表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/36

第1話


「「ハァ、ハァ、ハァ……」」


 さっきまで別のところにいたと思ったのに、いつの間にか小さな公園に来ていた。

 それに、ずっと手を引っ張られて走って来たから、息が苦しい……。

 なんだか懐かしい感じがした。


「ハァ、ハァ……。ここまで来れば、ひとまず大丈夫かな……」


 息を切らしながらも、いつものように優しくて柔らかな笑顔を向けてくれた。


「真中さん……」

「ん? なに?」

「どうして警察に突き出さないの……?」


 当然の疑問だった。


 ボクはナイフで人を傷つけた。

 もしかしたら死なせてしまったのかもしれない。


 しかも傷つけたのは、あの男の人だけじゃない。


「だって、武田さんは悪くないんでしょ? 端から見ると、あの男の人が襲ってるようにも見えたもん。あれは正当防衛だよ」

「でも……」


 言葉が何も出てこなかった。

 あれは正当防衛なんかじゃない。

 もっと別の何かが、そうさせたんだ。


 あれ?


 ふと、もう一つ別の疑問が思い浮かぶ。


「……どうしてあそこにいたの?」

「……今日は塾だったから帰りにラーメン屋さんに行ってたの。そしたら、たまたま武田さんを見かけて……。私からも一つ聞いていい?」


 さっきまで急いで走っていたせいで位置がずれていたのか、ボクの頭に被せていたものが、ぽとんと地面に落ちた。


 女の子用のウィッグだ。

 それを見ながら真中さんが尋ねる。


「どうして……、朱宮さんの恰好をしてるの? そのウィッグさんもそうだし、その黒ワンピースさんも朱宮さんが着ていたところを見たことあるし……」



「……」



 また何かが邪魔をして言葉が出てこない。

 胸の奥に、じーんと重い痛みが走る。

 ボクの沈黙に耐えかねたのか、真中さんはいつもの穏やかな声ではなく、悲しみともどかしさを含んだ声でこう告げた。





「おかしいよ……。だって朱宮さんは……、もういないんだよ……?」





 痛い。痛いよ。

 胸を襲っていた痛みは頭に転移する。

 痛い。痛い……。

 でも、あのときの痛みはこんなものじゃなかった。


 そう、あのときの心の痛みは……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ