦い

 鳴り響く強烈な音が絶え間なく部屋全体を揺らしていた。窓がない部屋で起きて早々に誰もいないことに驚く。室内には散らばる資料と透明な箱に入る人間だったものたちの欠片が見えている。少し目を閉じていただけなのに誰もいなくなっていた。


 わたしは寝ていたのか。

 

 二人には慎重に行動するように言っていたはずだが大丈夫だろうか。


 わたしはドアを少し開けて周囲の様子を見る。ここからだと兵士の姿は見えないが魔力で探すと城内には大量の兵士がいる。明確に大きな魔力が複数あるので二人の居場所はわかった。近くにいる大勢の兵士が徐々に消えていく。位置はわからないが次第に音が大きくなっていた。城内の揺れが伝わってくる。天井が崩れてきたので一旦部屋に戻ると唐突に赤黒い物体が先程まで寝ていた位置に現れた。


 膨大な魔力をまとった物体は体を震わせて壁を突き破って消えていく。


 何が起きているんだ。


 近くには何も残されていない。貴族たちの体の一部もいなくなっている。埋葬することもできそうにない。


 城を歩いていなくなった二人を探していると付近には銃を取る兵士が大勢いた。声を上げてわたしに向かってくる彼らに「アーゲレナ」と言い周囲の空間にいるものを吸い込んでいく。


 大きな魔力に向かって歩けば自然と兵士と戦う必要が出てくる。兵士たちはわたしを見ると攻撃準備を開始する。主に銃を取り出す者もいれば棒状のものを取り出す者もいた。対処方法は避けるだけで事足りる。正規の軍人だろうと魔力の扱いに長けた人間には勝てない。そう自負していたが機械の武器というのは多様で突然曲がる弾丸を撃つ者や爆発を繰り返しながら突撃する小さな物体を放つ者もいる。一見統一された服装や武器で優れた集団に見えるが武器の種類も命令もばらばらだ。


 あまり連携攻撃をしない兵士たちだが時折顔を見合わせて同時に攻撃をすることがある。誰かと会話をしているようで逃げても居場所を把握されているようだ。


 兵士たちは銃を構えて一斉に細長い槍のような弾丸を発射した。基礎魔法で守るも徐々に押されて一歩下がっていく。それを見て次々と別の弾丸に切り替えながら攻撃をしてくる。彼らは魔法に一番効果的な弾丸を選びながら撃ち続けていると基礎魔法にヒビが入った。


 魔力の消費を恐れて魔法を使わないこともできたが当たる危険性もある。


 どこかに自分の知る魔力がないかと探しているとサテンの魔力を見つける。


「プラフティ」


 彼女の元に行くと目の前に知らない男性が立っていた。わたしの背後にいたサテンは腕から血を流して倒れる。


「サテン!」


 わたしはサテンに近寄って回復魔法を使う。傷が塞いでいくとサテンは安心したように倒れた。


「お前は誰だ?」


「ラフィアだ。サテンと戦っていたのか」


「侵入者らしいから戦っていたが案外頑丈で攻撃が通らないんだ」


 その男は自分より一回り大きい体をしていた。異常に膨れ上がった筋肉と血走った目に膨大な魔力を持っている。手元にある丸い物体を握りしめて笑っている。


「そいつは強いとは思うぞ! だが、情けないことに俺を殺すまでの強さはない。ラフィアとか言ったな? 俺はサブリナ・ソリッド。ここの死刑囚だ。あまりにも退屈だったから手加減をしていたが、貴族ってのはみんな弱いんだな」


「貴族と戦ったことがあるんだね」


「俺は何度か貴族と戦っているが魔法ばかりにこだわって魔力の扱いが悪い。他にも武器の扱いがまったくなっていない。お前も同じか?」


「さあね」


 サテンを地面に置いて立ち上がる。サブリナは基礎魔法を小さな弾丸のように放ってわたしに攻撃してきた。すべて基礎魔法で弾き飛ばすと、その隙に彼は棒状の武器を取り出す。その武器は長く伸びて壁を伝いながら一直線に向かってくる。魔法で守っていると棒は魔法を貫通してきた。首元を通り過ぎる棒を掴んで砕くとサブリナは嬉しそうに笑う。


「最低限の魔法を使って防御をする。それでも避けれない場合を想定して全身に魔力を注ぐ。魔法よりも自身の肉体を信じているいい戦士だ。これは好みの相手を見つけたな」


「それはどうも」


 サブリナは一歩踏み出すと一瞬で近寄って、蹴りを入れようとしていた。腕に魔力を注ぎ彼の足を受け止めると掴まれた足を強引に振り回すとわたしを壁に叩きつける。彼が足を離すとわたしが掴んだ足が壊れていたことに気づき足を外した。するとすぐに別の足が壁から現れて足を交換する。彼は興奮しながら叫んだ。


「いい! これだけ頑丈なら簡単に壊れることはない!」


 大きく口を開き口の中が光り始める。そこから光線が出ると曲がりながら向かってくる。それを避けるも壁を貫通して、またわたしに向かってきた。光線を弾くと霧散した。光線の残滓を見ていると肌に触れる物体に魔力が感知して避けると、壁には指のようなものが突き刺さっていた。


「避けるのが上手だ」


 わたしはサテンの位置を確認して「アーゲレナ」と言った。サブリナは地面に両手を突き刺して正面のわたしを見つめると、口を大きく開いて棒状のものを発射してきた。基礎魔法で防御していたが簡単に貫通して腹に突き刺さった。


 複数の魔法を同時に使用しながら魔力を他の場所に割くことを怠ってしまった。腹に突き刺さった棒を抜くと回復魔法を使う。傷はすぐに治るが魔力は時間をかけなければ回復しない。あの魔法は頻繁に使っていいものではない。


「そんな魔法まであるとはな。まだまだ学ぶことが多いようで楽しい限りだ」


 大きく背中を曲げて細長い物体を取り出す。その手にある細長い物体は徐々に形を変えて紫色の液体を垂らしながら鋭い刃物のような形になる。彼は刃物を振り回して紫色の液体を周囲に飛び散らす。壁や地面に天井へと付着した液体は爆発を始めた。サテンの近くに液体が飛び散っていたので急いでサテンを抱えて遠くに逃げると、彼は刃物をわたしに狙いを定めて投げつけた。サテンを魔法で守ることに集中していたことで刃物が背中に刺さって大きな爆発を起こしてしまう。


 サテンを地面に置いて痛みに苦しみつつ背後にいるサブリナを見る。


「おいおい、どんな体してるんだ? 少し背中がえぐれた程度かよ」


 回復魔法を使いながら立ち上がるが傷は完全に塞がらない。魔力で肉体を強化しているが誰かを守りながら戦うのは想像以上に集中力が必要になる。今自分がどれほど魔力を消耗したかわからない。限界まで魔力を使った経験がないから限度がわからない。痛みと疲労で足が震えて息が苦しくなってきた。


 疲れたと思えばすぐに魔法を使わず休んでいたが、逃げる場所がない状況では休んでいられない。この状況は全力で挑まないと死ぬかもしれない。


「プラフティ」


 彼の背後に回ると「パーペチュアル」と言って背中に触れる。


「ウルクガ」


 そう口にするとサブリナは声を上げることもなく溶けていく。


 一気に魔法を使って疲れた。


 わたしは少し離れた場所で溶けるのを待っているとサブリナが振り向こうと動き始めていた。


 嘘だろ。


 徐々に持っていた丸い物体をこちらに投げようとして手を振り上げるが、既に体の一部は溶けて丸い物体は地面に転がってしまった。


 完全に溶けることもなく彼は喋り始めた。


「今のはなんだ。体が……」


 サブリナの体は腹と両手が溶け始めている。


 もしかすると魔力を中途半端に注いだせいでどれもすぐに止まってしまったのだろう。


 彼は丸い物体を見つめて叫んだ。


「音声認識! 二人いる女性を標的に攻撃を開始!」


 丸い物体は突然光線のようなものをわたしとサテンに放った。だが、痛みはない。わたしは不思議に思いながらサブリナの顔を見ると笑っていたのに気づく。一瞬だが魔力の繋がりを丸い物体から感じた。そこから吸い取られる感覚に襲われて、放たれた光線からの魔力に集中する。状況はわからなかったが危険だと判断して「シルディン」と言った。


「わたしたち二人ではなく、サブリナ。お前を標的に変更だ!」


 彼は笑いを止めて「音声認識。サブリナ・ソリッドに標的を変更。攻撃を開始」と言うと自分と丸い物体の魔力の繋がりが切れた。


 安心していると彼が徐々に膨らみ始めた。大きな体を更に大きくして天井付近まで膨らむ。わたしはサテンを抱えて急いで逃げると、恐ろしいほどの衝撃でわたしたちは壁に叩きつけられてしまう。


 どういう原理なのかわからないが危なかった。


 人間の魔力を使った爆弾なのかもしれない。


 付近には何もなかった。


 肉片らしきものもない。


 サテンは目を開けてわたしを見つめる。


「ラフィア」


「サテンは怪我とかない?」


「もう大丈夫。ラフィア……顔酷いよ」


「疲れているんだ」


「ごめんね。わたし弱くて」


「サテンは強いよ。相手が悪かったんだ」


 バーキン連邦の武器は強力だ。今のは下手したらわたしたちが死んでいた。


 リングの魔力を探すもめまいで頭がふらついて膝をついてしまう。


 こんなにも強力な魔法を何度も使ったことがなかった。


 幸いにも周りに兵士の姿はいない。

 

 壁に背を預けてわたしたちはしばらく休むことにした。


「リングはどこにいるかわかる?」


「わからない。あいつ施設を見て腹が立って出て行ったの。それから途中で見失って場所までは……」


「いいよ。今の体力だと何もできないし」


 リングは普通の兵士より強い。


 問題はないはずだ。


「リング大丈夫だよね?」


「大丈夫だよ。信じなよ」


 そう言いながらもなるべく早く体力を回復させることを優先することにした。


 わたしはサテンの手を握りながら目を閉じた。

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