表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空から落ちる悪役令嬢の願いは叶いますか?  作者: 福与詩檻
第二章 転生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/79

15:残忍な悪役令嬢

 平静を装っていられない。今わたしは始めて人を殺してしまった。この長い歳月の間にローウェル王国が変わればいいと思っていたが、そんな望みは到底叶えられるものではなかった。あの国は揃いも揃って愚か者ばかりだ。今まで誰にも本心を明かしたことはない。家族という存在を肯定するのがローウェル王国で、最後の拠り所をわたし自身が壊してしまった。

 

 シャギーにはしばらく一人にしてとだけ伝えて、あの輪から離れてしまった。


 もう誤魔化すのはやめにしよう。


 わたしは故郷が憎い。


 それが本心だ。


 去り際にキュロットの寝顔でも見ようと寝室に忍び込む。彼女ともっと一緒にいたかった。それは叶うかはわからない。その時はローウェル王国をこの手で破壊した時だ。


 幸いなことに船は見つかった。フェザー連邦から北西にあるローウェルの港町モカシンに行き、夜には積荷の中に忍び込んで朝に出港した。


 頭の中にローウェル王国の地図は入っている。あの国という存在を消すには手段を選んでいる場合ではなかった。魔王は男女問わず誰でも自分の子どもを作れる。実際に見たことはないが王族は人間の腹を引き裂いて赤ん坊が出てくる。一般的な出産と違い人間は魔王の器にしかならない。


 モカシンに到着するとすぐさま魔力を探す。ここにもわたしの知る魔力が大勢存在している。生まれ育った土地にいる貴族たちも同罪だ。


「プラフティ」


 移動した先には椅子に座り読書をするレリーフ・オリエンタルがいた。

 特別親しいわけじゃない。彼は元々テラード王国の貴族で国が侵略された時に、貴族が優遇されるローウェル王国に寝返った人間だ。ここ数年グラードから彼のことは聞かされている。

 彼は眠そうに本を読んでいたようで気づいていない。


「シルディン」


 彼はわたしの声を聞いて立ち上がる。口を開けたままこちらを向いた。洗脳魔法らしいがエポールは色々と便利なものを持っている。


「今からわたしの言うことに従え」


「はい」


 扱い方は声を聞かせないといけないみたいだ。


 有効活用させてもらおう。


「レリーフ。貴様は頭を下げろ」


「はい」


 レリーフは頭を下げた。

 普通は念話を使うことができないが魔力を統一させれば一時的に使用できる。彼の頭に指を突っ込むと魔力を流し込んだ。一瞬彼の体が震えたがすぐに落ち着いた。洗脳に加えて魔力の統一でほぼ彼はわたしの道具だ。今では手足のように扱える。


『今から言うことを実行しろ。前に三歩移動、次に右に二歩移動』


『はい』


 彼は言われた通りに行動する。


 洗脳も念話も使える。他人の体なのでここまでが限界だ。あまり魔力を融合させて深入りすると、自他が曖昧になってしまう。

 

「今からわたしの寝床を準備しろ。後は人員を数人用意して、呼んでこい」


「はい」


 彼は何人かの人間を連れてくるのでレリーフと同じように念話を使う為に使用した。増えた人間を使ってモカシンにいるローウェル王国の人間を集める。これを繰り返す。この洗脳魔法は便利だが、魔力の統一で道具を増やすと頭が痛くなる。必要なくなった人間には行動終了後の自害を命じた。


 そして寝床で休みながら入れ替わりでくる道具を見ながら言った。


「ここから西にあるアンボラに知り合いがいる人間はいるか?」


「はい」


 この道具にアンボラにいる知り合いをモカシンに連れてくることを命令させる。


「ストルジ山脈の隣にあるカモジアに知り合いはいるか?」


「いますが、もうラデリアに行ってしまいました」


「わかった。そいつを連れてこい」


 モカシンとアンボラにラデリアはすべてローウェル王国の都市だ。特にラデリアは大きい。あそこには多くの貴族がいる。だが、わたし一人の力では勝てるかどうかわからない。バーキン連邦に期待しても魔王に勝つ気があるのか疑問が残る。

 

 数日間は道具が連れてくる人間で使える奴を洗脳と念話で掌握していく。あまり内部に侵入させても使い道がない奴は吸収の魔法で命と魔力すべてを貰う。


 このモカシンにいてカモジア以外の情報は手に入れることができた。エンバイにいる道具の情報によると『ここからプリミティブ島が見えますが、今の島がどうなっているかわかりません』とのことだ。


 プリミティブにローウェル王国の誰かがいるはずだが状況がわからない。


 アンボラにいる道具は『ムルクバ砂漠を渡った先のラフバ山脈で労働をさせている人間がいる』という情報を手に入れた。そこは平民や貴族が混ざっているらしいが使い道を見出だせるか。あまり期待はしていないがわたしはアンボラに行くことに決める。


 アンボラにいる道具の元へ移動魔法を使うと言った。


「ラフバ山脈までの準備を用意しておけ。わたしだけの食料だけでいい。それとアンボラにいる使える人間を今日までに仕事とか理由を言って連れてこい」


 この喋る道具も増やすと面倒なことになる。番号なんてついていない。適当な番号で呼ぶことにしなければ名前を覚えられない。レリーフ以外はすべてに番号を振って命令を決めた。


 翌朝はムルクバ砂漠に行くことになった。日差しが体温を上げていく。二人ほど荷物持ちに道具を連れてきたが思ったより体力がないようで一人倒れてしまった。残りの一人だけを連れて先を急ぐ。昨日も何度か命令させていたから睡眠が足りていないみたいだ。洗脳させても元の体までは支配できない。使い潰すだけならいいが有能なら休みが必要だ。

 

 夜のムルクバ砂漠で念話が聞こえる。


『プリミティブは今ローウェル王国の拠点が作られています。バーキン連邦との戦争に使うようです』

 

『二番の道具は引き続き、ローウェル王国の様子を見ていろ。一番はどうだ?』


『モカシンにはローウェル王国の貴族が何人か来ています』


『一番は待機しながら目撃した貴族の名前を覚えていろ。四番は?』


『ラデリアにはローウェル王国の貴族が住んでいます。どの貴族も長年ローウェル王国に仕えてきた者たちです』


『わかった』


 わたしは眠りにつく。

 

 朝になると道具が準備を終えている。一緒に食事を取ることはない。道具には倒れない程度に食事を取るように命令させている。


 ムルクバ砂漠を歩くとラフバ山脈が見えてきた。水を飲みながら近づくと基礎魔法で浮いて移動することにした。もう体力の温存はしなくてもいい。方向がわかれば魔法で一気に近づけばいいだけだ。


 この近くに労働をさせている人間がいるらしいが、そんな場所なんて見当もつかない。


 数分間探していると何か声が聞こえる。こんなところに人が住んでいるとは思えなかったが、近づいてみると集落のようなものがあった。ここの住民は尻尾があったりドラゴニアの特徴に近い。そこはローウェル王国に支配される前から住んでいた人が暮らす場所のようだ。彼らの話を聞くとローウェル王国からきた者に監視されて生きているとのことだ。ここの鉱物をアンボラまで運ぶことを余儀なくされている。利益が出るならいいのだが安く買い叩かれて、更にはムルクバ砂漠を渡らないといけない。体力のある者なら数日で着くが灼熱地獄を毎日歩きたい人はいない。


「わかりました。ローウェル王国の者とわたしは仲が良いので話を通しておきましょう」


 付近にいたローウェル王国の兵士たちはあまり働きもせずに酒ばかり飲んでいた。男性ばかりだと思っていたが女性もいる。その女性をよく見ると魔力の流れが他と違っていた。名前を聞くとマリン・ラグランというプロート王国の貴族で、ここの生活に嫌気が差していたと言っていた。他国の人間を自害させる気にもなれず、他の道具同様に連れて行くことにする。


 わたしがマリンを連れて住民に話をさせると感謝された。彼女を五番としてエンバイに送ることに決めて他の道具と一緒にエンバイに向かう。


 移動魔法を使用して付近の兵士たちの会話に聞き耳を立てる。三人ほどいたが何度か見たことのある兵士だった。彼らは自身の欲の為に立場の弱い者に好き勝手にしてきた。この国で生まれ育った貴族の次に弱い立場が他国出身の貴族だ。人間以下の扱いの平民なんて口にするのも嫌な扱いだ。


 兵士たちを覗き見ていたわたしは思わず基礎魔法を細く尖らせて彼らの喉元を切り裂いた。叫ぶ声を上げる暇もなく、兵士たちを殺すと自分の手についた血に気づく。怒りに任せて殺してしまったが、何故こんなことをしてしまったのかわからなくなっていた。


 それより、この血が気になるな。


「汚い。洗わないと」


 エンバイにいると最前線だという緊張感が伝わってくる。ここが補給地点でプリミティブ島に物資が送られているらしい。使える道具に自分の体で情報を聞き出すことを命令すると更に情報を貰えた。モカシンには他国の貴族が大量にいることがわかった。ほとんどが不本意にもローウェル王国に所属することになった人間だが、中には元々国を裏切るつもりでいたような人間もいる。


『一番。このモカシンにおいて有能な人材だと思われる人間はいるか?』


『今はボイスが来ています』


『ボイス? 何故? 彼はアルベール王国にいたはずでは?』


『あの国はもうありません。他の国も同様にです』


『どういうことだ?』


『今ではバーキン連邦が支配しています』


『は? この一ヶ月程度の期間でローウェル王国が負けたのか。いや、まさか』


『ローウェル王国は負けていません。兵士たちは逃げました』


『……そういえば魔王は国が滅ぶ程度のことは気にしなかったな』


 今更何を動揺しているのだろうか。わたしはあの国が好きだった。それを助けたい気持ちはあったが今はやることがある。


『住民はどうなる?』


『殺されるか、バーキン連邦に連れてかれるでしょう。王国と名のつく国はほとんどが貴族です。バーキン連邦はローデン連邦と同様に貴族を好きではないです』


『一番はそこで待機』


 他の道具にも食事や睡眠などの休息を取らせて考える時間を作る。


 キュロットたちはフェザー連邦だ。それにこの機械の体は魔力の流れを阻害する。彼女がもしも見つかっても平民だと思われるはずだ。問題はアルベール王国にいるラインたちだ。今から助けられるだろうか。追ってこられても嫌だったからフルブローグを置いてきたせいで連絡が取れない。だが、今は無事を信じるしかない。わたしはローウェル王国をどうにかしないといけない。こんな国があるから争いが起こる。バーキン連邦もローウェル王国がなくなれば友好的になってくれるかもしれない。


『二番に話がある。バーキン連邦に対する攻撃はどのくらいで起こる?』


『時期はわかりません』


『そうなのか』


『ここにはベゼル・ローウェル第四王子がいるようです。彼がプリミティブ島を侵略することを提案したようですから、次はバーキン連邦のルーロブを狙うでしょう』


『あそこはアルベール王国に近い。バーキン連邦が最初に攻めたのがアルベール王国なら、もうラインたちは……わかった。二番と五番はベゼルに近づけ、なるべく奴を誘惑するようにしろ。手段は問うな』


 ベゼル・ローウェル第四王子は変人扱いされている。一般的に男性は男性にしか好意を持たないが彼は女性にも好意を持つ。気に食わないがわたしに近い性癖だろう。それでいて誰よりも残虐だ。


 二番と五番から連絡が入った。今複数の男女をベゼルに向かわせて、それに加えて酒なども飲ませている。わたしは五番の近くに魔法で移動すると、ベゼルの荒い息や男女の声が聞こえてきた。


『五番は何もされていないのか?』


『はい。どうにも体に傷があるのが嫌だったようで他の体の綺麗な女性や、筋肉のある美しい男性に目がいったようです』


『何があったんだ?』


『自分で傷つけました。自分に自信が持てず、毎日自分を切りつけていると心が安心しました。その日々の中で、わたしはどんな時も笑顔を絶やさないシフォン・プロート第一王女が憎かった。とても恨んで最後には彼女の目を切りつけて苦しむ様を眺めて満足しました。でも、ローウェル王国に来て過去を悔やみました。勝手に他人を羨んで、他人を傷つけた。それで今日まで何度も自分の体に傷をつけました』


『五番は待機だ』


 自分の中で重要な部分なのか洗脳しているのに長話をしてきた。感情的になっていた彼女の姿を見て自分が向かう先を想像したが今更元に戻れない。


 わたしはベッドの上で一人で笑っている彼を覗き見る。ベゼルの近くには数人の男女が倒れている。どの人間も裸になって床で寝ている。


「今日は楽しいな! 男も女も俺の元に来る。こうしてこいつらと遊べるからな!」


 ベゼルは立ち上がると床に転がる男性を蹴る。


「あなたのものになりたいとか言っていたが、身分が違うんだよな……今まで何人も子どもを産ませてきたがみんな頭が固くて仕方ない。男性も魅力的だが」


 ベゼルは倒れている女性の髪の毛を掴んだ。


「こういう胸の大きい女性もいいもんだ。俺は男性もいいが女性も好きなんだよ、わかったらもっと俺に奉仕しろ。それとも俺が女性になって楽しませてやろうか?」


「それならいい提案がある」


「誰だ? え? ラフィアだと?」


「ベゼル、久しぶりね」


「お前生きていたのか」


 彼は笑いながら言った。


「お前が地上に落とされた時、心底嬉しかったのに。まだ死んでいなかったとはな」


「そうなんだ。悲しいな」


「思ってもいないのに、それでなんの用だ」


「女性になって楽しみたいんでしょ?」


「ああ、どっちでもいいが。それがどうした」


「わたしが手伝ってあげる」


 わたしは近づいて彼の股間に手を伸ばす。


「ウルクガ」


 そう口にした途端股間から溶け始めた。これもエポールの魔法でなんでも溶かす魔法だ。身内の魔法で身内を殺すのは酷く心地よい気分になる。


 激痛に倒れるベゼルの頭を踏みつける。


「よく、わたしがいじめられていた時にこうして頭を踏んでいたよね?」


「何が! 何が起きた! い、痛くて仕方ない……回復を」


 回復しようとするので「アーゲレナ」と口にする。足から全身に魔力が流れていく。こいつの魔力も上質なものだ。エポールとは違うが膨大な魔力を持っている。


「魔力が減っていく……どういうことだ?」


「昔話をしようか。エポールと一緒にわたしを縛って火で炙っていたことがあったよね。あの時わたし何度もやめてと言ったのにやめなかった。どうして?」


「何言っているんだ! 覚えていねえよ! 早くやめろ!」


 ベゼルの腕に触れて「ウルクガ」と言うと腕も溶け始めた。痛みで悲鳴を上げるベゼルに驚く周囲の人たちを見て『五番。倒れている人間を処理しろ』と命令すると次々に首を切られていく。酔っている人間は動きが鈍くて普段以上に処理が楽だった。


「そいつもお前の仲間か」


「手を出さなかったみたいだね」


「あんな汚い女、俺が欲しがると思うか?」


「傷がついてあるだけだろ」


「弱っていて、綺麗な人間が好きなんだよ。だから、俺もお前が好きだったんだよ」


 わたしは頭を踏む力を強める。


「それで?」


「今だって抵抗してないだろ。なあ……何か俺悪いことしたか?」


「わたしに石を投げて誰が当たるか競争してたことも覚えていないの?」


「確かにしたけど、その後当たらなかった奴がお菓子をプレゼントしただろ」


「罰ゲームみたいな感じだったけどね」


 腕に魔力を込めてベゼルの腕を引き千切る。悲鳴と共に血が滴り落ちるのを見ながら言った。


「わたしのこと嫌いだったんだよね」


「そんなことない! 好きじゃないとあんなことしないだろ! 本当は身内の中で誰よりも好きだったんだよ。俺も含めて!」


「嘘つくな!」


 背中に手をつき「アーゲレナ」と言って更に魔力を吸い込む。徐々に体は弱っていく。


「嘘じゃない……俺はお前のことを誰よりも綺麗だと思っていた。でも……そんな弱いお前を魔王様は許さない。俺は毎日怒りをこうして誰かにぶつけるしかなかった。それは嘘じゃない」


「また嘘をついてわたしをいじめるんだね」


「俺はラフィアには嘘をついたことがない。愛している」


「反吐が出る」


 まだ魔力を吸い込むことができない。いっそのこと体そのものを吸い込んでみようか。でも、それだと魔法が使える保証がない。今まで体を吸収しても魔法は使えなかった。魔力をすべて吸い込んで自分のものにしないと、魔力を完全に自分のものにできない。ものを吸い込むのは自分の体に取り込むことはできないが、魔力なら自分のものに変換ができる。


『五番。そのナイフをわたしの手に』


 彼女はナイフをわたしの手に置く。そのまま太ももにナイフを刺した。


「だから、痛いって何度も言ってんだろ!」


「死なないな」


「俺は丈夫なんだよ。それにしても大人になってお前も変わったな。今では立派にローウェルの王族らしくなった。その顔なら魔王様も認めてくれるんじゃないか?」


「顔?」


「気づいてないのか? 俺たちは人を殺すのになんの躊躇もしない。今のラフィアはようやく俺たちに近づいたってことだ」


「ふざけたことを言うな」


 頭を踏むのをやめてベゼルの首に手を触れる。


「王族は人間と化け物のハーフだ。魔王様はお前を弱いからと切り捨てたが、実際はお前のことを恐れているんだよ。誰だって異質なものは怖いからな」


「アーゲレナ」


 手から伝わる魔力は全身に巡ってくる。


「俺がお前を愛していた理由は、その心が綺麗だったからだ。小さい頃から物事を俯瞰して見ているような冷静なところがありながら、誰かに怒ったり泣いたりして感情的になることもあった。まるで化け物の中に現れた奇跡だ。今も俺を本気で嫌っていないだろ?」


 こいつは何を言っているんだろうか。


「恨んでいたらもっと容赦なく、俺を殺してただろ。お前も俺を家族として愛しているんだ」


「そんなはずあるわけないよ」


「エポールを殺したのお前か? 一部の間で話題になっていたぞ」


 わたしは首から手を離す。


「ああ」


「どうだった? 気持ち良かったか?」


 ベゼルは仰向けになる。


「いや、何も」


「俺ならもっと楽しんでいたよ。なあ、ラフィア。今ならもっと仲良くなれる。こんなことができるなら魔王様も認めてくれる。だから仲良くなろう?」


「そうだね」


 ベゼルは一瞬微笑み「パーペチュ」まで言うと、わたしはベゼルの口の中にある舌を掴む。そのままナイフで舌切る。痛みに顔を歪ませるが、更にナイフで口内を切り刻む。


「それ以上喋るな。魔法を使うつもりだろ?」


 そのまま「アーゲレナ」と言い片手で首を絞める。


「また手が汚れた」


 血がついたナイフを見ながら言った。


「わたしはベゼルのことを嘘つきだと思ってる。信じていない。何が愛している? どこにそんな要素があるんだ? 今言った言葉に真実がいくつ含まれている?」


『五番命令だ。ナイフをよく洗え、そしてここにある死体を他の二番などに命令して処理させろ』


『はい』


 彼女はナイフを受け取るとどこかに行った。


 喋れないベゼルはこちらを睨んでいる。


「本当に丈夫だな。普通は死ぬだろ。最後に質問をするか、シルディン」


 ベゼルは抵抗をしているのか体を動かしていたが次第に静かになった。


 わたしはベゼルの頭に指を入れて魔力を統一させる。


『ベゼル聞こえるか?』


『ああ』


『魔王を殺す方法はあるか?』


『ない』


『本当にないのか?』


『ないこともないが、俺は信じていない。すべての人間を殺せばいいが不可能だ。バーキン連邦が貴族の体を使って色々と実験をしているが、どの道貴族になるなら意味はない。世の中がすべて平民になれば可能性は高まると思う。でも、バーキン連邦もそんな選択肢を選ぶことはないはずだ。魔王様も奴らには頭を悩ませているが、世界は変わらない』


『世界は変わる』


 わたしは魔力を流しながら同時に吸収する。肉体が全部わたしの魔力に染まると一気に魔力を抜き取っていく。


 その時には表情を動かさないまま体が冷たくなっていった。


 エポールと同じならベゼルの魔法も使えるはずだ。


「この魔力はベゼルのものか。今のわたしは嫌な気分と良い気分が混ざっている……」


 ベゼルの顔を見ながら床に座る。


 この感情を忘れないようにしよう。


 わたしはこれから何度も同じことを繰り返す。壊れないようにいつでも心は冷たくて、どこまでも穏やかな気持ちでいよう。


「ありがとう、ベゼル。これで戦える」


 ベゼルの死体に触れながら言った。


『みんな聞け。モカシンに行って仲間を集う。一番はわたしの食料と寝る場所の準備。そしてそれまでに他国の貴族の場所を把握しておけ』


 わたしには一人許せない人物がいた。


 ボイス・マジェンタ。あいつはアルベール王国を裏切った。


 ドアを開けて夜の冷たい風を浴びながら、片付けられていくベゼルの死体を横目に考えを巡らせる。


 キュロットと離れて良かった。彼女と会っていたら決意が鈍りそうだ。まだ幼い彼女にはこんな光景見せられない。

 でも、わたしは彼女に会いたくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ